4,0 00 3,0 00 2,0 00 1,0 00 0 100 % 80% 60% 40% 20% 0% 山梨県の観光がもたらす経済波及効果について 東京オリンピック パラリンピックを 2 年後に控え 訪日外国人観光客の大幅な増加が期待されるなど 日本経済全体において観光の存在感が高まっています 山梨県においても 富士北麓地域を中心に数多くの観光客が訪れており 県全体で おもてなし による観光振興が進められています 観光は その地域の魅力を人々に伝える絶好の機会であるとともに 地域の経済や産業 社会に多くの恩恵をもたらすものでもあります 当社では 山梨県観光入込客統計調査結果 などの公表資料をもとに 山梨県の観光がもたらす経済波及効果を算出しましたので その結果を報告いたします 1. 山梨県の観光について ここでは 山梨県観光入込客統計調査結果 をもとに 観光入込客数や観光消費額の推移を示します 山梨県の観光入込客数の推移をみると 平成 23 年は東日本大震災の発生で観光に対するマインドが冷え込み 一時的に客足が鈍りましたが 平成 25 年に富士山が世界文化遺産に登録されたことを契機として近年増加が続いており 平成 29 年には 3,216 万人の観光客が訪れています なお 観光客を 日帰り客 と 宿泊客 に分類して 全体の観光客数に対する宿泊客の割合をみると 概ね 20% 台で推移しており 平成 29 年は 25.5% となっています 図表 1 観光入込客数および宿泊客割合の推移 観光入込客数 ( 万人 ) 宿泊客割合 2,735 2,968 3,002 3,146 3,205 3,216 2,355 23.0% 22.7% 22.0% 24.6% 27.4% 28.2% 25.5% H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 出典 : 山梨県 観光入込客統計調査結果 ( 一部数値は資料をもとに当社算出 ) 1
5,0 00 4,0 00 3,0 00 2,0 00 1,0 00 0 30, 000 25, 000 20, 000 15, 000 10, 000 5,0 00 0 観光消費額 ( 山梨県を訪れた観光入込客の消費総額 ) をみると 近年は増加傾向で推移 しており 平成 29 年は 4,133 億円に上ります また 観光客 1 人当たりの平均消費額も上 昇傾向にあり 平成 29 年は 12,851 円となっています 図表 2 観光消費額および観光客 1 人当たり平均消費額の推移 観光消費額 ( 億円 ) 1 人当たり平均消費額 ( 円 ) 3,013 3,290 3,573 3,967 4,157 4,133 2,465 10,467 11,016 11,085 11,903 12,609 12,971 12,851 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 出典 : 山梨県 観光入込客統計調査結果 ( 一部数値は資料をもとに当社算出 ) 観光消費額を県内他産業の出荷 販売額等と比較すると 電気機械器具製造業 ( 電子応用装置など ) や生産用機械器具製造業 ( 半導体 フラットパネルディスプレイ製造装置など ) といった山梨県における主要産業の製造品出荷額と同程度の水準であるほか 公共工事保証請負額 大型小売店販売額 農業産出額を大幅に上回る額となっています 図表 3 観光消費額と県内他産業との比較 電気機械器具出荷額 生産用機械器具出荷額 観光消費額 ( 億円 ) 4,392 4,376 4,133 公共工事保証請負額 1,341 大型小売店販売額 農業産出額 914 899 出典 : 山梨県 経済センサス ( 平成 28 年 ) 東日本建設業保証 前払金保証取扱高 ( 平成 29 年度 ) 経済産業省 商業動態統計 ( 平成 29 年 ) 農林水産省 生産農業所得統計 ( 平成 28 年 ) 2
2. 経済波及効果の算出 平成 29 年の山梨県の観光消費額 4,133 億円が生み出す経済波及効果について 平成 23 年山梨県産業連関表 を用いて推計した結果 経済波及効果 ( 県内産業の生産誘発効果 ) は 4,898 億円となりました 内訳をみると 直接効果が 3,217 億円 1 次波及効果が 952 億円 2 次波及効果が 729 億円となっています また 上記の結果誘発される雇用者数は 48,862 人となっています 図表 4 観光消費額の経済波及効果 観光消費額 県内産業の生産誘発効果 雇用誘発効果 直接効果 1 次波及効果 2 次波及効果 4,133 億円 4,898 億円 3,217 億円 952 億円 729 億円 48,862 人 出典 : 山梨県 観光入込客統計調査結果 ( 平成 29 年 ) 平成 23 年産業連関表 等をもとに当社算出 経済波及効果 ( 県内産業の生産誘発効果 ) について経済波及効果とは 直接効果 1 次波及効果 2 次波及効果 の和をいいます 観光がもたらす消費によって 山梨県内の産業に生産が誘発されますが その生産額が 直接効果 です 直接効果 によりもたらされる生産活動は さらに周辺の産業に波及して新たな生産を誘発します その生産額が 1 次波及効果 です この生産誘発により 労働の対価として雇用者所得が誘発され それが消費活動を刺激し さらに生産が誘発されます この生産額が 2 次波及効果 です 3
図表 5 経済波及効果の算出フロー 観光消費額 4,133 億円 観光消費額を平成 23 年山梨県産業連関表の 37 部門に振り分け 観光消費のうち土産品については観光庁 旅行 観光産業の経済効果に関する調査研究 (2016 年版 ) を参考に振り分け 購入者価格のうち 商業マージンおよび貨物運賃をそれぞれ 商業 運輸 郵便 部門に振り分けて生産者価格を算出 部門ごとに県内自給率を乗じて直接効果を算出 直接効果 3,217 億円 観光消費によって 県外に流出せず県内の各産業にもたらさ れる生産誘発効果 直接効果に投入係数を乗じて原材料等投入額を算出 部門ごとに県内自給率を乗じて県内需要額を算出 県内需要額に逆行列係数を乗じて波及効果を算出 1 次波及効果 952 億円 直接効果で必要とされる原材料等の調達によって 県内の各 産業にもたらされる生産誘発効果 雇用者所得に平均消費性向を乗じて消費支出額を算出 消費支出額を民間消費支出構成比にもとづき各産業に振り分け 部門ごとに県内自給率を乗じて県内需要額を算出 県内需要額に逆行列係数を乗じて波及効果を算出 2 次波及効果 729 億円 直接効果や 1 次波及効果を通じて生じた雇用者所得の増加 が消費として支出されることによって 県内の各産業にもた らされる生産誘発効果 経済波及効果 4,898 億円 ( 直接効果 +1 次効果 +2 次効果 ) 4
0 200 400 600 800 2,5 00 3,0 00 経済波及効果を産業別 (37 部門 ) にみると 最も効果が大きい産業は 対個人サービス の 2,495 億円となっています 同部門には 宿泊 飲食 といった観光客の主要な行動が含まれているため 突出した金額となっています また 運輸 郵便 が 782 億円 商業 が 353 億円と続いていますが このほかの産業にも幅広く観光の経済効果が波及していることが窺われます 図表 6 産業別経済波及効果 ( 億円 ) 農林水産業鉱業飲食料品繊維製品パルプ 紙 木製品化学製品石油 石炭製品プラスチック ゴム窯業 土石製品鉄鋼非鉄金属金属製品はん用機械生産用機械業務用機械電子部品電気機械情報 通信機器輸送機械その他の製造工業製品建設電力 ガス 熱供給水道廃棄物処理商業金融 保険不動産運輸 郵便情報通信公務教育 研究医療 福祉その他の非営利団体サービス対事業所サービス対個人サービス事務用品分類不明 2 2 12 7 4 4 2 1 58 1 17 26 88 35 40 128 103 82 11 29 41 30 26 41 168 309 353 782 2,495 0 500 1000 1500 1 億円未満の産業は数字を省略 2000 2500 3000 5
3. 観光 GDP の算出 前記 2. 経済波及効果の算出 で算出した経済波及効果に 粗付加価値比率を乗じた 粗付加価値誘発額を観光 GDP とみなして推計した結果 観光 GDP は 2,611 億円となりま した 以下に 国 山梨県における観光 GDP と名目 GDP との比較を示します 図表 7 観光 GDP 名目 GDP 金額 出典 全国 山梨県 名目 GDP 538.4 兆円内閣府 国民経済計算 ( 平成 28 年 ) 観光 GDP 26.7 兆円観光庁 旅行 観光産業の経済波及効果 ( 平成 28 年 ) 名目 GDP 3 兆 2,511 億円山梨県 県民経済計算 ( 平成 27 年度 ) 観光 GDP 2,611 億円山梨県 観光入込客統計調査報告書 ( 平成 29 年 ) から算出 観光 GDPについて 観光庁では国際基準 (TSA: 旅行 観光サテライト勘定 ) により算出していますが 当資料では以下で算出した粗付加価値誘発額を観光 GD Pとみなして推計しています 粗付加価値誘発額 = 経済波及効果額 粗付加価値比率 粗付加価値比率 =( 粗付加価値部門計 家計外消費支出 )/ 県内生産額 上記の粗付加価値誘発額が観光 GDPと同じ概念であること及び算出方法は観光庁 旅行 観光産業の経済波及効果 (2016 年版 ) の 316 ページを参照 名目 GDPに占める観光 GDPの割合をみると 全国が 5.0% であるのに対して 山梨県は 8.0% と 3.0 ポイント上回っています GDPに対する山梨県の観光の規模は 全国に比べて高いことが分かります 山梨県経済にとって 観光産業は重要な役割を担っていると言えます 6
図表 8 名目 GDP に占める観光 GDP の割合 5.0% 8.0% 全国 山梨県 観光 GDPを県内他産業の産業別 GDPと比較すると 山梨県の主要産業である機械工業 ( はん用 生産用 業務用機械 電子部品 デバイス 電気機械 情報 通信機器 輸送機械の合計 ) には及ばないものの 卸売 小売業と同程度の水準であるほか 食料品製造業 農林水産業を大きく上回っています 図表 9 観光 GDP と県内他産業の産業別 GDP との比較 機械工業 6,147 ( 億円 ) 卸売 小売業 2,627 観光 GDP 2,611 食料品製造業 1,529 農林水産業 551 出典 : 山梨県 県民経済計算 ( 平成 27 年度 ) 7
4. 経済波及効果向上への取組み 以上のように 観光消費額や観光 GDPを分析することにより 山梨県経済にとって観光が大きなウエイトを占めていることが確認できます 更に 観光で山梨県の経済波及効果を高めていくためには 観光入込客の増加 に加えて 以下の 2 点に取り組むことが必要だと考えます (1) 日帰りから宿泊へのシフト 宿泊期間の長期化平成 29 年における山梨県の観光入込客のうち 宿泊客の割合は 25.5% となっていますが 近隣の長野県 ( 平成 28 年 :38.2%) と比べてみると 必ずしも宿泊客の割合が高い状況にあるとは言えません 日帰り客と宿泊客を 1 人当たりの平均消費額で比べると 宿泊費が含まれる分 宿泊客の平均消費額の方が高くなります また 同じ宿泊客でも 1 泊から 2 泊 2 泊から 3 泊と 宿泊期間の長期化を促すことにより 平均消費額の上昇につながります 例えば 地域の魅力ある観光資源を活かした 着地型観光 ( ) 滞在型観光 などの推進によって 全体の観光消費額および経済波及効果の増加を促すことができます ( ) 着地型観光 = 観光の受け入れ側が主体となり その地域ならではの旅行プランを企画する観光の形態 図表 10 観光客 1 人当たり平均消費額 ( 円 ) 日帰り客 宿泊客 観光等 ビジネス 観光等 ビジネス 県内 6,917 3,052 21,450 16,900 県外 11,059 5,173 25,576 23,195 訪日外国人 4,841 10,409 7,718 91,526 出典 : 山梨県 観光入込客統計調査結果 ( 平成 29 年 ) 参考までに 日帰り客の 10% が宿泊客へシフトした場合の経済波及効果をシミュレーシ ョンしました この結果 経済波及効果は 5,341 億円となり 現状より 9.0% 増加すると見 込まれます 図表 11 日帰り客の 10% が宿泊客へシフト 宿泊客 820 万人日帰り客 2,396 万人 宿泊客 1,059 万人日帰り客 2,157 万人 8
図表 12 宿泊へのシフトによる経済波及効果 ( 億円 ) 9.0% 増 4,898 5,341 現状 試算 (2) 各産業の県内自給率向上経済波及効果を算出するうえでは 県内自給率 ( 必要とされる財 サービス等を県内で調達する割合 ) が重要な要素となります 簡単な例を挙げると 観光客に提供する料理の材料や観光客が購入する土産品を県外 ( または国外 ) から調達するほど 県内自給率は低くなります 平成 23 年山梨県産業連関表をみると 主に農林水産業や製造業の県内自給率が比較的低いことが分かります 例えば 宿泊施設で提供する料理に県産の農産物を多く使用するなど 県内自給率を高めることにより 経済波及効果の増加を促すことができます 参考までに 各産業の県内自給率が 10 ポイント上昇 (100% を上限とする ) した場合の 経済波及効果をシミュレーションしました この結果 経済波及効果は 5,759 億円となり 現状より 17.6% 増加すると見込まれます 9
農林水産業 鉱業 飲食料品 繊維製品 パルプ 紙 木製品 化学製品 石油 石炭製品 プラスチック ゴム 窯業 土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 はん用機械 生産用機械 業務用機械 電子部品 電気機械 情報 通信機器 輸送機械 その他の製造工業製品 建設 電力 ガス 熱供給 水道 廃棄物処理 商業 金融 保険 不動産 運輸 郵便 情報通信 公務 教育 研究 医療 福祉 その他の非営利団体サービス 対事業所サービス 対個人サービス 事務用品 分類不明 図表 13 県内自給率が 10 ポイント上昇 農林水産業鉱業飲食料品繊維製品パルプ 紙 木製品化学製品石油 石炭製品プラスチック ゴム窯業 土石製品鉄鋼非鉄金属金属製品はん用機械生産用機械業務用機械電子部品電気機械情報 通信機器輸送機械その他の製造工業製品建設電力 ガス 熱供給水道廃棄物処理商業金融 保険不動産運輸 郵便情報通信公務教育 研究医療 福祉その他の非営利団体サービス対事業所サービス対個人サービス事務用品分類不明 0% 50% 100% 0% 50% 100% 図表 14 県内自給率上昇による経済波及効果 ( 億円 ) 4,898 17.6% 増 5,759 現状 試算 10