脆弱なセクターを中心にバランスシート調整を招く懸念が挙げられる 前者は あまりに も非伝統的なトランプ政権の通商政策の波及効果が読み切れないことに伴うリスク 後者 は過去の景気後退において FRB による金融引き締めが先行するケースがほとんどであっ たという経験則に基づくリスク認識である - - -

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FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

別紙2

産業トピックス

関西経済レポート (2019 年 9 月 ) 令和元年 (2019 年 )9 月 30 日 ~ 輸出減少が継続 インバウンド消費はプラスの伸びを維持 ~ 足元の経済情勢と当面の見通し 関西経済は輸出 生産が斑模様であるが 内需が下支えとなり底堅く推移している 企業部門では 輸出は中国経済の減速等によ

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

nichigingaiyo

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

スライド 1

エコノミスト便り

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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経済見通し

金融市場2017年11月号

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目次 概況 p.1~ トピックス1: 米中貿易摩擦が本格化 p.3 トピックス :~6 月期以降 個人消費は持ち直しに転じる見込み 景気 金利見通し p. p.5 Fed Watch:18 年の利上げペースが注目点に p.6 調査部マクロ経済研究センター ( 欧米経済グループ ) 研究員長野弘和 (

U

果の平均は 残留が 44% 離脱が 40% と僅差ながら残留が離脱を上回っている ( 第 1 表 ) ただしここで 調査方法毎の平均をみると インターネットを通じたオンライン調査の結果 は 残留が 40% 離脱が 41% と拮抗状態にあるのに対し 電話調査では残留が 47% 離脱 が 38% と残留

15 図表 1. 住宅投資 ( 季調値 指数 212 年 =) 14 図表 2. 住宅着工戸数と建設許可件数 ( 季調値年率 万戸 ) :1 13:1 14:1 15:1 16:1 17:1 18:18:2 18:3 ( 資料 )BEA

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

資料1

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める 40

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

金融政策決定会合における主な意見

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1. トピック : 米国金融政策と通商政策は 次の ステージへ 6 月 FOMC は 0.25% 利上げ フォワードガイダンスを大幅変更漸進的とは言え 利上げ一直線のみの方針に長期水準を超えるタイミングが 2020 年から 2019 年に 2019 年からは 毎回記者会見を実施今後の焦点は緩和的スタ

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

産業トピックス

為替相場展望2018年10月号

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

2019年の日本経済

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

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一部新興国市場が動揺 アルゼンチンは前四半期から経済危機に陥っていましたが トルコでは 6 月に再選された大統領が米国と対立したこと等を契機に 8 月に通貨が急落しました ブラジルや南アフリカ インドの通貨も下落が加速する局面が見られ 中国元も緩やかに値を下げました これまでのところ個別国の問題とい

タイトル

利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

マクロ インサイト FRB FRB 長期金利 FRB bp 図表 1 FRB と市場の金利予測の乖離 FOMC 予測 vs 市場予測 年末 年末 2.0 市場が

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 USHYファンドの分配金について IM pptx

経済学でわかる金融・証券市場の話③

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

○ユーロ

25_2

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

月例経済報告

為替相場展望2018年9月号

株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

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エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

平成14年1月20日

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ASEAN インド月報 (2017 年 3 月 ) 平成 29 年 (2017 年 )3 月 6 日 目次 ASEAN インドのマクロ経済動向 インドネシア 1 マレーシア 2 フィリピン 3 シンガポール 4 タイ 5 ベトナム 6 インド 7 その他のアジア主要国 地域の主要経済指標 ( 国 地

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Invesco Premia Plus Fund

Economic Indicators   定例経済指標レポート

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1 概 況

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月例経済報告

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

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経済情報:日銀短観(2011年6月)の結果について.doc

短期均衡(2) IS-LMモデル

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

○ユーロ

はじめに日銀は 1 月 29 日に マイナス金利付き量的 質的金融緩和 の導入を決定し 金融緩和の拡大に踏み切った これまで 量的 質的金融緩和 という異例の大規模緩和を 3 年近く続けたにも関わらず 日銀が政策目標とする物価上昇率は足元でゼロ % 近傍に止まっている 原油価格の大幅下落という想定外

目 次 第 1 章 中国経済の減速と世界経済 第 1 節 中国経済の減速と世界経済 1 下方修正の続く世界経済 2 意識される中国リスク 3 中国経済下振れの影響 第 2 節 安定成長を模索する中国経済 1 過剰投資 過剰生産 過剰信用の解消 2 中所得国の罠の回避 3 人口減少 高齢化 環境要因

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定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

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米労働市場は直近の回復基調に変化なし ~FRB出口政策への影響は限定的~

2017年上半期の為替相場展望

第45回中期経済予測 要旨

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Transcription:

平成 年 (8 年 ) 月 日 米国経済の見通し ~ この先の成長率は鈍化も 景気は堅調な拡大を続ける見通し ~. 米国経済の概況 7-9 月期の実質 GDP 成長率は前期比年率 +.% と 前期 ( 同 +.%) に続き高めの水準を維持した ( 第 図 ) GDP のおよそ 7 割を占める個人消費が同 +.% と強い伸びを続けて成長を牽引し 景気の基調は底堅いことが改めて確認された もっとも 輸出 ( 同.%) が対中向け輸出の駆け込みがあった前期からの反動等で減少するなど 各経済主体の行動が米中貿易摩擦に影響されている姿が見て取れるほか 金利上昇を背景に住宅投資 ( 同.%) のマイナスが続くなど この先の景気展開における懸念も示唆する内容といえる 実際 景気を先取りするといわれる株価動向をみると 月以降 金利上昇や米中貿易摩擦激化を嫌気して大きく下落する局面が続くなど景気減速を意識させる不安定な動きとなっている したがって 来年にかけての景気見通しにおいては 足元の懸念材料が来年に掛けて更に顕在化し 景気失速にまで繋がるのか あるいは緩やかな減速で踏み止まり 9 年 月を底に始まった今次景気回復局面が 9 年代の景気拡大期間最長記録 ( ヵ月 ) を超えて続くのかが一つの焦点となる この点 まず家計部門をみると 金利上昇に伴う住宅投資の停滞やそれに伴う一部耐久財消費の頭打ち感はみられるものの 後述の通りバランスシート調整を伴う大規模なものとなる兆候は乏しい むしろ 歴史的な水準にまで低下した失業率に代表されるような労働市場のタイト化や追加的に拡大する所得減税額 米中貿易戦争や株式市場の動揺にも関わらず強気を維持する消費者マインド等を勘案すると ( 第 図 ) 雇用 可処分所得 マインド面いずれからみても GDP の最大項目である個人消費は底堅く推移することが予想されよう 企業部門では エネルギー部門の投資活動回復に一服感がみられることに加え 法人減税のインパクトが薄れていくことから 設備投資や在庫投資に幾分のスピード調整が観察されるだろうが 先述の通り堅調な個人消費を背景に底堅い拡大が続くものとみられる 輸出については 対中貿易戦争の展開やその影響には十分留意が必要となるものの 海外経済と歩調を合わせ緩やかな増勢は維持し得よう したがって 景気は若干減速しつつも拡大基調を維持し 9 年 7 月には戦後最長の景気拡大期間の記録を更新する可能性が高い こうしたなか金融政策は 今暫く 正常化 の一環としての利上げが継続される見込みだが 既に FRB 内でも政策金利が景気に中立的な水準に接近していることは意識され始めており 来年半ばには利上げ局面が終了すると予想する リスク要因としては トランプ政権による通商政策が更に尖鋭化するなどして現時点では予期できぬマイナスの影響を内外経済にもたらす可能性のほか これまでの利上げの累積が前述の通商摩擦等何らかの外的ショックと相俟って民間部門の支出を抑制し 更には

脆弱なセクターを中心にバランスシート調整を招く懸念が挙げられる 前者は あまりに も非伝統的なトランプ政権の通商政策の波及効果が読み切れないことに伴うリスク 後者 は過去の景気後退において FRB による金融引き締めが先行するケースがほとんどであっ たという経験則に基づくリスク認識である - - - - - 第 図 : 需要項目別にみた実質 GDP の推移 ( 前期比年率 %) 個人消費住宅投資設備投資 在庫投資政府支出純輸出 実質 GDP - 7 8 9 ( 資料 ) 米国商務省統計等より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成 見通し 第 図 : 時間当たり平均賃金と失業率 消費者マインドの推移 ( 前年比 %) (%) 時間当たり平均賃金 ( 民間の全労働者 ) 左目盛 同 ( 民間の生産労働者 ) 左目盛 失業率 右目盛 ( 年平均 =) 消費者マインド 9 8 7 ( 年 ) 7 8 9 7 8 ( 年 ) ( 資料 ) 米国労働省 ミシガン大学統計より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成 8. 見通し上のキーポイント () 中間選挙後のトランプ政権の政策展望 月 日の中間選挙では 民主党が下院で過半数を獲得し 年ぶりにねじれ議会となった 異例なまでに注目度の高まる中間選挙となる中 投票率上昇が民主党にやや有利に作用した格好となったが 上院では共和党が過半数を維持したばかりか議席の上積みも実現したため トランプ政権に対し有権者が一定のブレーキをかけた とみるか トランプ政権への支持が根強いことが確認された とみるかは微妙なところであろう この先の経済政策への示唆を考えると 下院多数派が民主党になっても海外からみて最も関心の高い通商政策については概ね不変と考えられる そもそも 大統領は通商分野に関し議会の同意を要しない広範な権限を持っているとされており 民主党が共和党より自由貿易主義的というわけでもない 今回の中間選挙においては通商政策が全国レベルの争点になったわけでもなく トランプ政権からすると現在の通商政策が国民の 強い賛成 とまでは言えないにせよ 概ね 理解 を得たという程度の認識を固めたとしても不思議ではない 特に現在の米中摩擦激化の背景には 知的財産権保護や強制的な技術移転 ひいては米中間の地政学的な覇権を巡る争いが見え隠れしていることを鑑みれば 早期の摩擦解消は困難であろう 今後 トランプ大統領は中国からの輸入品全量に % の関税を賦課するまでに至る可能性があるが その場合は 中国の対抗措置による影響もあわせ 米国の経済成長率を.% ポイント程度押し下げ得る もっとも 政策対応という点でも インフラ投資等の財政刺激や金融緩和等政策総動員の様相を呈している中国と比べると 輸出依存度の低い米国にはまだ余裕があるとみるべきだろう

一方 議会の勢力図が大きく影響する財政政策については 追加減税など民主党が賛成しない政策の実現可能性は ねじれ議会となるなかで大きく低下した インフラ投資については トランプ大統領と民主党は拡大を目指す方針では一致しているものの 財政支出の金額規模や財源で大きな隔たりがある 結論的には 景気を明確に押し上げるような新たな財政政策は想定し難いとみるべきであろう () 注意を要する企業債務の拡大 FRB が利上げを続ける中 金融環境の緩和度合いは縮小しており 金利感応セクターにおける需要への直接的抑制効果のみならず 民間各部門のバランスシートへの影響にも目配りが必要である この点 部門別の債務残高対名目 GDP 比率をみると 金融危機の切っ掛けとなった家計部門の住宅ローンは危機前の水準を依然明確に下回っており 非金融法人部門を含めた民間部門全体として 著しい不均衡はみられない ( 第 図 ) 但し 非金融法人部門の中では 低格付け企業向けのレバレッジド ファイナンス ( ハイイールド社債とレバレッジド ローンの合計 ) の対名目 GDP 比率が危機前の水準を上回っており 高利回り志向の高まりや貸出競争の強まりから低信用度先へのファイナンスが拡大している様子が窺える ( 第 図 ) 特にレバレッジド ローンは - 月期に前年比 +.9% と高い伸びを続けており FRB も 月から公表を始めた 金融安定報告 ( 今後は年 回のペースで公表 ) にて 最近の高リスク融資拡大とその背景にある融資基準の劣化に言及している 利上げの累積的な影響で利払い負担の増加と景気の減速が同時進行し 低信用度先の経営が急速に悪化することになれば 金融機関財務に一定の悪影響を及ぼし クレジットサイクルの局面変化に繋がるリスクには留意する必要があろう 8 第 図 : 部門別にみた債務残高の推移 ( 名目 GDP 比 %) 民間非金融部門家計非金融企業 第 図 : 非金融企業部門のレバレッジド ファイナンス残高の推移 ( 名目 GDP 比 %) レバレッジド ファイナンス内 ハイイールド社債内 レバレッジド ローン 8 8 8 8 8 8 88 9 9 9 9 98 8 8( 年 ) ( 注 ) 網掛け部分は 景気後退期間 ( 資料 ) 米国商務省 FRB 統計より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成 7 8 9 7 8( 年 ) ( 注 ) 網掛け部分は 景気後退期間 ( 資料 ) 米国商務省統計 BIS 資料より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成. 金融政策と長期金利 景気 物価に中立的な政策金利水準が % 前後を目線として議論されているなか 現実 の政策金利 ( 現時点で FF 金利誘導目標は.~.%) はそれに近づいているとみられ

利上げ局面の終了が視野に入ってきている こうした中 FOMC 参加者は 利上げはデータ次第 とのスタンスをより強めている 物価が前年比 +% 前後で安定的に推移し上昇ペース加速の兆候はみられない一方で 住宅業者のマインドを示す NAHB 住宅市場指数は 月に大きく低下するなど住宅市場は軟化してきており ( 第 図 ) これまでの累積的な利上げ効果が徐々に景気に影響を及ぼしつつあることは確かであろう この先 景気がこれまでの高成長から徐々に減速するとみられる中で FRB は利上げ判断をより慎重化していくと考えられる 政策金利はこの先 回利上げが実施されたところで概ね中立金利に達したと判断され その後は当面様子見に転じるものと予想する ( 第 図 ) 市場参加者は既に. 回程度の追加利上げについて織り込み済みであることから 年物国債利回りについてもこの先の上昇は限られ % をやや上回る水準で頭打ちとなる公算が大きい - - - 8 第 図 : 個人消費支出 (PCE) デフレーターと住宅関連指標の推移 ( 前年比 %) ( 年 =) コア PCE デフレーター同 ( サービス ) 同 ( 財 ) NAHB 住宅市場指数 住宅着工件数 8 8( 年 ) ( 資料 ) 米国商務省 全米住宅建設業者協会統計より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成 7 (%) 第 図 : 米国の中立金利と FF 金利誘導目標 年物国債利回りの推移 中立金利 FF 金利誘導目標 年物国債利回り 見通し 7 8 9 7 8 9 ( 年 ) ( 注 ). 中立金利 は ニューヨーク連銀が公表する HLW モデルに基づく実質均衡金利の推計値に FRB が目標とするインフレ率 (.%) を加えたもの. 8 年 月以降の FF 金利誘導目標 は 誘導目標レンジの中央値 ( 資料 )FRB 商務省 ニューヨーク連銀資料より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成 ( 玉城重人 )

米国経済 金融見通し 見通し 7 8 9 ~ ~ 7~9 ~ ~ ~ 7~9 ~ ~ ~ 7~9 ~ 7 年 8 年 9 年. 実体経済実質 GDP( 前期比年率 %).8..8.....7...7.8..9. 個人消費.8.9..9..8......... 住宅投資..........8..... 設備投資 9. 7...8. 8.7..8......8. 在庫投資 ( 寄与度 ).8...9........... 政府支出.8.......9.7.....7.8 純輸出 ( 寄与度 )....9...9........7 輸出..... 9....8...... 輸入.8..8.8.. 9..9...8...7. 国内民間最終需要........7....... 名目 GDP( 前期比年率 %).9..8.. 7....7..9.8...8 鉱工業生産 ( 前期比年率 %)... 7.7...7..8..7.7... 失業率 (%).7.....9.8.7.7.....9. 生産者物価 ( 前年比 %)....8.8..9.......8. 消費者物価 ( 前年比 %)..9.............. 国際収支 貿易収支 ( 億ドル ),98,999,98,,8,,87,,9,7,,9 8,7 8,98 9,8 経常収支 ( 億ドル ),77,8,,,7,,,,,79,7,,9,87,877. 金融 FF レート誘導目標 (%).7-..-..-..-..-.7.7-..-..-..-.7.7-..7-..7-..-..-..7-. ヵ月物ユーロドル金利 (%).....9....7......9 年物国債利回り (%).....8.9.9.......9. ( 注 ) FF レート誘導目標 は 期末値 ヵ月物ユーロドル金利 と 年物国債利回り は 期中平均値 ( 資料 ) 各種統計 Bloomberg 等より三菱 UFJ 銀行経済調査室作成

照会先 : 三菱 UFJ 銀行経済調査室玉城重人 shigeto_tamaki@mufg.jp 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 金融商品の販売や投資など何らかの行動を勧誘するものではありません ご利用に関しては すべてお客様御自身でご判断下さいますよう 宜しくお願い申し上げます 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが 当室はその正確性を保証するものではありません 内容は予告なしに変更することがありますので 予めご了承下さい また 当資料は著作物であり 著作権法により保護されております 全文または一部を転載する場合は出所を明記してください また 当資料全文は 弊行ホームページでもご覧いただけます