( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に

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相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

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2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

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[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

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措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

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102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

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暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

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一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

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144 第 2 章宅地等の評価第 3 個別事情のある宅地の評価 このような過小宅地を評価する場合 財産評価基本通達における原則評価 ( 奥行価格補正率や奥行長大補正率等 ) のみでは上記の要因が十分に考慮されているとは言い難く 市場価値である時価と大きく乖離しているケースが見受けられます よって 本

の範囲は 築 20 年以内の非耐火建築物及び築 25 年以内の耐火建築物 ((2) については築 25 年以内の既存住宅 ) のほか 建築基準法施行令 ( 昭和二十五年政令第三百三十八号 ) 第三章及び第五章の四の規定又は地震に対する安全上耐震関係規定に準ずるものとして定める基準に適合する一定の既存

路線価図

契約をするとき 契約書に貼る印紙税不動産取引で取り交わす契約書は 印紙税の対象となります 具体的には 不動産の売買契約書や建物の建築請負契約書 土地賃貸借契約書 ローン借入時の金銭消費貸借契約書等がこれに当たります 印紙税の額は 契約書に記載された金額によって決定されます 原則として 収入印紙を課税

平成 22 年 11 月 25 日 資料 ( 資産課税 )

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

参考 平成 27 年 11 月 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 において示された個人所得課税についての考え方 4 平成 28 年 11 月 14 日 政府税制調査会から 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 が公表され 前記 1 の 配偶

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

平成 31 年度 税制改正の概要 平成 30 年 12 月 復興庁

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

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課税遺産総額 = 各人の課税価格 ( ア ) の合計額 - 遺産に係る基礎控除額ウ相続税の総額の計算 1 課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定し 各人ごとの取得金額を計算する 2 1に税率をかけ 各人の税額を合計する (= 相続税の総額 ) エ各人の相続税額の計算相続税の総

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

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Ⅰ ワンルームマンション経営と節税 税務署 確定申告 税金還付 20 万 ~30 万円 ワンルーム家賃収入ローン元利返済サラリーマンマンション A 氏 1 戸所有月 70,000 円月 60,000 円 銀行 年 30,000 円 月 8,000 円 固定資産税 管理会社 1 ワンルームマンション投

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

3. 研究の概要等 1 章では 第 1 節で相続税法の歴史的経緯について 特に贈与の位置づけの変遷を中心に概観し 明治 38 年に創設された相続税法での贈与に対する扱いはどうであったのか また 昭和 22 年のシャベル勧告により贈与税が導入され 昭和 25 年のシャウプ勧告で廃止 その後 昭和 28

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固定資産税等の概要及び税収動向等 3-1

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

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1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

Transcription:

2121 リサーチ メモ 進む相続税の課税強化 2018 年 2 月 1 日 ( はじめに ) 2018 年度 ( 平成 30 年度 ) 税制改正における相続税関係の改正については 最後に述べる相続登記に係る登録免許税がごく限られた要件の下で免税とされる措置が決められた以外は 平成 28 年度税制改正における相続された空き地 空家の譲渡に係る相譲渡所得の 3000 万円控除のような 土地 住宅政策的な意味を持つ税制改正はなかった しかし よく知られているように 2020 年以降の所得に適用される給与所得及び公的年金等所得の所得控除額が拡大されることが決定され 2020 年から増税路線が敷かれることから これとの対比で 富裕層に対する資産税である相続税については 従来からその適用要件の甘さが指摘されていたところであり 税制の垂直的な公平を図る観点から 相続税を軽減する一部の特別措置を見直す決定がなされたことが大きな特徴と言えるだろう 以下 この点について紹介する ( 相続税の課税強化と小規模特定居住用宅地に係る優遇措置の拡大 ) 相続税の基礎控除額は 地価の急騰による相続財産の価格上昇に対応してバブル期に引き上げられたが その後の地価下落にもかかわらず 据え置かれていた また 税率構造についても 昭和 63 年以降累次にわたり 最高税率の引下げを含む累進構造の緩和が行われたことから 相続税の税収がピーク時 ( 平成 5 年の 2.9 兆円 ) に対し平成 27 年は 1.8 兆円 ) の 6 割程度に減少し 相続税の所得再分配機能の低下につながっていると指摘されていた こうした状況を受けて 所得再分配機能を強化し 税収増を図るため 2013 年度 ( 平成 25 年度 ) 税制改正において基礎控除額を 2014 年までの相続開始については 相続税の基礎控除額は 5,000 万円 +1,000 万円 法定相続人の数 だったものが 2015 年以降の相続開始からは 3,000 万円 +600 万円 法定相続人の数 へと 6 割に圧縮する相続税法の改正が行われ 2015 年 ( 平成 27 年 ) から施行されて 課税対象者が都市部を中心に増加している ( 図表 1-1,1-2) ( 図表 1-1) 被相続人数全体と相続税の課税対象被相続人数 ( 注 ) 財務省公表資料による 一般財団法人土地総合研究所 1

( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に 被相続人が 居住していた一定要件を満たす居住用敷地の相続税評価額を 80% 減額する小規模特定居住用宅地の特例 面積の適用上限面積が 240 m2から 330 m2へと引き上げられた ( なお この改正と同時に 同じく相続税 評価額が 80% 減額される小規模特定事業用宅地の特例面積 400 m2と小規模特例居住用宅地 330 m2 ( 合計 730 m2 ) の完全併用が可能になるという優遇措置も併せて講ぜられた ) この結果 遠藤純一税理士が国税庁に情報公開請求を行い確認したところによれば 小規模特定居住 用宅地として 80% の評価減の特例を受けた税負担を伴う件数は相続税課税が強化された 2015 年 ( 平成 27 年 ) には 4 万 9494 件と 増税前の 2014 年 ( 平成 26 年 ) 分の 2 万 7038 件に比べ 1.8 倍に増加した (( 株 ) タクトコンサルティングの遠藤純一氏のホームページコラム記事 (2017.4.17) を土地総合研究 所がご本人に確認の上記載 ) ( 図表 2) 現行 ( 平成 29 年末段階 ) の相続税に係る小規模宅地等の特例の主なもの 被相続人の用途相続人の条件減額対象面積上限減額率 1 特定居住用宅地 配偶者 同居の子供など親族が相続し申告期限まで住み続ける場合 上記該当者がいない場合 相続開始前 3 年以内に本人やその配偶者の所有する家屋 ( 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く ) に住んだことがない親族で 相続開始から申告期限までその宅地を保有している場合 330 m2 80% 2 特定事業用宅地 事業を申告期限までに相続人が承継する場合 400 m2 80% 3 貸付事業用宅地 申告期限まで相続人が引き続き貸付事業を行う場合 200 m2 50% ( 注 )1.1 と 2 を併用する場合は合計 730 m2まで完全併用ができる しかし 1 2,3 の併用 1 3 の併用 2,3 の併用の場合は面積の調整が必要である 2. 適用の制約式は 1 200/330+2 200/400+3 200(1 2,3 は上記の各用途に供される相続土地面積である ) ( 参考 ) 特定居住用宅地等 として特例を受けるための条件については 相続される宅地が被相続人の居住用であったことが前提となるが 2013 年までは被相続人が老人ホームで暮らしている場合には適用が認められなかった しかし 2014 年からは 被相続人が老人ホーム ( 租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 2 項に定められたものに限る ) の終身利用権を取得した場合であっても (1) 介護が必要なため入所したものであること (2) その家屋が貸付け等の用途に供されていないことという要件を満たせば 被相続人の居住用宅地として認められるように要件が緩和されている なお平成 30 年度税制改正において 老人ホームの対象に介護医療院 ( 従前の介護療養病床 ) が追加される 一般財団法人土地総合研究所 2

また 従来は行き来できないような完全独立型の二世帯住宅では 同居 していたとみなされず 二世帯住宅の相続人は特定居住用宅地の特例が受けられなかったが 2014 年からは同居要件を満たすものとされた ただし 建物を区分登記していると適用要件を満たさず 建物を共有名義にしている相続人には建物の敷地全体について特定居住用宅地の特例が適用できるとされていることに留意が必要である ところで この被相続人が居住していた宅地に適用される相続税特定居住用宅地の特例は 1 被相続人の配偶者が相続するのであれば無条件に適用を受けられること 2 子やその他の親族が相続する場合は 原則として被相続人と同居し 相続開始時から申告期限まで引き続きそこに居住し その宅地を所有していれば適用を受けられること 1 及び2に該当する相続人がいない場合は 3 相続開始 3 年以内に自分あるいは配偶者の持家に居住していない相続人は 相続開始時から申告期限までその宅地を所有していれば適用が受けられること になっていた ( 特定居住用宅地の特例の強化に向けた見直し ) しかしこの3については 2017 年 11 月 会計検査院から 租税特別措置 ( 相続税関係 ) の適用状況等についての報告書 が出され 小規模宅地の特例については 適用を受けてから短期のうちに当該宅地を譲渡し 事業または居住の継続への配慮という政策目的に沿ったものとなっていないため 相続税軽減措置の透明性を向上させ その適用に当たり国民への説明責任を果たす 旨の改善を促す所見が示されたことから 2018 年度 ( 平成 30 年度 ) 税制改正によりその要件がより厳しくされることになり 2018 年 4 月 1 日以降の相続について適用されることになった その内容は 現行制度では この特例を使うため 相続人が元々宅地を所有していて特定居住用宅地の特例の適用対象でないような場合に 自分が所有する法人に土地を売却したり 相続人の子供に宅地を贈与したりして 特定居住用宅地の特例要件を満たすような外形的な状態が意図的に作出されていることが問題であるとされ このような悪用を封じるため 1 相続開始前 3 年以内に その者の 3 親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人等が所有する国内にある家屋に居住したことがある者 2 相続開始時において 居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者 についてはが特定居住用宅地の特例の対象外とされた ( 貸付事業用地の特例の見直し ) また 同様の状況は小規模宅地の特例のうちの貸付事業用宅地の特例にもみられ 上記会計検査院の 租税特別措置( 相続税関係 ) の適用状況等についての報告書 は小規模貸付事業用地にも視野を広げて改善を促しており 相続の直前に 節税目的のため 現金等を貸付用不動産に転換し 駆け込み的に不動産賃貸業が始められた個人の相続土地に対して相続税評価額の軽減措置を講ずることは制度の趣旨に反するとして 同じく 2018 年度 ( 平成 30 年度 ) 税制改正により 貸付事業用宅地の評価減の特例対象範囲から 相続開始前 3 年以内に貸付事業の用に供された宅地が除外されることになった ( ただし 本見直しは 2018 年 4 月 1 日以降の相続について適用し 2018 年 3 月 31 日以前に貸付事業に供していた土地は 従前通りの取り扱いである ) ( 広大地評価の見直し ) 広大地評価とは その地域の標準的な宅地の面積に比べ 面積が広大な宅地を言い 開発 利用に際 し 道路 公園などの公共的な施設が必要になるため その負担分を相続税評価額から減額調整するこ 一般財団法人土地総合研究所 3

ととされる仕組みを言う 広大地評価の対象とされる土地面積は三大都市圏では 500 m2以上 その他の 地域では 1000 m2以上が目安とされ 面積が大きくなるほど減額割合が大きくなり 最大で 65% の評価 減を受けることが可能だったため 不当に資産家の節税対策に利用されていると指摘されていた この ため 2017 年度 ( 平成 29 年度 ) 税制改正大綱を受けて 今回 財産評価基本通達 24-4 に定める 広 大地の評価 が削除され これまで考慮されなかった土地の形状等の補正を織り込んだ広大地に係る補 正規定が 20-2 に 地積規模の大きい宅地の評価 として 2017 年 ( 平成 29 年 )6 月 27 日に新設され 2018 年 1 月 1 日以降の相続より施行され 最大の評価減が 33% に改正前にとどめられ 従前に比べ 1.4 ~2.1 倍の相続税評価額が適用されることになった 地積 廃止 広大地補正率 1 ( 図表 3) 広大地の評価額の補正方法の変更 三大都市圏 2 新設 規模格差補正率 増加率 2/1 三大都市圏以外 3 増加率 3/1 500 m2 0.575 0.80 139% 1000 m2 0.55 0.78 142% 0.80 145% 2000 m2 0.50 0.75 150% 0.76 152% 3000 m2 0.45 0.74 164% 0.74 164% 4000 m2 0.40 0.72 180% 0.73 183% 5000 m2 0.35 0.71 203% 0.72 206% 6000 m2 0.35 0.70 200% 0.70 200% 7000 m2 0.35 0.69 197% 0.69 197% 8000 m2 0.35 0.68 194% 0.69 197% 9000 m2 0.35 0.68 194% 0.68 194% 10000 m2 0.35 0.67 191% 0.68 194% ( 注 ) 見直し後の評価額 = 路線価 地積 通常の補正率 規模格差補正率による ( 国外資産に対する課税の強化 ) 資産を多く持つ富裕層の一部は その資産を海外で保有する場合があり これまでは 日本国籍を持つ被相続人 相続人ともに 5 年を超えて国内に住所がない場合に限り 相続税が課税されるのは国内財産に限定され 海外資産には課税されていなかった しかし 国際化が進む中 親子で海外に移住し 財産の多くを相続税の負担の少ない海外に移し 相続税が非課税となる 5 年が経過するのを待つ富裕層が現れるなど 国外資産に対する課税を強化する必要が高まったことから 2017 年度 ( 平成 29 年度 ) 税制改正大綱において 国外資産の対する相続税の非課税措置の対象を 日本国籍を持つ被相続人及び相続人ともに 国内に 10 年を超えて住所がない場合に限定することとされ 既に 2017 年 4 月以降の相続から適用されている ( 贈与税の納税義務についても同様 ) ( 図表 4) 日本国籍を有する者の場合における国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し 被相続人 相続人 国内に住所あり 国内に住所なし 10 年以内に住所あり 10 年以内に住所なし 国内に住所あり 国内に住所なし 10 年以内に住所あり 10 年以内に住所なし ( 注 )1. 財務省資料により 土地総合研究所作成 は国外財産 国内財産がともに相続税の課税対象になることを示し は国内財産のみが相続税の課税対象であることを示す 2.2016 年 3 月 31 日以前の相続については 図表中 10 年 とあるのは 5 年 として適用されていた 一般財団法人土地総合研究所 4

( 超高層マンションに対する固定資産税評価額の特例 ) 地上階数 60 階建以上のいわゆる超高層マンション ( いわゆるタワーマンション ) については 2017 年度 ( 平成 29 年度 ) 税制改正大綱により 2017 年 4 月以降に売買されたものを対象に 2018 年度以降 の固定資産税の課税について 階数が 1 階増す毎に 1 棟内における固定資産税評価額が 0.25% づつ上 昇する仕組みが導入される 不動産経済研究所の調査によると 2005 年時点では首都圏全体で 1% 程度 にすぎなかった億ション供給戸数が 2017 年時点では 5.5% 程度まで増加する中で 富裕層を中心に 相 続税対策を念頭に タワーマンションの高層階部分を取得する動きが活発化しており ( 図表 5) 本改正 はこうした動きに対応した相続税課税対策である 固定資産税評価額は固定資産税課税のみならず 都 市計画税 不動産取得税 登録免許税 相続税の建物部分の課税標準のベースとなっていることから 本税制改正は これらの税額にも影響を及ぼすことになる しかし まだタワーマンションに係る土地 分の相続税評価額に係る財産評価基本通達は変更されておらず 財産評価基本通達 6( この通達の定め により難い場合の評価 ) この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額 は 国税庁長官の指示を受けて評価する に基づき個別対応がされている状況であるが 取引状況等の 個別判断により取引価額に近い相続税課税が行われるケースが増えていくことも予想される ( 図表 5) 最近の首都圏における億ション供給戸数の推移 1 億ション供給戸数 2 全供給戸数 3=1/ 2 100(%) 2013 1504 56476 2.7 2014 908 44913 2.0 2015 1688 40449 4.2 2016 1265 35772 3.5 2017 1982 35898 5.5 ( 注 ) 不動産経済研究所公表資料による ( 相続税対策としての貸家建設の抑制について ) 相続税対策として現金 預金を土地 建物に代え これを貸家として貸し付けると 敷地は貸家建付地となり 平均的に路線価による相続税評価額の低減が 2 割 さらに貸家建付地としての評価減が 2 割上乗せされ 取引価額に対する相続税評価額は約 65% になる 他方 建物は取引価額に対する相続税評価額の課税標準となる固定資産税評価額が 4 割減 さらに借家に供することによる評価減 3 割が加わり 元の取引価額の 40% 程度まで下がり 土地と建物の購入金額比率を 1:1 とすれば 全体の低減率は 50% を超える こうしたことが 現下の超低金利 金融緩和政策とあいまって 借家建設を必要以上に促進し 空家対策の有効性を削いでいる面がある ( 図表 6) 一般財団法人土地総合研究所 5

( 図表 6) 現金 預金を不動産に変えることで軽減される相続税評価額 ( 万円 ) 12,000 10,000 8,000 6,000 4,000 土地部分 建物部分 合計 2,000 0 現金 預金自宅賃貸住宅 敷地 ( 注 ) 図表 6 の数値算出根拠は以下の通り 現金 預金自宅賃貸住宅 敷地 土地部分 5000 万円 0.6( 固定資産税評価率 )=3000 万円 貸家評価減 (1-0.3)=2100 万円 建物部分 5000 万円 0.8( 相続税評価率 )=4000 万円 貸家建付地評価減 (1-0.7 0.3)=3160 万円 合計 10000 万円 7000 万円 5260 万円 ( 注 )1. 建物の固定資産税評価額を時価の 6 割 土地の路線価を時価の 8 割と仮定 2. 土地の借地権割合 =70% 建物の借家権割合 =30% 賃貸割合 =100%( 空室なし ) と仮定 相続税評価の優遇が目に余る不要な空家を生み出しているとすれば 現金 預金を不動産に変える誘因を抑えるために 相続税評価手法の見直しを検討するとともに 銀行の融資規制の強化の他 融資に係る借入金を相続税評価額から債務として控除する仕組みについて相続税対策としての貸家建設資金に係る借入金を相続財産から控除できない仕組みの導入等も検討されるべきであろう ( 参考 )( 土地の相続登記に関する登録免許税の免税措置の創設 ) 第一の免税措置は 相続により土地所有権を取得した者 ( 一次相続人 ) が 当該土地の所有権の移転登記を受けないで死亡し その者の相続人 ( 二次相続人 ) が平成 30 年 4 月 1 日から平成 33 年 3 月 31 日までの間に その死亡した者 ( 一次相続人 ) を登記名義人とするために受ける当該移転登記に対する登録免許税を免税とすることである これは 過去の相続の際に 遺産分割協議を行わなかったり 遺産分割協議を行っても 相続登記をすると登録免許税の負担が発生すること等を理由に相続登記をしなかったりした者から資産を引き継いだ一次相続人が死亡し これを相続した二次相続人が相続登記をしようとすると 二度の相続登記を余儀なくされるため すこしでも資産の名義人が明確化されるよう 最初の相続登記に係る登録免許税を免税にするものである 第二は個人が所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法 ( 仮称 ) の施行の否から平成 33 年 3 月 31 日までの間に 市街化区域外の土地で市町村の行政目的のため 相続登記の促進を図る必要があるものとして法務大臣の指定する土地について 相続による所有権の移転登記を受ける場合において 当該移転登記の時における当該土地の価額が 10 万円以下であるときは登録免許税を免税とするものである これは 今後相続登記が放置されるおそれのある土地への対応を図る観点から, 一定の資産価値が低い土地についての相続登記の登録免許税は免税するというものである ( 荒井俊行 ) 一般財団法人土地総合研究所 6