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契約の終了 更新18 無期労働契約では 解雇は 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当であると認められない場合 は 権利濫用として無効である と定められています ( 労働契約法 16 条 ) 解雇権濫用法理 と呼ばれるものです (2) 解雇手続解雇をする場合には 少なくとも30 日前に解雇の予告

Taro-「改正労働契約法」の活用と

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

基発第       号

3. 無期労働契約への転換後の労働条件無期労働契約に転換した後の職務 勤務地 賃金 労働時間等の労働条件は 労働協約 就業規則または個々の労働契約等に別段の定めがない限り 直前の有期労働契約と同一になるとされており 無期転換に当たって職務の内容などが変更されないにもかかわらず 無期転換後の労働条件を

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Microsoft PowerPoint - 【資料No.5】雇止めの抑制策.pptx

Microsoft PowerPoint - 2の(別紙2)雇用形態に関わらない公正な待遇の確保【佐賀局版】

定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

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調査結果のポイント 従業員採用状況について 平成 28 年度 (H28.4 ~ H29.3) は 計画どおり もしくは計画より多く採用した と回答した企業が69% 採用計画について 29 年度 (H29.4 ~ H30.3) は 28 年度実績と比較し 増やす と回答した企業と 減らす と回答した企

規定例 ( 育児 介護休業制度 ) 株式会社 と 労働組合は 育児 介護休業制度に関し 次 のとおり協定する ( 対象者 ) 育児休業の対象者は 生後満 歳に達しない子を養育するすべての従業員とする 2 介護休業の対象者は 介護を必要とする家族を持つすべての従業員とする 介護の対象となる家族の範囲は

(1) 第 1 無期転換ルールとは? 無期転換ルールの目的 Q 1 平成 25 年 4 月 1 日に施行された 無期転換ルール とは どういうもの ですか? A 1 無期転換ルール とは 有期労働契約が反復更新されて5 年を超える場合には 当該契約の初日から末日までの間に労働者が使用者に期間の定めの

9-1 退職のルール 職することは契約違反となります したがって 労働者は勝手に退職することはできません 就業規則に 契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には それに従って退職できることになりますが 特段の定めがない場合には なるべく合意解約ができるように 十分話し合うことが大切です ただ

短時間 有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針 について ( 同一労働同一賃金ガイドライン ) 厚生労働省雇用環境 均等局有期 短時間労働課職業安定局需給調整事業課

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1. 表紙

(2) 労働者人口の減少 一方労働人口は減少しつつあり 推計値では 2025 年には 6300 万人まで減少見込みとなっております 問題点 以下のような状況の中で今後どのように労働者を確保して 企業を活性化させるか? 条件 1 労働者人口が減少する 2 フルタイム労働者が減る 3 未熟練従業員が増え

第27号

1 なぜ 同一労働同一賃金 が導入されるのか? 総務省統計局労働力調査 ( 詳細集計 ) 平成 30 年 (2018 年 )7~9 月期平均 ( 速報 ) によると 非正規労働者数は 2,118 万人 ( 前年同期比 68 万人増加 ) 正規労働者数は 3,500 万人となっています 役員を除く雇用

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違反する 労働契約法 20 条 長澤運輸事件最高裁 ( 平成 30 年 6 月 1 日判決 ) 速報 2346 号定年後再雇用の嘱託者につき精勤手当 超勤手当を除く賃金項目は労働契約法 20 条に違反しないとされた例 定年後 1 年契約の嘱託社員として再雇用されたトラック乗務員の一審原告らが 定年前

無期契約職員就業規則

目次 Ⅰ. 労働契約法の改正 1. そもそも労働契約法とは? 2. 改正労働契約法の最大のポイント 無期転換申込権 とは? 3. 最新トピック~ 私立大学に有利な法改正が 4 月施行 ~ 大学教員任期法 と 研究開発力強化法 の改正とはただし 小 中 高には適用なし ( 要注意 ) 4. 改正の第二


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平均賃金を支払わなければならない この予告日数は平均賃金を支払った日数分短縮される ( 労基法 20 条 ) 3 試用期間中の労働者であっても 14 日を超えて雇用された場合は 上記 2の予告の手続きが必要である ( 労基法 21 条 ) 4 例外として 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の

今回の改正によってこの規定が廃止され 労使協定の基準を設けることで対象者を選別することができなくなり 希望者全員を再雇用しなければならなくなりました ただし 今回の改正には 一定の期間の経過措置が設けられております つまり 平成 25 年 4 月 1 日以降であっても直ちに希望者全員を 歳まで再雇用

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知って役立つ労働法

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被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

(3) 不合理な差別的労働条件の禁止 ( 新 20 条 ) 2013 年 4 月 1 日施行有期であることを理由とする不合理な労働条件 1 職務の内容 2 職務内容や配置の変更の範囲 3その他の事情 * 違反すれば無効 無効となると 無期契約の労働者と同じ待遇になると考えるべき * パートタイム労働

Microsoft Word - 様式第1号 キャリアアップ計画書 記入例

 

平成 31 年 4 月 1 日から平成 34 年 3 月 31 日まで 63 歳平成 34 年 4 月 1 日から平成 37 年 3 月 31 日まで 64 歳 4 定年について 労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません ( 均等法第 6 条 ) ( 退職 ) 第 48 条前条に定める

2 無期転換への対応状況 通算 5 年を超えて有期労働契約を反復更新している労働者の人数 (1) 厚生労働省の取り組み 超党派 非正規雇用対策議員連盟の厚労大臣申し入れ ( ) 2014 年 11 月 6 日結成 ( 会長 尾辻秀久 ) 平成 28 年度予算概算要求及び税制改正要望に向

第36号

労働相談とはなにか

今後 この政府のガイドライン案をもとに 法改正の立案作業を進め 本ガイドライン案については 関係者の意見や改正法案についての国会審議を踏まえて 最終的に確定する また 本ガイドライン案は 同一の企業 団体における 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正することを目的としているため


2 継続雇用 の状況 (1) 定年制 の採用状況 定年制を採用している と回答している企業は 95.9% である 主要事業内容別では 飲食店 宿泊業 (75.8%) で 正社員数別では 29 人以下 (86.0%) 高年齢者比率別では 71% 以上 ( 85.6%) で定年制の採用率がやや低い また

Ⅰ 第 2 章無期転換申込権の行使の効果 75 働協約や就業規則に違反しない限り 当該合意によって従前の労働条件と異なる労働条件を定めることができます ( 労契 12 労組 16) なお 個別合意によって 無期労働契約の労働条件を定める場合の留意点に関しては Q19 を参照してください 3 別段の定

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

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本調査へのコメント ( 独立行政法人労働政策研究 研修機構労働政策研究所副所長荻野登氏 ) 労働契約法第 18 条の無期転換ルールが本格的に実施された今年 4 月以降 直近の状況を知るうえで 貴重なデータを提供している それによると 転換申込権の対象者 (175 人 ) のうち 4 人に 1 人が

(2)3 年以内の有期プロジェクト型業務 ( 同項第 2 号イ ) 事業の開始 転換 拡大 縮小または廃止のために必要な業務で 一定期間内で完了することが予定されている業務への派遣については その業務が完了するまでの期間であれば 受入期間の制限はありません (3) 日数限定業務 ( 同項第 2 号ロ

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

等により明示するように努めるものとする ( 就業規則の作成の手続 ) 第 7 条事業主は 短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し 又は変更しようとするときは 当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする ( 短時間労働者の待遇の原

申出が遅れた場合は 会社は育児 介護休業法に基づき 休業開始日の指定ができる 第 2 条 ( 介護休業 ) 1 要介護状態にある対象家族を介護する従業員 ( 日雇従業員を除く ) 及び法定要件を全て満たした有期契約従業員は 申出により 介護を必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲で

平成 27 年改正の概要 ( サマリー ) 一般労働者派遣事業 ( 許可制 ) 特定労働者派遣事業 ( 届出制 ) 26 業務 期間制限なし 26 業務以外 原則 1 年 意見聴取により最長 3 年まで 規定なし 規定なし 1. 許可制への統一 2. 派遣契約の期間制限について すべての労働者派遣事

筑紫野市学童保育連絡協議会学童クラブ指導員就業規則

佐藤委員提出資料

均衡待遇・正社員化推進奨励金 支給申請の手引き

必要とする家族 1 人につき のべ 93 日間までの範囲内で 3 回を上限として介護休業をすることができる ただし 有期契約従業員にあっては 申出時点において 次のいずれにも該当する者に限り 介護休業をすることができる 一入社 1 年以上であること二介護休業開始予定日から 93 日を経過する日から

( 様式第 1 号 ( 共通 )) 共通事項 1 キャリアアップ管理者 情報 ( 氏名 ): 役職 ( 配置日 ): 年月日 2 キャリアアップ管理者 の業務内容 ( 事業所情報欄 ) 3 事業主名 印 4 事業所住所 ( - ) 5 電話番号 ( ) - 6 担当者 7 企業全体で常時雇用する労働

I 事案の概要 本件は 東証一部上場企業の物流大手である株式会社ハマキョウレックス ( 以下 被告 被控訴人 又は 上告人 といいます ) との間で有期雇用契約 1 を締結している契約社員 ( 以下 原告 控訴人 又は 被上告人 といいます ) が 以下に掲げる正社員と契約社員との間の労働条件 (

本調査へのコメント ( 独立行政法人労働政策研究 研修機構労働政策研究所副所長荻野登氏 ) 無期転換ルールに基づく申し込み権が本格的に発生するまで一年を切るなか 連合調査によるとまだ半数の有期雇用労働者がこのルールを知らないままでいる まず この周知が残された期間での最大の課題になるのではないか 当

( イ ) 従業員の配偶者であって育児休業の対象となる子の親であり 1 歳 6か月以降育児に当たる予定であった者が死亡 負傷 疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合 6 育児休業をすることを希望する従業員は 原則として 育児休業を開始しようとする日の1か月前 (4 及び5に基づく1 歳

Microsoft PowerPoint - ★291212訂正版【P.4~P.7】求人申込書記入例(更新)_ (更新)_

2 賞与 3 手当 4 福利厚生 5 その他 第 4 派遣労働者 1 基本給 2 賞与 3 手当 4 福利厚生 5 その他 第 5 協定対象派遣労働者 1 賃金 2 福利厚生 3 その他 第 1 目的 この指針は 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 ( 平成 5 年法律 -

〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

4-1 育児関連 育児休業の対象者 ( 第 5 条 第 6 条第 1 項 ) 育児休業は 男女労働者とも事業主に申し出ることにより取得することができます 対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには 事業主は これを拒むことはできません ただし 日々雇用される労働者 は対象から除外されます

労働基準関係法令に違反するおそれがある事項 労働時間 15 タイムカード等の客観的な記録から確認するなどにより 実際に働いた時間を適正に把握していますか 16 準備や片付けの時間 ( 学習塾等の場合 授業以外に行う質問対応 報告書の作成等に要した時間 ) を労働時間としていますか 賃金 17 賃金を

< 無期雇用になることの意義 > 1 契約更新時の不更新 雇止めの不安が解消される 2 仕事の改善点など 職場で意見が言いやすくなる 3 労働者としての権利行使がしやすくなる ( 有給休暇 病休など ) 4 労働組合に入ることをためらう必要がなくなる ~ 無期転換ルール ( 労働契約法第 18 条

農業法人等における雇用に関する調査結果

1 非正規雇用者用 働き方 に関するアンケート あなた自身についてお答えください F1. 性別 ( ひとつだけ ) 1. 男性 2. 女性 F2. 生年月日 ( 西暦 )19 年月 ( 生まれ ) F3. 最終学歴 ( ひとつだけ ) 在学中の場合は在学中の学校を 中途退学の場合はその前の学歴を選ん

★HP版調整事件解説集h28[019]

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た本件諸手当との差額の支払を求め ( 以下, この請求を 本件差額賃金請求 という ),2 予備的に, 不法行為に基づき, 上記差額に相当する額の損害賠償を求める ( 以下, この請求を 本件損害賠償請求 という ) などの請求をする事案である 2 原審の確定した事実関係等の概要は, 次のとおりであ

1. 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴う留意点 改正高年齢者雇用安定法の施行に伴い 厚生労働省より Q&A が公表されています 今回はこの Q&A に記載があるものについて 参考になると思われるものについてピックアップしてまとめています (1) 継続雇用制度の導入について i. 定年退職者を嘱託やパ

務が他の職種の職務と明確な差異がある場合には 解雇回避努力の内容として 配置転換や職務転換に限られず 退職金の上乗せ 再就職支援等をもって解雇回避努力を尽くしたとされる場合があり 他方 限定された職務が高度な専門性や高い職位を伴わない場合 あるいは当該職務が他の職種の職務と差異が小さい場合には 解雇

Microsoft Word - 様式第1号 キャリアアップ計画書記入例(全国版)

題名

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の手支援策の紹介事例の紹介1 ページに記載した法改正の趣旨や内容を十分に理解した上で 以下の手順で制度導入を進めましょう STEP 1 STEP 1 STEP 2 STEP 3 STEP 4 有期社員の就労実態を調べる社内の仕事を整理し 社員区分ごとに任せる仕事を考える適用する労働条件を検討し 就業

が発生した場合 どのように対応していますか 本書を読んで対応策を検討してください また 第 2 部では 平成 26 年 4 月に改正され 27 年 4 月に施行されたパートタイム労働法に対応するための実務について述べています パート専用就業規則例を掲載し ポイント解説をしています さらに 第 3 部

報酬改定(処遇改善加算・処遇改善特別加算)

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Microsoft Word - 改訂 H28 H27施行状況記者発表(リード文)

の業務について派遣先が九の 1 に抵触することとなる最初の日 六派遣先への通知 1 派遣元事業主は 労働者派遣をするときは 当該労働者派遣に係る派遣労働者が九の 1の ( 二 ) の厚生労働省令で定める者であるか否かの別についても派遣先に通知しなければならないものとすること ( 第三十五条第一項関係

Microsoft Word - H29 結果概要

Ⅰ 事業規制の強化

採用者数の記載にあたっては 機械的に採用日の属する年度とするのではなく 一括 採用を行っている場合等において 次年度新規採用者を一定期間前倒しして雇い入れた 場合は 次年度の採用者数に含めることとしてください 5 新卒者等以外 (35 歳未満 ) の採用実績及び定着状況採用者数は認定申請日の直近の3

201204shijyo.pdf

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2 譲渡禁止特約の効力改正前は 譲渡禁止特約を付した場合は債権の譲渡はできない ( ただし 特約の存在を知らない第三者等には対抗できない ) とされていましたが 改正法では このような特約があっても債権の譲渡は効力を妨げられないことを明記しました ( 466Ⅱ 1) ただし 3に記載するとおり 債務

Ⅲ コース等で区分した雇用管理を行うに当たって留意すべき事項 ( 指針 3) コース別雇用管理 とは?? 雇用する労働者について 労働者の職種 資格等に基づき複数のコースを設定し コースごとに異なる配置 昇進 教育訓練等の雇用管理を行うシステムをいいます ( 例 ) 総合職や一般職等のコースを設定し

あおもり働き方改革推進企業認証制度 Q&A 平成 29 年 12 月 14 日 Vol.1 目次 1 あおもり働き方改革推進企業認証制度全般関係 Q1 県外に本社がある場合はどのように申請できるのか P1 2 あおもり働き方改革宣言企業関係 Q2 次世代法に基づく一般事業主行動計画とはどういうものか

2 常用代替防止 ⑴ 報告書における意見報告書は, 常用代替防止という考え方には問題点があるとして,1 常用代替防止は, 派遣先の常用労働者を保護する考え方であり, 派遣労働者の保護や雇用の安定と必ずしも両立しない面がある,2 制度創設時, 常用代替を防止する趣旨は正規雇用労働者の雇用を基本とする日

日韓比較(10):非正規雇用-その4 なぜ雇用形態により人件費は異なるのか?―賃金水準や社会保険の適用率に差があるのが主な原因―

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厚生労働省発表

期間雇用社員の 未来を切りひらく訴訟 労働契約法 20 条 ( 雇用 ) 期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止 第 20 条有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が 期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の内容である労

制度名 No. 1 ( 働 1) フレックスタイム制度 対象者: 営業職の正社員 労働時間の清算期間: 毎月 1 日から末日までの1か月 1 日の所定労働時間は 8 時間 清算期間内の総労働時間: 1 日あたり8 時間として 清算期間中の労働日数を乗じて得られた時間数 ただし 清算期間内を平均し1

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有期労働契約に関する労働契約法改正の活用 2013 年 2 月 23 日 日本労働弁護団幹事長 弁護士 水口洋介 第 1 有期契約労働者の実態 1 有期労働契約と無期労働契約 / 有期契約労働者と無期契約労働者 フルタイム パートタイム 有期 契約社員 嘱託 派遣パート アルバイト 無期 正社員 いわゆる 正社員 とは? 正社員 = 無期契約労働者? メンバーシップ? 正社員 像の歪み 24 時間戦えますか? 配転 残業を厭わないのが当然 参照 : パート法 8 条 通常の労働者 1 期間の定めのない労働契約 2 業務の内容及び当該業務に伴う責任 ( 職務の内容 ) 3 雇用全期間に職務の内容及び配置の変更の範囲 ( 人事運用の仕組み ) 2 労働者の構成 (1) 2011 年労働力調査 厚労省の推計 正 社 員 3355 万人 非正規合計 1756 万人 契約社員 嘱託 330 万人 パート アルバイト 1192 万人 派遣社員 96 万人 その他 137 万人 ( うち有期契約労働者 約 1200 万人 ) 合 計 5111 万人 (2) 非正規労働者の急増 単位 : 万人 (%) 全雇用者 正 社 員 非 正 規 1984 年 4195 万 3333 万 (84.7%) 604 万 (15.3%) 2010 年 5111 万 3355 万 (65.6%) 1756 万 (34.4%) 3 有期契約労働者の問題点 雇用の不安定 更新拒否の不安 将来の職業生活 生活への不安 低い労働条件 ( 低処遇 ) 4 根本的に是正するためには 正社員 像の歪みの是正正規 非正規問わず 人間らしく働くルール ( ディーセント ワークの確立 ) 有期労働契約締結に客観的 合理的な理由を要件とする 入口規制 の導入 雇用形態を理由とする不合理な労働条件の禁止を - 1 -

第 2 2012 年有期労働契約に関する労働契約法改正の趣旨 1 立法趣旨 有期労働契約の雇止めに対する不安を解消し 期間の定めのあることによる不 合理な労働条件を是正する 5 年前の雇止めを促進することを目的とした法律ではない 2 立法内容と評価 (1) 立法のポイント 1 5 年超の無期転換ルール 無期契約転換申込権 ( 新 18 条 )4 月 1 日施行 2 雇止めの規制の法定化 ( 新 19 条 ) 現 18 条で施行済み 3 有期を理由とする不合理な労働条件の禁止 ( 新 20 条 )4 月 1 日施行 (2) 改正法の評価 入口規制を導入しなかったことが最大の弱点 不十分さと弊害 ( 副作用 ) 労働ルール確立に向けての労働運動の弱さと世論喚起不足 画期的な 有期を理由とする不合理な労働条件の禁止 ( 新 20 条 ) 第 3 5 年超の無期転換ルール 無期転換申込権 ( 新 18 条 ) 1 要件と効果 (1) 要件 1 同一使用者との間の有期労働契約を更新して通算 5 年の契約期間を超えること 2 現に締結している有期労働契約期間内に無期契約転換を申込みをすること (2) 効果 使用者は 無期契約転換の申込みを承諾したものとみなす 転換後の労働条件は有期契約と同一の労働条件であることが原則 5 年ルールは利用可能期間や上限ではない 有期は5 年までと誤解しない 2 5 年を超えること (1) 5 年を超えて働くことは要件ではない ( 存続契約期間で通算 ) 契約期間を通算して5 年であれば良い 例 )3 年契約であれば1 回目の更新で申込権発生する (2) 5 年カウントは 2013 年 4 月 1 日以降に契約 ( 更新 ) 締結した日から 例 )2013 年 4 月 1 日 5 月 1 日 ( 更新 ) 1 年契約 1 年契約 これ以前はカウントされない ここから5 年をカウント (3) クーリング期間 後述 3 同一の使用者との間の契約 (1) 労働契約の締結当事者としての使用者が同一であること 事業場は別であっても良い 甲社の A 工場 B 工場と移っても通算される - 2 -

(2) 派遣や請負形態を偽装した場合無期転換申込権の発生を免れる意図の場合には同一の使用者 ( 施行通達 ) (3) 合併 会社分割及び事業譲渡の場合 合併 会社分割は労働契約がそのまま承継される場合であるから同一使用者 事業譲渡には 1 労働契約をそのまま引き継ぐ場合 2いったん退職して新たに採用される場合がある 1は 同一の使用者となる 2は同一でなくなる (4) 派遣労働者 派遣会社 ( 派遣元 ) との契約で同一であるかどうかを決定する 登録型派遣にも適用される 5 年を超えれば 無期の派遣労働契約となる 4 無期契約転換申込権の行使 (1) 申込みの方式 方式に制限なし 口頭でも良い 明確化のために 書面により申し込むのが良い 受領も確認を 書式参照 (2) 申込の期間 5 年を超える有期契約期間の締結の日から満了の日まで ( 例 )7ヶ月契約 5 年 更新 7ヶ月契約 7ヶ月契約 7ヶ月契約 申込権 1 発生 申込権 1 消滅申込権 2 発生 (3) 無期転換申込権は労働者の権利 ( 形成権 )= 行使するかどうかは労働者の自由 使用者が申込みの期間を就業規則等で制限することができるか 例 )5 年を超える契約を終える30 日前までに申込みをしなければならない 新 18 条で定められた申込権を使用者が制限することはできない ただし 申込権の行使の自由を抑制しない限度で問い合わせることは可能 (4) 無期転換申込権の自由な行使を抑制する使用者の措置は違法となる 事前に使用者が無期転換申込権をしないとの約束 ( 事前放棄 ) は無効例 )1ヶ月の代償金を支払うから無期転換申込みをしないことを約束させる場合原則として無効 労働者は無期転換申込権を行使できる ただし 代償金は返還しなければならない 申込権発生後 使用者が労働者に行使しないことを約束させることは許されるか 労働者が自由な意思で約束することは許されるとの考え方 ( 施行通達 ) しかし 行使するかどうかはあくまで労働者の自由である 使用者からの発意で 今回は無期転換申込みをしないことを約束させることは労働者の自由意思を侵害するおそれがあり 発生後であっても将来の行使の抑止 萎縮効果もあり 放棄の合意の効力は認めるべきではない - 3 -

5 クーリング期間当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間 ( これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く 以下この項において 空白期間 という ) があり 当該空白期間が六月 ( 当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間 ( 当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは 当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間 以下この項において同じ ) が一年に満たない場合にあっては 当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間 ) 以上であるときは 当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は 通算契約期間に算入しない (1) 原則厚労省パンフレットどおり A あ有期契約 1 年空白期間 6 月い有期契約 1 年 カウントせず ( 通算せず ) クーリング再カウント開始 B あ有期契約 1 年空白期間 4 月い有期契約 1 年 カウントする ( 通算する ) クーリングせず通算する (2) 一年に満たない場合 A あ有期契約 7 月空白期間 4 月い有期契約 7 月カウントせず クーリング再カウント開始 B あ有期契約 7 月空白期間 3 月い有期契約 7 月 カウントする ( 通算する ) クーリングせず通算する (3) 6ヶ月契約の例 1 年 2 年 3 年 4 年 5 年 6 月 6 月 6 月 6 月 空白 6 月 6 月 6 月 6 月 6 月 6 月 6 月 無期契約 あ (6ヶ月) い not 3ヶ月 無期転換申込権 発生 - 4 -

6 効果無期転換申込みを使用者は承諾したとみなされる ( 使用者は拒絶できない ) 無期契約への転換を拒絶した場合には 解雇 となる 労契法 16 条適用 5 年を超える有期契約期間中に解雇したら中途解雇 労契法 17 条適用 中途解雇無効を主張して 無期転換申込みもする 7 無期契約転換後の労働条件 (1) 原則有期契約の労働条件と同一の労働条件 (2) 別段の定め について無期転換後の労働条件は 1 個別合意 2 就業規則 3 労働協約によって変更することができる 特に不利益変更が問題となる 1 個別合意 使用者が不利益な労働条件の提示をして同意を求めることは許されるか 例 ) 時給を下げる あるいは 配転に応じることを条件とする 法的には 労働者はこれを拒むことができる 拒んだことを理由にして 使用者は無期転換申込みを拒絶することはできない 現実には立場の弱い有期労働者が同意をしてしまった場合 不利益変更の合意は有効か 労働者が自由な意思によって合意したといえなければ有効と言えない 2 就業規則による変更使用者が 無期転換労働者用の就業規則を設ける場合には 就業規則の不利益変更の合理性が必要 ( 労契法 10 条 ) 有期契約では配転条項がなかったが 無期転換後の労働者用の就業規則に配転条項が定められた場合は就業規則は適用されるか 従前の有期契約では勤務地限定の特約があったと認められる場合には 個別の労働者の合意がない限り 就業規則の配転条項に拘束されない 勤務地限定の特約がないと認めら得た場合には 労契法 10 条の厳格な合理性の要件 ( 業務の必要性 労使交渉の状況等 ) に従って拘束するかが決定される 3 労働協約による変更 有期契約労働者も含めて組織する労働組合の労働協約は 別段の合意になる 有期契約労働者を組織していない企業労組の労働協約は 非組合員の労働者を拘束しない 第 4 雇止めの法定化 ( 新 19 条 現 18 条 ) 1 趣旨雇止めの判例法理を法定化したものであり 判例法理の趣旨を変えないとするのが立法者意思 法文は判例法理の表現とは異なっており これを判例法理の趣旨にそって解釈することが求められる 判例法理の後退は許されない - 5 -

2 最高裁判例 ( パナソニックプラズマディスプレイ事件平成 21 年 12 月 18 日 ) 期間の定めのある雇用契約があたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在している場合 又は 労働者においてその期間満了後も雇用関係が継続されるものと期待することに合理性が認められる場合には 当該雇用契約の雇止めは 客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときには許されない ( 東芝柳町工場事件 日立メディコ事件 ) 3 要件 (1) 新 19 条の3 要件 1 申込み有期契約期間満了する日までに有期労働契約の更新の申込み又は期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをすること 2 合理的期待等 1 号 ( 反復更新され 社会通念上無期契約と同視できる ) 又は2 号 ( 期間満了時に更新されるものと期待することについて合理的な理由がある ) に該当すること 3 客観的合理的な理由及び社会通念上の相当性使用者の拒絶が 客観的に合理的な理由を欠き 社会通念上相当でないこと (2) 申込み が必要 従来の判例にはなかった新たな要件申込みには要式はなく 口頭でもよいし 黙示の申込みでもよい 異議や不満を述べることで黙示の申込みがあることになる ( 施行通達 ) 今後は弁護士や労組は 更新の申込みを明示的に行うことが望ましい 期間満了前に更新の申込みを積極的に行うことが法の趣旨に合致している (3) 遅滞なく 正当な又は合理的な理由による申込みの遅滞は許容される (4) 合理的な期待の存在時期 法文では 期間満了時 に更新されるもの期待することについて合理的な理由がある とされている 契約締結以後のすべての事情を考慮して 更新の期待について合理的な理由があるかどうかを判断するという趣旨であり 合理的期待が生じた場合に使用者が一方的に更新をしないことを通告等をしても合理的な期待が失われるものではない (5) 合理的期待等の判断要素 1 業務の臨時性 恒常性 2 更新回数 3 雇用通算期間 4 契約期間管理の状況 5 雇用継続の期待を持たせる言動や制度の有無 5 他の労働者の継続雇用の状況等を総合的に判断する この点は変わらない 4 効果使用者は 従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなされる 承諾したものとみなされた更新後の労働契約の期間は有期か無期か - 6 -

法文が 有期労働契約の締結 ( 更新 ) の申込み を 承諾したものとみなす と定めているため 文理上 更新後の労働契約は有期となる 5 無期転換回避のための雇止めへの対応 (1) 5 年前でも雇止め法理は適用される 使用者が無期転換を回避するために 雇止めを主張することは客観的合理性も 社会通念上相当でもなく 新 18 条に違反して無効となる ただし 他の客観的合理的理由等がある場合には法的には雇止めは可能 この場合であっても 5 年ルール回避は合理的な理由を基礎付ける事情にはならない (2) 5 年前に雇止めされた場合の対応 雇止め無効を主張すると同時に 雇止めが無効になれば通算契約期間が5 年を超える場合には 雇止め無効の主張 ( 更新の申込み ) とともに 無期転換申込みも行うこと 6 使用者が5 年を超える前に労働条件を切り下げて更新する旨を通知した場合 労働者は 新 19 条により 従前の有期労働契約と同一の労働条件で申し込むことができる 使用者は 労働条件に承諾しないことを理由に更新拒絶をすることはできない ヒルトン事件東京高判平成 14.11.26 労判 843 号同高裁判決は 条件をつけた承諾は契約拒絶との民法 528 条を根拠にして雇止めを肯定した しかし 新 19 条は従前の有期労働契約と同一の条件で申し込むことを認めた 労働条件を切り下げを理由にして使用者が更新を拒絶した場合には その労働条件切り下げの必要性などの事情も含めて 客観的合理性の有無 社会通念上の相当性の有無が判断されることになる これは経営上の理由による雇止めの問題 ( 整理解雇 ) になろう 7 不更新条項等への対応 (1) 不更新条項等の使用者の措置使用者は 5 年ルールを回避するために不更新条項等を導入する対応に出ることが予想される 使用者の対応措置は次の類型が考えられる 1 更新途中に一方的に不更新を通告 宣言する場合 2 更新途中に一方的に就業規則に更新の上限を設定する場合 3 更新途中に契約書中に不更新条項を挿入して合意を求める場合 4 新たに有期契約を締結する際に不更新条項を設定したり 就業規則に更新の上限を定める場合 (2) 更新途中に一方的に不更新を通告 宣言する場合への対応 いったん生じた合理的期待を 使用者が一方的に奪うことはできない (3) 更新途中に一方的に就業規則に更新の上限を設定する場合 - 7 -

就業規則の不利益変更の問題労契法 10 条の厳格な合理性の有無が問題となるが 労契法 18 条の立法趣旨から一方的な剥奪は許されまい (4) 更新途中に契約書中に不更新条項を挿入して合意を求める場合 従来の多数の裁判例では 労働者の真意であったか 不更新合意の有効性を否定する法律要件の有無 ( 錯誤 詐欺 不当な圧力 自由な意思によって合意したか ) で判断している ( 近畿コカ コーラボトリング事件 大阪地判平 17.1.1 労判 893 号 本田技研事件東京高判平 24.9.20) しかし 雇止め法理は 判例法理から 法律 ( 強行規定 ) になったのであり 労働に関する公序になった 使用者の発意により 新 19 条の強行規定を当事者の合意により排除することは 公序良俗違反と言うべき 明石書店事件東京地決平 22.7.30 労判 1014 号解雇権濫用の一つの事情として判断するとしている (5) 新たに有期契約を締結する際に不更新条項を設定したり 就業規則に更新の上限を定める場合 直ちに無効とはならない 入口規制をしなかった改正労契法の限界 しかし 当初に不更新条項等があっても 実態が雇用の継続があったり 使用者の言動次第では 合理的期待が生じる場合があり この場合には新 19 条が適用される 第 5 不合理な労働条件の禁止 ( 新 20 条 ) 1 立法の趣旨有期を理由とした不合理の労働条件を禁止する強行規定パート法 8 条とは法律要件が異なる 2 要件 (1) 同一の使用者の無期契約労働者 ( 正社員 ) と労働条件の相違があること 派遣労働者の場合は 派遣先企業の正社員との関係では適用がない (2) 労働条件の相違が不合理であること (3) 不合理性の判断は 1 業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度 2 当該職務の内容及び配置の変更の範囲 3その他の事情を考慮して決める 3 効果 (1) 新 20 条は私法的効力 ( 契約を違法 無効とする効果 ) があり 不合理な労働条件を定めた労働契約 就業規則 労働協約を違法無効とする (2) 無効となったあとの労働条件がどうなるか 後述 4 対象となる労働条件 全ての労働条件が含まれる 賃金 ( 基本給 各種手当 ( 住宅手当 交通手当等 ) 賞与 退職金 ) 休憩 休暇 ( 傷病休暇 慶弔休暇 分娩休暇 育児 介護休暇等 ) - 8 -

労働時間 安全規定 労災補償 教育 訓練 食堂利用等々 5 合理性の判断基準 (1) 職務の同一性を要件としない パート法 8 条とは異なる 正社員と同一の職務内容や人材活用の仕組みの同一性を要件としていない 対象となる労働条件ごとに要素が判断される 基本給が格差が問題となるケース 食事手当や食堂利用の格差が問題となるケースで合理性の内容は異なる (2) 業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度 業務の内容労働者の担当する業務それ自体の比較 当該業務に伴う責任の程度例えば 残業に応じる責任などが想定されている (3) 当該職務の内容及び配置の変更の範囲 人事配置の変更の範囲が問題となる 職務の配置変更 職場の配置変更 昇進 昇格等 パート法のように正社員と同一であることは要件となっていない 実態によって判断すること正社員には配置が予定されている就業規則があっても 実際にはほとんど配転がない職場も多いことに注意 (4) その他の事情 採用手続 採用募集方法 勤続年数 労使慣行など様々な事情が含まれることになろう (5) 具体例 正社員には住宅手当が月 2 万円支給されているが 有期社員 ( フルタイム ) には10 年以上の人にも住宅手当が支給されない 職場は都内だけで配転は実際上ない 上記大阪地裁の日本郵便逓送事件の臨時運転士の手当や賃金の格差は不合理か? 6 過去の裁判例への当てはめ 新 20 条を適用したら Ⅰ 丸子警報器事件 ( 長野地上田支部平 8.3.15 労判 690 号 ) (1) 事案の概要 自動車用警報機器等の製造会社である会社において 女性臨時社員として働く原 告らが不当な賃金差別として不法行為に基づき損害賠償請求した事案である 1 会社の規模 会社の従業員数は155 名であり うち110 名が正社員 ( 男性 87 名 女性 23 名 ) 臨時 社員 ( 女性 43 名 男性 2 名 ( 嘱託 )) でるある 中心となる製造部には101 名 ( うち臨 時社員 37 名 ) がおり 原告はこの製造部に所属する臨時社員である 2 雇用形態 臨時社員は 原則として雇用期間 2ヶ月の雇用契約を更新してきており 原告らは - 9 -

短い者で4 年 長い者で 25 年も勤続している 臨時社員には臨時社員就業規則が作成されて これが適用されている 3 労働内容労働内容については 勤務時間は通常午前 8 時 20 分から午後 5 時までで正社員と同一の所定労働時間である ( 但し 臨時社員は午後 4 時 45 分から午後 5 時までは残業扱い ) 臨時社員は主にホーン及びリレー等の製造ラインでの組立作業である ホーンの検査業務は男性正社員が担当しているが 他の組立ラインは女性正社員と女性臨時社員が担当し 正社員 臨時社員の区別亡く 2 時間を単位として交代作業に従事していた また 各課には課長 課長補佐 係長及び副係長並びに役職のない男性正社員がいたが 課長が全体の管理統括業務を行っているほか 他の男性正社員が 製品の検査及び治具取り替え並びに一時的な女性社員の代役など女性正社員及び臨時社員とは異なる業務に従事していた 4 賃金体系正社員は 月給制であり 基本給 残業手当 役付手当 家族手当及び通勤手当を内容とする 基本給は年功序列賃金である 一時金は基準内賃金に一定の倍率と基準で支給される 退職金は基本給の半額に勤続年数を一定の乗率で支給される 他方 臨時社員は 月給は基本給 特別手当及び残業手当からなっている 特別手当は午後 4 時 45 分から5 時までの手当である 一時金は 基本給に一定の倍率と基準で決定される 退職金については 10 年以上 20 年未満の臨時社員には勤続年数に1 万 7000 円を乗じる 5 採用募集方法採用募集方法は 正社員は職業安定所や学校に求人票を出して採用し 臨時社員の募集は従業員の紹介による採用がほとんどであった (2) 裁判所の判断 同一( 価値 ) 労働同一賃金の原則は 労働関係を一般的に規律する法規範として存在すると考えられることはできないけれども 賃金格差が現に存在し その違法性が争われているときは その違法性の判断にあたり この原則の理念が考慮されないで良いというわけでは決してない したがって 同一 ( 価値 ) 労働同一賃金の原則の基礎にある均等待遇の理念は 賃金格差の違法性判断において ひとつの重要な判断要素として考慮されるべきものであって その理念に反する賃金格差は 使用者に許された裁量の範囲を逸脱したものとして 公序良俗違反を招来する場合があると言うべきである Ⅱ 日本郵便逓送 ( 臨時社員 損害賠償 ) 事件 ( 大阪地判平 14.5.22 労判 830 号 ) (1) 事案の概要郵便局間の郵便物の運送及び郵便ポストなどから取集業務を行う会社であり 雇用期間を3ヶ月とする期間臨時社員である原告らが 正社員と同一の労働しているにもかかわらず 同一労働同一賃金の原則に反して 正社員と同一の賃金を支払わないのは 公序良俗違反であるとして 不法行為に基づく損害賠償請求を求めた事案である 1 会社の規模等 - 10 -

会社は郵政省の請負に契約に基づき 荷主である郵政省から痛くされた郵便局間の郵便物の運送及び郵便ポストなどからの取集業務を行う 会社の近畿統括支部では 約 700 名の正社員の運転士と約 250 名の期間臨時社員の運転士がおり 近畿統括支店近畿運行管理センターには約 30 名の正社員運転士と約 35 名の臨時運転士がいる 2 雇用形態等期間臨時社員運転士は有期労働契約書に基づき期間 3ヶ月で契約して 期間臨時社員就業規則 賃金規則が定められている 原告らの勤続期間は4 年 ~8 年である 3 労働内容郵便局間の郵便物の運送配達と郵便ポストからの取集業務が中心であり 正社員運転士は定期便の運転業務が主で 期間臨時社員は不定期の臨時便の運転業務が主で定期便に欠員が出た場合に乗務することの違いでしかない 両者の労働の内容は運転業務を中心として同一である 深夜 泊まり勤務については有期臨時社員も正社員と同様に従事する 労働時間は 正社員運転士は 拘束時間 9 時間 ( 実働 8 時間 ) であり 平成 13 年からは拘束 11 時間 ( 実働 8 時間 ) となった 有期臨時社員運転士は拘束 8 時間 15 分である 両者の行う業務内容は 郵便物等の輸送 積み卸しであって両社の間に特段の差は認められない むしろ 有期臨時社員運転士のほうが不定期の臨時便に従事していることから 正社員運転士よりも仕事が過重であるという見方もできる 4 賃金体系正社員は 正社員就業規則 賃金規則により ( ア ) 基準賃金として 本給 ( 基礎給 年齢加給) 職能給 調整手当 現業関係調整額 勤続手当 扶養手当 ( イ ) 基準外賃金として 超過勤務手当 深夜作業手当 日直 宿直手当 住居手当 降雪期作業手当 ( ウ ) 退職金がある 期間臨時社員は 期間臨時社員賃金規則により 基本給は時間給とされ 超過勤務手当 年始出勤手当 契約終了一時金 (3 年間の契約期間満了した者に対して支給 ) がある また 正社員組合と会社との間で労働協約が締結されており 正社員運転士には洗車手当 捕食費 型別運行手当 宿泊手当が支給されるが 非組合員である有期臨時者社員には支給されていない 5 採用募集の方法正社員は 採用試験 ( 身体検査及び学術試験又は人物考査 ) に合格した者を採用する 期間臨時社員は 面接考査及び必要な実技考査を行って採用すると就業規則上は定められている (2) 裁判所の判断裁判所は 賃金等に関する労働条件の格差は 正社員の7 割から6 割であると認定して 次のように判断した 1 正社員運転士と臨時社員運転士との年収を比較すると 臨時社員運転士の年収は 正社員運転士のそれのおおよそ7 割程度 また 臨時賃金 ( 賞与 ) を除いた平均賃金日額は 臨時者の平均賃金日額は 正社員運転士の6 割程度であった - 11 -

2 原告らが主張する同一労働同一賃金の原則が一般的な法規範として存在しているとはいいがたいのであって 一般に 期間雇用の臨時従業員について これを正社員と同様の労働を求める場合であっても 契約の自由の範疇であえり 何ら違法ではない 7 法的効果 (1) 違法の効果不合理な労働条件を定めた労働契約 就業規則 労働協約等は無効となる (2) 不法行為違法となれば 故意過失を要件として不法行為の損害賠償請求が認められる (3) 使用者に不合理な労働条件としない義務 労契法 20 条は 強行法規であり 有期を理由として正社員と比して有期契約労働者に不合理な労働条件を設定しない義務を使用者に課したと解すべき 債務不履行による損害賠償請求もできる (4) 補充的効力 新 20 条に違法無効となった労働条件について 正社員と同様の労働条件を直接設定する効力があるか 参照 : 労基法 13 条 ( この法律違反の契約 ) この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は その部分については無効とする この場合において 無効となつた部分は この法律で定める基準による 参照 労契法 12 条 ( 就業規則違反の労働契約 ) 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は その部分については 無効とする この場合において 無効となった部分は 就業規則で定める基準による (5) 補充的解釈の工夫 就業規則による解釈による補充例 ) 食事手当を正社員に限定した就業規則があった場合正社員に限定した就業規則の限定した部分が無効となり 無期転換労働者にも適用されると解釈することで 有期契約労働者も損害賠償でなく 食事手当を請求することができる 8 宣伝と職場の点検を 改正法の周知と宣伝 有期契約労働者の労働条件格差のアンケート等の取り組みを 別紙 第 6 最後に 有期契約労働者は 雇止めの不安から1 人ではたたかえない 労働組合がサポートすることが必要不可欠 労組の出番 改正法の活用を積極的に提起し 権利闘争に立ち上がろう - 12 -

有期社員の労働条件アンケート ( 案 ) 2013 年 4 月 1 日から労働契約法が改正され 有期契約であることを理由とした不合理な労働条件を設けることが違法となりました ( 同法 20 条 ) そこで 有期社員の労働条件改善のため下記の質問をしたいと思います よろしくご協力下さるようお願いします 1 あなたの会社の業種は何でしょうか? 製造業 販売業 飲食業 金融 保険業 情報システム業 福祉 2 あなたの会社の従業員数は およそ何人ですか? ( ) 人 だいたいの人数で結構です 3 あなたの会社に有期社員 ( パートやアルバイト 嘱託等も含めて ) 何名ですか? ( ) 人 だいたいの人数で結構です 4 有期パート社員は何人ですか? ( ) 人 だいたいの人数で結構です 5 有期のパート社員の1 日の労働時間 週の労働日数は何日ですか? 一日 ( ) 時間 週 ( ) 日 6 フルタイムの契約社員 嘱託社員は何人ですか? ( ) 人 だいたいの人数で結構です 7 正社員に支給されて 有期社員に支給されていない手当はありますか? 次の中から選んで下さい 交通手当 通勤手当 食事手当 住居手当 営業手当 その他手当 ( ) 8 賞与は有期社員に支給されますか? 支給されない 支給される 正社員と同じ 正社員より低い どのくらいの差ですか?( ) 9 休暇等で正社員にはあるのに 有期社員にはない休暇等の制度はありますか? 次の中から選んで下さい 育児 介護休暇 慶弔休暇 結婚休暇 病気休暇 休職制度 その他 ( ) 10 正社員には利用できて 有期社員に利用できない制度はありますか? 次の中から選んで下さい 社員食堂の利用 安全具の支給 ( マスクや手袋 安全靴など ) の支給 その他 ( ) 11 有期社員として不満や不安に感じていることがあれば自由に記入下さい 差し支えなければ社名 ご氏名等を記載下さい社名 ( ) 労組名 ( ) ご氏名 ( ) 連絡先 ( ) ありがとうございました - 13 -