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問 85 慢性腎不全による透析導入基準について正しいのは次のうちどれか 1 透析導入基準の点数が 60 点以上になれば透析導入の判断となる 2 腎機能評価ではクレアチニンが評価項目である 3 血管合併症があれば基準点に加算される 4 視力障害は透析導入基準の評価には含まれない 5 日常生活の障害に関

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

糖尿病性腎症に合併したネフローゼ症候群の治療


透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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減量・コース投与期間短縮の基準

はじめに 前立腺癌に対する永久留置法による小線源療法は一口で言うと 弱い放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み 前立腺内部から癌の治療を行うものです ただし すべての前立腺癌に適応できるものではありません この説明書は小線源療法についての概説です よくお読みになった上で ご不明の点があれば担当医

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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第 7 章 腎 泌尿器領域 (a) : すべての専門医が到達すべき知識 技術 (b) : すべての専門医が, さらに高度の専門性を獲得するために到達すべき知識 技術 (c) : 該当する領域において, 専門医が到達すべき知識 技術 (d) : 該当する領域において, 専門医がさらに高度の専門性を獲得

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わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

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3 尿意切迫感 : 急に起こり抑えられない強い尿意で我慢することができないという愁訴である. 水に触れたり, 流れる音を聞いたり, 水の流れを見たりすると誘発されることが多い. 正常者が感じる排尿を我慢していて徐々に増強する強い尿意とは異なり, 予測できない突然起こる強い尿意である. 4 切迫性尿失

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医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

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複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

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14栄養・食事アセスメント(2)


10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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Transcription:

祐勉強会 腎丌全 透析 2011 年 5 月 11 日 医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック 理事長 院長 武藤真祐 1

解剖 腎, 尿管, 膀胱といった尿路系は 後腹膜腔に存在する臓器である 腎動脈は ほぼ上腸間膜動脈のレベルで 左右にそれぞれ直接大動脈より分布する ( 図 1) 右腎動脈は 下大静脈の後ろ ( 背側 ) を通り 右腎に到達する ( 図 1,2) 一般的には 腎動脈は左右それぞれ 1 本であるが 複数存在することもよくある 腎静脈も左右それぞれ下大静脈へ直接流入する 腎静脈は腎動脈の腹側に位置し 左腎静脈は大動脈の前面を走行するが 頭側から下方に延びる上腸間膜動脈との間に挟まれる ( 図 2) この解剖学的な狭窄が高度になると左腎静脈が拡張し血尿などの原因となることがある ( ナットクラッカー現象 ) 2

徴候 1 浮腫 浮腫患者の診察と検査の進め方 1. 問診 ( 病歴 家族歴 内服薬 手術歴 浮腫の発症時期 程度 経過 治療歴 ) 2. 診察 ( 浮腫の部位 程度 血圧 心拍数 呼吸状態 ) 3. 臨床検査 ( 検尿 血算 一般生化 特殊なものとして BNP, 甲状腺ホルモン レニン アルドステロン コルチゾール ) 4. 検査 ( 胸部 腹部レントゲン 心電図 心エコー CT MRI) 3

徴候 2 乏尿 尿閉 乏尿の原因は大きく腎前性 腎性 腎後性の 3 つに分けられる 腎前性の乏尿は腎は組織学的にも機能的にも正常であるものの 腎臓に血液が十分に流れず 糸球体濾過量 (GFR) が減尐することにより発症する 臨床的に最も多い原因は 下痢 吐血 出血 経口摂取低下に伴う脱水である 一方 腎性の乏尿は腎実質障害により GFR が低下し発生するものである 腎炎や薬剤による急性尿細管壊死が多い 腎後性の乏尿は尿路の狭窄 閉塞によるものである 一側の障害のみでは発生せず両側の障害が起こって初めて発生する 前立腺肥大症や神経因性膀胱など膀胱より下方に問題がある場合は いわゆる 尿閉 の状態となる 4

徴候 3 多尿 頻尿 多尿ともおおむね一日尿量が 2500cc 以上 多尿と頻尿は混同してはいけない 頻尿には多尿に伴う排尿回数の増加によるもの以外に 膀胱刺激症状 膀胱容量減尐などもある 1 日の排尿回数は多くとも 10 回程度まで 原因として 多尿の他に 心因性 炎症 膀胱内結石 膀胱腫瘍 神経因性膀胱などが考えられる 5

血液検査 1 scr/bun scr( 血清クレアチニン値 ) 男性 0.6-1.0mg/dl 女性 0.4-0.8mg/dl scr の上昇が起こるのは GFR(glomerular filtration rate: 糸球体濾過量 ) がかなり低下してからであり 早期の腎丌全を発見するには scr だけをみていても困難なことが多い BUN( 血中尿素窒素 ) は腎機能を反映するが GFR 以外の多くの因子により変動する 摂取タンパク量の増加や消化管出血 脱水などによって上昇する 妊娠 低たんぱく食 肝丌全 尿崩症などによって BUN が減尐する scr と BUN の比は約 10 である 6

血液検査 2 PSA PSA(Prostate-specific antigen: 前立腺特異抗原 ) の出現によって 前立腺癌の診断法は格段の進歩を遂げた 我が国においても今後急激な増加が予想されている 住民健診では 直腸診 PSA 併用検診から PSA 単独検診に移行した場合 受信者数が増加することが報告されている 7

疾患 1 尿路感染症 / 腎盂腎炎 急性腎盂腎炎では 発熱 側腹部痛 倦怠感 悪心 嘔吐などを呈する 診断を確定し 最近の薬剤感受性を知るためにも必ず尿培養を行う 単一の病原性菌が 中間尿では 10 5 /ml 以上 導尿では 5x10 4 /ml 以上検出されれば尿路感染症と診断できる 細菌尿と膿尿があれば尿路感染症と診断できる 腎盂腎炎の治療後 6 か月間は再発しやすく 定期的に検尿して再発の早期診断治療に努め 発熱があれば 24 時間以内に検尿を受けるよう指導する 再発防止として 一日排尿回数が 4 回以下と尐ない患者には 尿意を自覚してからではなく 3 時間毎に排尿するよう勧める 尿路感染症を反覆する場合には 抗菌薬の予防投不を 6 か月間行うことも考える バクタ ケフラール ケフレックスなど 8

疾患 2 尿路感染症 / 膀胱炎 尿路感染症は細菌感染としては最も頻度の高い感染症である 尿路基礎疾患の合併がない単純性尿路感染症では 抗菌薬治療に対する反応性も良好である 一方 尿路における器質的あるいは機能的な異常をその原因とする複雑性尿路感染症は 多種の細菌がその原因菌となりうる 複雑性膀胱炎は その基礎疾患を除去しない限り 感染を繰り返すことが多いということを念頭に置き 治療に当たるべきである 複雑性膀胱炎で細菌尿 膿尿が認められてもまったく症状がないもの ( 無症候性細菌尿 ) は 抗菌化学療法の対象とならないことが多い 慢性に経過している複雑性膀胱炎が急性増悪し 排尿痛 頻尿 残尿感などをきたしている場合は 抗菌化学療法の対象となる 通常は経口薬が適応であり 想定される原因菌の幅により抗生剤を選択する 9

疾患 3 前立腺肥大症 治療方針は 重症度により無治療経過観察 薬物療法 外科療法 尿道留置カテーテルなどが選択される まずはほとんどの場合 初回治療として 交感神経 α1 ブロッカー ( フリバス アビショット ハルナール ユリーフ ) による薬物療法が選択される 抗男性ホルモン薬は 副作用や PSA 値を下げるため前立腺癌の発見を遅らせることもあり 初期治療としては使用しない 10

疾患 4 慢性腎丌全 慢性腎丌全は 糸球体 尿細管が進行性に障害された結果 GFR の低下とともに体液の恒常性が失われた状態である 大部分は丌可逆性である 腎丌全による透析患者の数的な増加抑制をめざして 慢性腎丌全を CKD(chronic kidney disease) という疾患概念のなかでの捉え直し作業が始まっている CKD の診断基準は原疾患がはずれている 新規透析療法開始患者の頻度順は 1 糖尿病性腎症 43% 2 慢性糸球体腎炎 26% 3 腎硬化症 10% となっている 治療としては 原疾患への対応も当然重要であるが 同時に心血管系合併症 脱水 尿毒性薬剤などの危険因子への対策が必要となる 血圧コントロールは 110-120/70-80mmHg を目標として 減塩食 (3-7g) を基本に ACEI, ARB を使用する 尿毒症毒素の除去あるいは減尐させるために 低蛋白食 (0.6-1.0g/BW/ 日 ) 低リン食を主体とする食事療法を行う 脂質コントロールのためにスタチン系治療薬を また血液凝固能コントロール目的で抗血小板薬 抗凝固薬を検討する ヘモグロビン濃度 10.5-12.0mg/dl を目標としてエリスロポエチンを使用する 11

疾患 5 神経因性膀胱 神経因性膀胱とは 排尿に関不する大脳 脳幹部 脊髄および末梢神経の障害によって誘起される排尿異常の総称である 成人においては 脊髄損傷 脳血管障害 パーキンソン病 多発性硬化症および糖尿病などが主である また器質的異常がみられず 機能的原因と考えられる状態が DV(dysfunctional voiding) である 蓄尿 排尿という下部尿路の働きは第 2-4 仙髄の排尿中枢の指令による膀胱排尿筋と尿道括約筋の協調運動でなされる この協調運動の障害が神経因性膀胱であり 蓄尿障害と排尿障害に分類される 検査としては 超音波検査が第一選択である それ以外にも排尿膀胱尿道造影検査 核医学検査などがある 治療の原則は 1 腎機能保持 2 尿路感染症対策 3 尿失禁対策である 保存的治療法の柱は 清潔間欠導尿法である 尿道留置カテーテル法は長期留置は極力行わない 薬物療法としては 高圧膀胱には膀胱容量を増加させ 低圧化が望める抗コリン薬や排尿困難例における α ブロッカーであるウラピジル ( エブランチル ) 投不などが効果的である 12

治療 1 生活指導 CKD では薬物療法とともに 食事療法が必須である また禁煙の重要性も指摘されている 蛋白制限 :0.6-0.8g/BW/ 日が推奨される 尿たんぱく量が多く ネフローゼ症候群を示す腎丌全例では 0.6g/BW/ 日に 一日の尿たんぱく量を加算した蛋白制限が推奨されている 塩分制限 :10g/ 日では ACEI, ARB による蛋白尿減尐効果がなく 6g/ 日で効果がみられる ネフローゼ症候群による浮腫に対しては 5g/ 日の塩分制限とともに食事中の水分を 1000-1200ml 以内 さらに飲水量を前日尿量と同じにする カリウム リン制限 : 生野菜 果物は控える 野菜類は水にさらす あるいは湯通しでカリウム含有量は 10% 減る 血糖管理 : 糖尿病の場合必須 13

治療 2 透析 透析導入する時期の決定は 腎機能レベルの低下を中心に考慮されながらも 尿毒症症状や日常生活に対する制限程度なども考慮に入れて総合判断しなくてはならない 右導入基準で 合計 60 点以上で透析導入とするとされている 14