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骨・関節を“診る”サブノート

TheShoulderJoint,2005;Vol.29,No.3: はじめに a 転位骨片を伴う関節窩骨折に対しては直視下に整復, 内固定を施行した報告が多いが, 鏡視下での整復固定の報告は比較的稀である. 今回我々は転位骨片を伴う関節窩骨折に腋窩神経麻痺を合併した1 例に対し,

Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

46 図L 受傷時の肩関節の外観 肩甲上腕関節部に陥凹がみられる 矢印 a b C 図2 受傷時の単純X線像 a 正面像 肩甲上腕関節裂隙の開大 vacant glenoid sign 上腕骨頭の内旋 light bulb 肩甲骨 前縁と上腕骨頭距離の開大 rim sign がみられた b 軸写像

手指中節骨頚部骨折に対する治療経験 桐林俊彰 1), 下小野田一騎 1,2) 3), 大澤裕行 1) 了德寺大学 附属船堀整形外科 了德寺大学 健康科学部医学教育センター 2) 3) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 要旨今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

膝関節鏡

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CPP approach Conjoint tendon Preserving Posterior Surgical Technique

Ⅰはじめに 中節骨基部掌側骨折掌側板付着部裂離骨折 はPI P関節の過伸展によって生じる外傷で 日常でしばし ばみられるPI P関節背側脱臼に合併して発生することや単なる捻挫と判断されるなど 見逃されること が多く 骨癒合不全による掌側不安定性 運動痛および関節拘縮を起こすことがあるこの骨折に対する

施術料金表 (1 割負担額 ) 相談支援料算定あり 初検日 + 冷罨法料 初検日 ( 冷罨法料加算なし ) 冷罨法料 初検料 1,460 円 初検料 1,460 円 相談支援料 50 円 相談支援料 50 円 1 部位 760 円 85 円 2,355 円 240 円 1 部位 760 円 2,27

の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

m A, m w T w m m W w m m w K w m m Ⅰはじめに 中手指節関節 以下 MP関節屈曲位でギプス固定を行い その直後から固定下で積極的に手指遠位指 節間関節 以下 DI P関節 近位指節間関節 以下 PI P関節の自動屈伸運動を行う早期運動療法 以下 ナックルキャストは

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保発第 号

358 理学療法科学第 23 巻 3 号 I. はじめに今回は, 特にスポーツ外傷 障害の多い肩関節と膝関節について, 各疾患の診断を行ううえで重要な整形外科徒手検査法と徴候を中心に述べるので, 疾患については特に説明を加えないので, 成書を参照すること 1. 非外傷性肩関節不安定症 1 sulcu

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

図 1-2 上腕骨の骨形態 a: 右上腕骨を上方からみたところ. b: 右上腕骨を外側よりみたところ. 上腕骨近位外側には大結節ならびに小結節という骨隆起が存在し, 結節間溝によって分けられる. 大結節は, その向きによって上面, 中面, 下面とよばれる 3 面に分けられる. く, 不安定である.

原著論文 肩関節屈曲による交互滑車運動器使用時における肩甲骨の動きからみた肩甲上腕リズムの検討 寒川貴雄 (RPT) 1) 成末友祐 (RPT) 2) 新枝誠人 (RPT) 1) 原田貴志 (RPT) 1) 澤近知代 (RPT) 3) Key Word 交互滑車運動器 肩関節屈曲 肩甲骨の動き 肩甲

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

仙台市立病院医誌 索引用語 上腕骨近位端骨折 原 成人 高齢者 保存的治療 著 成人 高齢者上腕骨近位端骨折の保存的治療成績 倍 加 斉 毅 佐 木 藤 黒 沼 秀 治 大 介 粋 安 大 川辺 則 吉 々 ヲ 新 人 倍 安 美 博 ヲ 橋 高 森 田 常武 柴 茂 渡 蔵

足関節

転倒教室評価項目について

Key words: 肩腱板損傷 / 肩関節周囲炎 / リハビリテーション / 疼痛誘発テスト / 超音波検査要旨Jpn J Rehabil Med 2017;54: 特集 運動器リハビリテーションに必須の評価法と活用法 û 肩関節痛のリハビリテーションに必須な評価法と活用法 The

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Ⅰ 医療扶助実施方式

CONTENTS はじめに 3 必修問題 7 第 14 回 8 第 15 回 13 第 16 回 19 第 17 回 25 第 18 回 31 第 19 回 37 第 20 回 43 第 21 回 49 第 22 回 56 第 23 回 63 解剖学 71 第 13 回 72 第 14 回 79 第

原因は不明ですが 女性に多く 手首の骨折後や重労働を行う人に多く見られます 治療は安静や飲み薬で経過を見ますが しびれが良くならない場合 当科では 小さな傷で神 経の圧迫をとる手術を行っており 傷は 3 ヶ月ぐらい経過するとほとんど目立ちません 手術 時間は約 30 分程度ですが 抜糸するのに約 1

10035 I-O1-6 一般 1 体外衝撃波 2 月 8 日 ( 金 ) 09:00 ~ 09:49 第 2 会場 I-M1-7 主題 1 基礎 (fresh cadaver を用いた肘関節の教育と研究 ) 2 月 8 日 ( 金 ) 9:00 ~ 10:12 第 1 会場 10037

A クラス対象者 ( 准医師科 3 年生 29 名 指導者候補生 5 名 ) 8:40 ~ 9:00: 開講式 9:00 ~ 9:30: 柔道整復の歴史 ( 本間 ) 9:30 ~10:10: 基本包帯法包帯の名称 環行帯 螺旋帯 ( 浪尾 ) 10:20~11:50: 基本包帯法麦穂帯 折転帯 亀

3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

問題 5 55 歳の女性.5 年前に右肩関節周囲炎の既往がある. 約 1か月前に階段を踏みはずし右肩を強打した. 以来, 運動痛, 夜間痛が持続している. 肩関節は他動的に挙上可能であるが, 自動的には外側挙上は45 度までにとどまる 最も考えられる疾患名はどれか. 1. 五十肩 2. 上腕骨骨頭骨

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

(4) 最小侵襲の手術手技である関節鏡視下手術の技術を活かし 加齢に伴う変性疾患に も対応 前述したようにスポーツ整形外科のスタッフは 日頃より関節鏡手技のトレーニングを積み重ねおります その為 スポーツ外傷 障害以外でも鏡視下手術の適応になる疾患 ( 加齢変性に伴う膝の半月板損傷や肩の腱板断裂など

会員アンケート調査による検討 岩手県会員へのアンケート調査 ( スクリーニング ) 及び聞き取り調査を行った アンケート調査は会員 145 名中 臨研メンバーを除く1 38 名を対象に行った その結果回答 7 名 回答率 5.07% であった 残念な結果ではあるが 回答いただいた会員には敬意を表する

0. はじめに 当院でこれまで行ってきたメディカルチェックでは 野球選手のケガに対するアンケート調査も行 ってきました (P.4 表 1 参照 ) アンケート調査で 肘 ( ひじ ) の痛みを訴えていた選手は 高校生で 86.7% 小学生で 41.1% でした また 小学生に対しては 超音波 ( エ

関節リウマチ関節症関節炎 ( 肘機能スコア参考 参照 ) カルテNo. I. 疼痛 (3 ) 患者名 : 男女 歳 疾患名 ( 右左 ) 3 25 合併症 : 軽度 2 術 名 : 中等度 高度 手術年月日 年 月 日 利き手 : 右左 II. 機能 (2 ) [A]+[B] 日常作に

1.ai

肩関節第35巻第3号

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靭帯付 関節モデル ( 全 PVC 製 ) AS-6~AS-12 骨格の靭帯部分を 個別関節モデルとしてお買い求め頂けます 弊社カタログでは多くの選択肢の提案に努めています ご希望に合わせてお選び下さい ( 経済型関節モデル靭帯付 AJ-1~7 も良品です )

[ 骨損傷の分類 (1) 外傷性骨折 正常な骨に外力が作用して骨組織の連続性が完全にまたは部分的に離断されたもの (2) 疲労性骨折 比較的軽度な負荷が繰り返し加わって発生下肢の疲労骨折は 10 代に好発 (16 歳にピークがある ) 中足骨 脛骨 腓骨 肋骨などに発生 (3) 病的骨折 骨に基礎疾

第 43 回日本肩関節学会 第 13 回肩の運動機能研究会演題採択結果一覧 2/14 ページ / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学会 ポスター 運動解析 P / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学

JAHS vol8(1)006

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

復習問題

理学療法科学 25(4): ,2010 原著 凍結肩に対する肩関節の臨床解剖学に基づく運動療法の試み A Clinical Anatomical Physical Therapy Approach for Frozen Shoulder Joint Patients 大槻桂右 1,2)

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

姿勢分析 姿勢分析 お名前 北原有希様 体重 45.0 kg 運動レベル 中 生年月日 1977 年 9 月 18 日 身長 cm オレンジ色の項目は 優先度の高い項目です 最適な状態にするための姿勢矯正プログラムが提供されます 頭が前に 18.3 出ています / 前に 2.9 cm 傾

短縮転位 尺側転位が軽度であるが改善され た ( 写真 5) 2 週後短縮転位が確認された [ 症例 3 左橈骨遠位端骨折 ] 14 歳女性負傷日 H Pm01:00 初検日 H Pm05:20 原因 : 柔道大会で相手を投げた際 道着に巻き込み 相手に乗られ負傷 腫脹中

症例報告 関西理学 16: , 2016 肘関節屈曲を伴う肩関節屈曲運動が有効であった右肩腱板広範囲断裂の一症例 鈴木宏宜 長﨑進 1) 1) 三浦雄一郎 上村拓矢 1) 1) 福島秀晃 森原徹 2) 1) Approach for facilitation of middle tra

特集 障害別アプローチの理論 関西理学 14: 17 25, 2014 拘縮肩へのアプローチに対する理論的背景 福島秀晃三浦雄一郎 An Evidence-based Approach to Contracture of the Shoulder Hideaki FUKUSHIMA, RPT, Yu

三角巾は 救急処置における包帯処置として 止血に必要な 圧迫 創傷部を空気に触れないようにする 被覆 打撲や骨折箇所を安静に保つための 固定 に使われます Ⅰ. 三角巾の名称 Ⅱ. 三角巾の形態三角巾の使用時の形態により主に3 種に区分されます 1. 全巾体表面を被覆 ( ガーゼ等の支持も含む )

浅井正孝先生お別れの会に出席して

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2012 年度リハビリテーション科勉強会 4/5 ACL 術後 症例検討 高田 5/10 肩関節前方脱臼 症例検討 梅本 5/17 右鼠径部痛症候群 右足関節不安定症 左変形性膝関節症 症例検討 北田 月田 新井 6/7 第 47 回日本理学療法学術大会 運動器シンポジウム投球動作からみ肩関節機能

足部について

ピッチング ( 投球 ) のバイオメカニクス ピッチングに関連する傷害は オーバーユースに起因していると考えられています 1 オーバーユースに伴う筋肉疲労により 運動で発生したエネルギー ( 負荷 ) を吸収する能力が低下します 2 つまり本来吸収されるべきエネルギーは 関節や他の軟部組織 ( 筋肉

遷延癒合した鎖骨骨折の保存的治療 田村哲也 1), 荻野英紀 2) 2), 長嶋竜太 1) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 2) 医療法人社団了德寺会 高洲整形外科 要旨鎖骨骨折は臨床上多く経験する骨折の一つであり, 保存的治療が原則とされている. 今回は遷延癒合した鎖骨骨折に対し保

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目 次 第 1 章肩の解剖学 1 第 1 節総論... 1 第 2 節肩の骨格... 2 第 3 節肩に関連する筋の解剖学 第 1 項肩甲骨 鎖骨に関連する筋 第 2 項肩関節に関連する筋 第 3 項肘関節に関連する筋 第 4 項体幹に関連する筋...

ハンドヘルドダイナモメーターによる等尺性肩関節水平内転筋力測定の再現性 平野 正広 加藤 宗規 荒巻 英文 荒木 智子 勝木 員子 遠藤 元宏 兎澤 良輔 了德寺大学 健康科学部理学療法学科 要旨 ハンドヘルドダイナモメーターによる肩関節水平内転の等尺性筋力測定の再現性を検討することを目的 とした

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

Chapter1 Anatomic Definitions 解剖学的定義 本章の目的 以下の用語の定義を確認する 解剖学 生理学 病態生理学 ホメオスタシス 解剖学的姿勢 ( 矢状面 正中矢状面 水平面 前頭面 ) 救急隊員同士が 身体部位について互いに共通の言葉で表現できるように 適切な専門用語を

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氏名 ( 本籍 ) 中 川 達雄 ( 大阪府 ) 学位の種類 博士 ( 人間科学 ) 学位記番号 博甲第 54 号 学位授与年月日 平成 30 年 3 月 21 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 学位論文題目 股関節マイクロ牽引が腰下肢部柔軟性に及ぼす影響 - 身体機能および腰痛

24jusei-pm

2011ver.γ2.0

症例報告 関西理学 11: , 2011 肩関節屈曲動作時に painful arc sign を認める 棘上筋不全断裂の一症例 棘下筋の機能に着目して 江藤寿明 1) 福島秀晃 1) 三浦雄一郎 1) 森原徹 2) A Case of an Incomplete Supraspina

はじめに 児童の足部におけるアライメント不良は 衝撃緩衝機能と足部安定性の両側面の低下をもたらし 足底筋膜やアキレス腱への多大なストレスを与え その結果 損傷を引き起こす要因となり得る 特に過回内足による足部アーチの低下に着目し 足部アーチや踵骨傾斜角度を評価することは 踵部損傷の要因を検討する際に

観血的治療を勧められたColle’s骨折2症例に対する非観血的治療

第3回 筋系

27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

アクソス ロッキングプレート カタログ

大腿骨頚部骨折

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

第 132 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 15:00~15:40 座長 : 帯広厚生病院本宮真先生 (1) 小児橈骨頭単独脱臼に対して輪状靱帯縫合術を施行した一例札幌医科大学青木りら先生 (2) 上腕骨遠位骨端離開と鑑別を要した小児肘関節脱臼 + 上腕骨外顆骨折の1 例札幌徳洲会病院佐藤陽介

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Robinson 分類 ( 鎖骨遠位端の Neer 分類も含む ) 鎖骨近位端骨折の治療 通常保存治療で成績がよい しかし 2004 Robinson 8) の報告では受傷後 24 週の時点での偽関節率は 8,3% であった 転位が高度のもの (type1b) では 14.3% 転位のないもの (t

仰向け 三大指標の検査 ( 僧帽筋 C2 横突起 関節突起 後頭骨 ) 五十肩の指標検査 立位 バンザイ検査 DRT 的 五十肩とは? 肩関節が外旋 進展してぐっと行ってしまったのが 肩関節の捻挫 ( 五十肩 ) 肩関節の周辺の筋肉 筋膜に断裂 損傷が起きた状態 その断裂 損傷の度合いによって 症状

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

柔道整復科 (3 学年 ) 2019 年 2019 年度シラバス目次 科目名項科目名項 療法科学 Ⅰ 2 療法科学 Ⅱ 8 療法科学 Ⅲ 12 病理学概論 Ⅱ 16 公衆衛生学 衛生学 19 社会体育 Ⅲ( 柔道 ) 23 関係法規 26 基礎柔道整復学演習 28 基礎柔道整復学 Ⅱ 31 基礎柔道

骨筋18-中1

2. 転倒危険者を察知する ナースの直感 の分析研究の説明書 研究実施説明書もの忘れ外来に通院されている 患者様を対象に 転倒を察知する看護師の洞察力に関する研究のご説明を開始いたします 転倒は太ももの付け根 ( 大腿骨頸部 ) 骨折 手首の骨折の 80% 以上の原因です 大腿骨頸部骨折も手首の骨折

質疑回答 [ 肢体不自由 ] ( 肢体不自由全般 ) 1. 各関節の機能障害の認定について 関いずれか一方が該当すれば 認定可能で節可動域 (ROM) と 徒手筋力テスト (MMT) ある で具体例が示されているが 両方とも基準に該当する必要があるのか 2. 身体障害者診断書の 肢体不自由の状況 及

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03-01【参考資料】①柔道整復に係る療養費の概要(25改定請求件数リニュー版)

VI 参考資料

退院 在宅医療支援室主催小児医療ケア実技研修会 看護師のための 緊張が強いこどものポジショニング 神奈川県立こども医療センター 発達支援部理学療法科 脇口恭生 1

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Microsoft PowerPoint ➁-1 治療用装具に係る既製品のリスト化(案)

きずな 第9号.indd

膝関節 Ⅱ 前回に引き続き 今回も膝関節に関するトピックについて説明していきたいと思います 前回は膝蓋大腿関節の座位における検査法について説明しました 今回は仰臥位で行う膝関節の検査について 特に Q アングルに焦点を当てて 解説していきたいと思います 仰臥位検査 :Q アングル膝関節の仰臥位検査で

Transcription:

上腕骨近位端骨折における 治験例 ヒグチ整骨院 樋口正宏

はじめに 上腕骨近位端骨折のほとんどが 大腿骨頸部骨折及び Colle s 骨折と同じ年齡層 すなわち老人が 手をついて転倒した際に介達外力によって発生する 当骨折の 80% には 骨粗鬆症による骨の脆弱化が認められている なぜなら 骨強度が関節包や靭帯の強度に勝っている若年者では 肩関節脱臼をおこし 小 中学生では 上腕骨近位骨端線部が最も弱く 骨端線離開を起こす事が多いからである

上腕骨近位端骨折の分類法には 多くの方法があるが 現在では Neer の分類法 ( 図 1) が治療上の観点から有用とされ 一般的に用いられている 上腕骨近位端を基本的に 4 つの Part に分け 各々が相互に 1 cm以上の転位 あるいは 45 以上の屈曲または回旋転位のある場合に転位ありとして 1 つの Part を形成すると定義し それ以下の転位の骨折を無視して分類する 正しく分類するには 肩甲骨面に直交する入射角での正面像 肩甲骨側方向撮影 ( 肩甲骨 Y 撮影 ) 腋窩撮影の 3 方向の X 線撮影が必要とされている

目的 高齢化社会を迎え 老人骨折 ( 上腕骨近位端骨折 大腿骨頸部骨折 橈骨遠位端骨折 椎体圧迫骨折 ) の件数が増加している そこで 柔道整復師の本来の業務である外傷の治療を 我々が数多く取り扱えるようにするにはどの様にするべきであろうか それには 患者さんが納得する説明をし 納得する治療をし 納得する結果を出す事が重要であろう 私は 1 症例 1 症例の積み重ねにより外傷患者の来院件数が増加すると確信している 今回 上腕骨近位端骨折に対して簡単な方法で治療し 良好な結果を得た 3 症例を報告する

症例 1 83 歳女性 < 負傷原因 > 方法 1 台所で スリッパに引っ掛かり転倒した際 左手をついて負傷した < 初検までの経過 > 負傷当日 土曜日の午後という事で 患者は自宅で安静にするも 左上腕部の自発痛 運動痛共に高度となり 当院に連絡があり 往診した

< 局所所見 > 左上腕骨近位部腫脹高度 左上腕骨大結節部及び外科頸部マルゲ - ンの局所圧痛高度 左上腕骨軸圧痛及び左肘頭より左上腕骨への叩打痛も認められた 左上腕骨大結節及び外科頸骨折と判断し 救急病院に連絡しレントゲン検査を依頼した

<X-P 所見 > 正面像より 大結節の剥離骨折が認められた 上方に5mm程度の転位があった 上腕骨外科頸にも骨折線は認められたが 転位は認めらなかった 斜位像より 大結節の剥離骨折が認められた 小骨片は 外旋転位していた 上腕骨外科頸にも骨折線が認められたが 転位は認められなかった ここでの大結節の外旋転位は 上腕内旋位固定による2 次性転位が主なものだと考えられた 正しい方向のX 線撮影でないので Neerの分類は判断し難いと思われた

< 整復法 > 特に 整復の必要は無いと判断した < 固定法 > ( 固定材料 ) 三角巾 マジックベルト ( 固定肢位 ) 三角巾で提肘し 左上腕部を体幹にマジックベルトで固定した

結果 1 3 週間後提肘をしたままでの振り子運動を開始した 大結節部及び 外科頸部マルゲ-ンの局所圧痛中等度 5 週間後大結節部及び 外科頸部マルゲ-ンの局所圧痛消失にて 提肘除去 自動運動 他動運動を開始した 自動運動は1kgの鉄アレーを持たせ 屈曲 伸展 外転 内転 水平屈曲 水平伸展 外旋 内旋の各運動とした 他動運動も同様の運動とし 徐々に術者の力を増強した 目安としては 運動制限のでる角度から10~20 程度動かす事とした 右肩関節屈曲 170 伸展 40 外旋 85 内旋 90 左肩関節屈曲 90 伸展 15 外旋 40 内旋 85

8 週間後左肩関節屈曲 150 伸展 30 外旋 70 内旋 90 12 週間後左肩関節屈曲 170 伸展 35 外旋 85 内旋 90 左肩関節機能障害無く 治癒とした

方法 2 症例 2 76 歳女性 < 負傷原因 > 当院に腰の治療で来院する道中 当院玄関前でつまずき転倒した際 左手をついて負傷した < 初検までの経過 > 受傷直後に来院した

< 受傷直後の外見 > 左上腕骨頭が 下 前 内方に移動していた為 肩関節前方脱臼の様にも見えたが これは 大結節剥離骨折により 棘上筋 棘下筋 小円筋が働かず 肩甲下筋等の筋力による上腕骨頭の変位だと考えた 当院では 受傷から数時間経過後に外傷患者が来院するケースも多い為 局所の腫脹により 外見上の判断が困難な場合も多い その中で 当症例の外見は臨床上重要であると考えられた

< 局所所見 > 左上腕骨外科頸部及び大結節部マルゲ - ンの局所圧痛高度 受傷直後であり 腫脹は軽微であった 上腕骨軸には 外転と後方への屈曲変形が認められた

< 超音波による骨観察所見 > 左上腕骨外科頚外側面からの観察にて 外方閉 ( 外方凹 ) であった 左上腕骨外科頸外転骨折に 大結節剥離骨折の合併があると判断し 整復後 レントゲン検査を依頼する事とした

< 整復法 > 患者を背臥位とし 左肩関節ゼロポジションにして 術者は両手で患者の左手関節部を把握し 術者の右足を患者の左鎖骨上に乗せ 術者の左足を患者の左肩甲骨外側縁にかけて 後方に倒れるように体重をかけて 15 分間牽引した 整復後 触診により あまり転位は整復されていないと判断した

<X-P 所見 > 整復後 同意医師に連絡し レントゲン検査を 受けさせた X-P より 左上腕骨外科頸骨折及び大結節剥離 骨折が認められた 末梢骨片は 外転及びやや後方へ屈曲転位していた 症例 1 と同様に Neer の分類は判断し難いと思われた

< 再整復 > 患者を背臥位とし 肩関節 100 外転させ 術者は 左手 2~4 指を患者の左腋窩に入れ 左拇指で骨頭を押さえ 右手で患者の左上腕下端を把握し 牽引しつつ患者の左前胸部へと内転した 術者の左手 2~4 指を槓杆の支点とし 左拇指で患者の左上腕骨頭を 上 後 内方へ押さえ込み整復した 整復後 触診にて 転位はほぼ整復された事を確認した

< 固定法 > ( 固定材料 ) プライトン100 ストッキネット 巻軸包帯 三角巾 ( 固定肢位 ) 肩関節内転位 45 内旋位 軽度屈曲位とした これは 整復完了時の肢位に近い肢位であると共に 患者が高齢の為 日常生活に於いて比較的楽な肢位という事から決定した さらに 術者にとっても 簡単な方法であると思われた また 肘関節は90 屈曲位とし 提肘した

( 固定範囲 ) 肘頭より 上腕部内側面 外側面を通り 肩部までとし 鎖骨外端及び肩峰を包み込む様に プライトン100を使用したU 字シャーレを当てた U 字シャーレで2 方向から圧迫することにより 骨折部を さらに安定させることができた

結果 2 受傷翌日左上腕骨外科頸部及び大結節部マルゲ-ンの局所圧痛高度 左胸部及び左上腕上部から下部にかけての皮下溢血斑高度 同部の腫脹高度であった 4 週間後皮下溢血斑消失 外科頸部及び大結節部マルゲ -ンの局所圧痛中等度 肩部から上腕下部にかけての腫脹中等度であった 固定 提肘をしたまま 自動運動で徐々に振り子運動を開始させた

5 週間後 X-Pより 仮骨形成は認められるも 骨癒合不充分と判断し固定を継続した 外科頸部及び大結節部マルゲ-ンの局所圧痛中等度 腫脹中等度であった

8 週間後 X-Pより 骨癒合完了 外科頸部及び大結節部マルゲ-ンの局所圧痛消失 腫脹消失 外見的にも 変形は認められなかった 固定を除去し 他動運動を開始した 右肩関節屈曲 165 伸展 40 外旋 80 内旋 80 左肩関節屈曲 90 伸展 10 外旋 10 内旋 60 であった

16 週間後左肩関節屈曲 155 伸展 35 外旋 65 内旋 70 であった 20 週間後左肩関節屈曲 160 伸展 40 外旋 75 内旋 80 となり 満足できる可動域が確保できた為 治癒とした

方法 3 症例 3 81 歳女性 < 負傷原因 > 外出先で 階段を踏み外し転倒した際 左手をついて負傷した < 初検までの経過 > 受傷 3 時間後に来院した

< 局所所見 > 左上腕上部から中央部にかけての腫脹高度 皮下溢血斑高度 左上腕骨外科頸部マルゲ - ンの局所圧痛高度 上腕骨軸には 内転と後方への屈曲転位が認められた 左上腕骨外科頸内転骨折と判断し 超音波による骨観察を行った

< 超音波による骨観察所見 > 左上腕骨外科頸部前面からの観察にて 前方開 ( 前方凸 ) であった 左上腕骨外科頸部外側面からの観察にて 外側開 ( 前方凸 ) であった 超音波による骨観察所見からも 上腕骨軸の内転と 後方への屈曲変形が認められた その上で レントゲン検査を依頼した

<X-P 所見 > X-P より 左上腕骨外科頸骨折が認められた 末梢骨片は 内転及び後方へ屈曲転位していた 症例 1 2 と同様に Neer の分類は判断し難いと思われた

< 整復法 > 患者を背臥位とし 左上腕骨を牽引しつつ 前外方に挙上させようとしたところ 高度の疼痛を訴え整復を拒否された為 患者の家族も交えその事を説明した上で ハンギングキャストを施行する事とした

< 固定法 > ( 固定材料 ) キャストライト 8 ストッキネット ギプス包帯 ネット包帯 巻軸包帯 ( 固定肢位 ) 肩関節軽度外転位 軽度屈曲位 45 内旋位 肘関節 90 屈曲位 前腕中間位とした 末梢骨片の後方転位を少しでも矯正する目的で フックは前腕背側に取り付けた また 末梢骨片の内転転位を少しでも矯正する目的で 吊りひもはやや長めとした

( 固定範囲 ) 上腕上 1/3 部 ( 骨折部より末梢 ) から手関節まで キャストライト 8 を巻き 上腕部外側面 前腕部背側面を残したシャーレとした 前腕部には 重りとして 4 裂のギプス包帯 3 本を巻いた

翌日より ハンギングキャスト装着のままでの振り子運動を 通院及び在宅で施行した 10 日後 結果 3 X-P より 転位の状態は改善されておらず ハンギングキャストによる治療を断念した 同日より 症例 2 と同様の固定とした 左胸部及び左肩部から左上腕下部にかけての 腫脹高度 同部皮下溢血斑中等度 左上腕骨 外科頸部マルゲ - ンの局所圧痛高度であった 振り子運動は中止とした

4 週間後皮下溢血斑消失 左胸部及び左肩部から左上腕下部にかけての腫脹中等度 外科頸部マルゲ- ンの局所圧痛中等度であった 固定 提肘をしたままでの振り子運動を開始した

8 週間後 X-Pより 骨癒合完了 外科頸部マルゲ-ンの局所圧痛消失 腫脹消失 固定を除去し 他動運動を開始した 右肩関節屈曲 165 伸展 45 外旋 80 内旋 85 左肩関節屈曲 70 伸展 20 外旋 10 内旋 40 であった 11 週間後左肩関節屈曲 130 伸展 35 外旋 70 内旋 70 であった 運動療法により 可動域の拡大が望めることを患者に説明したが 日常生活に不自由がないとの事で来院されなくなり 中止とした

考察 症例 1 の上腕骨大結節剥離骨折は 本来 上腕を外転 外旋位で固定することが望ましい これは 棘上筋 棘下筋 小円筋の筋力により 小骨片が 後上方に転位しているためである 症例 2 の上腕骨外科頸外転骨折に大結節剥離骨折が合併した場合では 上腕を内転 外旋位で固定するとよいのであろう 症例 3 の上腕骨外科頸内転骨折の場合は 上腕を外転 水平屈曲位で固定するとよいのであろう しかし 当院では 患者の年齢や 日常生活での動作のしやすさ また 固定肢位の保持のしやすさ ( 上腕外旋位や 回旋中間位での固定は 甚だ困難であろう ) 固定の簡便さ等の条件により 固定肢位 固定材料を決定している けれどもそこには 整復し得た肢位で固定するという大前提がある

次に Neer の分類について考えるが 最近の整形外科書には 必ずこの分類が記載されており 上腕骨外科頸外転骨折や内転骨折といった分類が記載されているものはほとんど無い そこで 我々柔道整復師も 上腕骨近位端骨折を Neer の分類を使って分類することが必要であろう しかし 今回の症例 1 は救急病院に 症例 2 3 は内科に それぞれレントゲン検査を依頼したものであるが 正しい 3 方向のレントゲン撮影を依頼できない限り Neer の分類を正確に分類するのは不可能である その上で 柔道整復師として何とか分類できないものかと思い 超音波骨観察装置を導入した 現在 研究中であり 今後の課題としていくつもりである

おわりに 体表解剖の重要性 例えば 上腕骨大結節を触診する場合 肘関節 90 屈曲位にして 腕尺関節をロックし 前腕の動き ( 回内 回外 ) が上腕骨に伝わらない様にして 上腕骨を内旋 外旋させ結節間溝を探す その外方が 大結節である この様にすると簡単且つ確実に大結節を触診する事ができる また 上腕骨外科頸部を触診する場合 上腕骨上部の前方は 上腕二頭筋 三角筋等に覆われ 外側は 三角筋等に覆われ 後方は 上腕三頭筋 三角筋等に覆われている 従って 内側より触診すると確実である この様に 体表解剖は重要である

参考文献 骨折の臨床第 3 版 : 編集者村地俊二 三浦隆行. 中外医学社. 東京.1996 整形外科外来診療: 編集者小野村敏信 寺山和雄 渡辺良. 南江堂. 東京.1995 図解骨折 脱臼の管理 Ⅰ 第 3 版 : Depalma,Connolly 著. 監訳者 阿部光 俊. 廣川書店. 東京.1991