2. 東日本大震災による東日本の港湾物流への影響東日本大震災の被災地では港湾施設や飼料等の保管場所が被災し 物流網の停滞したことから 品不足が顕著となった 東北 6 県では畜産業のために月間約 35 万トンの配合飼料が必要だが 釜石港 ( 岩手県 ) や石巻港 ( 宮城県 ) 等が被災してトウモロコ

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を誘発すると共に 家屋等の災害廃棄物とともに港内外水域に漂流 沈没することとなり 航路や泊地等の水域施設が使用不可能な状況となった また 押し波 引き波により 航路や泊地等の水域施設において 洗掘あるいは埋没が発生し 洗掘された箇所では 防波堤の転倒等が誘発され 埋没した箇所では 計画水深の確保のた

日本海側拠点港の対象 < 対象港湾 > 日本海側に存在する国際拠点港湾及び重要港湾 26 港 < 対象機能 > 1. 輸送モード 国際海上コンテナ 国際フェリー 国際 RORO 船 外航クルーズ( 定点クルーズ 背後観光地クルーズ ) 国際定期旅客 2. 貨物 原木 その他の貨物 資料 : 国土交通

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<4D F736F F D D91926E95FB82CC8D C982A882AF82E9926E906B92C CE8DF482CC95EF8A8795FB906A816995BD90AC E348C8E816A2E646F6378>

目次 1. 大阪港の概要 1 大阪港の概要 大阪港の位置 大阪港の取扱貨物量 外貿コンテナ貨物の取扱状況 大阪港の再編計画 2. 対象事業の概要 5 整備目的 事業の主な経緯 整備対象施設の概要 事後評価に至る経緯 3. 費用対効果分析 7 便益項目の抽出 需要の推計 便益計測 荷主の輸送コストの削

東日本大震災が世界の製造業に及ぼした影響 例 : 自動車生産 欧州 日本製部品の供給不足による自動車生産低下 日本 震災による基幹部品の供給の停滞 北米 日本製部品の供給不足による自動車生産低下 アジア 日本製部品の供給不足による自動車生産や部品製造の停滞 35

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目次 1. 事業概要 (1) 新潟港の概要 1 (2) 事業の目的 2 (3) 整備内容 3 2. 事業の効果の発現状況 (1) 便益の抽出 4 (2) 便益計測の考え方 5 (3) その他の効果 8 (4) 費用便益分析結果 9 3. 社会経済情勢の変化 事後評価結果 対応

Taro-資料 1.jtd

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目次 1. 事業の概要 1 (1) 事業の目的 1 (2) 事業の経緯 5 (3) 事業の概要 6 2. 投資額及び整備期間 7 (1) 投資額 ( 事業費 ) 7 (2) コスト縮減結果 7 (3) 整備期間 7 3. 事業の必要性等 8 (1) 本整備事業による効果 8 (2) 定量的な効果 9

外航コンテナの国内フィーダ輸送実績(20年度報告)

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大規模震災発生に備えたサプライチェーンの構築を目指して 別紙 -3 浅見尚史 2 齋藤輝彦 1 舟川幸治 1 1 渡邉理之 1 港湾空港部港湾物流企画室 ( 新潟市中央区美咲町 1-1-1). 2 国土交通省港湾局技術企画課 ( 千代田区霞が関 2-1-3) 東日


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トラックドライバー不足が東北地域の物流に及ぼす影響の検討 資料(案)

政府による緊急物資等の輸送実績 震災後 トラック 鉄道 海運 航空の各モードにより 緊急物資等の輸送を実施 食料品 トラック 鉄道 海運 航空 累計 累計 累計 累計 1,897.7 万食 コ 118 個 飲料水 万本 コ 114 個 毛布 45.8 万枚 コ 33 個 燃料油 177,

Microsoft PowerPoint 資料2-2 横須賀港(修正2).ppt

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

東南アジア航路 韓中航路 日韓航路等において スペース交換 航路の合理化 新航路の共同開設などについて加盟船社同士が協調することで 競争力の回復を図ることを目的としている KSP は 2017 年 11 月の第 1 弾では東南アジア航路で 3 隻 釜山 - 博多 門司航路で 4 隻の撤退 2018

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東北地方太平洋沖地震への 気象庁の対応について ( 報告 ) 気象業務の評価に関する懇談会 平成 23 年 5 月 31 日 気象庁 1

平成 20 年 12 いばらきの港の概要 茨城港 (Ibaraki Port) 港 常陸那珂港 洗港を統合し 港区 (HitachiDistrict) 茨城港がスタート 茨城港 完成 動 バラ貨物等の多様な物流 需要に対応する港 常陸那珂港区 (Hitachinaka District) 島港 北関

調査の目的 概要 1. 調査の目的 南海トラフ巨大地震の発生時にも円滑に支援物資輸送を行うため 中国 四国 九州地域における広域連携を通じ 鉄道 海運 ( 船舶 ) トラックなど多様な輸送モードの活用による支援物資物流システムの構築を目的として行ったもの 国 ( 中国 四国 九州の各運輸局 ) が主

数値目標 事業開始前 ( 現時点 ) 平成 28 年度 (1 年目 ) 平成 29 年度 (2 年目 ) 平成 30 年度 (3 年目 ) 港湾取扱貨物量 556 万トン 4 万トン 0 万トン 20 万トン 観光入込客数 2,899.4 万人回 -9.5 万人回 1.9 万人回 1.9 万人回 7

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Microsoft Word - ①外航コンテナフィーダ輸送実績(24年度報告)★

Taro-【資料-5】①中表紙

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東日本大震災現地調査報告書

国土技術政策総合研究所資料 No 年 3 月 (YSK-N-385) 港湾 海岸の施設及び地域の状況からみた 東日本大震災からの復旧 復興状況の整理 岡本修 * 要 旨 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波によって, 東北地方から関東地

重点項目表紙

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平成27年度 北陸地域国際戦略チーム 幹事会 現代版北前船航路の形成に向けて

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近畿地方の港湾における 地震 津波対策の基本方針 平成 24 年 11 月 19 日 近畿地方の港湾における地震 津波対策検討会議

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3. 水供給システム ( 図 7~ 図 8) 3.1 根拠データ 断水戸数: 厚生労働省 平成 年 (2 年 ) 東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について の中に記載された ( 別紙 ) 水道における被害情報 の市町村別集計データおよび都県別集計データ 2/3/ :3( 報番号不明 水道産業新

心に供給量が減少した. 我が国における製油所は図 -1 のように太平洋側を中心に配置され, 今回の震災による製油所の稼働停止により, 全国の精製能力 (4,516 千 BD) の約 30% にあたる 1,398 千 BD の生産能力が一時的に失われた 2). 単位 : バレル / 日 帝石ト ( 頸

課題と対応

資料 2-2(1) 小樽港本港地区 臨港道路整備事業 再評価原案準備書説明資料 平成 21 年度北海道開発局

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

常陸那珂港区に新たな 国際フィーダーサービスが開始されました 常陸那珂港区において 7月1日 日 に新たな国際フィーダーサービスが開始されました このサービスは 世界最大のコンテナ運航会社であるマースクラインによる国際フィーダー サービスで 現在就航している井本商運 のフィーダー船を利用し 常陸那珂

[ 参考 ] 地震以降の神戸発着の旅客 フェリーの輸送実績では 既存航路について 高速船やフェリーの発着港シフト 神戸抜港などがあった [ 神戸港復興記録 ~ 阪神 淡路大震災を乗り越えて ~ 神戸市港湾整備局 (1997/5),p.65] 04) 海外では 船会社が神戸港向け ( 神戸港経由を含む

東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業の実地調査について

PowerPoint プレゼンテーション

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目 次 1. 事業の目的 概要 1 2. 事業目的の達成状況 5 3. 今後の事業へ活かすレッスン 8 4. まとめ 9

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議案内容:新潟港港湾計画の改訂について

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茨城港 ( 日立港区 ) の全景 ひ たち 日立港区 茨城港日立港区 茨城県 水戸 常陸那珂港区 大洗港区 計画変更箇所 がいこう 外港地区 第 5 ふ頭地区 ひたちなか 常陸那珂港区 第 3 ふ頭地区 久慈漁港 第 1 ふ頭地区 第 2 ふ頭地区 久慈川 第 4 ふ頭地区 JR 常磐線 H26.3

目 次 1. 事業の概要 1 2. 事業の進捗状況 7 3. 事業の評価 事業の見込み等 関連自治体等の意見 今後の対応方針 ( 原案 ) 15

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資料 4 H24 北陸地域国際物流戦略チーム幹事会 日本海側拠点港における取り組み状況 金沢港 七尾港 平成 25 年 3 月 8 日 石川県

01-1_添書(日付入)

過去に経験のない規模の巨大地震 津波が発生 東日本大震災の概要 死者 行方不明者数 死者 15,355 名 行方不明者 8,281 名 (6 月 4 日現在 警察庁調べ ) 建築物被害 ( 住家 ) 全壊 10 万 9,147 棟 半壊 6 万 9,789 棟 一部破損 31 万 7,710 棟 全


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1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

このたび、6月○日付けで北海道港湾協会の会長に就任いたしました釧路市長の「伊藤良孝」でございます

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

Microsoft Word - 1.1_kion_4th_newcolor.doc

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

22 1 函館港 4 月 25 日 12:00 4 月 25 日 横 / 釜山 / 境港 / 金沢 / 函館 / 青森 / 横 きらめく春の周遊クルーズと韓国 月 27 日 4 月 27 日 フォーレンダム 横 / 函館 / 釧路コディアック / グレー 61,214GT シャーベイ

資料 3-1 国際コンテナ戦略港湾政策について 平成 30 年 11 月 6 日関税 外国為替等審議会関税分科会国土交通省港湾局

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

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津波情報に活用する観測地点の追加について 別紙 津波情報への活用を開始する海底津波計の分布図 活用を開始する海底津波計沿岸の津波観測点 GPS 波浪計海底津波計 活用を開始する海底津波計の地点名称は 沖 を省略して記載しています ( 宮城牡鹿沖 及び 茨城神栖沖 を除く)

1. 調査目的 東日本大震災の影響に関するアンケート調査結果 3 月 11 日に発生した東日本大震災により 東北経済連合会会員企業も大きな影響を受けまし た 会員企業の被災状況を把握し 今後の経済活動の展望 および支援活動に資するためアンケ ート調査を行ないました 2. 調査期間平成 23 年 7

平成 27 年共同研究の成果について ポイント 以下 1~3 については 平成 27 年 7 月 ~11 月の動向です 1 北極海航路を横断した船舶の航行数 北極海航路( ロシア側 ) を横断した船舶は24 航行 ( 前年は31 航行 ) 前年の航行数はノルウェーの研究機関 CHNLの分析結果 2

Microsoft PowerPoint - 平成23年度ANET取組2

(3) 技術開発項目 長周期波の解明と対策 沿岸 漁場の高度利用 ライフサイクルコストに基づく施設整備と診断技術 自然災害( 流氷 地震 津波など ) に強いみなとづくり 等 30 項目 技術開発項目として 30 項目の中から 今後 特に重点的 積極的に取り組んでいく必要のある技術開発項目として 1

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東日本大震災 鳴らされていた警鐘

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度 わが国は エネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し 衣食住の面で欠くことのでき ない多くの資源を輸入に頼っている わが国海運は こうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている 石 炭 100% 原 油 99.6% 天然ガ

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港湾法施行令第 17 条の 9 の規定に基づく実地監査結果 ( 四国地方整備局 ) ( 平成 28 年 4 月 30 日現在 ) 平成 23 年度実地監査分 徳島小松島港 高松港 港湾名港湾管理者名施設名 徳島県 香川県 是正を要する事項 内容処理方針 津田地区防波堤 ( 内 ) 渡板が泊地分離堤に

Microsoft Word - 復旧方針

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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

Microsoft Word doc

別紙 Ⅰ 対象事業の概要環境影響評価法 ( 平成 9 年法律第 81 号 以下 法 という ) 第 15 条に基づき 事業者である国土交通省関東地方整備局及び横浜市から 平成 30 年 6 月 22 日に送付のあった環境影響評価準備書 ( 以下 準備書 という ) の概要は次のとおりである 1 事業

Microsoft Word - ②千葉港長期構想1~2-1

Microsoft PowerPoint セミナー資料 抜粋.pptx

別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

( 鉱工業 ) 自動車 : 震災により東北地域の自動車部品メーカーが被害を受け 自動車生産は全国で縮小 停止していたが 現在 生産可能な車種から 操業スピードを調整しつつ再開する等の動きが出てきている 当面は 部品供給の状況にあわせた生産が行われる見通し (4 電気機械 ( 半導体 電子部品等 ):

平成23年東北地方太平洋沖地震の概要について

(3) 設備復旧対策事例 ~ 基地局及びエントランス回線通信事業者各社で取り組んだ主な基地局あるいはネットワーク設備復旧対策としては 光ファイバー 衛星回線 無線 ( マイクロ ) 回線の活用による伝送路の復旧や 山頂などへの大ゾーン方式 ( 複数の基地局によるサービスエリアを1つの大きなゾーンとし

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目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

Transcription:

別紙 2 平成 23 年度 東日本大震災における港湾物流への影響を踏まえた対策の検討 港湾空港部港湾計画課 大西里奈山下香川俣満 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災では 東日本太平洋側の港湾が被災し 定期船の欠航や本来寄港する船が寄港せず 次の港に行ってしまうといった現象 ( 抜港 ) 日本海側の港湾を活用した代替輸送等が発生した 本報では 東日本大震災による東日本の港湾物流の変化を調査し その変化が北海道 ~ 本州間の物流に及ぼした影響を分析する また その結果を用いて 北海道において大規模地震が発生した場合に備えるために必要な対策の検討 提案を行う キーワード : 防災 港湾物流 耐震強化岸壁 1. はじめに東日本大震災は 平成 23 年 3 月 11 日 14 時 46 分に三陸沖 ( 北緯 38.1 度 東経 142.9 度 牡鹿半島の東南東 130km 付近 ) を震源として発生した マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震とその余震により引き起こされた災害である この震災により 宮城県北部で震度 7 大船渡港で9.5mの津波が観測され 死者 行方不明者は全国で1 万 9 千人を超えた ( 平成 23 年 12 月 27 日時点 ) 物的 人的に大きな被害をもたらしたこの未曾有の自然災害は 日本の産業活動に大きな打撃を与えた 産業への影響は被災地だけにとどまらず 沿岸の工場が被災し 部品の供給等が滞ったことにより 被災地以外に立地する工場も操業停止を余儀なくされた また 図 -1に示すように 太平洋側の港湾が甚大な被害を受ける等 交通インフラが被災したことによる物流網の麻痺は 平常時の物流を大きく変化させた 本報では 北海道 ~ 本州間の物流 ( 本北物流 ) の要となる港湾物流に着目し 東日本大震災による東日本の港湾物流の変化を調査し その変化が本北物流に及ぼした影響を分析する また その結果を用いて 北海道においての大規模地震が発生した場合に備えるために必要な対策の検討 提案を行う 国際拠点港湾重要港湾 津波高は港内の代表的地点の値 また 気象庁の公表資料 海岸工学委員会の調査結果及び日本津波被害総覧 (1985) より国土交通省港湾局作成 震度 4 津波高 2.5m 防波堤( 東 ) 港内側消波 被覆フ ロック沈下 検潮所破損及び計測機器全壊 苫小牧 震度 4 津波高 2.4m 函館室蘭 ともえ大橋基部の洗堀 側道の縁石 ガードレー ル破損等軽微な被害 むつ小川原 震度 6 強津波高 7.2m エプロンの沈下 ガントリークレーン損傷 八戸 これにより 外貿コンテナ航路及び内貿フィー 久慈 ダー航路の就航が困難な事態となり 物流機能 に支障が発生 ( 東北港湾のコンテナ取扱量の約 宮古 6 割を占める ) 釜石 震度 6 弱津波高 7.7m 大船渡 仙台塩釜 石巻 相馬 震度 6 弱津波高 8.9m 沖防波堤約 9 割 (159 函 ) のケーソンが滑動 傾斜 転倒 係留施設の倒壊 荷役機械の倒壊 これにより 港内の静穏度が確保されず また係留施設の倒壊などで貨物を取り扱えるバースも少なく物流機能に支障が発生 小名浜茨城鹿島 出典 : 交通政策審議会第 41 回港湾分科会資料を基に作成 震度 4 津波高 2.8m 航路埋没 検潮所破損 計測機器全壊 十勝 釧路 震度 4 津波高 2.1m ドルフィン岸壁の舗装破損 SOLAS フェンス倒壊 震度 5 強津波高 6.2m 北防波堤約 1.5 kmのケーソンが転倒 水没 エプロンの陥没 航路 泊地の埋没 港内の静穏度確保が出来ず またフェリー RORO 等の就航が困難な事態となり 主要貨物の飼料の物流機能にも支障が発生 震度 6 弱津波高 8.1m 港口防波堤の北堤 990m ほぼ全壊 南堤 670m 半壊し 港内静穏度が確保できない状況 コンテナ荷役機械が浸水により機能不全 震度 6 弱津波高 9.5m 港口防波堤がほぼ全壊し港内静穏度が確保できない状況 コンテナヤードやリーファーの電源施設が浸水により機能不全 防波堤の沈下 エプロンの沈下 隆起 航路 泊地埋没により 主要貨物の石炭や原木等の物流機能に支障が発生 日立港区 震度 6 強津波高 4.2m 岸壁 護岸の損壊 液状化によるエプロン沈下 航路 泊地埋没 機械設備の損壊等により 国内物流機能 ( 日立 ~ 釧路航路等 ) に支障が発生 常陸那珂港区 震度 6 弱津波高未調査 岸壁の沈下やはらみ出し 液状化によるエプロン沈下と臨港道路と陥没 荷役機械の損壊等により 国内外の物流機能 ( 常陸那珂 ~ 苫小牧航路等 ) に支障が発生 大洗港区 震度 5 強津波高 4.2m 岸壁 物揚場の損壊 液状化による陥没 航路 泊地埋没 フェリーターミナルビルの浸水等により フェリー輸送による物流機能に支障が発生 図 -1 東日本大震災による主な港湾被害

2. 東日本大震災による東日本の港湾物流への影響東日本大震災の被災地では港湾施設や飼料等の保管場所が被災し 物流網の停滞したことから 品不足が顕著となった 東北 6 県では畜産業のために月間約 35 万トンの配合飼料が必要だが 釜石港 ( 岩手県 ) や石巻港 ( 宮城県 ) 等が被災してトウモロコシ等の原料供給が滞ったことにより 飼料不足で家畜が痩せる等の被害が出た 1) また 東北地方太平洋沿岸の港湾に寄港する定期航路については 休止又は当該港湾を抜港して運航することを余議なくされた これにより津波被害を免れ 生産機能を維持した企業も代替輸送を余儀なくされ 輸送コストが増加した 2) 東日本大震災時の内貿貨物量の変化を調査するため 東北地方における港湾統計による貨物量 (2010 年 ) と 東北地方整備局による港湾管理者へのヒアリング結果に基づく貨物量 (2011 年 ) を比較すると 東北地方管内の港湾取扱貨物量の全体 (1) は 3 月で対前年比約 18% 減 (1ヶ月換算では約 3 割減 ) 4 月で対前年比約 4% 減となっていることが分かった 3 月 1 日から3 月 10 日までの貨物量が前年度程度と仮定すると 3 月 11 日から3 月 31 日までの21 日間 (3 週間 ) は震災の影響を受けたが 4 月には前年度と同程度まで回復していることが読み取れる 一方 3 月と4 月の各港湾における取扱貨物量の前年比を見ると 2ヶ月とも日本海側港湾の取扱貨物量が増加し 太平洋側が減少している 4 月には貨物量が回復した要因として 石油元売り各社や全国農業組合等が秋田港 酒田港等の日本海側から被災地への出荷を進めた 1)3) 結果 代替輸送ルートが確保されたことが考えられる また 北海道では 平常時にフェリー航路がある3 港湾 ( 苫小牧港 函館港 小樽港 ) の3 月と4 月のトラック台数割合が対前年比で 苫小牧港では減少し 函館港と小樽港では増加していた ( 図 -2 参照 ) これは苫小牧港を就航していたが 震災後に利用できなくなったことにより 道内を発着する貨物が航 万台 図 -2 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 20% 21% 1% 1% 79% 78% 18% 1% 39% 16% 19% 2% 32% 14% 81% 45% 79% 53% H22 H23 H22 H23 H22 H23 2 月 3 月 4 月 函館 小樽 苫小牧 東日本大震災による各港のフェリー輸送によるトラック台数の変化 路のある函館港 小樽港に流入したためと推定される この流入により 3 月半ばには函館港では 函館 ~ 青森間のフェリーに乗船するためのキャンセル待ちのトラックが500 台を超え 運転手が丸 1 日以上キャンセル待ちをする 4) 等の問題が発生した 3. 北海道 ~ 本州間の物流に及ぼした影響周囲を海に囲まれた北海道においては海上輸送が重要であり 平常時の本北物流は約 9 割を海運が 残りの約 1 割を鉄道と航空が担っている 海運のうちの約 8 割はフェリー RORO 船及び内貿コンテナ船による内貿ユニットロード輸送であり その太宗を定期航路 18 航路 236 便 / 週に及ぶフェリーとRORO 船が占めている ( 図 -3 参照 ) ここでは 本北物流において 重要な役割を果たしているフェリー航路 RORO 船航路について 東日本大震災時の影響を述べる 新潟 函館 青森八戸 仙台 常陸那珂 東京川崎 秋田 日立 小樽苫小牧 大間 大洗 まず フェリー航路では 日本海側のフェリー航路が1 週間以内に運航を再開したが が通常運航を再開するまでには3ヶ月以上を要した では 代替港を利用したり 被災港を抜港することで一部区間の運航をしていたが そのような震災時対応の運航を行うにも11 日 ~14 日を要した ( 表 -1 参照 ) 一方 RORO 船航路では 日本海側 共に被災港を経由しない航路は震災日翌日から運航を再開し 東北を経由する航路 ( 太平洋側のみ就航 ) は被災港を抜港して翌日から運航を再開したが 通常運航 釧路 フェリー航路 RORO 船航路 図 -3 北海道の内航定期航路 出典 :2011 版海上定期便ガイド 各船社 HP

表 -1 本州 北海道間のフェリー航路の再開状況 航路 ( 運航船社 ) 震災前現状その他 函館 ~ 青森 ( 津軽海峡フェリー 共栄運輸 北日本海運 ) 週 112 便 3 月 12 日 ~ 運航再開日本海側航路 函館 ~ 大間 ( 津軽海峡フェリー ) 週 14 便 3 月 17 日 ~ 運航再開 ( 震災時フェリー定期修理中 ) 日本海側航路 小樽 ~ 舞鶴 ( 新日本海フェリー ) 週 7 便通常運航 ( 震災の影響なし ) 日本海側航路 小樽 ~ 新潟 ( 新日本海フェリー ) 週 6 便 3 月 17 日 ~ 運航再開 ( 震災時冬季運休中 ) 日本海側航路 苫小牧 ~ 敦賀 週 7 便 3 月 14 日 ~ 運航再開 (12 日 13 日緊急人員 車両 物 日本海側航路 ( 新日本海フェリー ) 資等を輸送 ) 苫小牧 ~ 秋田 ~ 新潟 ~ 敦賀 ( 新日本海フェリー ) 週 5 便 3 月 14 日 ~ 運航再開 (12 日 13 日緊急人員 車両 物資等を輸送 ) 日本海側航路 苫小牧 ~ 仙台塩釜 ~ 名古屋 ( 太平洋フェリー ) 週 7 便 3 月 23 日 ~ 名古屋間で運航再開 ( 貨物輸送のみ 仙台スキッフ ) 3 月 24 日 ~ 仙台間で運航再開 ( 貨物輸送のみ ) 4 月 28 日 ~ 仙台間で旅客運航再開 5 月 26 日 ~ 名古屋間で旅客運航再開 6 月 5 日 ~ 通常運航再開 苫小牧 ~ 八戸 週 28 便 3 月 22 日 ~ 八戸港から青森港に変更して運航再開 ( 川崎近海汽船 ) (24 日まで 2 往復 / 日 25 日から 4 往復 / 日 ) 7 月 10 日 ~ 通常運航再開 苫小牧 ~ 大洗 週 12 便 3 月 25 日 ~ 大洗港から東京港に変更し運航再開 ( 商船三井フェリー ) ( 貨物輸送のみ 8 便 / 週 3 月中は 4 便 / 週 ) 6 月 6 日 ~ 通常運航再開 7 月 10 日全航路通常運航再開出典 : 国土交通省北海道局調べ を再開するには1ヶ月以上が必要であった ( 表 -2 参照 ) 今回の震災で 船会社は平常時に寄港している港湾から近く 現在は航路がないものの 元々航路があった港湾や 港運免許を持っている兄弟会社がある港湾を代替港として利用していた 船社等へのヒアリングによれば フェリーやRORO 船を 既存航路にない港湾に入港させる場合には フェリーやRORO 船が施設に適合するか ( ランプウェイを下ろせるか シャーシ置場を確保できるか等 ) 港湾運送事業者の手配等が可能か 許可を受ける期間が取れるか ( 海上運送法に基づき フェリーは30 日前までに許可申請書類の提出 RORO 船は10 日前までの申請が必要 ) といった検討が必要であり 震災後すぐに代替港を利用するという判断ができないことが判明した 船社が代替港を利用するためには上記のような条件が必要となり 安全対策等様々な確認が必要で 国土交通大臣の許可が必要なフェリーに比べ 手続きが申請のみのRORO 船の運航再開は早い 表 -2 本州 北海道間の RORO 船航路の再開状況 航 路 ( 運航船社 ) 震災前 現 状 その他 苫小牧 ~ 敦賀 ( 近海郵船物流 ) 週 6 便 3 月 12 日 ~ 運航再開 日本海側航路 苫小牧 ~ 常陸那珂 週 14 便 3 月 23 日 ~ 常陸那珂から川崎に変更して運航 ( 川崎近海汽船 近海郵船物流 ) 再開 (3 隻体制で 1 日 1 便運航 ) 4 月 5 日 ~ 常陸那珂航路運航再開 ( 追加 ) (1 隻で 3 便 / 週で運航再開 ) 5 月 17 日 ~ 通常運航再開 苫小牧 ~ 東京 ( 栗林商船 ) 週 2 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 苫小牧 ~ 八戸 ~ 川崎 ( プリンス海運 ) 週 2 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 ( 八戸スキップ運航 ) 5 月 19 日 ~ 通常運航再開 苫小牧 ~ 仙台塩釜 ~ 名古屋 ~ 仙台塩釜 週 4.5 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 ( 仙台塩釜スキップ運航 ) ( フジトランスコーポレーション ) 4 月 16 日 ~ 通常運航再開 苫小牧 ~ 八戸 ~ 名古屋 ~ 仙台塩釜 週 1.5 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 ( 仙台塩釜スキップ運航 ) ( フジトランスコーポレーション ) 4 月 16 日 ~ 通常運航再開 苫小牧 ~ 釧路 ~ 仙台塩釜 ~ 東京 ~ 大阪 ~ 名古屋 ~ 仙台塩釜 ( 栗林商船 ) 週 1 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 ( 仙台塩釜スキップ運航 ) 苫小牧 ~ 釧路 ~ 仙台塩釜 ~ 東京 ~ 大阪 週 2 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 ( 仙台塩釜スキップ運航 ) ~ 東京 ~ 仙台塩釜 ( 栗林商船 ) 苫小牧 ~ 釧路 ~ 仙台塩釜 ~ 東京 ~ 名古 週 1 便 3 月 13 日 ~ 運航再開 ( 仙台塩釜スキップ運航 ) 屋 ~ 東京 ~ 仙台塩釜 ( 栗林商船 ) 釧路 ~ 日立 ( 川崎近海汽船 ) 週 7 便 3 月 17 日 ~ 日立から東京に変更して運航再開 (2 往復 /3 日で運航再開 ) 5 月 24 日 ~ 通常運航再開 5 月 24 日全航路通常運航再開出典 : 国土交通省北海道局調べ (1) ハード対策東日本大震災の際には 茨城港 ( 常陸那珂港区 ) 等において 隣接する岸壁が大きく損壊したにもかかわらず 耐震強化岸壁本体はほとんど無傷であり 港湾の早期利用を可能とした 5) また 船社へのヒアリングでは 代替港を利用するよりも 多少の不便があっても平常時利用している港湾の方が利用しやすいとの回答を得た このことから 被災後でも早期に航路を再開できるように ハード面の対策として耐震強化岸壁の整備を進めることが重要であると考えられる 北海道内を見ると 耐震強化岸壁 26バースが計画されており そのうち11バースの整備が完了している ( 図 -4 参照 ) しかし 現在の耐震強化岸壁の必要バース数は緊急物資の輸送に対応することに主眼が置かれており 産業活動を継続させる為に必要な物流を確保するという観点から見ると 充分な位置づけがなされているとは言い難い では 北海道において産業活動を継続させる為に必要な物流を確保するためには どのような考え方に基 4. 北海道における大規模地震への対策北海道において 東日本大震災のような大規模な震災が発生した場合に 産業活動を維持させるためには フェリー及びRORO 輸送を継続させることが肝要となる これは バルク貨物は1 度の輸送で大量の貨物を運ぶため 1ヶ月 ~2ヶ月程度仕入れをしなくても出荷可能な程度の十分なストックがあること 内貿ユニット貨物は沿岸部に保管場所がないのため貯蔵や在庫を抱えておくことが難しいこと等による このため本報では フェリー及びRORO 船を災害時においても継続させるために 特に 大規模地震が発生した場合に必要な対策をハード面とソフト面に分けて検討する 奥尻港 江差港 香深港 沓形港 天売港 稚内港 焼尻港 羽幌港 留萌港 紋別港 網走港 霧多布港 根室港 石狩湾新港天売港 小樽港 釧路港 苫小牧港 十勝港 室蘭港 計画施設 : 21 港 (26バース) 整備済 : 11 港 (11バース) 整備中 : 5 港 ( 5バース ) えりも港 未整備 : 6 港 (10バース) 整備済 整備中 未整備の合計は22 港と なるが 苫小牧の重複があるため計画施設 は21 港とする 函館港 注 ) 苫小牧港の について 耐震岸壁配置状況 ( 平成 23 年 11 月現在 ) H24.8ガントリークレーン設置予定 図 -4 北海道の耐震強化岸壁整備の進捗状況

づき 耐震強化岸壁の必要数を検討すれば良いのだろうか 本稿では以下のa)~c) の想定に基づき耐震強化岸壁の検討を行うことを 提案する a) 震災時の取扱貨物量の想定震災の影響を受ける地域の震災時の取扱貨物量は 背後圏の被災状況により左右される 企業の建物被害の状況 耐震化及びBCP( 事業継続計画 ) 策定の有無により 企業活動の継続が可能である場合や道路等の利用が可能である場合には 貨物の集中 発生が考えられるが 継続が難しい場合には取扱貨物量は抑制される b) 被災していない港湾で代替可能な取扱貨物量の想定東日本大震災の港湾貨物取扱量の推移から 震災発生 3 週間後には代替ルートが機能を果たすと推定されるが 震災発生直後にフェリーやRORO 船が通常の航路にない港湾を利用することは難しいため 既存航路による輸送を確保する必要がある よって 北海道で大規模な地震が発生すれば 既存航路にある港湾 ( 苫小牧港 函館港 小樽港 釧路港 ) のうち 被災していない港湾を代替港として利用されることとなる 東日本大震災の際には 図 -2で示すように 太平洋側に位置する苫小牧港のトラック台数が減少し 日本海側に位置する函館港 小樽港のトラック台数が増加していた 以上より 平常時に利用している港湾が被災した場合 多くの荷主は他港湾に就航するフェリーとRORO 船の船腹の空きに 被災港の取扱貨物を積載すると想定される ただし 平常時から航路を持ち 速やかに航路変更できるものは航路ごと他港に変更すると考えられる c) 被災港に必要な耐震強化岸壁の算定震災時の取扱貨物量のうち 被災していない港湾でカバーすることのできないものは被災港で取扱わなければならない貨物量となる この貨物量を取扱うために必要な耐震強化岸壁を 被災港の港湾施設の能力と照らし合わせ 設定する 上記の想定に基づき検討した場合 既存航路のある港湾のうち 苫小牧港は道内港湾のフェリー及びRORO 貨物量の約 6 割を占めており その取扱貨物量が圧倒的に多いために 他港を利用したとしても必要量を輸送することは不可能と推定される このため 大規模地震が発生した場合には 苫小牧港の早期回復が必要であり 苫小牧港そのものの耐震性の向上が北海道経済の停滞を防ぐためには不可欠である 現在 東日本大震災を受けた災害対策の見直しが行われており 今後 想定地震の設定や耐震化率 BCP の策定等を精査し 震災時の取扱貨物を算出する必要がある また 1つの港湾のみの被害ではなく 太平洋側の港湾が全て被災するといった広域的な被害があった場合も想定した検討が必要となる (2) ソフト対策サプライチェーンを維持するためには本北間の輸送を停滞させないことが重要であり そのためには 企業が自社の貨物の輸送ルートを確保することが必要である 船社は 平常時に利用している港湾が利用できない場合 代替港を利用する 代替港の選定には 自社の所有する船舶が当該岸壁に着岸できるか判断するための情報 ( 岸壁水深 岸壁延長 防舷材の位置 形状等 ) や 荷役が可能か判断するための情報 ( 港湾荷役請負業者確保の可否 シャーシ置場の広さ等 ) が必要となる これらの情報は災害発生前から入手し BCP 策定等により代替港の優先順位を決定しておくことが必要である 一方で 災害発生後の情報収集として 被災状況の把握は不可欠な事項である このため 災害時に速やかに輸送ルートを確保するためには 企業が主体となり災害発生前に優先順位を決定したBCP 策定することに加えて 行政が主体となり災害発生後に正確な情報発信を行うことが必要である 災害発生後に正確な情報発信を行うためには 災害発生時の混乱にも対応できるよう 災害発生前に詳細な計画を策定することが必要であり 誰が どのような経路で情報収集を行い どの組織が主体となって どのような形で情報発信を行うのか明確に整理し ( 図 -5 参照 ) 策定した計画を港湾利用者に周知する必要がある また 情報の発信に際しては ホームページへの掲載等 オープンできる媒体を用いることで 一部の港湾利用者にのみ情報が流通する等の利用者間の情報の不平等が起こらないように充分に留意する必要がある 現在 道央圏港湾 ( 室蘭港 苫小牧港 小樽港 石狩湾新港 白老港 ) は 道央圏港湾連携による防災機能強化方策検討会 において 災害時においても 道央圏港湾が総体として継続的な物流機能を確保 発揮することを目的として 迅速かつ柔軟に対応でき 実効性のある連携方策を検討している 今後は北海道全体でも同様の検討を行い 大規模地震発生時における対応について具体的な調整を進めることが望まれる

被災港ユーザー 代替判断 港湾利用事業者 非被災港ユーザー 代替情報照会 情報発信 ( 報道 HP) 代替情報照会 連携本部 ( 北海道開発局 ) 被災状況回復見込み 港湾リエゾン被災港港湾管理者 関係情報 代替可能情報 非被災港港湾管理者 被災状況確認被災状況報告被災港民間施設所有者 支援機関 施設状況確認施設状況報告非被災港民間施設所有者 港湾関係者による主な情報収集伝達の流れ 港湾利用事業者からの 照会 図 -5 関係者間の情報共有 提供体制イメージ 5. おわりに東日本大震災では 東日本太平洋側の港湾施設が被災し 東北地方の港湾貨物量が3 週間の間 3 割減となったほか 本北物流の太宗を担う太平洋側のフェリー RORO 船航路が一時麻痺し 北海道では苫小牧港で取扱っている貨物が他港湾に流入した 本報では北海道における大規模地震が発生した際に必要な対策を検討し ハード対策として 苫小牧港における耐震強化岸壁の整備 ソフト対策として BCP 策定及び震災後の正確な情報伝達を提案した 北海道において 本北物流の9 割を占める海上輸送を如何に維持するかは 震災直後だけではなく 復興のステージにおいても重要である 今後も 大規模地震の発生に備えるため 各機関が連携した災害対策を検討していきたい 参考文献 1) 日本経済新聞 : 平成 23 年 3 月 23 日記事 2) 東北港湾復旧 復興基本方針検討委員会 : 東北港湾の復旧 復興基本方針 ( 平成 23 年 11 月 21 日 ) 3) 毎日新聞 : 平成 23 年 3 月 17 日記事 4) 毎日新聞 : 平成 23 年 3 月 19 日記事 5) 国土交通省関東地方整備局茨城県土木部 : 茨城港常陸那珂港区における東日本大震災の復旧 復興方針 ( 平成 23 年 8 月 ) 6) 道央圏港湾連携による防災機能強化方策検討会 : 第 1 回 ( 平成 23 年 9 月 7 日 ) 資料 第 2 回 ( 平成 23 年 11 月 30 日 ) 資料 注釈 (1) 2011 年の東北地方管内港湾取扱貨物は東北地方整備局による管理者へのヒアリング結果に基づく貨物量であり 以下の点に注意が必要である データは速報値 釜石港と大船渡港の取扱貨物量は含まれていない 青森港のデータはフェリー貨物のみが含まれる 仙台塩釜港の専用岸壁における取扱貨物量は含まれていない 当該データは管理者へのヒアリングにより聴取しており 港湾統計による値とは異なる可能性がある