住宅取得時の贈与税の非課税措置の拡充 延長 質問 2012 年度の税制改正では 直系尊属からの住宅取得資金の贈与を受けた場合 の贈与税の非課税措置が拡充 延長されると聞きましたが 詳しく教えてください 回答 1 月 27 日に法案提出この制度は 住宅取得のための資金を 両親や祖父母などの直系尊属から贈与された場合に 通常の贈与税の基礎控除に加えて 一定額まで非課税となるものです もともと平成 22 年度税制改正で導入され 2010 年 ( 非課税枠 1500 万円 ) 2011 年 ( 非課税枠 1000 万円 ) の 2 年間だけの特例として 2012 年以降はなくなる予定でしたが 昨年 12 月に閣議決定された税制改正大綱で 2014 年まで 3 年間の延長方針が決まり 1 月 27 日に法案が国会に提出されました そのまま税制改正法案が可決されれば 今年の贈与から適用されることになります 省エネ 耐震性が優れた住宅は非課税枠が 500 万円増非課税枠は 2012 年が 1000 万円ですが 早期の利用を促進するために 2013 年は 700 万円 2014 年は 500 万円と段階的に縮小されます また 省エネ性 耐震性に優れた住宅は 非課税枠がそれぞれ 500 万円上乗せされます 2012 年中に贈与を受ける場合は 1500 万円まで非課税枠が拡大され 贈与税の基礎控除 - 6 -
110 万円を加えると 1610 万円まで非課税となります < 住宅取得資金に対する贈与税の非課税枠 > 2012 年 2013 年 2014 年 一般住宅 1000 万円 700 万円 500 万円 省エネ 耐震住宅 1500 万円 1200 万円 1000 万円 < 贈与税の計算例 1> 2012 年中に 2000 万円の贈与を受けたケース ( 本特例を利用 ) 各種控除後の課税価格は 2000 万円 -110 万円 ( 基礎控除 )-1500 万円 =390 万円となり 贈与税額は 390 万円 20%( 税率 )-25 万円 ( 税額控除 ) =53 万円となります < 贈与税の速算表 > 基礎控除後の課税価格税率 控除額 200 万円以下 10% - 300 万円以下 15% 10 万円 400 万円以下 20% 25 万円 600 万円以下 30% 65 万円 1,000 万円以下 40% 125 万円 1,000 万円超 50% 225 万円 < 贈与税の計算例 2> これに対して 通常の贈与で計算すると 2012 年中に 2000 万円の贈与を受けたケース ( 基礎控除のみ ) 各種控除後の課税価格は 2000 万円 -110 万円 ( 基礎控除 ) =1890 万円となり 贈与税額は 1890 万円 50%( 税率 )-225 万円 ( 税額控除 ) =720 万円になりますから 非課税のメリットはいかに大きいかが分かります このように 先の復興支援 住宅エコポイント フラット35 Sエコ ( 先月号 なぜなぜ質問箱 参照 ) 認定省エネ住宅制度 と併せ 省エネ性能に優れた住宅に対する恩恵が大きいことが分かります 今年の住宅取得は何より省エネ性能がポイントと言えるでしょう - 7 -
相続時精算課税制度との併用また 住宅取得等資金に係る贈与税の相続時精算課税制度の特例 の適用期限が 3 年間延長されます 相続時精算課税制度は 贈与税と相続税の課税を一体化して相続時に税金を精算する制度であり 一定の条件 ( 父母からの贈与が対象で 祖父母からの贈与は対象外 など ) を満たせば 2500 万円まで非課税となります 両者は併用可能なので 2012 年中の贈与なら 4000 万円まで非課税で贈与を受けることができます < 贈与税の計算例 3> 21012 年中に 4000 万円の贈与を受けた場合 各種控除後の課税価格は 4000 万円 -1500 万円 ( 直系尊属の特例 )-2500 万円 ( 精算時精算課税 ) =0 万円となり 非課税となります 今後の国会審議に要注意上記の 直系尊属の特例 が国会を通った場合 2012 年 1 月 1 日以降に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税から適用されます もっとも 2012 年度税制改正は 法案が国会に提出されただけですので 今後の国会審議の動向に注意しておきましょう 後悔しない資金計画のポイントは? 質問最近 20 歳代後半や 30 歳代前半の若いご夫婦からの住宅購入希望が増えて いると感じています 一方では 新聞記事や情報番組等で住宅ローンの返済が困難にな る人が少なくない ということも聞きます あとで困らないための資金計画について どのような点に目を向けて アドバイスすればよいのでしょうか? 回答 長期にわたる返済 リスク回避 4つのポイント住宅ローンの返済は最長 35 年間にも渡るものです 市場の変化やライフプランの変化で返済できなくなることのないようしておくことが大切です 十数年前であれば 上場企業に勤務している方であれば 定年までは安心 という考えもできたかもしれませんが こ - 8 -
こ最近の情勢を見ていると必ずしもそうもいえない状況になっています 35 年という長い期間を見越して 返済プランを考えておくことが大切となります ポイントは 1ボーナスや退職金はあてにしない 2 完済時の年齢 3 貯蓄や予備資金の確保 4 複数ローンに注意 の4 点です 1については 近年の経済情勢を見ても分かるように 住宅ローン返済にかかる長い期間を考えると その間の好不況の波が大きく ボーナスを安定的な返済源として考えることはリスクを伴います また 企業の給与体系も変わりつつあり 能力主義や年俸制度の導入など 以前にも増して業績に連動するなど安定したボーナスが期待できなくなりました また退職金規定の見直しも相次ぎ 退職金の支給も不確実です ボーナス返済や退職金による一括返済を考慮せず 毎月の収入で確実に返済できる範囲で借入額を考えるようにアドバイスすることが大切です 2では 最近 年金制度についての話題があちこちで聞かれますが 現在の年金制度のもとでは 男性では昭和 36 年 4 月 2 以降 女性では昭和 41 年 4 月 2 日以降に生まれた人については 65 歳にならないと年金が支給されません 60 歳で退職すると5 年間は無収入となり ローンの完済年齢によっては キャッシュフローに支障をきたす恐れもあります いつまで働くか 退職までにローンを返済するか 退職後のローン返済をどうするか などキャリアプランも含めた資金計画が必要です 3について 将来の教育資金や住宅のメンテナンス 車の買い替え レジャー資金など生活をする上では住宅資金以外にも様々な資金が必要です ローン返済 + 貯蓄 が可能な毎月のキャッシュフロープランを立てましょう また 病気やケガによる入院 就労不能などの不測の事態に備えた緊急予備資金として半年分の生活費は手元に残しておくようにすることが大切です 若年層に方にはこのあたりのことを理解いただくのが大変ですし このお話をすると 住宅購入が遠ざかってしまうことがあるのが難しいところです 4 教育ローン リフォームローン 車ローン 分割クレジットなど各々は少額でも複数のローンが住宅ローンと重なると大きな負担となります 常にローン全体での済比率が年収の 20~25% 程度に収まるようにリスクマネジメントをしましょう - 9 -
妻の退職金で繰上返済は大丈夫? 質問先日 50 歳代後半のお客様から繰上返済の相談を受けました お話によると お客様の奥様が先日 20 年来勤務された会社を退職されたとのことで お子様も独立 されているため その退職金でローンの繰上返済をしたいという相談でした 当該ローンはお客様 ( 夫 ) の単独名義 登記も夫単独名義となっているようです このような時には 贈与などの問題は発生しないのでしょうか? 回答ご相談のケースのような場合 奥様の退職金を贈与の非課税枠を超えて繰上げ返済に使用すると 贈与税とみなされるので 住宅について奥様の持分を登記するなど何らかの工夫をする必要があります 大きな贈与税課税を回避するためにこのケースで贈与税を発生させない方法としては 主に以下の3つが考えられます 1 奥様は住宅ローン返済負担を負っていないため 夫の負債を返済した場合には贈与とみなされます ただし 一人に対する贈与は年間 110 万円までは非課税となっていますので 毎年 110 万円くらいをずつ贈与した上で毎年繰上げ返済することは可能です ( ただし連年贈与の認定をされて 贈与の合計額に税を課されることも考えられますから 110 万円を少し超える贈与をして 少額の贈与税を払っておくことも考えられます ) 2 夫単独名義から奥様との共有名義にし 繰上げ返済する金額に相当する物件時価分について 奥様へ持分登記変更をすることができます ただし 登記費用や登記にかかる手間がかかりますし 名義を共有名義にすることはトラブルの種にもなるのでじっくり話し合ったうえで行いましょう また 夫のローン肩代わりとなるので 税務署や借入れ金融機関へ事前に必ず確認しましょう 3 生活費や教育費 貯蓄 その他の住居費など必要な費用を奥様の退職金でまかない 夫の収入や貯金を繰上げ返済に充てるようにすることもできます ただし 毎月のローン返済まで負担すると金額によっては非課税枠をオーバーし 元も子もないなんてことにもなるので注意しましょう * 実際に利用する際や詳細については 税理士や税務署にご確認ください - 10 -