1 試験分類優良品種等導入対策試験調査 2 課題名ミニ系野菜類の品種地域適応性調査 ( 葉茎類 ) 3 実施期間継続 ( 平成 22 年 ~) 4 担当地域支援係 5 目的近年 直売所や小売店等で販売されているミニ野菜 ( ミニレタス ミニキャベツ ミニハクサイ ) の各品種について その適性及び品質を比較検討する 6 平成 24 年度の結果 ミニレタス (1) 試験方法ア試験圃場及び規模 : 農業支援センター露地圃場 (R-4-1) 9.4 m2イ供試品種 4 品種 ミニコ ( 雪印種苗 ) 美味タス ( トキタ種苗 ) レネット ( 丸種 ) 極早生シスコ ( タキイ種苗 ) ウ試験規模 1 区 53 株 2.25 m2 (0.9m 2.5m) 反復ありエ耕種概要栽植密度 :17cm 17cm 5 条千鳥植え (3,460 株 /a) 施肥量 : 基肥 N=1.5 P2O5=1.5 K2O=1.5( kg /a:s555 レタスの標準施肥に準ずる) 播種 : 平成 24 年 7 月 3 日セル成型 128 穴定植 : 平成 24 年 7 月 19 日露地マルチ栽培 ( 白黒ダブルマルチ 135cm) 防除 : 殺虫剤 3 回 殺菌剤 1 回収穫 : 平成 24 年 8 月 28 日全品種 (2) 生育及び収穫状況観察による結果は 美味タス の発芽率が 8 割程度と他の品種 (9 割 ~10 割 ) と比べてやや劣ったが その後の生育では品種間差は認められなかった 定植後の生育についても すべての品種において順調であり 生育全般を通して品種間での特筆すべきことは見られなかった 近年は 夏期の高温期が続くなど 気候の変動が大きく 作物全般を通して品質に問題が多かったため 今年度も昨年度同様白黒ダブルマルチを使用し 品質の安定化を図った その結果 6 7 月は高温期や少雨期による品質の影響は確認されず順調に生育した 収穫において 定植から 40 日で収穫に至り 病虫害などによる生育への影響は特に確認されなかったため 品種間による影響は少なかったと思われる 通常品種では 1 球重 500~600g 程度のレタスであるが ミニレタスではすべての品種で約 200g 台であるため 通常品種との差が重量ベースで半分と手ごろ感がある 写真 1 ミニコ 8/14 写真 2 美味タス 8/14
写真 3 レネット 8/14 写真 4 極早生シスコ 8/14 (3) 収量結果表 1 ミニレタス収量調査結果 (10 株平均 ) 項目 品種 平均重 (g) 球高 (cm) 球径 (cm) 球径比 10a 当たりの総収量 (t) 美味タス 291.9 19.8 13.3 1.5 4.1 ミニコ 239.0 16.8 11.7 1.4 4.1 レネット 229.3 16.9 11.7 1.5 4.0 極早生シスコ 227.7 12.1 11.4 1.1 4.0 品種間の平均重や収量のばらつきについては 表 1 に見られるように 極早生シスコ の 227g~ 美味タス の 291g と差が見られた 美味タス の収量については 他品種と比較し発芽率が 8 割と低率だったことを加味している 図 1 ミニレタス平均重 (10 株平均 ) 図中のエラーバーは標準偏差を示す
写真 5 ミニコ 8/28 写真 6 ミニコ ( 半割 ) 8/28 写真 7 美味タス ( 全景 ) 8/28 写真 8 美味タス ( 半割 ) 8/28 写真 9 レネット ( 全景 ) 8/28 写真 10 レネット ( 半割 ) 8/28 写真 11 極早生シスコ ( 半割 ) 8/28 写真 12 極早生シスコ 8/28
(4) 食味試験結果 図 2 ミニレタス食味試験結果 8 月 29 日実施 17 名参加 食味等の点数について 1( 不良 )~5( 良 ) 食味試験に関しては 極早生シスコ が最も評価が高く 次いで 美味タス の順となった 極早生シスコ は 食感やみずみずしさの評価も高い 昨年度も 両品種の食味評価は高く 美味タス 極早生シスコ の順に評価が高かった (4) 各品種の特徴 美味タス : 発芽率が他品種と比較し劣る 食味はよい ミニコ : レネット同様半結球 レネット : 調整重や形質 ( 球高 球径 ) が大きいが 収量が少なめ 形状は半結球 極早生シスコ : 収量が少なく 小ぶり 葉の締まりが良く 食味が良い 結球性に優れる 肉質が厚く 食感性に優れる (5) 考察ミニレタスの大きさは ソフトボール程度とかなり手ごろであり 食味的にも充分であるが 直売所以外での流通はあまり見られていない 植栽密度について 通常品種の倍程度の栽植密度での栽培は可能と考え 形状について 極早生シスコ 以外は すべて半結球の品種であった 極早生シスコ は食味もよく手頃であり ミニレタス全体としても普及性があると考えたが 通常品種と比較して小型化の度合いが低く 残念ながら広く普及するまでは至っていない ミニハクサイ (1) 試験方法ア試験圃場及び規模 : 農業支援センター露地圃場 (R-2-1) 21.6 m2イ供試品種 6 品種 黄芯さやか ( 日本農林 ) 極意 ( カネコ種苗 ) ミニ黄作 50 ( 丸種 ) 娃々菜 タイニーシュシュ ( トキタ種苗 ) 野崎 123 ( 野崎採種場 ) ウ試験規模 1 区 45 株 2.7 m2 (1.8m 1.5m) 反復ありエ耕種概要栽植密度 : 条間 30cm 株間 20cm(1,666 株 /a) 施肥量 : 基肥 N=1.5 P2O5=1.5 K2O=1.5( kg /a:s555 ハクサイの標準施肥に準ずる ) 播種 : 平成 24 年 7 月 3 日セル成型 128 穴定植 : 平成 24 年 7 月 19 日露地マルチ栽培 ( 白黒ダブルマルチ 135cm) 防除 : 殺虫剤 3 回 殺菌剤 1 回収穫 : 平成 24 年 8 月 28 日全品種 (2) 生育及び収穫状況 7 月 3 日に播種し その約 2 週間後に定植した後 順調に生育し 8 月 28 日にすべての品種で収穫に至った ( 定植から約 40 日で収穫 ) 収穫前 1 週間に軟腐病の発現があり その後収穫までにかなりの株で軟腐病が激発した 特
に 黄心さやか ではその程度が高かった 通常品種では 1 球重 2.5kg 程度のハクサイであるが ミニハクサイではすべての品種で最大約 1kg 程度であるため 通常品種との差が大きく 手ごろ感によるメリットが大きいと思われる 写真 13 ミニハクサイ生育中 9/28 写真 14 軟腐病の激発した 黄心さやか 8/28 (3) 収量結果表 2 ミニハクサイ収量調査結果 (10 株平均 ) 項目 品種 平均重 (g) 球高 (cm) 球径 (cm) 球径比 10a 当たりの総収量 (t) 黄心さやか 853.0 25.3 15.0 1.7 7.8 極意 1,018.3 27.0 13.4 2.0 11.7 ミニ黄作 937.9 28.4 13.2 2.1 10.8 娃々菜 892.2 25.3 12.6 2.0 10.3 タイニーシュシュ 1,076.6 29.0 13.6 2.1 12.4 野崎 123 952.1 33.3 11.6 2.9 10.9 品種間の平均重や収量のばらつきについては 表 2 に見られるように 黄心さやか の 853g~ タイニーシュシュ の 1,076g と差が見られた 黄心さやか の収量については 激発した軟腐病を考慮に入れ 他品種の 10 株収穫に対し 8 株の収穫にとどまったため 収量減となっている 図 3 ミニハクサイ平均重 (10 株平均 ) 図中のエラーバーは標準偏差を示す
写真 15 黄心さやか 8/28 写真 16 極意 8/28 写真 17 ミニ黄作 8/28 写真 18 黄心さやか ( 半割 )8/28 写真 19 極意 ( 半割 )8/28 写真 20 ミニ黄作 ( 半割 )8/28 写真 21 タイニーシュシュ ( 全景 ) 8/28 写真 22 極意 ( 全景 ) 8/28 写真 23 野崎 123( 全景 )8/28 写真 24 タイニーシュシュ ( 半割 )8/28 写真 25 極意 ( 半割 ) 8/28 写真 26 野崎 123( 半割 ) 8/28
(4) 食味試験結果 ミニハクサイ食味 ( 生食 ) 香り 4.0 食味 ( 総合 ) 3.5 3.0 2.5 2.0 食感 サラダ極意プチヒリ 娃々菜 舞の海 甘味 みずみずしさ 図 4 ミニハクサイ食味試験結果 ( 生食 )10 月 11 日実施 18 名参加 食味等の点数について 1( 不良 )~5( 良 ) 食味試験において 生食での評価にほとんど差が見られなかった みずみずしさでは サラダ 食感では 極意 の評価が高かった ミニハクサイ食味 ( お浸し ) 香り 4.0 食味 ( 総合 ) 3.5 3.0 2.5 2.0 食感 サラダ極意プチヒリ娃々菜 舞の海 甘味 みずみずしさ 図 5 ミニハクサイ食味試験結果 ( お浸し )10 月 14 日実施 16 名参加 食味等の点数について 1( 不良 )~5( 良 ) 再度お浸しにして評価した結果 極意 娃々菜 に人気があった 特に 極意 は各項目 ( 食感 みずみずしさ 甘み ) でも高い評価を得た (5) 考察ミニハクサイは通常品種と比較し 大きさとしてはかなり手ごろで 食味的にも充分である 通常品種とは違って青臭さが少なく 生食用にも向いているものは サラダ用としての利用も可能で 新たな食べ方により消費拡大に寄与する可能性もある また 徐々に札幌市内の量販店にも見られるようになってきている
ミニキャベツ (1) 試験方法ア試験圃場及び規模 : 農業支援センター露地圃場 (R-2-1) 26 m2 ( ミニキャベツ ) イ供試品種 5 品種 ベビースィート ( 野原種苗 ) J ボール 40 甘藍 ( 小林種苗 ) ミニックス 40 ( 丸種 ) みさき ( サカタのタネ ) 爽月 2 号 ( カネコ種苗 ) ウ試験規模 1 区 48 株 5.76 m2 (2.4m 2.4m) 反復ありエ耕種概要栽植密度 : 畝幅 40 cm 株間 30 cm (833 株 /a) 施肥量 : 基肥 N=1.5 P2O5=1.5 K2O=1.5( kg /a:s555 キャベツの標準施肥による) 播種 : 平成 24 年 7 月 3 日セル成型 128 穴定植 : 平成 24 年 7 月 19 日露地マルチ栽培 ( 白黒ダブルマルチ 135cm) 防除 : 殺虫剤 5 回 殺菌剤 1 回収穫 : 平成 24 年 9 月 5 日全品種 (2) 生育状況 7 月 3 日に播種し その約 2 週間後に定植した後 順調に生育し 9 月 5 日にすべての品種で収穫に至った ( 定植から約 50 日で収穫 ) 例年 根こぶ病の発生が見られるたが 今年の発生については見られなかった 8 月には害虫の発生が見られ 上旬にはアオムシ コナガ 下旬はアブラムシの防除を行った 通常品種では 1 球重が 1.5kg 程度のキャベツであるが ミニキャベツではすべての品種で 440g~ 約 630g 程度と比較的小ぶりであるため 通常品種との差が大きく 手ごろ感によるメリットが大きいと思われる 写真 27 ミニキャベツ生育中 7/31 (3) 収量結果表 3 ミニキャベツ収量調査結果 (10 株平均 ) 項目 品種 平均重 (g) 球高 (cm) 球径 (cm) 球径比 10a 当たりの総収量 (t) ベビースィート 455.2 13.1 13.6 1.0 3.8 J ボール 40 540.9 13.7 11.8 1.2 4.5 ミニックス 40 473.0 12.7 13.2 1.0 3.9 みさき 634.9 38.8 24.7 1.6 5.3 爽月 2 号 443.2 12.3 12.2 1.0 3.7 平均重において 各品種で 440g 台 ~630g 台であった 他の品種と比較し みさき は 球高や球径が大きく 平均重でも最も重く 収量的にも多い結果であった
図 6 ミニキャベツ平均重 (10 株平均 ) 図中のエラーバーは標準偏差を示す 写真 28 ベビースィート 9/5 写真 29 J ボール 40 甘藍 9/5 写真 30 ミニックス 40 9/5 写真 31 ベビースィート ( 半割 )9/5 写真 32 J ボール 40( 半割 )9/5 写真 33 ミニックス 40( 半割 )9/5
写真 34 みさき 9/5 写真 35 爽月 2 号 9/5 写真 36 みさき ( 半割 )9/5 写真 38 爽月 2 号 ( 半割 )9/5 (4) 食味試験結果 ミニキャベツ食味 食味 ( 総合 ) 甘味 香り 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 食感 みずみずしさ ベビースィートミニキャベミニックス 40 みさき爽月 2 号 やわらかさ 図 7 ミニキャベツ食味試験結果 10 月 27 日実施 16 名参加 食味等の点数について 1( 不良 )~5( 良 ) 食味試験では みさき 爽月 2 号 の評価が高く 次いで ミニックス 40 の順となった 特に 爽月 2 号 は香り みさき はみずみずしさ やわらかさ 甘みの項目で優れていた 食味において すべての品種で辛みを感じるとの声が多かった (5) 考察通常品種では 1.5kg 程度であるキャベツが 今回調査した品種では 400g 台 ~600g 台であり 通常品種との差が大きく 手ごろ感からの食べきりサイズによるメリットが大きいと感じた 形状について みさき は写真にもあるとおり タケノコ型の形状が特徴的であるが そのほかの品種は 円形の形状である ミニキャベツは 通常品種と比較し 大きさとしてはかなり手ごろで 食味的にも充分であることに加え 今回の食味試験では みさき や 爽月 2 号 といった品種は全ての項目で評価が高かった まとめ近年の核家族化の進展により 食べきりサイズのミニ野菜の普及性が高まるのではないかとの観点から直売向け等に品種比較試験に取り組み 様々な品種の探索や市場性の拡大にも着目し 調査を行った
今回の調査結果から ミニ野菜について 1 生食に向く品種 2 加熱など調理方法によって特定の用途に向く品種など 各品種の特徴が感じられた 例えば ミニハクサイでは 一般に生食はしないが 極意 のように歯ごたえもよく 生食 ( サラダ等 ) に向いているとの意見が多数あり 違った食べ方を提案できる この試験を行うにあたり ミニ野菜普及の可能性について 食味等も通常品種と比較して十分なものもあるが やはり劣るものが多い 直売等での売り方によって市場性も広がる余地はあるが まだまだ発展途上である 市場流通は難しいが 食べきりサイズという利点から カット売りではない鮮度の高いものを供給できるメリットがあると考えられる この結果から 直売所等での売り方を工夫し 人気が出る可能性が考えられる