1 試験分類 顔の見える農業 推進対策試験 2 課題名小果樹の特性調査 ( 糖酸比に着目した果実品質調査 ) 3 実施期間継続 ( 平成 18 年度 ~ ) 4 担当地産地消推進係 5 概要ブルーベリー などの小果樹類の糖度 酸度を測定し品種による糖と酸のバランス ( 糖酸比 ) を調査した また 糖酸比と食味の結果を比較し 甘さと酸っぱさが調和しておいしい 酸味が強すぎる などと感じる糖度と酸度の関係を調査した 糖酸比 : 果物の糖度と酸度の比 糖度 酸度 で表される 6 調査方法など 1 酸度 糖度の調査ア. 収穫した完熟果実をガーゼで絞り 得られた果汁 ( 果樹の種類により 2~3g) を試料として用い 中和滴定法で酸度を測定した 測定方法は下記のとおり イ. アで得られた果汁の一部で デジタル糖度計を用いて糖度を測定した ウ. 調査した果樹は 5 品種 ブルーベリー 3 品種及びボイセンベリー 1 品種 酸度測定 ( 中和滴定法 ) Ⅰ. 果実をガーゼで絞り 果汁を作る Ⅱ. 空の 100ml 三角フラスコ 3 つに Ⅰ で得られた果汁 2~3g ずつ測り取る Ⅲ.Ⅱ に蒸留水 50ml を加える ( 果汁試料の完成 ) Ⅳ. 空の 100ml 三角フラスコ 3 つに 0.05mol/L シュウ酸水溶液を ホールピペットを用いて 10ml ずつ測り取る ( シュウ酸試料の完成 ) Ⅴ.Ⅲ の果汁試料 Ⅳ のシュウ酸試料にフェノールフタレイン溶液を 2~3 滴ずつ入れる Ⅵ.Ⅴ の果汁試料 シュウ酸試料にビュレットを用いて 0.1mol/L 水酸化ナトリウム水溶液で滴定する 水酸化ナトリウム水溶液は少しずつ滴下し フラスコを軽く振って液がよく混ざるようにする Ⅶ. 水酸化ナトリウム水溶液の滴下を続けていると フラスコ内の溶液の微紅色が消えなくなる ここが滴定の終了点であるから滴定を止め ビュレットの液面の目盛りを読み 記録する Ⅷ. 次式により試料中の有機酸量 ( 酸度 ) を算出する 有機酸量 (%)=64 果汁試料の滴定量 (ml) F/ 果汁重量 (g) 100 F=10ml/ シュウ酸試料の滴定量 (ml) 2 食味調査糖度 酸度調査に使用した果実と同日に収穫した果実について 当センター職員等を対象に食味試験を行い 甘すぎる ( より酸味がある方が良い ) おいしい ( 甘味酸味がちょうど良い ) 酸っぱい ( より甘味がある方が良い ) の 3 段階で評価をしてもらった 3 生果及び冷凍試料の酸度 糖度 糖酸比の比較 1-Ⅱ で得られた試料をサンプル瓶に入れて樹脂シートで密封し 約 6 ヶ月間通常冷凍で保管し 1 と同様に糖度 酸度を測定した 測定した数値を 試料を得た当日に計測した数値と比較した 調査した果樹は 3 品種 ブルーベリー 3 品種及びボイセンベリー ハスカップ ジュンベリー各 1 品種 4 他試験の結果を用いた糖度 酸度と食味の相関の考察地方独立行政法人北海道立総合研究機構農業研究本部中央農業試験場 ( 旧 北海道立中央農業試験場 以下 中央農試 という ) においても 1999 年度から 2009 年度にかけて 参考品種 4 品種を含むブルーベリー 23 品種の評価を行っている この中で糖度 酸度及び糖酸比と食味が調査されているので その結果を用い 糖度 酸度及び糖酸比と食味の相関を求めた
7 結果 1 酸度 糖度の調査各品種の酸度 糖度及び糖酸比 ( 糖度 / 酸度 ) を表 1に示す では 5 品種を測定した 糖度では ヌートカ が最も高い 13.00% 黒 ( 冷凍試料 が最も低い 10.20% を示した 一方酸度は スキーナ が最も高い 1.92% 黒 が最も低い 0.99% を示した 糖度と酸度の比で示される糖酸比は 黒 が最も高い 10.30 スキーナ が最も低い 6.20 となった ブルーベリーでは 3 品種を測定した 糖度は ブルーゴールド が最も高い 12.37% ブリギッタ が最も低い 11.40% を示した 一方酸度は ブルーゴールド が最も高い 1.12% ブリギッタ が最も低い 0.55% を示した 糖度と酸度の比で示される糖酸比は ブリギッタ が最も高い 20.73 ブルーゴールド が最も低い 11.04 となった また ボイセンベリーは とげなし 1 種類を測定し 糖度 11.07% 酸度 1.22% 糖酸比 9.07 だった 2 食味調査各品種の食味調査の結果を表 2 に示す では おいしい の回答は スキーナ ヌートカ の 2 品種で 75% を超えた カスバート ジョイゴールド 黒 はそれぞれ約 60% 約 48% 約 38% だった 甘すぎる の回答は ジョイゴールド 黒 の 2 種で 50% 近くとなり カスバート ヌートカ スキーナ でそれぞれ約 32% 約 18% 約 11% だった 酸っぱい の回答は 黒 が最も高く約 15% スキーナ が約 11% で続き ヌートカ カスパード が約 7% ジョイゴールド が約 4% だった ブルーベリーでは おいしい の回答が ブルーレイ で約 70% ブルーゴールド で約 52% ブリギッタ で約 43% だった 甘すぎる の回答は ブリギッタ で約 57% ブルーレイ で約 13% ブルーゴールド では回答が無かった 酸っぱい は ブルーゴールド で約 48% ブルーレイ で約 17% ブリギッタ では回答は無かった ボイセンベリー とげなし は 酸っぱい 約 55% おいしい 約 38% 甘すぎる 約 7% だった 3 生果及び冷凍試料の酸度 糖度 糖酸比の比較生果及び冷凍試料の酸度 糖度 糖酸比の比較を表 3 に示す 3 品種調査したでは 冷凍で測定した糖度に比べ 生果で測定した糖度は同じか やや高かった一方 酸度で比較すると 生果の方が同じかやや低かった 糖酸比は生果で測定したものが冷凍に比べ同じかやや高く その差は 5% 以内だった 3 品種調査したブルーベリーでは糖度 酸度とも生果の方が冷凍に比べ同じかやや高かった 糖酸比は生果がやや高く その差は 7% 以内だった ボイセンベリー ハスカップ ジュンベリーでは各 1 品種ずつ調査し 表 3 のとおりの結果となった 8 考察 ブルーベリーでそれぞれ 食味で おいしい と回答した割合と 糖度 酸度 糖酸比の相関を求めた ( 図 1~6) では 酸度と糖酸比で絶対値で 0.97 を超える強い相関が示され 酸度が高く 舌が感じる酸っぱさが強い ( 糖酸比が低い ) ほど食味が高く評価される可能性が示唆された 一方 糖度とも 約 0.68 の正の相関が示され 酸度 糖酸比との相関と相反する結果となったように見える これは 酸度の高い品種ほど糖度も高い傾向が見られたためである この傾向は偶然によるものか糖度と酸度の間に関連があるのかは さらなる調査が必要である また 糖酸比の最も大きかった 黒 で 酸っぱい の割合が最も高くなっている 糖酸比が大きいほど甘く感じるはずであるが 異なる結果となった これは 今回の調査では 酸っぱい の項目の中に より甘味がある方が良い という意味を含んでいたので 黒 が最も低かった糖度を反映したと思われる また ブルーベリーでの食味との相関は 糖度で約 -0.10 酸度で約 0.16 糖酸比で約 -0.39 と 比較的相関が弱い結果となった 今回は 3 品種での調査だったので 今後はより多くの種類での
調査が必要である なお の カスバート ジョイゴールド 黒 については 食味調査は生果で実施したが 糖度 酸度の測定は約 6 ヶ月間冷凍で保存した試料を用いている 冷凍による糖度 酸度への影響を調査するため 生果と冷凍試料の糖度 酸度及び糖酸比の比較を行った その結果 については 冷凍試料の糖酸比が生果と比べて低下しており その差は 5% 以内だった 冷凍保存すると糖酸比が 5% 低下するものとして 上記の 3 品種の測定結果を生果の糖酸比に換算すると カスバーと 7.91 8.31 ジョイゴールド 8.66 9.09 黒 10.30 10.82 となる この数値を考慮し食味と糖酸比での相関を求めると約 -0.98 であり 食味との関係についての傾向について 冷凍試料での測定は大きな影響は及ぼさなかったと思われる また 参考として 中央農試のブルーベリーの評価結果を用いて 食味と 糖度 酸度 糖酸比の相関を求めた ( 表 4 及び図 7~9) 糖度 糖酸比とで正の相関を示し 酸度とは負の相関を示した 相関の絶対値は糖酸比 糖度 酸度の順で大きく 糖酸比が食味に大きく影響しているものと考えられ 食味が甘く感じられるものほど高い評価を得る傾向にある 一方 本調査ではブルーベリーは 3 種の比較であるが 糖酸比約 15 の ブルーレイ が最も評価が高く 糖酸比 20 を超えた ブリギッタ では 甘すぎる が おいしい を超え 中央農試の評価とは異なる傾向を示した この結果は 当センターの調査試料数が十分でなかったこともあるが 食味対象者の嗜好によっても影響を受けたことも考えられる すなわち 糖酸比の低いものが高い評価を得る傾向にあったの結果もあわせ 当センター食味調査対象者が 酸味に対し高評価を与えた可能性が考えられる 小果樹の品種選定時においては 小果樹を利用する側の好み等を考慮しながら 導入する品種について糖度 酸度 糖酸比を検討する必要性がある 表 1 ブルーベリー ボイセンベリーの糖度 酸度 糖酸比糖度 酸度及び糖酸比収穫日品目品種糖度 (%) 酸度 (%) 糖酸比 スキーナ 11.90 1.92 6.20 ヌートカ 13.00 1.84 7.07 カスバート ジョイゴールド 黒 12.10 1.53 7.91 12.30 1.42 8.66 10.20 0.99 10.30 23.8.19 ブルーベリーブルーゴールド 12.37 1.12 11.04 23.8.19 ブルーベリーブルーレイ 11.50 0.75 15.33 23.8.19 ブルーベリーブリギッタ 11.40 0.55 20.73 23.8.3 ボイセンベリーとげなし 11.07 1.22 9.07 カスパード ジョイゴールド 黒の糖度 酸度は冷凍試料による計測
表 2 ブルーベリー ボイセンベリーの食味調査結果食味調査の結果収穫日品目品種調査数甘すぎおいしい酸っぱい 23.8.3 23.8.3 23.8.3 スキーナ 28 ヌートカ 28 カスバート ジョイゴールド 黒 23.8.19 ブルーベリーブルーレイ 23.8.3 ボイセンベリーとげなし 28 29 26 23.8.19 ブルーベリーブルーゴールド 23 23 23.8.19 ブルーベリーブリギッタ 23 29 食味調査結果の上段は実数 下段は調査数に対する割合 (%) 表 3 生果及び冷凍試料の酸度 糖度 糖酸比の比較 3 22 3 10.71 78.57 10.71 5 21 2 17.86 75.00 7.14 9 17 2 32.14 60.71 7.14 14 14 1 48.28 48.28 3.45 12 10 4 46.15 38.46 15.38 0 12 11 52.17 47.83 3 16 4 13.04 69.57 17.39 13 10 0 56.52 43.48 2 11 16 6.90 37.93 55.17 品目品種糖度酸度糖酸比 ブルーベリー 収穫当日計測 13.00 1.84 7.07 冷凍試料計測 13.00 1.84 7.07 当日 / 冷凍試料 10 10 10 収穫当日計測 11.90 1.92 6.20 冷凍試料計測 11.60 1.92 6.04 当日 / 冷凍試料 102.59 10 102.59 収穫当日計測 9.60 2.15 4.47 冷凍試料計測 9.50 2.22 4.28 当日 / 冷凍試料 101.05 96.85 104.34 収穫当日計測 11.50 0.75 15.33 冷凍試料計測 10.80 0.75 14.40 当日 / 冷凍試料 106.48 10 106.48 収穫当日計測 12.40 1.12 11.04 ブルーベリー ブルーゴールド 冷凍試料計測 12.00 1.09 11.01 ブルーベリー ハスカップ ジュンベリー ヌートカ スキーナ チルコチン ブルーレイ ブリギッタ ボイセンベリーとげなし 当日 / 冷凍試料 103.33 103.03 100.30 収穫当日計測 11.40 0.55 20.73 冷凍試料計測 10.90 0.54 20.19 当日 / 冷凍試料 104.59 101.85 102.69 収穫当日計測 11.07 1.22 9.07 冷凍試料計測 10.80 1.26 8.57 当日 / 冷凍試料 102.50 96.83 105.86 収穫当日計測 11.20 3.08 3.64 冷凍試料計測 11.50 3.02 3.81 当日 / 冷凍試料 97.39 101.99 95.49 収穫当日計測 15.30 0.52 29.42 冷凍試料計測 15.90 0.51 31.18 当日 / 冷凍試料 96.23 101.96 94.38
図 1 食味と糖度の相関 ( ) 糖度 9 8 7 6 5 3 相関 =0.684288 1 5.00 1 15.00 図 2 食味と酸度の相関 ( ) 酸度 9 8 7 6 5 3 相関 =0.975865 1 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 図 3 食味と糖酸比の相関 糖酸比 9 8 7 6 5 3 相関 =-0.97605 1 5.00 1 15.00
図 4 食味と糖度の相関 ( ブルーベリー ) ブルーベリー糖度 8 7 6 5 3 相関 =-0.09612 1 11.00 11.50 12.00 12.50 図 5 食味と酸度の相関 ( ブルーベリー ) ブルーベリー酸度 8 7 6 5 3 1 相関 =0.162233 0.50 1.00 1.50 図 6 食味と糖酸比の相関 ( ブルーベリー ) ブルーベリー糖酸比 8 7 6 5 3 1 相関 =-0.38876 5.00 1 15.00 25.00
表 4 北海道中央農業試験場によるブルーベリー各品種の評価 ブルーベリー品種 食味 糖度 酸度 糖酸比 ブルータ 3.1 12.3 0.54 22.6 ウエイマウス 2.7 11.0 0.79 14.0 ジューン 3.7 12.9 0.36 35.6 デューク 2.9 11.6 0.64 18.1 スパータン 3.1 12.3 0.54 22.8 ハリソン 3.1 12.5 0.62 20.1 レカ 2.9 12.0 0.87 13.8 ノースランド 3.1 12.4 0.48 25.9 ノースブルー 2.7 11.2 0.79 14.1 パトリオット 3.2 12.3 0.66 18.6 プル 3.4 13.6 0.81 16.8 ヌイ 2.6 12.1 0.97 12.5 ブルーヘブン 3.0 11.9 0.52 22.9 ブルーチップ 2.9 11.8 0.64 18.6 ランコカス 3.5 13.8 0.55 24.9 トロ 2.9 11.0 0.61 18.0 シエラ 3.1 12.8 0.85 15.2 ブルークロップ 3.1 12.1 0.78 15.6 ブルーレイ 2.6 12.2 0.60 20.3 バークレイ 3.0 12.1 0.47 25.7 ダロー 2.7 12.5 1.29 9.7 ハーバート 2.9 12.4 0.88 14.1 ブリギッタ 2.7 12.8 1.19 10.7 図 7 食味と糖度の相関 ( 中央農試験フ ルーヘ リー ) 図 8 食味と酸度の相関 ( 中央農試験フ ルーヘ リー ) 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 相関 =0.619443 糖度 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 相関 =-0.553849 酸度 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 図 9 食味と糖酸比の相関 ( 中央農試験フ ルーヘ リー ) 糖酸比 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 相関 =0.708365 0.5 0.0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0