12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

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2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

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措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

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給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

第 5 章 N

Microsoft Word - 第65号 二世帯住宅と小規模宅地等の特例

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

相続財産の評価P64~75

Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

資料 以下 原文に筆者の強調 コメントを追加 租税特別措置法による定義 租法 ( 昭和三十二年三月三十一日法律第二十六号 ) 最終改正 : 平成二六年五月三〇日法律第四六号 ( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ) 第六十九条の四個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに 当該相

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

平成16年版 真島のわかる社労士

2. 改正の趣旨 背景 国内に住所を有しないことにより相続税 贈与税の課税を免れる租税回避行為を抑制するため 平成 12 年度改正 ( 相続人 受贈者の国籍による納税義務判定の導入 ) 平成 25 年度改正 ( 相続人 受贈者が日本国籍なしの場合の課税強化 ) が行われてきた 平成 29 年度改正で

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土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

2011年税制改正のポイント

~ 改正の変遷 ~ (1) 平成 12 年度改正前相続人 受贈者がの場合には 国内財産のみ課税 (2) 平成 12 年度改正後 平成 25 年度改正前平成 12 年度改正 : 相続人 受贈者について国籍主義を導入 H12 年度改正 : 国内財産 国外財産ともに課税 相続人 受贈者 相続人 受贈者 被

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

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目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

金融商品と資金運用

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未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に

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Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

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である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

<TAC> 無断複写 複製を禁じます ( 税 18) 相上 (8)C10-1 相続税法 上級 演習 8 テキスト 2 第 8 回 - 解答 点 - 第一問 問 1 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において 税負担の不当減少を防 止

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

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一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

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2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

8. みなし共同事業 同一家屋内で特殊関係者が事業を行っている場合には その特殊関係者の事業所床面積及び 従業者数を合算して免税点の判定を行います (1) みなし共同事業の趣旨 事業主が次頁の (2) 特殊関係者の範囲 に掲げる特殊関係者を有していて その特殊関係者の事業が事業主 ( 特殊関係を有す

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

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144 第 2 章宅地等の評価第 3 個別事情のある宅地の評価 このような過小宅地を評価する場合 財産評価基本通達における原則評価 ( 奥行価格補正率や奥行長大補正率等 ) のみでは上記の要因が十分に考慮されているとは言い難く 市場価値である時価と大きく乖離しているケースが見受けられます よって 本

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契約をするとき 契約書に貼る印紙税不動産取引で取り交わす契約書は 印紙税の対象となります 具体的には 不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書 土地賃貸借契約書 ローン借入時の金銭消費貸借契約書等がこれに当たります 印紙税の額は 契約書に記載された金額によって決定されます 原則として 収入印紙を課税

所得税関係 ( 住宅ローン控除の特例 ) の改正 ⑵ 震災税特法の制度 ( 適用期間の特例 ) の概要東日本大震災によって被害を受けたことにより 住宅ローン税額控除の適用を受けていた家屋 ( 以下 従前家屋等 といいます ) を居住の用に供することができなくなった居住者については その居住の用に供す

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暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

2. 改正の趣旨 背景給与所得控除 公的年金等控除から基礎控除へ 10 万円シフトすることにより 配偶者控除等の所得控除について 控除対象となる配偶者や扶養親族の適用範囲に影響を及ぼさないようにするため 各種所得控除の基準となる配偶者や扶養親族の合計所得金額が調整される 具体的には 配偶者控除 配偶

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海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

はしがき 配偶者控除 と 配偶者特別控除 は 昭和 36 年と昭和 62 年の税制改正で導入された歴史ある制度です ここ数年 配偶者控除の改正について様々な議論が行われてきましたが 平成 29 年度税制改正において 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除と配偶者特別控除の見直し

第 7 章 間にその者の居住の用に供したときに 一定の要件の下で そのバリアフリー改修工事等にあてるために借り入れた住宅借入金等の年末残高 (1,000 万円を限度 ) の一定割合を5 年間所得税の額から控除できます なお 52ページの増改築に係る住宅ローン控除制度との選択適用になります 1 控除期

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問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

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(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

することが適当であることから 本通達では 特定施設の敷地の用に供される土地等には 土地又は土地の上に存する権利を取得した時において 現に特定施設の敷地の用に供されているもの及び特定施設の敷地の用に供されることが確実であると認められるものが該当することを明らかにしている なお 取得の時において特定施設

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12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (1) 趣旨 背景小規模宅地等の特例は 事業用又は居住用の宅地等の相続税の課税価格を軽減することで 相続人の事業又は居住の継続等に配慮することを目的として創設された制度である しかしながら 事業又は居住の継続への配慮という制度目的に沿っていない特例の利用が行われている現状を踏まえ 見直しが行われる (2) 内容 1 特定居住用宅地等について 別居親族に係る特例の適用対象者の範囲が縮小される 被相続人等の居住用宅地等を相続する別居親族が次の要件をすべて満たした場合に 330 m2までの部分についてその宅地等の評価額を 80% 減額できる の要件 ( イ ) 被相続人に配偶者及び同居の相続人がいないこと ( ロ ) 相続開始時から相続税申告期限までその宅地等を所有し続けていること ( ハ ) 相続開始前 3 年以内に国内にある自己又は自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがないこと 今回付加される要件 ( ニ ) 相続開始前 3 年以内に国内にある自己の 3 親等内の親族又は特別の関係がある法人が所有する家屋に居住したことがないこと ( ホ ) 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないこと 2 被相続人等の貸付事業用宅地等を相続する親族が一定の要件を満たした場合に 200 m2までの部分についてその宅地等の評価額を 50% 減額できる 当該減額対象となる貸付事業用宅地等の範囲が縮小される ( イ ) 相続開始前 3 年超特定貸付事業を行っている場合 貸付事業を始めた時期にかかわらず すべて特例の対象となる ( ロ ) 相続開始前 3 年超特定貸付事業を行っていない場合 相続開始前 3 年超前に貸付事業の用に供された宅地等は特例の対象となる 相続開始前 3 年以内に貸付事業の用に供された宅地等は特例の対象外となる ( ハ ) ただし 平成 30 年 3 月 31 日までに貸付事業の用に供された宅地等は特例の対象となる 3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲が拡大される 介護医療院に入所したことにより 被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等を 小規模宅地等の特例の対象に含める 12-1

12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年 3 月 31 日までに相続又は遺贈により取得する場合には の要件を適用できる また 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしている宅地等で 平成 32 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得するものについて 平成 32 年 3 月 31 日おいて当該宅地等の上に存する家屋の新築や増築等の工事が行われており かつ 当該工事の完了前に相続又は遺贈があったときは 相続税申告期限までに当該別居親族が当該家屋に居住したときに限り 同居親族の要件を満たすものとして小規模宅地等の特例を適用できる (4) 改正の影響 実務のポイント 1 別居親族が小規模宅地等の特例を適用できるように遺言を作成したり 相続対策を考えている場合には 遺言や対策内容の見直しを検討する必要がある 2 相続開始前 3 年以内に貸付事業の用に供された宅地等については 小規模宅地等の特例の適用が受けられない場合があるので 不動産の計画的な有効活用が大切である (5) 留意点今後誰が被相続人の宅地等を引き継ぐかについては 特例の要件を正しく理解した上で 特に特定居住用宅地等については家族の状況 ライフプラン等も含め総合的に検討することが肝要である 12-2

2. 改正の趣旨 背景 会計検査院の報告によると 相続により取得した土地等を相続税の申告期限の翌日以後 3 年を経過する日までに譲渡していた 2,907 人のうち 243 人が小規模宅地等の特例を適用していた そして 当該 243 人が譲渡した土地等 273 件の譲渡までの期間を確認したところ 相続税の申告期限の翌日から 1 年以内に譲渡していたものが 163 件 ( うち貸付事業用宅地等は 110 件 ) 1 か月以内に譲渡していたものが 22 件 ( 同 13 件 ) 見受けられたとのことである ( 下表参照 ) 内容 相続税の申告期限の翌日以後 3 年以内に相続により取得した土地等を譲渡した 2,907 人のうち 当該土地等につき小規模宅地等の特例を適用した数 上記のうち相続税の申告期限の翌日から 1 年以内に譲渡した件数 ( うち貸付事業用宅地等 ) 上記のうち相続税の申告期限の翌日から 1 か月以内に譲渡した件数 ( うち貸付事業用宅地等 ) 数 243 人 (273 件 ) 163 件 (110 件 ) 22 件 (13 件 ) ( 出典 ) 会計検査院租税特別措置 ( 相続税関係 ) の適用状況等についての報告書 ( 要旨 ) 平成 29 年 11 月を加工 上記のほか 別居親族が居住用宅地等を相続する際のいわゆる 家なき 特例については 持ち家のないが親の死亡後実家に戻ることなどを想定した特例であるにもかかわらず 相続人が親族などに自己の持ち家を売却するなどして 別居親族 の形式を整えるといった 特例を適用可能な状態を意図的に作出する事案が見受けられた 貸付事業用宅地等については 相続開始直前に賃貸不動産を購入し 特例を適用して相続税負担を軽減する事案が見受けられた このような制度目的に沿ったものとなっていない事案が散見されることから 特例適用の現状をふまえ 適用対象者等を見直す 12-3

(1) 小規模宅地等の特例の概要 小規模宅地等の特例とは 被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用又は事業の用に供されていた宅地等を相続した場合において 一定の要件を満たしたときに その宅地等の評価額を限度面積の範囲内で 80% 又は 50% 減額することができる特例である 適用対象宅地 減額割合及び限度面積等をまとめると次のようになる ( 下線の部分が今年度改正が盛り込まれた箇所である ) 相続開始直前の状況 取得者 継続要件 ( 申告期限まで ) 所有 居住又は事業 減額割合 限度面積 ( 1) 配偶者 - - 80% 330 m2 3 被相続人等の居住用 ( 特定居住用宅地等 ) 同居親族継続継続 80% 330 m2 1 別居親族継続 - 80% 330 m2 被相続人等の事業用 ( 2) ( 特定事業用宅地等 ) 2 被相続人等の貸付用 ( 貸付事業用宅地等 ) 同族会社 ( 3) への貸付用 ( 特定同族会社事業用宅地等 ) 親族継続継続 80% 400 m2 親族継続継続 50% 200 m2 役員である親族 ( 4) 継続継続 80% 400 m2 1 一定の場合には それぞれの限度面積まで完全併用ができる 2 不動産貸付業の場合には 貸付事業用宅地等として取扱われる 3 不動産貸付業を営んでいる同族会社への貸付けの場合には 貸付事業用宅地等として取扱われる 4 役員でない親族が取得する場合には 貸付事業用宅地等として取扱われる 12-4

1 特定居住用宅地等の要件のうち 別居親族に係る特例の適用対象者の範囲が縮小される 2 貸付事業用宅地等の範囲が縮小される 3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲が拡大される 内容 1 別居親族の適用要件 ( イ ) 被相続人に配偶者及び同居の相続人がいないこと ( ロ ) 相続開始時から相続税申告期限までその宅地等を所有し続けていること ( ハ ) 相続開始前 3 年以内に国内にある自己又は自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがないこと ( イ ) 同左 ( ロ ) 同左 ( ハ ) 相続開始前 3 年以内に国内にある次の者が所有する家屋に居住したことがないこと 自己又は自己の配偶者 3 親等内の親族 (12-9 参照 ) 特別の関係がある法人 ( 1) ( ニ ) 相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがないこと 2 貸付事業用宅地等の範囲 相続開始の直前において 被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等が特例の対象 相続開始前 3 年以内に貸付事業の用に供された宅地等については 特例の対象から除外 ( ただし 相続開始前 3 年を超えて特定貸付事業 ( 2) を行っている場合を除く ) 3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲 要介護認定等を受けていた被相続人が老人ホーム等に入所したことにより 被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は 特例の対象 介護医療院 (12-12 参照 ) に入所したことにより 被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等を 特例の対象に含める 1 特別の関係がある法人とは 次の法人をいう 1 宅地等を取得した親族及びその親族の配偶者 3 親等内の親族 その他一定の者 ( 以下 親族等 という ) が法人の発行済株式又は出資 ( 自己の株式又は出資を除く ) の総数又は総額 ( 以下 発行済株式総数等 という ) の 10 分の 5 を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該法人 2 親族等及び 1 に該当する法人が他の法人の発行済株式総数等の 10 分の 5 を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該他の法人 3 親族等及び 12 に該当する法人が他の法人の発行済株式総数等の 10 分の 5 を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合における当該他の法人 4 親族等が理事 監事 評議員その他これらの者に準ずるものとなっている持分の定めのない法人 2 特定貸付事業とは 貸付事業のうち準事業 ( 事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの ) 以外のものをいう なお 特定貸付事業を行っていた被相続人 ( 第 1 次相続人 ) が 相続開始前 3 年以内に相続又は遺贈 ( 第 1 次相続 ) により特定貸付事業の用に供されていた宅地等を取得していた場合には 第 1 次相続に係る被相続人が第 1 次相続があった日まで引き続き特定貸付事業を行っていた期間は 第 1 次相続人が特定貸付事業を行っていた期間に該当するものとみなす 12-5

1 別居親族について改正の影響 ( ケース 1~4) ケース 1: が名義の家屋に居住している場合 ( 独居 ) 母 ( 以前死亡 ) 居住 ( 名義 ) ( 家屋は名義 ) ( 名義 ) の自宅敷地を別居のが相続 ケース 2: 孫に自宅を遺贈した場合 の自宅敷地を別居の孫に遺贈 ( 独居 ) 孫 母 ( 以前死亡 ) 孫居住 ( 家屋は名義 ) は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり は 3 親等内の親族 ( ) が所有する国内にある家屋に居住しているため適用なし 孫は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり 孫は 3 親等内の親族 ( ) が所有する国内にある家屋に居住しているため適用なし ケース 3: 特別の関係がある法人の社宅に居住している場合 ケース 4: が自宅を売却 賃借して居住している場合 居住 / 独居 ( 名義 ) 相続 居住 ( 特別の関係がある法人名義 ) 賃貸 特別の関係がある法人 居住 / 独居 ( 名義 ) 相続 居住 ( 親族 第三者などの名義 ) 3 年超前に売却 賃貸 親族 第三者など は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり は特別の関係がある法人が所有する国内にある家屋に居住しているため適用なし は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり は相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがあるため適用なし 12-6

1 別居親族について改正の影響 ( ケース 5 6) ケース 5: が叔名義の国内にある家屋に居住している場合 ケース 6: が叔名義の国外にある家屋に居住している場合 ( 独居 ) 母 ( 以前死亡 ) 叔 ( 独居 ) 母 ( 以前死亡 ) 叔 ( 名義 ) 居住 ( 家屋は叔名義 ) ( 名義 ) 居住 ( 家屋は叔名義 ) の自宅敷地を叔の家屋に居住するが相続 国内 の自宅敷地を叔の家屋に居住するが相続 国内 国外 は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり は 3 親等内の親族 ( 叔 ) が所有する国内にある家屋に居住しているため適用なし は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり は 3 親等内の親族 ( 叔 ) が所有する国外にある家屋に居住しているため適用あり 12-7

1 別居親族について改正の影響 ( ケース 7 8) 特定居住用宅地等を別居親族が取得した場合のの要件は ( イ ) 被相続人に配偶者及び同居の相続人がいないこと ( ロ ) 相続開始時から相続税申告期限までその宅地等を所有し続けていること ( ハ ) 相続開始前 3 年以内に国内にある自己又は自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがないこと となっている ここでいう自己又は自己の配偶者が所有する家屋からは 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋は除かれる したがって 今年度も 下記のようなケースにおいては 特例の適用対象になる ケース 7: が別居を始めて 3 年以内に相続が開始した場合 ケース 8: が所有する家屋にが居住していた場合 ( 1 2) 3 年内に別居開始 3 年内に別居開始 居住 / 独居 ( 名義 ) はアパートに居住 ( 第三者名義 ) 賃貸 居住 / 独居 ( 家屋は名義敷地は名義 ) はアパートに居住 ( 第三者名義 ) 賃貸 相続 第三者 相続 第三者 は相続開始前 3 年以内に自己又は自己の配偶者が所有する国内にある家屋に居住したことがないため適用あり は相続開始前 3 年以内に 3 親等内の親族 ( ) が所有する国内にある家屋に居住していたが 当該家屋は被相続人 ( ) が相続開始の直前において居住していた家屋のため適用あり は相続開始前 3 年以内に自己が所有する国内にある家屋に居住していたが 当該家屋は被相続人 ( ) が相続開始の直前において居住していた家屋のため適用あり 同左 1 現状の税制では 特定居住用宅地等に該当するためには 家屋の所有者が被相続人又は被相続人の親族である必要がある 2 家屋の所有者が被相続人の親族である場合には 親族が敷地を被相続人から無償で借受け かつ 被相続人が当該家屋を当該親族から無償で借受けていた場合に限る 12-8

3 親等内の親族の範囲 三. 曾祖母 3. 曾祖母 二. 祖母 2. 祖母 三. 伯叔母 一. 母 1. 母 3. 伯叔母 三. 配偶者 二. 兄弟姉妹 配偶者 本人 2. 兄弟姉妹 二. 配偶者 三. 甥姪 一. 一. 配偶者 1. 3. 甥姪 三. 配偶者 二. 孫 二. 配偶者 2. 孫 三. 曾孫 三. 配偶者 3. 曾孫 民法上 親族とは 6 親等内の血族 配偶者及び 3 親等内の姻族をいう 姻族とは ( イ ) 配偶者の血族 (3 親等まで ) と ( ロ ) 自分の血族の配偶者 (3 親等まで ) をいう たとえば ( イ ) は配偶者の母 兄弟姉妹であり ( ロ ) は兄弟姉妹の配偶者である したがって 兄弟姉妹の配偶者同士の間や妻の兄弟姉妹と夫の兄弟姉妹の間には姻族関係はない アラビア数字は血族の親等 漢数字は姻族の親等を示している 12-9

2 貸付事業用宅地等が改正により影響を受けるケース ケース 1 相続開始前 3 年を超えて特定貸付事業を行っている 特定貸付事業 1 貸付事業供用 相続開始前 3 年を超えて特定貸付事業を行っているため 12 どちらの時点で貸付事業の用に供しても適用あり 相続開始前 3 年 2 貸付事業供用 相続開始 ケース 2 相続開始前 3 年を超えて特定貸付事業を行っていない 特定貸付事業でない 1 貸付事業供用 1 の時点で貸付事業の用に供した場合は相続開始前 3 年を超えて貸付事業の用に供しているため適用あり 相続開始前 3 年 2 の時点で貸付事業の用に供した場合は相続開始前 3 年以内に貸付事業の用に供しているため適用なし 2 貸付事業供用 相続開始 ケース 3 平成 30 年 3 月 31 日までに貸付事業の用に供された場合 相続開始前 3 年 貸付事業供用 平成 30 年 3 月 31 日までに貸付事業の用に供しているため相続開始前 3 年を超えて貸付事業の用に供していなくても適用あり 平成 30 年 3 月 31 日 相続開始 12-10

3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲の拡大 ( 介護医療院へ入所した場合の取扱い ) 平成 25 年度税制改正により 被相続人が老人ホーム等に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった宅地等についても 要介護認定等を受けていたなど一定の要件を満たす場合には 特例の適用対象とされた 新たな介護保険施設として 介護医療院 が創設されたことに伴い 今年度改正では 介護医療院に入所した場合も特例の適用ができるように 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲が拡大された 内容 特例の適用対象となる入居施設 養護老人ホーム 特別養護老人ホーム有料老人ホーム サービス付き高齢者向け住宅等 の入居施設に 介護医療院 ( 1) が追加される 老人ホーム等に入所した場合における自宅の状況別の特定居住用宅地等の適用可否 ケース取得者平成 25 年以前の取扱い平成 26 年以後の取扱い 自宅に同居親族 ( 生計一 ) が居住同居親族 ( 生計一 ) 自宅に配偶者が居住 配偶者も老人ホームに入所している自宅は空家 配偶者なし 同居親族 ( 法定相続人 ) なし自宅は空家 配偶者 配偶者 別居親族 ( 別居親族の要件を満たすもの ) 生計一親族の居住用宅地等に該当するため適用あり 生計一親族の居住用宅地等に該当するため適用あり 被相続人の居住用宅地等に該当しないため適用なし 被相続人の居住用宅地等に該当しないため適用なし 被相続人又は生計一親族の居住用宅地等に該当するため適用あり 被相続人又は生計一親族の居住用宅地等に該当するため適用あり 被相続人の居住用宅地等に該当するため適用あり 被相続人の居住用宅地等に該当するため適用あり 12-11

3 被相続人の居住の用に供されていた宅地等の範囲の拡大 ( 介護医療院へ入所した場合の取扱い ) ( 1) 介護医療院の創設 今後増加が見込まれる慢性期の医療 介護ニーズへの対応のため 日常的な医学管理が必要な重介護者の受入れ等の機能と生活施設としての機能を兼ね備えた新たな介護保険施設として 平成 30 年 4 月に介護医療院が創設される ( 出典 ) 厚生労働省第 144 回社保審 - 介護給付費分科会 - 参考資料 3- 介護療養型医療施設及び介護医療院 ( 参考資料 ) 平成 29 年 8 月 12-12

4. 適用時期 平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年 3 月 31 日までに相続又は遺贈により取得する場合には の要件を適用できる また 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしている宅地等で 平成 32 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得するものについて 平成 32 年 3 月 31 日おいて当該宅地等の上に存する家屋の新築や増築等の工事が行われており かつ 当該工事の完了前に相続又は遺贈があったときは 相続税申告期限までに当該別居親族が当該家屋に居住したときに限り 同居親族の要件を満たすものとして小規模宅地等の特例を適用できる 5. 改正の影響 実務のポイント 1 別居親族が小規模宅地等の特例を適用できるように遺言を作成したり 相続対策を考えている場合には 遺言や対策内容の見直しを検討する必要がある 2 相続開始前 3 年以内に貸付事業の用に供された宅地等については 小規模宅地等の特例の適用が受けられない場合があるので 不動産の計画的な有効活用が大切である 12-13