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東京都におけるグラウンドカバープランツおよび 花き類に発生する病害虫 東京都農林総合研究センター竹内純 はじめに東京の農業は園芸的色彩が強く, 古くから多種多様な花や植木などの栽培が盛んである 現在でも江戸文化を象徴するアサガオやホオズキの栽培が継承されている また江東地域ではオーソドックスなキクやユリなどの切り花栽培が営まれ, 都内全域でシクラメンや 小鉢もの と呼称される多様な鉢花の生産が行われている 一方, 伊豆諸島では温暖な気候を利用し, 花き類や観葉植物の生産が重要な産業となっており, 特にフェニックス, レザーファン, ルスカスなどの 切り葉 栽培では, わが国でも屈指の産地となっている しかし, 東京都区部および多摩地域の都市化は急速に進み, 生産圃場は市街地に囲まれている このように露地の畑作地が大幅に減少する中で花き類の生産においては都市化に対応した新たな形態が発展している 第 1に, 都市環境の中で需要の高い緑化 景観用の地被植物 ( グラウンドカバープランツ ) が産業として大きく発展したことである グラウンドカバープランツ生産の先駆者は野菜, 植木, 畜産などから転進し, 一代でこの産業の基礎を作り上げた 現在, 世代交代の時期であり,2 代目となる若い後継者は積極的に新品目や新技術を導入するなど意欲的に営農している 第 2に, 野菜の直売農家が着手した 直売切り花 ( カジュアルフラワー ) 栽培が急速に普及していることである 本来は野菜や果樹の生産者であり, 花作りはゼロからのスタートであった はじめは北多摩地域の20~30 歳代の生産者が中心となり, 自由な形態で多品目の切り花栽培に取り組み, 大幅に農業収益を向上させた やがて周辺の農家へも波及し, 現在では都内各地でカジュアルフラワーの生産が行われている

1. グラウンドカバープランツ栽培圃場に発生する病害虫 1) グラウンドカバープランツとはグラウンドカバープランツは計画的な市街化住宅地区, 大型公共施設, 公園, 道路の緑地帯などの地被 緑化に利用する植物の総称である およそ地被に利用できる植物であればこの範疇に入り,1 草丈がおおよそ50cm以下,2 主に常緑多年草か常緑木本植物で,3 環境順応が高く,4 地表面や壁面を密に被覆し, 5 雑草を抑制するなどの特性をもつ その種類は矮性や匍匐性の針葉樹 広葉樹, ササ類, 草花, シダ類など, きわめて多種 多様である グラウンドカバープランツが公共緑化の材料として導入されたのは1970 年代中頃からで, 需要の背景として,1 都市化の進展に伴って法面やビルの壁面, フェンス, ポールなどの新しい緑化需要が開発され,2オープンな緑化空間が都市空間にゆとりを与えるとともに, 防災面などでも有効であり,3 高木の樹種が変化し, 地被植物との調和が重んじられてきたこと,4 高木だけによる緑化に比べ, 修景上の幅を広げられることなどがあげられる グラウンドカバープランツは一度期に多数の株を植栽する必要があるため, 以前は繁殖が容易で大量生産が可能な, 管理のしやすい植物が用いられていたが, 最近では多様な需要に応えるため, 葉, 花, 実などにより観賞価値の高い新品目が次々と導入されている グラウンドカバ-プランツのほとんどの品目は,10aあたり6 万ポット前後と集約的に生産され, 育成後, ポットごと出荷される 育成期間は1~2 年で植木類と比較すると回転率は極めて高く, わが国の年間生産量は, ここ数年,6 千万ポット前後を維持している 繁殖は挿し木や株分けなどの栄養繁殖が中心で, 同一の植物を一時期に数万 ~ 数十万鉢も増殖することがある ポット植えの植物は, ビニルハウスやガラス室などの施設で管理されるが, ササ類などは野外に置かれることもある 灌水は, 生産量が多いことなどから, スプリンクラーで行われ, 補助的に手灌水することもある 近年ではミストやフォグ装置での自動灌水が, 主に挿し木 ~ 活着期の管理に用いられている 採穂または株分け用の母樹 母株は, 露地圃場植え, あるいは大型の鉢植えで管理されている 2) 発生病害虫の特徴グラウンドカバープランツ ( カバープランツ ) 主な発生病害虫は表 1および表

3に記した カバープランツにおける病害虫発生に特有な原因は以下のように考えられる 1 集約的な栽培管理ポットでの増殖 養成時には同一の植物が大量に, かつ過密に置かれ, 枝葉が重なり合うことなどにより通気性が悪化しやすい このような環境下で病害虫が発生すると, 大きな被害となる 栽培株数が極めて多く, 病害虫の初期発 図 1 ヒペリカムさび病 ( 病原菌 :Melampsora hypericolum) 図 2 ツルニチニチソウ立枯病病原菌 :Rhizoctonia solani AG-4,A

図 3 サビヒョウタンゾウムシによるヤブランの食害 生を見過ごし, 防除が遅れる 2 栄養繁殖による継続的発生カバープランツの病害虫は, 生産圃場, 母樹 母株圃場および植栽地の3 場面で被害をもたらし, 時に連続した被害構造を形成する 大半の品目は栄養繁殖するため, 母樹 母株に発生した病害虫が生産圃場に持ち込まれ, 植栽地にも被害を生じる ( 図 1, 2, 3) 3) 防除カバープランツにおいは病害虫防除の基本は以下の耕種的な防除が中心となる 地道なことであるが着実に取り組んでいる生産者の圃場での病害虫の発生は少ない 1 健全穂木 株の確保カバープランツ生産ならびに植栽地での発病回避 軽減のためには, 健全な母樹 母株を育成することが最も重要である 繁殖用に採穂または小分けした株も, 水あげや鉢上げの際に徹底した選別を行い, 養成に用いる施設に病害虫を持ち込まないように留意する 2 無病培養土の確保用土は経費や手間の関係から, 特別の場合を除いて, 土の消毒は行わないた

表 1 東京都で発生したグラウンドカバ - プランツの主要病害 a) 植物名 [ 科名 ] 病名 [ 病原菌 ] 発生頻度 b) 被害程度 < 草本植物 > シャガ, ヒメシャガ [ アヤメ科 ] ハナショウブ [ アヤメ科 ] クマザサ [ イネ科 ] オキザリス [ カタバミ科 ] ガザニア [ キク科 ] セイヨウノコギリソウ [ キク科 ] ツワブキ [ キク科 ] ヒメツルニチニチソウ [ キョウチクトウ科 ] マツバギク [ ザクロソウ科 ] アジュガ [ シソ科 ] シバザクラ [ ハナシノブ科 ] ユキノシタ [ ユキノシタ科 ] アマドコロ [ ユリ科 ] ギボウシ類 [ ユリ科 ] ジャノヒゲ [ ユリ科 ] ノシラン [ ユリ科 ] ホトトギス [ ユリ科 ] ヤブカンゾウ [ ユリ科 ] エビネ [ ラン科 ] シュンラン [ ラン科 ] シラン [ ラン科 ] 黄化腐敗病 [Aphanomyces iridis] さび斑病 [Alternaria iridicola] 紋枯病 [Rhizoctonia solani AG-2-2,B] さび病 [Puccinia longicornis] さび病 [Melamspora itoana] 葉腐病 [Rhizoctonia solani AG-1,B] 葉腐病 [Rhizoctonia solani AG-1,B] うどんこ病 [Oidium sp.] 斑葉病 [Septoria tussilaginis] 黒枯病 [Phoma exigua var. inoxydabilis] 立枯病 [Rhizoctonia solani AG-4,A] うどんこ病 [Sphaerotheca elscholtziae] 株枯病 [Phoma eupyrena] 白絹病 [Sclerotium rolfsii] 株腐病 [Rhizoctonia solani AG-2-2,B] 白絹病 [Sclerotium rolfsii] 灰色かび病 [Botrytis cinerea] 斑葉病 [Phoma exigua] 褐色斑点病 [Phyllosticta cruenta] 炭疽病 [Colletotrichum liliacearum] 炭疽病 [Colletotrichum liliacearum] 白絹病 [Sclerotium rolfsii] 炭疽病 [Colletotrichum liliacearum] 炭疽病 [Colletotrichum liliacearum] 炭疽病 [Colletotrichum liliacearum] 葉枯病 [Aurerobasidium microstictum] 斑紋モザイク病 [CMV] 炭疽病 [Colletotrichum dematium] 炭疽病 [Colletotrichum sp.] 炭疽病 ( 仮 )[Colletotrichum sp.] ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ < 木本植物 > ムベ [ アケビ科 ] ヘデラ ( キヅタ ) 類 [ ウコギ科 ] ヒペリカム カリシナム [ オトギリソウ科 ] アベリア [ スイカズラ科 ] フッキソウ [ ツゲ科 ] サルココッカ [ ツゲ科 ] アメリカイワナンテン [ ツツジ科 ] ツルマサキ [ ニシキギ科 ] コトネアスター [ バラ科 ] ハイビャクシン類 [ ヒノキ科 ] サワラ ( フィリフィラオーレア )[ ヒノキ科 ] ミヤギノハギ [ マメ科 ] オタフクナンテン [ メギ科 ] ヤブコウジ [ ヤブコウジ科 ] ヒメウツギ [ ユキノシタ科 ] うどんこ病 [Oidium sp.] 斑点細菌病 [Xanthomonas campestris pv. hederae] 疫病 [Phytophthora nicotianae 他 ] 褐斑病 [Guignardia sp.] 炭疽病 [Colletotrichum trichellum] 灰色かび病 [Botrytis cinerea] くもの巣病 [Rhizoctonia solani AG-1,B] さび病 [Melampsora hypericolum], 灰色かび病 [Botrytis cinerea] うどんこ病 [Oidium sp.] 斑点病 [Pseudocercospora abeliae] 紅粒茎枯病 [Pseudonectria pachysandricola] 褐斑病 [Phyllosticta sp.], 白絹病 [Sclerotium rolfsii] 白絹病 [Sclerotium rolfsii] 褐斑病 [Guignardia sp.] 紫斑病 [Pseudocercospora leucothoes] うどんこ病 [Oidium sp.] 褐斑病 [Pseudoercospora cotneastri] くもの巣病 [Rhizoctonia solani AG-1,B] くもの巣病 [Rhizoctonia solani AG-1,B] 白紋羽病 [Rosellinia necatrix] くもの巣病 [Rhizoctonia solani AG-1,B] さび病 [Uromyces lespedezae-procumbentis] 褐斑病 [Phyllosticta sp.] 紅斑病 [Pseudocercospora nandinae] 褐斑病 [Guignardia ardisiae] 白紋羽病 [Rosellinia necatrix] さび病 [Puccinia kusanoi, P.longicornis] ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ a) 発生頻度 (: 時に認められる,: 普通に認めれる,: 発生することが多い ) b) 被害程度 (: 軽微な被害,: 防除を要する被害,: 被害が大きい 時に壊滅的 )

め, 山土など病原菌の混入がない用土を確保する 畑の土壌は病原菌, 線虫類, ダニ類, ゾウムシ類, コガネムシ類の幼虫などが生息する可能性が高いので使用しない 2. 直売用切り花類の栽培圃場に発生する病害虫 1) 発生病害虫の特徴東京都における直売型の花き生産は野菜畑を中心に広がっている 従って発生病害の種類は, 花き導入前の栽培歴との関連が深く, とくにウド, ナスなどの野菜が前作であった圃場では半身萎凋病, 果樹が前作であった圃場では白紋羽病が, それぞれ花き類においても生育阻害要因となる 直売用花き類では, このように前作作物で発生していた土壌病害が栽培当初から発生し, 作付け年数が少ないにも関わらず, 連作障害様の被害を生じている 害虫類としてはハダニ類, ホコリダニ類, アザミウマ類およびアブラムシ類の被害が恒常的に認められる またネコブセンチュウによる被害も増加している 主な発生病害虫は表 2および表 3に記した 1 発生する主な土壌病害直売用切り花類に発生している主な土壌病害の病原菌はVerticillium dahliae ( A 群,B 群 ),Rhizoctonia solani( AG-1, AG-2-1, AG-2-2, AG-4), Sclerotium rolfsii, Pythium aphanidermatum, Cylindrocladium floridanum, Rosellinia necatrix など野菜 食用作物 果樹等でも記録されている多犯性菌である 同一病原菌であっても品目によって発生程度の異なる場合が認められる 一例としてV. dahliae( A 群,B 群 ) による半身萎凋病では, ルリタマアザミが壊滅的被害であっても隣接して栽培されているダリアでは軽微な発病で採花可能であるなど同じキク科植物でも発病程度に大きな差異が認められた ( 図 4) また半身萎凋病の汚染圃場内にあってもシソ科のモナルダなど発病しない花き類もあった 2その他の病害 4 科 10 品目で菌核病の発生が認められた 本病も野菜, 切り花の共通病害であり, 花き作付け前からの野菜栽培でも被害を生じていたものである また, 花き類では新品種の導入により特定の病害が発生する事例があり, とくに宿根リ

キキョウ ルリタマアザミ ヘリクリサム ルドベキア シャスターテ ーシ リアトリス 図 4 直売用切り花類の半身萎凋病 オミナエシ 図 5 ミカンキイロアザミウマによる被害左 : トルコギキョウ, 右 : ブルーデージ モニウムうどんこ病とキンギョソウさび病では被害が甚大であった 3 被害の大きい害虫類ダニ類, アザミウマ類, アブラムシ類は常に被害が認められる害虫である ( 図 5)

表 2 東京都の直売用切り花類生産圃場で発生が認められた主な病害 ユリ科 ヒメトリトマ: 炭疽病 ( 仮 ), ユリ類 : 疫病 炭疽病 葉枯病, オーニソガラム : 疫病, アマドコロ : 炭疽病 ( 仮 ), ホトトギス : 炭疽病 ( 仮 ) アヤメ科 ジャーマンアイリス : 斑点病 ショウガ科 クルクマ: さび斑病 ヒガンバナ科 アマクリナム: 褐斑病, アルストロメリア : 根茎腐敗病, ユーチャリス : 灰色かび病 ヒユ科 ケイトウ: 茎腐病, センニチコウ : モザイク病 斑葉病 ナデシコ科 ヒゲナデシコ: さび病, シュクコンカスミソウ : うどんこ病, ムシトリナデシコ : 白絹病 キンポウゲ科 デルフィニュウム : 灰色かび病, シャクヤク : うどんこ病 灰色かび病 ケシ科 アイスランドポピー : 灰色かび病 アブラナ科 ストック: 菌核病 苗立枯病 セリ科 アストランティア : 炭疽病 ( 仮 ), エリンジュウム : 炭疽病 ( 仮 ) うどんこ病 イソマツ科 スタ- チスなど : 褐斑病 褐紋病 灰色かび病 菌核病 うどんこ病 リンドウ科 トルコギキョウ : モザイク病 灰色かび病 立枯病 ハナシノブ科 クサキョウチクトウ: うどんこ病 シソ科 モナルダ: うどんこ病 ナス科 ホオズキ: 葉腐病 ゴマノハグサ科 キンギョソウ: 菌核病, さび病, ヒメキンギョソウ : うどんこ病, オタカンサス : 立枯病, ペンステモン : 菌核病 白絹病 葉腐病 キキョウ科 カンパニュラ: 褐斑病 菌核病, キキョウ : 立枯病 半身萎凋病 ユキノシタ科 アスチルベ: 立枯病, ツボサンゴ : 株枯病 ( 仮 ) バラ科 ワレモコウソウ : うどんこ病 オミナエシ科 オミナエシ: 半身萎凋病 キク科 セイヨウノコギリソウ等 : 葉腐病 うどんこ病, シュクコンアスター : うどんこ病 菌核病 白絹病 白紋羽病 ( 仮 ), シオン : 黒斑病, ビデンス : 白絹病, キンセンカ : うどんこ病 灰色かび病 菌核病, アスター : 灰色かび病 萎凋病 さび病, ベニバナ : うどんこ病 さび病 半身萎凋病 立枯病, シャスターデージ : 半身萎凋病, キク : 褐さび病 黒さび病 白さび病 うどんこ病, ドイツアザミ : 半身萎凋病, オオキンケイギク : うどんこ病, コスモス : モザイク病 うどんこ病 半身萎凋病, ダリア : 輪紋病 半身萎凋病 うどんこ病, ガーベラ : うどんこ病 灰色かび病 菌核病 半身萎凋病, ルリタマアザミ : うどんこ病 半身萎凋病, ムギワラギク : 菌核病 半身萎凋病, ヒマワリ類 : 褐斑病 うどんこ病 白紋羽病 ( 仮 ), へリオプシス : 白絹病, リアトリス : 半身萎凋病 紋枯病 白絹病 菌核病, ルドベキア : 半身萎凋病 うどんこ病, ソリダスター : うどんこ病 さび病, マリーゴールド : 半身萎凋病, ジニア : モザイク病注 ) 表中下線病名は報告した新病害 ( 仮 ) は病名提案予定

表 3 東京都の直売切り花およびグラウンドカバープランツに発生した主な害虫リスト1 害 虫 名 被 害 作 物 名 センチュウ類 ネコブセンチュウ ( 主にサツマイモネコブセンチュウ) ガーベラ他キク科, キンギョソウ他ゴマノハグサ科, カン パニュラ, トルコギキョウ, ケイトウ, ホオズキ, コクチ ナシ他 ハダニ類 カンザワハダニ, ナミハダニ, アシノワハダニ キク, コスモス, マリーゴールド, 他キク科, ホウセンカ コウノシロハダニ ツツジ類, モッコク スゴモリハダニ類 ササ タケ類 ホコリダニ類 シクラメンホコリダニ デルフィニウム他 チャノホコリダニ ガーベラ, ダリア, ホオズキ他 アザミウマ類 ミカンキイロアザミウマ トルコギキョウ, カーネーション, キク科他 ヒラズハナアザミウマ ナス科, キク科他 クロゲハナアザミウマ キク科 クロトンアザミウマ シダ類, ヒガンバナ科, ユリ科他 トラフアザミウマ マリーゴールド ネギアザミウマ トルコギキョウ, ユリ科他 アブラムシ類 ワタアブラムシ ユリ, アオイ, キク, カーネーション, ヘデラ他 モモアカアブラムシ ストック, ハボタン, フリージア, キク, アイリス他 ミカンミドリアブラムシ コスモス, コデマリ他 ニセダイコンアブラムシ ストック, ハボタン, 他アブラナ科 ジャガイモヒゲナガアブラムシ ホオズキ, モナルダ他 チューリップヒゲナガアブラムシ チューリップ他 キクヒメナガアブラムシ キク科 ゴボウヒゲナガアブラムシ ベニバナ他キク科 ゴンズイフクレアブラムシ ノカンゾウ, ヤブカンゾウ他ヘメロカリス属植物 オンシツコナジラミ ケイトウ, モナルダ, アジュガ, アカンサス他 タバココナジラミ類 アカンサス アオバハゴロモ アジサイ, ムラサキシキブ他 ミカンコナカイガラムシ フッキソウ他 キクグンバイ キク ツツジグンバイ ツツジ類 ハモグリバエ類 ナモグリバエ ストック, アスター, ダリア, キク科他 トマトハモグリバエ ナス科, キク科, ゴマノハグサ科他 ナスハモグリバエ ナス科他 マメハモグリバエ ( 近年希 ) ナス科, キク科, マメ科他 ハバチ類 アカスジチュウレンジハバチ バラ チュウレンジハバチ バラ ルリチュウレンジ ツツジ 次項に続く

表 3 東京都の直売切り花およびグラウンドカバープランツに発生した主な害虫リスト2 害 虫 名 被 害 作 物 名 チョウ ガ類 モンシロチョウ ストック, ハボタン ツマグロヒョウモン スミレ類 コナガ ストック, ハボタン, クレオメ, キンレンカ エゾギクトリバ キク, マリーゴールド, ダリア, アスター他キク科 チャハマキ ツツジ, ヘデラ他 チャノコカクモンハマキ ヘデラ リンゴコカクモンハマキ ヘデラ ベニフキノメイガ サルビア, モナルダ シロオビノメイガ センニチコウ クロモンキノメイガ マリーゴールド他キク科, ビオラ トサカフトメイガ スモークツリー ヨスジメイガ コムラサキシキブ ワタノメイガ セイヨウボダイジュ, ハイビスカス フタトガリコヤガ フヨウ, ハイビスカス他アオイか マエアカスカシノメイガ ソヨゴ, キンモクセイ マツノゴマダラノメイガ ゴールドクレスト他コニファー類 ツゲノメイガ ボックスウッド オオタバコガ ガーベラ, キク他キク科, カーネーション他 ヨトウガ ストック, アスター, キク, キク科, カーネーション他 ハスモンヨトウ ストック, アスター, キク, キク科, カーネーション他 シロシタヨトウ ヘデラ カブラヤガ キク, グラジオラス他 タマナヤガ キク, グラジオラス他 ミツモンキンウワバ キク科, マメ科 キクキンウワバ アスター, ダリア, キク科他 タマナギンウワバ ハボタン, キク他 ワタアカキリバ フヨウ他 イラガ ブルーベリー他 ミノウスバ マサキ ユウマダラエダシャク マサキ クロスジカギバ ガマズミ オオスカシバ クチナシ ハムシ類 ウリハムシ アスター, キク科他 ウリハムシモドキ ホオズキ, アスター, キク科他 ヘリグロテントウノミハムシ ヒイラギモクセイ ツツジコブハムシ ツツジ アヤメツブノミハムシ シャガ, ハナショウブ他アヤメ科 ブタクサハムシ ヒマワリ, ルドベキア他キク科 ニレハムシ ニレ科 サンゴジュハムシ スイカズラ科 ヤナギルリハムシ ヤナギ科 カミキリムシ類 キクスイカミキリ キク他キク科 ゾウムシ類 サビヒョウタンゾウムシ ジャノヒゲ, ヤブラン他 コガネムシ類マメコガネ, セマダラコガネ, コイチャコガネ 不定性 多種作物 ヒメコガネ他その他 : バッタ類, 腹足類 不定性 多種作物

多品目栽培では広範囲の植物に寄生できる種が宿主を変えながら圃場内で繁殖し続けている ネコブセンチュウ害の増加は, 栽培品目を変えても被害が継続し易いことが原因と考えられる 2) 防除現在, 花き類での農薬登録は少なく, また直売用切り花類の生産地は住宅地と近接し, 薬剤防除は困難な場合が多い そのため, 直売用の切り花類の病害虫防除には耕種的な対策が極めて重要である 花き類の作付, 導入にあたり, 品目の種類や圃場の栽培歴から重大な被害となる恐れのある土壌病害虫の発生を予測し, 被害を未然に防ぎ, 罹病株からの栄養繁殖で病害汚染圃場を拡大させないよう生産者を啓発 指導する必要がある また新品種の導入で今まで被害がなかった病害虫により深刻な被害を生じることがあり, 生産者と指導機関との連絡を密にし, 迅速な情報提供で発生を未然に防止することが重要である おわりに今後も東京都における観賞用作物の病害虫対策では耕種的防除指導および有効薬剤の迅速な登録拡大が中心になると考えられる しかし, 観賞用作物の品目は膨大であり, 新規導入品目も極めて多い そのため個別に薬剤登録を図るのは難しい現状である 作物群登録などでの有効薬剤の早期登録を実現するためには現在以上に国, 都道府県の連繋 協力関係を強化する必要がある また, 非食用作物におけるIPM 技術の開発は遅れているが, 野菜や果樹等で研究, 普及している技術を工夫し, 応用することは可能と考えられる 現時点では天敵の導入などは難しいかもしれないが, 防虫網等はすぐにでも普及できるのではないだろうか 生産者はもとより, 研究 普及に関わる技術者の意識改革により観賞用作物の病害虫防除に新たな展開が起きることを期待する