(Microsoft Word \227F\210\344\226\203\227R\216q\227v\216|9\214\216\221\262.doc)

Similar documents
(Microsoft Word

修士論文 ( 要旨 ) 2017 年 1 月 攻撃行動に対する表出形態を考慮した心理的ストレッサーと攻撃性の関連 指導小関俊祐先生 心理学研究科臨床心理学専攻 215J4010 立花美紀

.A...ren

論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

件法 (1: 中学卒業 ~5: 大学院卒業 ) で 収入については 父親 母親それぞれについて 12 件法 (0: わからない 収入なし~ 11:1200 万以上 ) でたずねた 本稿では 3 時点目の両親の収入を分析に用いた 表出語彙種類数幼児期の言語的発達の状態を測定するために 3 時点目でマッ


Microsoft Word 今村三千代(論文要旨).docx

Water Sunshine

Microsoft Word - 209J4009.doc

生の 0.39% となっており 255 人に1 人が不登校児童であることが示されている ( 文部科学省,2015) また 不登校やいじめなどの問題が深刻化する中で その予防的対応に関するニーズは非常に高くなっている これらの学校不適応の問題の背景には 家庭 個人 学校 友人関係など様々な要因が想定さ

(Microsoft Word - \222\206\220\354\221\361\227v\216|)

論文内容の要旨

発達研究第 25 巻 問題と目的 一般に, 授業の中でよく手を挙げるなどの授業に積極的に参加している児童は授業への動機づけが高いと考えられている ( 江村 大久保,2011) したがって, 教師は授業に積極的に参加している児童の行動を児童の関心 意欲の現われと考えるのである 授業場面における児童の積

様式 3 論文内容の要旨 氏名 ( 神﨑光子 ) 論文題名 周産期における家族機能が母親の抑うつ 育児自己効力感 育児関連のストレス反応に及ぼす影響 論文内容の要旨 緒言 女性にとって周産期は 妊娠 分娩 産褥各期の身体的変化だけでなく 心理的 社会的にも変化が著しいため うつ病を中心とした気分障害

2008/3/4 調査票タイトル : ( 親に聞く ) 子どものダイエットについてのアンケート 調査手法 : インターネットリサーチ ( ネットマイル会員による回答 ) 調査票種別 : Easyリサーチ 実施期間 : 2008/2/22 14:28 ~ 2008/2/22 21:41 回答モニタ数

<4D F736F F D F4B875488C097A790E690B C78AAE90AC838C837C815B FC92E889FC92E894C5>

平成 27 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査愛媛県の結果概要 ( 公立学校 ) 調査期間 : 調査対象 : 平成 27 年 4 月 ~7 月小学校第 5 学年 ( 悉皆 ) 中学校第 2 学年 ( 悉皆 ) 男子 5,909 人男子 5,922 人 女子 5,808 人女子 5,763 人 本

睡眠調査(概要)

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

(4) 在日米国人心理学者による逆翻訳 (5) 在米米国人心理学者による内容の検査と確認 (6) 予備調査 本調査の対象東京都 千葉県の小児科クリニック 市役所 子育て支援事業に来所した 12~35 か月 30 日齢の健康な乳幼児とその養育者 537 組を対象とした 本調査の内容本調査の質問紙には

( 別刷 ) 中年期女性のジェネラティヴィティと達成動機 相良順子伊藤裕子 生涯学習研究 聖徳大学生涯学習研究所紀要 第 16 号別冊 2018 年 3 月

調査結果の概要

Exploring the Art of Vocabulary Learning Strategies: A Closer Look at Japanese EFL University Students A Dissertation Submitted t

<4D F736F F D E93785F8A7789C895CA5F8A778F438E9E8AD481458D7393AE814588D3977E5F8C8B89CA322E646F6378>

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

(3) 生活習慣を改善するために

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

 

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

家庭における教育

研究成果報告書

Microsoft Word - 210J4061.docx

Microsoft Word - 概要3.doc

①H28公表資料p.1~2


平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

Ⅲ 調査対象および回答数 調査対象 学校数 有効回答数児童生徒保護者 (4~6 年 ) 12 校 1, 校 1, 校 1,621 1,238 合計 41 校 3,917 ( 有効回答率 96.3%) 3,098 ( 有効回答率 77.7%) Ⅳ 調査の実施時期

しおり改訂版_5.indd

2013年1月25日

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

man2


1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

P5 26 行目 なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等の関係から なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等から P5 27 行目 複式学級は 小規模化による学習面 生活面のデメリットがより顕著となる 複式学級は 教育上の課題が大きいことから ことが懸念されるなど 教育上の課題が大きいことから P

H30全国HP

研究報告用MS-Wordテンプレートファイル

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

Microsoft Word - manuscript_kiire_summary.docx

4.2 リスクリテラシーの修得 と受容との関 ( ) リスクリテラシーと 当該の科学技術に対する基礎知識と共に 科学技術のリスクやベネフィット あるいは受容の判断を適切に行う上で基本的に必要な思考方法を獲得している程度のこと GMOのリスクリテラシーは GMOの技術に関する基礎知識およびGMOのリス

本年度の調査結果を更に詳しく分析するため 本道の課題となっている質問紙の項目について 継続して成果を上げている福井県 秋田県 広島県と比較した結果を示しています ( 全国を 100 とした場合の全道及び他県の状況をレーダーチャートで示したもの ) 1 福井県との比較 (~P51) 継続的に成果を上げ

Microsoft PowerPoint - AR1(理科森田) [互換モード]

国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

ブック 1.indb

調査の結果 問 1 あなたの性別は 調査に回答していただいた生徒の性別は 男 が問 % 女 が 49.5% です 男 女 問 2 あなたは, 生まれてからずっと鈴鹿市に住んでいますか 生まれたときから鈴鹿市に ずっと住ん

◎公表用資料

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

Microsoft Word - 【確認】アンケート結果HP.docx

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

中カテゴリー 77 小カテゴリーが抽出された この6 大カテゴリーを 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーの構成概念とした Ⅲ. 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーリストの開発 ( 研究 2) 1. 研究目的研究 1の構成概念をもとに 地域包括支援センター保健師のコンピテンシーリストを

調査の目的この報告書は, 第 1 に,2011 年から 2012 年にかけての 4 回の調査の結果をもとに, サポーツ京田辺の生徒の皆さんの学習意欲の状態を複数の側面から把握した結果を報告することを目的としています また第 2 に, 生徒の皆さんの勉強の仕方に関する考え方や実際の勉強の仕方を知り,

2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

p 札幌市小学校).xls

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 12 月下旬 試験中 試験中 試験中 1 月中旬 試験中 試験中 試験終了 12 月中旬 試験中 試験中 試験中 1 月上旬 試験中 試験中 試験中 1

平成 25 年度学力定着状況確認問題の結果について 概要版 山口県教育庁義務教育課 平成 2 6 年 1 月 1 実施概要 (1) 目 的 児童生徒の客観的な学力状況の経年的な把握と分析を通して 課題解決に向けた 指導の工夫改善等の取組の充実を図る全県的な検証改善サイクルを確立し 県内す べての児童

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント

自己愛人格目録は 以下 7 因子が抽出された 誇大感 (α=.877) 自己愛憤怒 (α=.867) 他者支配欲求 (α=.768) 賞賛欲求 (α=.702) 他者回避 (α=.789) 他者評価への恐れ (α=.843) 対人過敏 (α=.782) 情動的共感性は 以下 5 因子が抽出された 感

世の中の人は信頼できる と回答した子どもは約 4 割 社会には違う考え方の人がいるほうがよい の比率は どの学年でも 8 割台と高い 一方で 自分の都合 よりみんなの都合を優先させるべきだ は 中 1 生から高 3 生にかけて約 15 ポイント低下して 5 割台にな り 世の中の人は信頼できる も

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

中学生における「スクールカースト」とコミュニケーション・スキル及び学校適応感の関係 : 教室内における個人の地位と集団の地位という視点から

回答結果については 回答校 36 校の過去 3 年間の卒業生に占める大学 短大進学者率 現役 浪人含む 及び就職希望者率の平均値をもとに 進学校 中堅校 就職多数校 それぞれ 12 校ずつに分類し 全体の結果とともにまとめた ここでは 生徒対象質問紙のうち 授業外の学習時間 に関連する回答結果のみ掲

( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名小山内秀和 論文題目 物語世界への没入体験 - 測定ツールの開発と読解における役割 - ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 読者が物語世界に没入する体験を明らかにする測定ツールを開発し, 読解における役割を実証的に解明した認知心理学的研究である 8

 

4 身体活動量カロリズム内に記憶されているデータを表計算ソフトに入力し, 身体活動量の分析を行った 身体活動量の測定結果から, 連続した 7 日間の平均, 学校に通っている平日平均, 学校が休みである土日平均について, 総エネルギー消費量, 活動エネルギー量, 歩数, エクササイズ量から分析を行った

P pdf, page Preflight ( P indd )

の間で動いています 今年度は特に中学校の数学 A 区分 ( 知識 に関する問題 ) の平均正答率が全 国の平均正答率より 2.4 ポイント上回り 高い正答率となっています <H9 年度からの平均正答率の経年変化を表すグラフ > * 平成 22 年度は抽出調査のためデータがありません 平

PowerPoint プレゼンテーション

平成 26 年度生徒アンケート 浦和北高校へ入学してよかったと感じている 1: 当てはまる 2: だいたい当てはまる 3: あまり当てはまらない 4: 当てはまらない 5: 分からない 私の進路や興味に応じた科目を選択でき

KONNO PRINT

7 調査結果の概要 (1) 子どもの携帯電話所持率とフィルタリングの活用状況 ア子どもの携帯電話所持率 子ども専用の携帯電話所持率は 平成 19 年の本市調査 ( 以下 前回調査 ) から 2 年が経過していますが ほぼ横ばいの結果です では 男子 33.6 女子 46.4 計 4.1 が所有してい

H

平成 27 年度 全国体力 運動能力 運動習慣等調査の概要 平成 28 年 3 月 四條畷市教育委員会

15発達教育14_001_矢野・田爪_cs6.indd

弘前校 診断・アセスメント結果を基にした 地域機関との連携による子ども支援の取り組み

研究年報62集1号

=平成22年度調査結果の概要===============

過去の習慣が現在の習慣に与える影響 インターネットの利用習慣の持ち越し 松岡大暉 ( 東北大学教育学部 ) 1 問題関心本研究の目的は, インターネットの利用の習慣について, 過去のインターネットの利用習慣が現在のインターネットの利用の習慣に影響を与えるかを検証することである. まず, 本研究の中心

アンケート調査の実施概要 1. 調査地域と対象全国の中学 3 年生までの子どもをもつ父親 母親およびその子どものうち小学 4 年生 ~ 中学 3 年生までの子 該当子が複数いる場合は最年長子のみ 2. サンプル数父親 母親 1,078 組子ども 567 名 3. 有効回収数 ( 率 ) 父親 927

に教室の中を立ち歩いたり 教室の外へ出て行ったりする 68.5% 次に 担任の指示通りに行動しない 62.1% などとなっている また 不適応状況の発生の予防に効果的と思われる対応策 ( 図 2) 6 として最も多かったのが 学級担任の援助となる指導員等の配置 校長 61.4% 教諭 61.0% 次

表紙.indd

初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 問 33 問 8- 母 ) 図 95. 初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 母親 ) 初めて親となった年齢 を基準に 10 代で初めて親となった 10 代群 平均出産年齢以下の年齢で初めて親となった平均以下群 (20~30 歳 ) 平均

スライド 1

<4D F736F F F696E74202D FAC8E998E9589C88A7789EF837C E815B FAC90CE2E707074>

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

Microsoft Word - アセスの理解と活用方法

Transcription:

幼児期 児童期児童期におけるにおける親と教師教師の身体接触身体接触が思春期思春期の心理的側面心理的側面に及ぼすぼす影響 The Effects of Physical Touch by Teachers or Parents in Childhood on the Psychological Aspects in Adolesence. 児童学研究科児童学専攻 04-0621 友井麻由子 Ⅰ. 問題と目的身体接触に関する研究の中で スキンシップは 欧米での母子分離 ホスピタリズムなどの育児における問題状況から 母子の愛着行動が子どもの成長に不可欠であることが説かれたことによって生み出された概念である 日本におけるスキンシップの考え方は 平井 (1995) により導入された 現在スキンシップは 母親と子どもの間で行なわれる肌と肌との触れ合いのこと 性格形成の重要な要因と考えられる と定義されている ( 多項目心理学辞典 1991) 身体接触 (Physical Touch) の研究では Montagu(1971) は 動物や人間を対象にした研究から 幼少期や児童期に接触の満足を得ることは その後の健全な行動の発育には欠かせないものだと述べている また 幼児期に母親からあまりあるいはほとんど接触されなかった赤ん坊は 将来他人との絆を結ぶことが困難になることなどが示されてきた (McNeeley, 1987) これらの研究から 子どもの心身の健康にとって 積極的に触れることの重要性が示唆されている 日本においても スキンシップの重要性が報告されている ( 山口,1998 山口 2003, 山口ら 1998 McNeeley, 1987) また 学校領域では 大宮ら (1987) の児童の内発的動機づけに及ぼす教師の外的強化の効果の研究で スキンシップが影響していると報告されている このように身体接触の重要性が明らかになる中 一方では学校におけるスキンシップがセクハラなどの問題点も含んでいる (Field,1998) しかし これまで述べてきたように 幼児期 学童期における親と教師の身体接触は 子どもの成長にとって非常に重要な役割を持つといえる そこで 本研究では 幼児期 学童期における親と教師の身体接触が思春期の心理的側面に及ぼす影響について検討することを目的とする 1

Ⅱ. 方法 研究 1 予備調査予備調査 1. 目的 : 幼児期 児童期に親と教師との間で経験した身体接触から項目を収集し 子ども用身体接触尺度 の項目を検討する 2. 方法 (1) 調査対象 : 千葉県私立女子大学生 45 名 および神奈川県公立中学生女子 44 名 (2) 実施日 :2005 年 7 月上旬 (3) 調査内容 : 幼児期 児童期に親や教師との間で経験したスキンシップを振り返る ( 自由記述 ) (4) 手続き : 大学生は 授業時間に質問紙を配布し 回収した 中学生については 担任に調査を依頼し 学級活動の時間に実施し回収した 3. 結果収集された項目を 山口 (2003) の身体接触調査票の 9 項目を手がかりに整理した結果 親の身体接触項目 12 項目 計 24 項目の身体接触が得られた 本調査本調査 1. 目的 : 子ども用身体接触尺度 を作成し 尺度の信頼性の検討を行う 2. 方法 (1) 調査対象 : 東京都公立中学校 1 年生 181 名 ( 男子 96 名 女子 85 名 ) (2) 実施日 :2005 年 10 月下旬 (3) 調査項目 : 子ども用身体接触尺度 ( 予備調査によって収集した項目 ) 親の身体接触項目 12 項目 経験頻度 4 件法 教師の身体接触項目 12 項目 経験頻度 4 件法 親の身体接触 教師の身体接触ともに 回想時期は小学校 2 年生までの身体接触と限定した 自由記述 あなたが今までに経験してきた出来事((1)1~12 の質問 ) は 今のあなたにどのように影響していると思いますか 思いつくまま自由にお答えください (4) 手続き :D 中学校 1 学年担任に調査を依頼し 学級活動の時間を利用して実施した 回答はその場で回収した 2

3. 結果親と教師に対する身体接触尺度について因子分析を行った ( 主因子法 バリマックスによる直交回転 ) 結果 得られた因子は 2 因子であった 親の項目を分析した結果 第 1 因子には 添い寝をしてもらった (.82) 抱っこをしてもらった (.82) など いずれもの身体接触においても 安心感や心地よさを感じる項目に高い負荷量がみられたため 親の快の身体接触 と命名した また 第 2 因子では 手や髪などの体の一部を引っ張られた (.89) など 身体接触において不快感を感じる項目に高い負荷量がみられたため 親の不快の身体接触 と命名した 教師の項目を因子分析した結果 第 1 因子には 頭をなでてもらった (.70) 手をつないだ (.68) 授業や休み時間など自分の不得意なもの ( 鉄棒や勉強など ) について手をとって教えてもらった (.66) など 身体接触において安心感や心地よさを感じると共に ほめることを表現とした身体接触の項目に高い負荷量がみられたため 教師の快の身体接触 と命名した 第 2 因子では 叩かれた (.85) など 身体接触において不快感を感じる項目に高い負荷量がみられたため 教師の不快の身体接触 と命名した 以上の結果から 親の身体接触項目 11 項目と 教師の身体接触項目 12 項目が得られた 構成概念妥当性構成概念妥当性の検討 : この尺度の内容妥当性を山口 (2003) の身体接触尺度の項目と検討したところ α 係数が 親の快の身体接触 ;.95 親の不快な身体接触;.95 教師の快の身体接触 ;.95 教師の不快な身体接触;.95 となり 構成概念妥当性が認められると判断した 回答回答の再検討 : 親と教師の身体接触項目の 心地よさ と 経験頻度 の回答をより具体的に求めていくことで検討し 4 件法から 5 件法に改正した 研究 2 1. 目的 : 研究 1で作成された子ども用身体接触尺度により幼児期 学童期における親と教師の身体接触が思春期の心理的側面に及ぼす影響について検討するため 対人信頼感尺度 ( 堀井 槌谷 1995) と向社会的行動尺度 ( 中高生版 )( 横塚 1989) を用いて明らかにする 2. 方法 (1) 調査対象 : 神奈川県公立中学生 1 年生 253 名 ( 男子 139 名 ) 女子 114 名 (2) 実施日 :2005 年 12 月上旬 3

(3) 調査項目 :1 子ども用身体接触尺度 ( 研究 1 で作成した尺度 ) 2 向社会的行動尺度 ( 中高生版 )( 横塚 19889) 20 項目 5 件法 3 対人信頼感尺度 ( 堀井 槌谷 1995) 17 項目 5 件法 (4) 手続き : 神奈川県公立中学校教員に調査を依頼し 朝の学級活動等を利用して実施してもらい その後回収した 1. 結果心地よさよさ度の検討子ども用身体接触尺度の心地よさ度得点について t 検定を行った その結果 親の快の身体接触快は (t(242)=-5.08, p <.01) と有意に高い得点を示していたが 教師の快の身体接触 (t(240)=-.459, n.s.) で有意な差はみられなかった 親と教師教師の快の身体接触身体接触と向社会的尺度向社会的尺度の検討親の快の身体接触と教師の快の身体接触が向社会的行動に与える影響を検討するために 男女込みの重回帰分析を行った その結果 親の快の身体接触から向社会的行動に対する標準偏回帰変数は有意であったが 教師の快の身体接触から向社会的行動に対する標準偏回帰変数は有意ではなかった さらに 男女別の重回帰分析をおこなった その結果 女子は 親の快の身体接触から向社会的行動に対する標準偏回帰変数は有意であったが 教師の快の身体接触から向社会的行動に対する標準偏回帰変数は有意ではなかった その一方で男子は 教師の快の身体接触から向社会的行動に対する標準偏回帰変数は有意であったが 親の快の身体接触から向社会的行動に対する標準偏回帰変数は有意ではなかった 以上のことから 女子は親の快の身体接触が向社会的行動に影響を及ぼすことが明らかにされた 親と教師教師の快の身体接触身体接触と対人信頼感尺度対人信頼感尺度の検討親の快の身体接触と教師の快の身体接触が対人信頼感に与える影響を検討するために 男女込みの重回帰分析をおこなった その結果 親の快の身体接触と教師の快の身体接触から対人信頼感に対する標準偏回帰変数は有意ではなかった さらに 男女別の重回帰分析をおこなった その結果 男子 女子ともに 親の快の身体接触と教師の快の身体接触から対人信頼感に対する標準偏回帰変数は有意ではなかった 以上のことから 男女ともに親と教師の快の身体接触が対人信頼感に影響を及ぼさないことが明らかにされた 4

Ⅲ. 全体的考察本研究では 幼児期 学童期における親と教師の身体接触が思春期の心理的側面に及ぼす影響について検討することを目的に まず 幼児期 学童期の頃の身体接触を解明し それを測定する子ども用身体接触尺度を考案した その結果 安心感や心地よさを感じる項目 快の身体接触 と 不安や恐怖感を感じる項目 不快の身体接触 の 2 つの因子が抽出され 尺度の内容妥当性を山口 (2003) の身体接触尺度の項目と検討したところ 構成概念妥当性が認められると判断した この結果から 親の身体接触 12 項目 心地よさ 5 件法 経験頻度 5 件法 教師の身体接触 12 項目 心地よさ 5 件法 経験頻度 5 件法からなる子ども用身体接触尺度を作成した 次に 幼児期 学童期における親と教師の身体接触が思春期の向社会的行動と対人信頼感に及ぼす影響について検討した その結果 女子は男子よりも親と教師の快の身体接触の影響を受けやすいことが明らかにされた これは 女子と男子の性役割の違いや 身体接触の受け取り方の違いが影響してくると思われる 向社会的行動においては 男子は教師の快の身体接触が向社会的行動に影響を及ぼし 女子は親の快の身体接触が向社会的行動に影響を及ぼすことが明らかにされた これは 子ども用身体接触の自由記述から 心地よさ と 経験頻度 の得点が高かった生徒をとり挙げてみると 女子は お母さんによしよして頭をなでてもらったりすると安心する 先生は男だと気持ち悪いし触られたくない 家族ならありだと思う など 親からの身体接触を心地よいと感じていることがわかった これらの結果から 幼少期に受けた身体接触はその後の社会性や情緒の発達に影響を及ぼすとする山口ら (1998) の研究を裏付けるものといえよう 対人信頼感においては 男女ともに親と教師の快の身体接触が対人信頼感に影響を及ぼさないことが明らかにされた 子ども用身体接触の自由記述から 心地よさ と 経験頻度 の得点が低かった生徒を取り上げてみると 手をつないだなんて覚えてない 親は信用できない 教師は怒るだけの存在 うざい など 身体接触の不足が思春期になってからの攻撃性に影響を及ぼしているのではないかと思われる回答もあり 今後もっと詳しく検討する必要があるだろうと思われる 以上の結果から 幼児期 学童期における親と教師の身体接触は 思春期の心理的側 5

面に影響を及ぼす行為であることがいえるのではないだろうか 今後の課題として 子ども用身体接触尺度の 心地よさ から向社会的行動 対人信頼感に及ぼす影響について着目し検討したが 経験頻度 についての研究が十分におこなえなかった また 調査の依頼の段階で中学校側が子ども用身体接触尺度の不快の身体接触項目が生徒とその保護者に与える影響を懸念し 調査を拒否されるという事態が多数起こったため 本研究では快の身体接触についての調査しか行うことができなかった しかし 不快の身体接触が子どもの心理的側面にどのように影響しているかを解明することは重要である そのため 今後も引き続き検討していきたい 最後に 今回の研究で明らかとなった 幼児期 学童期における親と教師の身体接触の重要性を実際の教育相談や子育て支援の現場で取り入れていくための方法を検討することも重要な課題であると思われる 6