事例

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3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

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認知症医療従事者等向け研修事業要領

看護部 : 教育理念 目標 目的 理念 看護部理念に基づき組織の中での自分の位置づけを明らかにし 主体的によりよい看護実践ができる看護職員を育成する 目標 看護職員の個々の学習ニーズを尊重し 専門職業人として成長 発達を支援するための教育環境を提供する 目的 1 看護専門職として 質の高いケアを提供

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平成18年度標準調査票

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

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13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

H28_クリニカルラダー研修

表. 認定看護師認定更新者活動状況調査分野別調査対象及び回収状況 配布数 回収数更新 回目更新 回目更新回数不明計 回収率 (%) 救急看護 8 0. 皮膚 排泄ケア 集中ケア 8. 緩和ケア.0 がん化学療法看護. がん性疼痛看護 感染管理.9 糖尿病看護 0.0 不妊症看

SBOs- 3: がん診断期の患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 4: がん治療期 ; 化学療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 5: がん治療期 ; 放射線療法を受けている患者の心身の特徴について述べることができる SBOs- 6: がん治療期

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平成18年度標準調査票

チェック式自己評価組織マネジメント分析シート カテゴリー 1 リーダーシップと意思決定 サブカテゴリー 1 事業所が目指していることの実現に向けて一丸となっている 事業所が目指していること ( 理念 ビジョン 基本方針など ) を明示している 事業所が目指していること ( 理念 基本方針

介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の

Ⅲ 目指すべき姿 特別支援教育推進の基本方針を受けて 小中学校 高等学校 特別支援学校などそれぞれの場面で 具体的な取組において目指すべき姿のイメージを示します 1 小中学校普通学級 1 小中学校普通学級の目指すべき姿 支援体制 多様な学びの場 特別支援教室の有効活用 1チームによる支援校内委員会を

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

(目的)

る看護を提供したい 抗がん剤に対する正しい知識とアセスメント能力 曝露対策への知識を習得していなければ 安全で安心な看護ができない という危機感がありました そうした中 がん化学療法認定看護師の存在を知り 大学で約半年間の研修を受けて2011 年に認定を取得 がん化学療法ケアの専門知識を有する実践者

ポートフォリオ分析レポート 2018/1/12 調査名 患者満足度調査 ( 病院 - 入院 ) KPI 7. 家族や知人に当院を紹介したいと思いますか 対象集団 施設名大阪みなと中央病院 分析対象 入院環境について (1) 人数 77 名男性 37 名女性 30 名 A B C D E F G H

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保険薬局におけるハイリスク薬取り扱い時の注意点

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医師等の確保対策に関する行政評価・監視結果報告書 第4-1

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

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2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

下の図は 平成 25 年 8 月 28 日の社会保障審議会介護保険部会資料であるが 平成 27 年度以降 在宅医療連携拠点事業は 介護保険法の中での恒久的な制度として位置づけられる計画である 在宅医療 介護の連携推進についてのイメージでは 介護の中心的機関である地域包括支援センターと医療サイドから医

2013 年度 統合実習 [ 表紙 2] 提出記録用紙 5 実習計画表 6 問題リスト 7 看護過程展開用紙 8 ( アセスメント用紙 1) 9 ( アセスメント用紙 2) 学生証番号 : KF 学生氏名 : 実習期間 : 月 日 ~ 月 日 実習施設名 : 担当教員名 : 指導者名 : 看護学科

I

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私たちの人生 病気やケガのリスクと 経済的影響は? 50 ( 千人 ) 1, 通院入院 ( 歳 )

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

4. 構成実習内容 実習時間 単位 実習場所 成人 Ⅰ 90 時間 2 単位 横浜新都市脳神経外科病院横浜旭中央総合病院東戸塚記念病院 菊名記念病院

総合診療

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認定看護師教育基準カリキュラム

放射線併用全身化学療法 (GC+RT 療法 ) 様の予定表 No.1 月日 経過 達成目標 治療 ( 点滴 内服 ) 検査 処置 活動 安静度 リハビリ 食事 栄養指導 清潔 排泄 / 入院当日 ~ 治療前日 化学療法について理解でき 精神的に安定した状態で治療が


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A-2-(1)-1 利用者の自律 自立生活のための支援を行っている A-2-(1)-2 利用者の心身の状況に応じたコミュニケーション手段の確保と必要な支援を行っている A-2-(1)-3 利用者の意思を尊重する支援としての相談等を適切に行っている A-2-(1)-4 個別支援計画にもとづく日中活動と

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一般看護師領域 キャリアレベル ミドル (Ⅲ) 退院支援看護師育成プログラム ~ 希望を地域へつなぐ ~

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平成18年度標準調査票

1. はじめに ステージティーエスワンこの文書は Stage Ⅲ 治癒切除胃癌症例における TS-1 術後補助化学療法の予後 予測因子および副作用発現の危険因子についての探索的研究 (JACCRO GC-07AR) という臨床研究について説明したものです この文書と私の説明のな かで わかりにくいと

別表第 17( 第 21 条関係 ) 種類支給される職員の範囲支給額 1 放射線業務手当 2 病棟指導手当 3 死後処置手当 4 夜間看護等手当 循環器 呼吸器病センター及びがんセンターに所属する職員 ( 放月額 7,000 円射線科医師及び診療放射線技術者を除く ) がエックス線の照射補助作業に従

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質の高い病理診断のために 病理技術 診断基準の標準化を 目指した精度評価を実現します

中小医療機関における輸血 療法委員会の設置に向けて 長崎県合同輸血療法委員会平成 31 年 1 月 16 日

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平成19年度 病院立入検査結果について

本書の内容 がん体験者の悩みや負担に関するデータベースについて全国のがん体験者 7,885 人を対象とした実態調査結果から抽出された悩みや負担は 2 万 6 千件余りでした この悩み等を 静岡がんセンターで作成した 静岡分類 にそって体系的に整理し がん体験者の悩みや負担に関するデータベースを構築し

日本臨床倫理学会 日本版 POLST(DNAR 指示を含む ) 作成指針 POLST(Physician Orders for Life Sustaining Treatment) 生命を脅かす疾患 に直面している患者の 医療処置 ( 蘇生処置を含む ) に関する医師による指示書 これは日本臨床倫理

児童発達支援又は放課後等デイサービス事業に係る自己評価結果公表用(あかしゆらんこクラブ)

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専門・認定看護師会による教育活動の実際と成果報告

平成21年度看護部教育研修(案)

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( 様式第 6) 病院の管理及び運営に関する諸記録の閲覧方法に関する書類 病院の管理及び運営に関する諸記録の閲覧方法 計画 現状の別 1. 計画 2. 現状 閲 覧 責 任 者 氏 名 閲 覧 担 当 者 氏 名 閲覧の求めに応じる場所 閲覧の手続の概要 ( 注 ) 既に医療法施行規則第 9 条の

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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周南市版地域ケア会議 運用マニュアル 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議は 地域包括支援センターまたは市町村が主催し 設置 運営する 行政職員をはじめ 地域の関係者から構成される会議体 と定義されています 地域ケア会議の構成員は 会議の目的に応じ 行政職員 センター職員 介護支援専門員 介護サービ

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ケア困難患者や家族への直接ケア 医療スタッフへのコンサルテーション 退院や倫理的問題を調整する調整 ケアの質を改善 向上させるための教育と研究を実践し CNS が関わることで患者の病状や日常生活機能と社会的機能が改善して 患者と家族の QOL が高まり 再入院が減少することが明らかとなってきておりま

薬事法における病院及び医師に対する主な規制について 特定生物由来製品に係る説明 ( 法第 68 条の 7 平成 14 年改正 ) 特定生物由来製品の特性を踏まえ 製剤のリスクとベネフィットについて患者に説明を行い 理解を得るように努めることを これを取り扱う医師等の医療関係者に義務づけたもの ( 特

2/12 開催時間研修会 検討会等名称研修等の目的 内容 概要等開催場所参加人員 院内外 職種等 5 平成 26 年 5 月 15 20:00~ 21:35 第 10 回薬薬連携勉強会地域保健薬局薬剤師との連携強化 院内 : 薬剤師 10 人院外 : 薬剤師 12 人 6 平成 26 年 5 月 2

がん登録実務について

)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

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富山西総合病院 医療安全管理指針

Transcription:

第 1 回 がん化学療法医療チーム養成にかかる研修 がん化学療法における 看護師の役割 国立がんセンターがん対策情報センター / 中央病院がん看護専門看護師森文子 2007 年 3 月 19 日 ( 月 )

がん化学療法における 看護師の役割とは がん化学療法が 確実に安全に安楽に 行われることを支えること

確実に 安全に 安楽に とは? 確実に 化学療法はがんの治療患者の受療目的に沿うこと 安全に 抗がん剤は細胞毒性薬剤薬剤を安全に取り扱う責任 安楽に 化学療法には有害反応がある苦痛を軽減し 治療完遂を目指す

がん化学療法が 確実に 行われることを支える レジメンが管理されている 治療計画の理解 確実な血管確保 治療計画に基づいた確実な投与 適切な器材の選択 適切な薬剤の調整と安定性の確保 血管外漏出の予防

がん化学療法が 安全に 行われることを支える 安全な投与量の管理 抗がん剤の曝露予防 感染予防 血管外漏出の予防 安全な器具の選択と使用方法 廃棄物の処理 リスクマネジメント

がん化学療法が 安楽に 行われることを支える 意思決定の支援 適切な支持療法の実施 急性症状のアセスメントと予防 対処 過敏症 / アナフィラキシー インフュージョン リアクション 血管外漏出 急性の悪心 嘔吐 治療環境の調整 不安の緩和 闘病意欲の維持 セルフケア支援

がん化学療法における 看護師の役割の重要性 がん化学療法は 患者の生命を救い その後の人生や生活を充実して過ごすための重要な治療である 看護師はその治療の現場に直接的に深く関わっており 抗がん剤の投与が確実 安全 安楽に実施される責任を負っている

がん化学療法を継続しながら 生活する人を支えることの意味 がん化学療法は患者ががんとともに生 きる中での重要な体験になる 患者と家族が主体的に取り組んでいくことが がん化学療法の継続を支え 自己効力感を高め コントロール感を取り戻す過程になり がんとともに生きる力になりうる

5 年生存率とがんサバイバーシップ 5 年生存率 治療後 5 年間再発や転移なく生存していることを がんが治癒した ことの目安にしている がんサバイバーシップの考え方 治療後 5 年間経過するのを待たなくても その人らしく 健やかに生きること がんとともに生きることの大切さを重要視している

がん化学療法における セルフケア支援

がん化学療法におけるセルフケアの重要性 がん化学療法の特徴期間が長い 目的は病状により異なる 毒性 がん化学療法の進歩と適応拡大 がん化学療法の支持療法の進歩 治療環境の入院から外来へのシフト 患者の自律性やセルフケアへの意識の高まり 患者 - 看護師の相互作用によって 長期に渡る療養生活を乗り越えていくこと

セルフケア支援のポイント 看護師のアセスメントと患者が感じる問題を話し合い セルフケアの優先順位を決める セルフケアの目標を患者と話し合い 患者の言葉で表現する セルフケアの知識と技術を適切なタイミングと方法で提供する 患者の症状体験を知り それをセルフケア支援にフィードバックさせる

セルフケア支援のための 患者教育の流れ 基本的知識を提供する 基本的な技術を患者に習得してもらう 基本的看護サポートを提供する

基本的知識を提供する 患者の反応を見ながら 必要最小限の知識の量を決定し 提供する 症状はコントロールできること 使っている薬の効果や副作用について 根拠をわかりやすく 図やパンフレットも用いる

基本的技術の習得 患者の能力をアセスメントし 必要最小限の技術の量を決め 指導する 必要な技術は何か 患者の意見を聞きながら明らかにする 患者が正確に行え 長続きできる方法 行ったことの効果を評価する技術 正確に長続きできるよう技術を訓練する 繰り返し行い 実施しやすいように修正する

基本的看護サポートの提供 患者を理解していることやサポートする意思があることを明確に示す 患者ができていることを伝え 続けられるように励ます できていない部分は強要せず 代償を保証する セルフケア能力があってもある程度提供する 自信のない患者や不安な患者にはより頻繁に

具体的な患者 家族の 教育 支援プログラム

患者 家族教室 テーマを設けて 患者 家族のセルフケア能力の向上に役立てる 同一内容のものを繰り返し行ったり 対象者をまとめて実施することが可能 参加者間での情報交換の場にもできる

電話相談 電話フォローアップ 自宅でのトラブル時 迷ったときなどに相談できる窓口が決まっていると安心できる 相談窓口担当者は 内容により適切な情報収集を行う能力 対応適任者を判断し依頼する能力 コミュニケーション能力が重要 通院治療後自宅で問題が生じることが予測される患者 家族に対して 予め了解を得て電話でフォローアップする対応も有効である

パンフレットやホームページの活用 がん研究振興財団公開のパンフレット インターネットでダウンロード可能 連絡すれば 送付してもらえる がん情報サービスの活用 随時情報更新中 インターネットが利用できない人への対応 小冊子 予め印刷しておいたものを用意 一緒に見ながら探す その場でプリントアウトする

サポート グループ 共通の体験をもつものどうしが集い 支えあっている 特定の病院や機関がそのグループの維持のために貢献している サポーターとなる専門家の存在 グループの運営 プログラムの用意 広報 メンバーの募集などを行う グループ参加者が学び 分かち合い 相互支援ができるようにファシリテーターとして支援する 例 I Can Cope プログラム : がんを知って歩む会 ( ホスピスケア研究会 ) ジャパン ウェルネスのサポートプログラムなど

セルフ ヘルプ グループ 何らかの問題や課題を抱えている本人や家族自身で構成されるグループ 同じ体験をしたものどうしがお互いを支える活動を主体的に行う 体験の語り合い 講演会の開催 会報の発行などをグループメンバーの交流に役立てる 例 各種患者会 ( 疾患別 疾患問わず 家族 親など )

がん化学療法における 意思決定支援

がん化学療法における意思決定場面 診断後の治療方針決定 治療の場の変更 再発 転移判明 ギアチェンジ など

意思決定を支援する看護師の役割 看護師の倫理綱領 ( 日本看護協会 2003 年 ) 看護者は 人々の知る権利及び自己決定の権利を尊重し その権利を擁護する 具体的な役割 説明の場に同席する 説明に関する正確な理解を促す 個々の価値観 人生観に沿った選択を導く 意思決定後の患者 家族を支える 外来 病棟間 医師 看護師間 看護師間の連携を密にする

がん化学療法とチーム医療

がん化学療法に関わる多職種 医師 歯科医師 歯科衛生士 薬剤師 栄養士 ソーシャルワーカー 検査技師 看護師間 専門分野をもつ看護師の有効活用

多職種が協働することの意味 相手を知ること よく話し合うこと 効果的 効率的に役割分担するために必要 いろいろな側面から関わる人が理解しあっていることは 患者 家族の安心感 信頼感につながる 複数の他職種が共に取り組むことの効果 や どのようにすれば効果的なチーム医 療とできるのかを考えながら取り組むこと が第一歩

がん化学療法に関わる多職種による チーム医療の推進に関する提案 ( 国立がんセンター中央病院の案 )

目的 ( 取り組みの理念 ) がん化学療法が 確実に 安全に 安楽に 行われるために 院内の多職種がそれぞれの専門性を発揮できるチーム医療を実践し がん化学療法医療の質の向上を図る

背景 1. がん化学療法が確実に行われることは 患者の受療目的に沿うものである それに関わる全ての職種が効果的 効率的に役割を発揮できる体制が必要である 2. 抗がん剤の多くは細胞毒性薬剤である 医療者には 患者 家族だけでなく医療者自身に対しても がん化学療法を安全に行う責任がある 3. がん化学療法の有害反応による苦痛を軽減し 安楽に行われるための患者 家族に対する多側面からの支援が必要である

現状と問題点 1. がん化学療法全般に関して 2. がん化学療法が確実かつ安全に行われることに関して 3. 安楽ながん化学療法のための患者 家族支援体制に関して

現状と問題点 1 がん化学療法全般に関して 多職種間の連携が不足している 院内全体の問題として多職種で話し合う場がない

現状と問題点 2: がん化学療法が確実かつ安全に 行われることに関して 抗がん剤投与における基本的な注意事項に対する認識に格差がある がん化学療法レジメン毎のクリニカルパスの更なる充実が必要である がん化学療法に関する職員教育の機会が不足している がん化学療法に関する職員向けの相談対応者が明確でない

現状と問題点 2: がん化学療法が確実かつ安全に 行われることに関して 抗がん剤の安全な取り扱いに関する医療職者の認識が低い レジメン管理に看護職が関われていないため 実際の投与場面における問題点が反映されていない

現状と問題点 3: 安楽ながん化学療法のための 患者 家族支援体制に関して 病棟と外来の連携がうまく図られていない 患者 家族のためのパンフレットの内容が不足している 外来での治療に関する患者 家族の意思決定の支援が不十分である 外来での治療開始時のオリエンテーション時間の確保が難しい 外来通院中の患者 家族の相談窓口が効果的に活用されていない

充実したがん化学療法支援を目指して 確実 安全 安楽ながん化学療法 医療の質の向上のための職員支援システム 患者 家族のための支援システム 安全な治療環境 多職種によるチーム医療

目標 がん化学療法に関わる多職種によるチーム医療体制を強化し 実践する 確実 安全 安楽ながん化学療法のための院内の課題の明確化 安全な治療環境づくり 職員向けがん化学療法支援システムの構築と実施 患者 家族支援システムの構築と実施 多職種合同チームによるがん化学療法支援体制に関する情報発信を行う

具体策 がん化学療法支援チーム ( 多職種合同チー ム ) を編成し 活動する チームの活動内容案 院内の現状把握と課題の明確化 抗がん剤の曝露対策を含めた安全な治療環境作り レジメン管理 運用の充実 職員向けがん化学療法支援システムの構築と実施 患者 家族への支援システムの構築と実施 多職種チームによるがん化学療法支援体制に関する情報発信

チーム医療の推進 院内の現状把握と課題の明確化 安全な治療環境づくり がん化学療法支援チーム ( 多職種合同チーム ) の編成 活動 レジメン管理 運用の充実 がん医療の均てん化に向けた情報発信 職員向け支援体制の構築と実施 患者 家族支援体制の構築と実施

抗がん剤投与管理方法 院内の現状把握課題の明確化 抗がん剤投与に関する患者および職員の安全性の評価と改善策の検討 抗がん剤投与に関するインシデント報告の内容の分析と対策の検討 患者 家族に対するオリエンテーション 退院指導

抗がん剤の安全な取り扱い方法を見直し 曝露対策を検討 安全な治療環境 抗がん剤投与を受けた患者の排泄物の取り扱いについてのガイドライン作成 抗がん剤の安全な取り扱いに関する勉強会の実施 ( 院内全体の意識向上を図る )

職員に対する教育 実践モデル 院内教育 勉強会 職員への支援 研究の実施と支援 コンサルテーション ガイドライン 文献紹介ホームページ作成

治療に関する説明への同席とその後の支援 患者 家族向け集団指導 ( 患者教室 ) 患者 家族への支援 患者 家族相談窓口 電話相談 定期フォローアップ パンフレット ホームページ作成

活用したいリソース 人材 1. 多職種合同チームのコアメンバーとして 医師 ( 主に化学療法を行っている診療科 ) 薬剤師 がん化学療法看護認定看護師 特に実践的な場面でのリーダーシップの発揮 実践 がん看護専門看護師 取り組みの企画 立案 全体の調整 交渉 実践 栄養課 臨床検査部 医療連携室からの協力も必要 2. 安全面に関する取り組みを中心に連携する 医療安全管理者 感染管理認定看護師

活用したいリソース 人材 3. がん化学療法の実際 患者教育 支援 職員教育を中心に連携する 医師 ( 主に化学療法を行っている診療科 ) 外来や病棟での患者への説明 (IC) 診療時に問題を感じた患者への対応 その他の治療実施場面 患者教育 支援 職員教育 各看護単位の看護師長 副看護師長 その他の専門 認定看護師 治験コーディネーター がん化学療法看護経験の豊富な看護師 薬剤師 栄養士 栄養サポートチーム ソーシャルワーカー 理学療法士

活用したいリソース 場 ( 委員会等 ) レジメン委員会 薬事委員会 クリニカルパス委員会 医療安全対策委員会 労働安全衛生管理を行う委員会 看護部委員会 ( 教育 基準手順 研修 ) 看護部専門 認定看護師等連絡会

活用したいリソース 資源 / 資金 時間 現在活用できるものを明らかにするための院内の現状把握を行う パンフレット作成や患者教室の運営のための人材 資金 具体的目標のもとで活動を展開し 成果をあげる時期を設定 ( ゴール設定 ) する 活動内容に応じた人員配置 活動時間の確保

がん化学療法における看護師の役割 がん化学化学療法の安全確保 レジメンのアセスメント 薬剤投与管理 抗がん剤の安全な取り扱い 医療安全対策 患者 家族に対する適切な情報の提供とセルフケア支援 患者 家族向け集団教育 ( 患者教室 ) 電話相談 定期フォローアップ がん化学化学療法の支持と患者支援 副作用対策 患者 家族相談窓口 パンフレット HP の作成

がん化学療法における がん化学療法看護認定看護師の役割 がん化学療法の安全確保の推進 薬剤投与管理 抗がん剤の安全な取り扱いの推進 インシデント報告内容の解析と対策の検討 職員教育 患者 家族に対する適切な情報の提供と意思決定支援 患者 家族向け集団教育 ( 患者教室 ) 医療安全の推進 レジメンのアセスメントと指示確認 がん化学療法の支持と患者支援の推進 セルフケア支援の推進 副作用対策 患者 家族相談窓口 電話相談 定期フォローアップ パンフレット HP の作成

がん化学療法における がん看護専門看護師の役割 がん化学療法の安全確保の推進 安全 確実な投与管理の基準検討 抗がん剤の安全な取り扱いの検討 多職種チームの円滑な連携の推進 患者 家族に対する適切な情報の提供と意思決定支援対応困難 患者 家族向け集団教育 ( 患者教室 ) がん化学療法の支持と患者支援の推進 事例の支援 副作用対策 患者 家族相談窓口 電話相談 定期フォローアップ インシデント報告内容の解析と対策の検討 院内外医療者教育の企画実施 パンフレット HP の作成 監修 医療安全の推進 情報収集 情報発信 臨床研究