リンゴ黒星病、うどんこ病防除にサルバトーレME、フルーツセイバーが有効である

Similar documents
< F2D315F F95815F82E882F182B28D9590AF F9C2E6A746463>

冷蔵貯蔵中のぶどう「シャインマスカット」に発生する灰色かび病防除に、オンリーワンフロアブルの7月中~下旬散布が有効である

CONTENTS Q1. の特長を教えてください... 2 Q2. の有効成分について教えてください... 2 Q3. 登録内容を教えてください... 3 Q4. 対象病害虫について教えてください... 3 Q5. 効果試験などあれば教えてください... 4 Q6. 使い方を教えてください... 6

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

本剤の使用に当たっては 使用量 使用時期 使用方法を誤らないように注意し 特に初めて使用する場合には病害虫防除所等関係機関の指導を受けることをおすすめします 安全使用上の注意事項 本剤は眼に対して刺激性があるので眼に入らないよう注意してください 眼に入った場合には直ちに水洗し 眼科医の手当を受けてく

PowerPoint プレゼンテーション

P7-15(金子)

190号.indb

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

キノンドー顆粒水和剤 2 年目 継続 1. 目的製剤変更による効果確認 樹齢 20 年生栽植密度 m 20 本 /10a (6) 試験内容試験面積 40 a 試験区 20 a 対照区 20 a 7/2 キノンドー顆粒水和剤 1,000 倍 500 リットル 7/2 キノンドーフロアブ

190号.indb

ダコニール1000_農薬ガイド_2018年8月31日

本年 10 月 11 日 ~11 月 10 日の間に登録登録されたされた新農薬 ( 適用拡大を含む は 次の通りですりです 下線部が適用拡大適用拡大になりましたになりました 登録日 薬剤名 10/24 テルスタ - フロアブル 登録内容 ( 適用拡大を含む のあらまし 対象作物内容 もも 対象害虫の

Ⅱ りんご生産情報 1 生育 作業の進み 病害虫の動き (1) 生育ステージふじの満開日は黒石 ( りんご研究所 ) では 平年より2 日早い5 月 11 日 五戸 ( りんご研究所県南果樹部 ) では 平年より6 日早い5 月 9 日であった 開花日 ( 月. 日 ) 地域年つがるジョナゴールド王

Microsoft Word 予報第9号

「公印省略」

<4D F736F F D CA48B8690AC89CA8FEE95F E496D882CC8EED97DE82AA817582CD82E982DD817682CC90B688E781418EFB97CA814189CA8EC095698EBF82C98B7982DA82B789658BBF2E646F63>

予報 岡病防第16号

園芸殺菌剤 Z ボルドー [ 銅 和剤 ] 農林 産省登録有効成分 性状 第 号塩基性硫酸銅 58.0%( 銅として 32.0%) 淡 緑 和性粉末 45μm 以下 毒性 : 普通物 ( 毒劇物に該当しないものを指していう通称 ) 危険物 :- 有効年限 :5 年 包装 :500g 20

2 ブドウの病害虫

( ア ) 殺菌剤 を付した病害虫は 薬剤耐性もしくは抵抗性個体群が出現している ( 詳細は 24~ ページを参照 ) ( 小麦 : 殺菌 ) 毒魚処理濃度 量新性毒 ( ) は分類名 等性 眼紋病 赤さび病 褐色雪腐病 規 改訂 茎葉散布劇 A 他合成 ヘ ンソ イミタ ソ ール 1

Ⅱ りんご生産情報 1 果実肥大 作業の進み 病害虫の動き (1) 果実肥大 8 月 1 日現在での果実肥大は 7 月下旬の高温の影響で肥大の伸びが鈍ったものの 概ね平年並みから平年を上回っている 果実肥大 (8 月 1 日現在 横径 :cm 平年比:%) 地 域 年 つがる ジョナゴールド ふ じ

<30318CA48B8695F18D9091E6358D862E656338>

等 ) ジカルボキシイミド ( イプロジオン プロシミドン ) 等 上市後数年間で耐性菌が発生 防除効果が大幅に低下した事例のある殺菌剤を高リスクとしている DMI( トリアゾール等 ) アニリノピリミジン ( シプロジニル メパニピリム ) のように 一部の条件で防除効果が低下 または限定的に防除

平成19年度事業計画書

果樹の生育概況

04_P36_67殺菌剤_cs6.indd

Bacillus subtilis を有効成分とした新規微生物殺菌剤 アグロケア水和剤 について 前田光紀 Mitsunori Maeda はじめに わが国の微生物農薬は1954 年のトリコデルマ生菌の登録に始まり 1980 年代にはBT 剤が登録され始めた その後 環境保全型農業が重要視され始めた

また 被害拡大の速度も速く 防除を怠ると くり園周辺の広葉樹林にも容易に被害が広がる (2) 発生消長平成 24 年 岩手県一関市で行った粘着板による調査では 1 齢幼虫の発生は 7 月 10 月の年 2 化であった (3) 防除試験マシン油乳剤やDMTP 乳剤による防除が知られているが 平成 24

わかっていること トマトすすかび病について

バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

展示圃要領1

< F2D C18EEA95F182518D C834D E838D836F836C834C836D F E6A7464>

(2) 新系統の発生状況平成 28 年 4~10 月にかけて府内 19 地点のネギ キャベツ及びタマネギほ場から採集したネギアザミウマの次世代を一頭飼育法 ( 十川ら, 2013) により調べた結果 南丹市以南の16 地点で新系統 ( 産雄性生殖系統 ) を確認した 山城地域では 産雄性生殖系統が優

2) の特徴 1 有効成分が 銀 自然界に広く存在している 銀 を有効成分とした水稲種子消毒剤です 2 幅広いスペクトラム本剤のみで 水稲の主要な種子伝染性病害 ( ばか苗病 いもち病 ごま葉枯病 もみ枯細菌病 苗立枯細菌病 褐条病およびイネシンガレセンチュウの防除が可能です 3 細菌病に対する優れ

トンネル博多ベリー防除暦

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

Ⅱ りんご生産情報 1 果実肥大 作業の進み (1) 果実肥大 9 月 11 日現在の果実肥大は 概ね平年並みから平年を上回っている 果実肥大 (9 月 11 日現在 横径 :cm 平年比:%) 地 域 年 つがる ジョナゴールド ふ じ 本 年 黒 石 平 年 (

Ⅱ りんご生産情報 1 生育 作業の進み 病害虫の動き (1) 生育ステージふじの落花日は 黒石 ( りんご研究所 ) で平年より2 日早い5 月 15 日 五戸 ( 県南果樹部 ) で平年より2 日早い5 月 18 日であった 満開日 ( 月. 日 ) 地域年つがるジョナゴールド王林ふじ 黒 石

<4D F736F F D CC936F985E95CF8D5895B68F E FB8DDC F F F E646F63>

北病防第 平成 23 年 142 号 2 月 18 日 関係総合振興局産業振興部長 関係振興局産業振興部長 様 様 技術普及課長 病害虫防除所長 水稲いもち病防除の徹底について 水稲の重要病害であるいもち病は 平成 20 年以降 3 年連続して多発生し 平成 22 年の 葉いもち と 穂いもち の発

( 一財 ) 沖縄美ら島財団調査研究 技術開発助成事業 実施内容及び成果に関する報告書 助成事業名 : 土着微生物を活用した沖縄産農作物の病害防除技術の開発 島根大学生物資源科学部 農林生産学科上野誠 実施内容及び成果沖縄県のマンゴー栽培では, マンゴー炭疽病の被害が大きく, 防除も困難となっている

Taro-sokuzitaiou_14nennousi.jtd

月中旬以降の天候によって塊茎腐敗による被害が増加する事例も多い 平成 28 年度は疫病の発生面積率は19.9% と例年に比べてやや少なかったものの 塊茎腐敗の発生面積率は 14.8% と例年に比べてやや多かったとされる ( 平成 現在 北海道病害虫防除所調べ ) かつては 疫病には

ネギ 防除法

sk

SDS農薬要覧2018 ダコニール1000

スライド 1

エチレンを特定農薬に指定することについてのこれまでの検討状況 1 エチレンについて (1) 検討対象の情報 エチレン濃度 98.0% 以上の液化ガスをボンベに充填した製品 (2) 用途ばれいしょの萌芽抑制のほか バナナやキウイフルーツ等の果実の追熟促進を目的とする 2 検討状況 (1) 農林水産省及

殺虫剤メタアルデヒド粒剤スクミノン 有効成分 : メタアルデヒド 10.0% 農林水産省登録第 号性状 : 淡褐色粒状毒性 : 普通物 ( 毒劇物に該当しないものを指していう通称 ) 有効年限 :3 年包装 :2kg 8 スクミノン はサンケイ化学 の登録商標です 特長 主に食毒で作用し

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

参考 < これまでの合同会合における検討経緯 > 1 第 1 回合同会合 ( 平成 15 年 1 月 21 日 ) 了承事項 1 平成 14 年末に都道府県及びインターネットを通じて行った調査で情報提供のあった資材のうち 食酢 重曹 及び 天敵 ( 使用される場所の周辺で採取されたもの ) の 3

untitled

平成16年度農作物有害動植物発生予察情報

ハクサイ黄化病のヘソディム

190号.indb

日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 2008 年 4 月 29 日公表 2014 年 6 月 18 日改訂 イネいもち病防除における QoI 剤及び MBI-D 剤耐性菌対策ガイドライン (1) QoI 剤及び MBI-D 剤の使用は最大で年 1 回とする また それぞれの薬剤の使用前あるいは使用後

30年防除基準.indb

植物防疫11月号(323号).indd

輸出先国の残留農薬基準値の調査方法 と結果及び今後の留意点 独立行政法人農業 食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所金谷茶業研究拠点 石川浩一 1

殺虫数(頭(2) 京田辺市におけるフェロモントラップへの誘殺虫数 (7 月第 6 半旬 ~8 月第 5 半旬の合計値 ) は81.0 頭で 平年の22.4 頭を上回っている (+)( 図 1) また 本年度からフェロモントラップを設置した亀岡市および京丹後市でも 8 月第 4 半旬から誘殺数が急増し

植物防疫協会H28-本文.indd

<4D F736F F F696E74202D DB28B7690EC8BB38EF690E096BE8E9197BF5F8CDD8AB B C83432E >

<4D F736F F D B95B6817A31362D30395F97D196D888E78EED835A E815B95698EED8A4A94AD8EC08E7B977697CC815B89D495B28FC791CE8DF495698EED>

目次 1. はじめに 1 2. 輸出の際に特に注意すべき主要害虫 1 3. 輸出の際に防除を注意すべき主要病害 4 4. 各国の残留農薬基準値の調査方法 8 5. 日本で栽培されるリンゴ果実の農薬残留のパターン 地域ごと 輸出相手国ごとの防除体系案 輸出用リンゴ防除薬剤の選択

140611_nouyaku_No187.indd

53_13

< F96F2936F985E8FEE95F1328C8E8D862E786C73>

, ,

H23 農作物技術情報 第5号 果樹(H )

表1-4デラン技術資料_PDF.indd

ダウ・アグロサイエンス日本株式会社 製品要覧

評価対象農薬の概要 別紙 1 1. 物質概要 一般名 ビール酵母抽出グルカン CAS 1 分子式 (C6H10O5)x 分子量複数の糖が連なった多糖である NO. 該当なし 2 構造式 1 : 平均分子量及び分子量分布 : 可溶化できないため平均分子量及び分子量分布は測定できないが 水溶性成分に係る

みどりノートユーザマニュアル(Web版)

植物防疫03月号(343号).indd

H25 農作物技術情報第5号 果樹(H )

イチゴ炭疽病のヘソディム

スライド 1

いちごじゃのめ病 さやえんどう実えんどうピーマンすいか メロン きゅうり うどんこ病 ~ 5,000 陥没病 黒星病 ~ 5,000 うどんこ病 かぼちゃ種子重量のフザリウム立枯病 0.3% にがうり うどんこ病うり類 ( 漬物用 ) つる枯病 炭疽病 ~ 5,000 トマト葉かび病ミニトマトすすか

Microsoft Word - ビワ、~1

<4D F736F F D20382D315F91CF90AB8BDB82C696F28DDC96688F9C2E646F63>

研究成果 業務需要に向けたリーキの品種選定と栽培技術開発 ~ 水田輪作による秋冬どり栽培が可能 ~ 1. はじめにリーキは 西洋ネギ ( ポロネギ ) ともいわれ 根深ネギより太く短い葉鞘を形成します しかし リーキの葉身はニンニクやニラのように平らで 筒状の葉身を持つ根深ネギとは明らかに様相が異な

< F2D817995CA8E C A ED97AA D E95E CC C7C816A E6A7464>

病害虫発生予察情報(11月予報)

画面遷移

(Microsoft PowerPoint - \202h\202a\202i\226h\217\234\217\356\225\36148\215\ pptx)

(Microsoft PowerPoint - \202h\202a\202i\226h\217\234\217\356\225\36167\215\206.pptx)

Microsoft Word - H30予報06号.docx

. 適用の範囲及び使用方法本剤の適用の範囲及び使用方法は以下のとおり 作物名 使用時期となっているものについては今回農薬取締法 ( 昭和 3 年法律第 8 号 ) に基づく適用拡大申請がなされたものを示している また ブルーベリーに係る残留基準の設定についてインポートトレランス申請がされている (1

30年防除基準.indb

白紋羽病の病徴 果樹の地上部にこんな症状が出ていたら要注意 春先の発芽が遅れ 花芽分化が多く 開花時期が早まる 徒長枝の本数が少ない または伸長が悪い 梅雨明け後期に 葉が萎れたようになる 秋期に葉の黄化や 落葉が早くなる 果実の肥大が悪く 熟期が早まる 徒長枝の伸長が悪い 菌 糸 束 秋期の葉の早

浸透が不十分でした ( 図 1) 以上のように ブランチングが ぽろたん の剥き方に最も適しました 貯蔵による品質の変化クリは 9~ 10 月に収穫が集中するため 加工用としては数ヶ月の貯蔵が求められます そこで ぽろたん の特徴である 剥けやすさ が 貯蔵によって影響がないのか調査しました その結

01イチジク

適用害虫と使用方法 印は収穫物への残留回避のため 本剤及びクロチアニジンを含む農薬の総使用回数の制限を示します 作物名適用病害虫名希釈倍数使用液量使用時期総使用回数 使用方法 トマト ミニトマトなすきゅうり コナシ ラミ類 ハモク リハ エ類 ミナミキイロアサ ミウマ ハモク リハ エ類 コナシ ラ

和歌山県農林水技セ研報 13:25~34,2012 ウンシュウミカンの減農薬栽培における 黒点病および緑かび病の防除 井沼崇 間佐古将則 1 中一晃 2 増田吉彦 3 和歌山県農林水産総合技術センター果樹試験場 Control of Citrus Melanose and Common Green

< F2D817982E882F182B2817A82CC8EC091488E E6A7464>

<4D F736F F F696E74202D D E836F C8816A5F955C8E86205B8CDD8AB B83685D>

果樹の生育概況

平成22年度農作物有害動植物発生予察情報


Transcription:

平成 26 年度普及に移す農業技術 ( 第 1 回 ) [ 分類 ] 普及技術 [ 成果名 ] リンゴ黒星病 うどんこ病防除にサルバトーレ ME フルーツセイバーが有効である [ 要約 ] リンゴ黒星病 うどんこ病防除にサルバトーレ ME の 3,000 倍液またはフルーツセイバーの 2,000 倍液を散布する サルバトーレ ME は EBI 剤 フルーツセイバーは SDHI 剤である 両剤ともに薬剤耐性菌が出現しやすいため 過度の連用 多数回使用を避ける [ 担当 ] 果樹試験場環境部 [ 部会 ] 病虫部会 1 背景 ねらいりんごの春季防除における最重要病害は黒星病である しかし近年 本県ではうどんこ病の発生が増加傾向にあるため 黒星病だけでなくうどんこ病にも卓効を示す薬剤が必要とされている そこで 両病害に対して効果の高い薬剤を選定するとともに りんごに対するの有無を検討した サルバトーレ ME はりんごに対して平成 12 年に農薬登録された薬剤であるが 平成 23 年 26 年に両病害に対する効果を改めて検討し 有効性が認められたため 今回普及技術とした また 新規系統剤であるフルーツセイバーは平成 15 年 ~26 年にかけて試験を行い 有効性が認められたため 今回普及技術とした 2 成果の内容 特徴 (1) リンゴ黒星病防除にサルバトーレ ME の 3,000 倍液またはフルーツセイバーの 2,000 倍液を散布する 農薬登録内容サルバトーレ ME [ 一般名及び成分含有量 ] テトラコナゾール 11.6%(FRAC コード注 ) :3) [ 毒性 ] 人畜毒性 : 劇物 毒物には該当しない [ 魚毒性 ] B 類 [ 対象作物に対する適用登録状況 ( 平成 26 年 9 月 30 日現在 JPP-NET 確認 )] 作物名適用病害名散布液量使用時期 りんご 黒星病 赤星病 うどんこ病 モニリア病 本剤の 使用回数 使用方法 テトラコナゾールを含む農薬の総使用回数 3,000 200~700L/10a 収穫 45 日前まで 3 回以内散布 3 回以内 注 )FRAC コードとは FRAC( 殺菌剤耐性菌対策委員会 ) が定める殺菌剤の作用機構による分類で 同じコードは同一系統を表す 詳細は Japan FRAC のホームページ (http://www.jfrac.com/) を参照する 5-1

フルーツセイバー [ 一般名及び成分含有量 ] ペンチオピラド 15.0%(FRAC コード注 ) :7) [ 毒性 ] 人畜毒性 : 劇物 毒物には該当しない [ 魚毒性 ] B 類 [ 対象作物に対する適用登録状況 ( 平成 26 年 9 月 30 日現在 JPP-NET 確認 )] 作物名適用病害名散布液量使用時期 りんご 黒星病モニリア病斑点落葉病すす点病すす斑病赤星病うどんこ病黒点病褐斑病 1,500~ 2,000 倍 1,500~ 3,000 倍 2,000 倍 本剤の 使用回数 使用方法ペンチオピラドを含む農薬の総使用回数 200~700L/10a 収穫前日まで 3 回以内散布 3 回以内 注 )FRAC コードとは FRAC( 殺菌剤耐性菌対策委員会 ) が定める殺菌剤の作用機構による分類で 同じコードは同一系統を表す 詳細は Japan FRAC のホームページ (http://www.jfrac.com/) を参照する 3 利用上の留意点 (1) うどんこ病防除では薬剤防除だけでなく 伝染源となる被害枝のせん除や芽しぶの早期除去をあわせて行う (2) サルバトーレ ME に関する注意事項ア本剤は EBI 剤である EBI 剤は薬剤耐性菌の出現する可能性が高いため 過度の連用 多数回使用を避ける りんごでの EBI 剤の使用は原則として 開花期及び落花期の 2 回に限る イ原液は眼に対して強い刺激性があるので注意する ウ水産動植物に影響を及ぼすおそれがあるので 河川 養魚池などに飛散 流入しないように注意する (3) フルーツセイバーに関する注意事項ア本剤は植物病原菌のミトコンドリア電子伝達系酵素複合体 Ⅱ に作用し 呼吸を阻害するコハク酸脱水素酵素阻害剤 (SDHI 剤 ) である SDHI 剤は薬剤耐性菌の出現する可能性があるため 過度の連用 多数回使用は避け 作用機構の異なる薬剤とのローテーションによる使用とする イ水産動植物に影響を及ぼすおそれがあるので 河川 養魚池などに飛散 流入しないように注意する 4 対象範囲県下全域 りんご栽培地域 7,950ha 5 具体的データ (1) サルバトーレ ME のリンゴ黒星病に対する防除効果及びの検討 ( 表 1 2) ア平成 11 年及び平成 26 年に果樹試験場内ほ場で試験を行った 無処理区での発生は両試験とも少発生であった 平成 11 年の試験では サルバトーレ ME の 3,000 倍液は対照としたスコア水和剤 10(EBI 剤 ) とほぼ同等の防除効果で 無処理と比較して高い効果が認められた また 平成 26 年の試験では サルバトーレ ME の 3,000 倍液は対照としたオーソサイド水和剤と同等の防除効果で 無処理と比較して高い効果が認められた 両試験ともの発生は認められなかった 5-2

表 1 リンゴ黒星病に対するサルバトーレ ME の防除効果 ( 平成 11 年 果樹試験場 ) 調査果数 果実調査発病果率 サルバトーレ ME 3,000 153.3 0.4 97.4 30 0 100 なし スコア水和剤 10 3,000 129.0 0 100 30 0 100 なし 無処理 - 127.3 15.6 50 6.0 =100-( 処理区の発病率 / 無処理区の発病率 ) 100 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 少発生 供試品種 : ふじ ( わい性台木樹 ) 試験規模:1 区 2~3 樹 4 反復薬剤処理 : 平成 11 年 4 月 30 日 ( 開花直前 ) 5 月 30 日及び6 月 10 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 11 年 6 月 28 日に1 区 20 新梢の展開葉全葉及び30~50 果実について発病の有無を調査した の発生の有無については随時 観察調査した 表 2 リンゴ黒星病に対するサルバトーレ ME の防除効果 ( 平成 26 年 果樹試験場 ) 花そう葉調査発病葉率 サルバトーレ ME 3,000 103.0 0 100 203.0 0 100 なし オーソサイド水和剤 800 100.5 0 100 207.5 0 100 なし 無処理 - 83.3 6.1 166.0 5.4 表 1 と同じ 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 少発生 供試品種 : ふじ ( わい性台木樹 ) 試験規模:1 区 4~6 樹 3 反復薬剤処理 : 平成 26 年 4 月 28 日 ( 開花直前 ) 5 月 9 日 ( 落花期 ) 及び5 月 19 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 26 年 6 月 16 日に1 区 10~20 花そう及び10~20 新梢の展開葉全葉について発病の有無を調査した の発生の有無については随時 観察調査した (2) サルバトーレ ME のリンゴうどんこ病に対する防除効果及びの検討 ( 表 3 4) ア平成 12 年は長野市篠ノ井現地ほ場 平成 23 年は果樹試験場内ほ場で試験を行った 無処理区での発生は両年とも多発生であった 平成 12 年の試験では サルバトーレ ME の 3,000 倍液は対照としたスコア水和剤 10(EBI 剤 ) より優る防除効果で 無処理と比べて高い効果が認められた また 平成 23 年の試験では サルバトーレ ME の 3,000 倍液は対照としたオンリーワンフロアブル及びスコア顆粒水和剤 ( いずれも EBI 剤 ) より優る防除効果で 無処理と比べ高い効果が認められた 両試験ともの発生は認められなかった 表 3 リンゴうどんこ病に対するサルバトーレ ME の防除効果 ( 平成 12 年 果樹試験場 ) 発病葉率 発病度 サルバトーレ ME 3,000 332 0 0 100 なし スコア水和剤 10 3,000 343 3.8 1.0 95.9 なし 無処理 - 294 53.7 23.4 発病度 ={Σ( 指数 該当葉数 )/( 4)} 100 =100-( 処理区の発病度 / 無処理区の発病度 ) 100 試験場所 : 長野市篠ノ井現地ほ場 発生状況 : 多発生 供試品種 : 紅玉 ( わい性台木樹 ) 試験規模:1 区 4~5 樹 反復なし 薬剤処理 : 平成 12 年 5 月 1 日 ( 開花直前 ) 5 月 15 日 ( 落花期 ) 及び5 月 30 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 12 年 6 月 13 日に1 区 20 新梢の展開葉全葉について発病の有無及び発病程度 ( 指数 0~4) を調査した の発生の有無については随時 観察調査した 発病程度の調査基準 指数 0: 発病なし 1: 病斑面積が葉の1/4 未満 2:1/4~1/2 3:1/2~3/4 4:3/4 以上 5-3

表 4 リンゴうどんこ病に対するサルバトーレ ME の防除効果 ( 平成 23 年 果樹試験場 ) 発病葉率 発病度 サルバトーレ ME 3,000 235.0 8.7 2.9 94.5 なし オンリーワンフロアブル 2,000 223.5 14.4 4.9 90.7 なし スコア顆粒水和剤 3,000 246.5 43.3 20.5 61.0 なし 無処理 - 251.5 69.2 52.5 表 3 と同じ 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 多発生 供試品種 : 紅玉/ マルバカイドウ ( 普通樹 ) 試験規模:1 区 1 樹 2 反復 薬剤処理 : 平成 23 年 5 月 5 日 ( 開花直前 ) 5 月 18 日及び6 月 1 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 23 年 6 月 10 日に1 樹 20 新梢の展開葉全葉について発病の有無及び発病程度 ( 指数 0~3 表 3 脚注参照 ) を調査した の発生の有無については随時 観察調査した (3) フルーツセイバーのリンゴ黒星病に対する防除効果及びの検討 ( 表 5 6) ア平成 17 年及び平成 26 年に果樹試験場内ほ場で試験を行った 無処理区での発生は両試験とも少発生であった 平成 17 年の試験では フルーツセイバー 2,000 倍液の防除効果は対照としたオンリーワンフロアブル (EBI 剤 ) と比べて劣ったが オーソサイド水和剤とはほぼ同等であった 無処理と比較して防除効果が認められた 平成 26 年の試験では フルーツセイバー 2,000 倍液は対照としたユニックス Z 水和剤及びオーソサイド水和剤と同等の防除効果で 無処理と比較して高い効果が認められた 両試験ともの発生は認められなかった 表 5 リンゴ黒星病に対するフルーツセイバーの防除効果 ( 平成 17 年 果樹試験場 ) 発病葉率 フルーツセイバー 2,000 491.0 2.0 79.5 なし オンリーワンフロアブル 2,000 471.0 0.6 94.1 なし オーソサイド水和剤 800 475.0 1.9 81.4 なし 無処理 - 473.7 10.0 表 1 と同じ 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 少発生 供試品種 : ふじ ( わい性台木樹 ) 試験規模:1 区 2~4 樹 3 反復薬剤処理 : 平成 17 年 4 月 30 日 ( 開花直前 ) 5 月 13 日 ( 落花期 ) 及び5 月 27 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 17 年 6 月 14 日に1 区 40 新梢の展開葉全葉について発病の有無を調査した の発生の有無については随時 観察調査した 表 6 リンゴ黒星病に対するフルーツセイバーの防除効果 ( 平成 26 年 果樹試験場 ) 花そう葉調査発病葉率 フルーツセイバー 2,000 219.0 0 100 391.5 0 100 なし ユニックス Z 水和剤 500 201.5 0 100 366.0 0 100 なし オーソサイド水和剤 800 191.5 0 100 406.0 0 100 なし 無処理 - 214.5 4.0 364.5 6.1 表 1 と同じ 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 少発生 供試品種 : ふじ ( わい性台木樹 ) 試験規模:1 区 4~6 樹 2 反復薬剤処理 : 平成 26 年 4 月 28 日 ( 開花直前 ) 5 月 8 日 ( 落花期 ) 及び5 月 18 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 26 年 6 月 9~13 日に1 区 20 花そう及び20 新梢の展開葉全葉について発病の有無を調査した の発生の有無については随時 観察調査した 5-4

(4) フルーツセイバーのリンゴうどんこ病に対する防除効果及びの検討 ( 表 7 8) ア平成 15 年及び平成 16 年に果樹試験場内ほ場で試験を行った 無処理区での発生は両年ともに中発生であった 平成 15 年の試験では フルーツセイバー 2,000 倍液は対照としたスコア水和剤 10(EBI 剤 ) より優る防除効果で 無処理と比べて高い効果が認められた 平成 16 年の試験では フルーツセイバー 2,000 倍液は対照としたオンリーワンフロアブル及びスコア水和剤 10( いずれも EBI 剤 ) とほぼ同等の防除効果で 無処理と比べて高い効果が認められた 両試験ともの発生は認められなかった 表 7 リンゴうどんこ病に対するフルーツセイバーの防除効果 ( 平成 15 年 果樹試験場 ) 発病葉率 発病度 フルーツセイバー 2,000 433.5 0.9 0.3 96.5 なし スコア水和剤 10 3,000 403.5 5.8 2.0 76.7 なし 無処理 - 436.5 21.6 8.6 表 3 と同じ 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 中発生 供試品種 : 紅玉/ マルバカイドウ (5 年生 ) 試験規模:1 区 6~7 樹 2 反復 薬剤処理 : 平成 15 年 5 月 9 日 5 月 21 日及び6 月 2 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 15 年 6 月 13 日に1 樹 2~3 新梢の展開葉全葉について発病の有無及び発病程度 ( 指数 0~3 表 3 脚注参照 ) を調査した の発生の有無については随時 観察調査した 表 8 リンゴうどんこ病に対するフルーツセイバーの防除効果 ( 平成 16 年 果樹試験場 ) 発病葉率 発病度 フルーツセイバー 2,000 226.5 0 0 100 なし オンリーワンフロアブル 2,000 229.0 0.8 0.2 96.2 なし スコア水和剤 10 3,000 276.5 0.9 0.3 94.3 なし 無処理 - 310.0 10.1 5.3 表 3 と同じ 試験場所 : 須坂市果樹試験場内ほ場 発生状況 : 中発生 供試品種 : 紅玉/ マルバカイドウ (6 年生 ) 試験規模:1 区 4~6 樹 2 反復 薬剤処理 : 平成 16 年 5 月 18 日 6 月 2 日及び6 月 15 日の計 3 回 動力噴霧機で十分量を散布した 調査 : 平成 16 年 7 月 8 日に1 樹 1~2 新梢の展開葉全葉について発病の有無及び発病程度 ( 指数 0~3 表 3 脚注参照 ) を調査した の発生の有無については随時 観察調査した 6 特記事項 [ 公開 ] 制限なし [ 課題名 研究期間 予算区分 ] 果樹の新規農薬等の効果試験 平成 11~26 年度 (1999~2014 年度 ) 協力研究 5-5