平成23年東北地方太平洋沖地震の概要について

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平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

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( イ ) 電気事業者の評価 送電設備のうち 架空送電設備の被害率 1 は 鉄塔等の支持物 0.25% がいし 0.05% 電線 0.02% と極めて僅少であり 基本的な耐震性は確保されていると評価できる また 液状化を原因とする供給支障やケーブル系統での電気事故も発生しておらず 設備に問題はなかっ

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

3. 水供給システム ( 図 7~ 図 8) 3.1 根拠データ 断水戸数: 厚生労働省 平成 年 (2 年 ) 東北地方太平洋沖地震の被害状況及び対応について の中に記載された ( 別紙 ) 水道における被害情報 の市町村別集計データおよび都県別集計データ 2/3/ :3( 報番号不明 水道産業新

別添 表 1 供給力確保に向けた緊急設置電源 ( その 1) 設置場所 定格出力 2 発電開始 2 運転開始 公表日 3 姉崎火力発電所 約 0.6 万 kw (0.14 万 kw 4 台 ) 平成 23 年 4 月 24 日平成 23 年 4 月 27 日 平成 23 年 4 月 15 日 袖ケ浦

第 1 章実施計画の適用について 1. 実施計画の位置づけ (1) この 南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画 に基づく宮崎県実施計画 ( 以下 実施計画 という ) は 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 ( 平成 14 年法律第 92 号 以下 特措法 と

(3) 設備復旧対策事例 ~ 基地局及びエントランス回線通信事業者各社で取り組んだ主な基地局あるいはネットワーク設備復旧対策としては 光ファイバー 衛星回線 無線 ( マイクロ ) 回線の活用による伝送路の復旧や 山頂などへの大ゾーン方式 ( 複数の基地局によるサービスエリアを1つの大きなゾーンとし

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その一方で 防災行政無線の聞き取り状況の調 査では 図 3に示すように20% の人が放送内容を聞き取れなかったと答えており 今後の改善 もしくは代替え手段の充実の必要性を示唆している なお 情報の入手先としてテレビの割合が低いのは地震による停電 ( 岩手県 宮城県では95% 以上が停電 ) が原因と

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地震被害予測システムにより建物被災度を予測 また 携帯電話と地図を利用した 被害情報集約システム では GPS 機能と地理情報システムとの連係により 現在位置周辺にある同社施工済物件を検索し 物件や周辺の被害状況を文字 静止画 動画を添付して報告することができる これら被害情報を地理情報システムに集

東北地方太平洋沖地震への 気象庁の対応について ( 報告 ) 気象業務の評価に関する懇談会 平成 23 年 5 月 31 日 気象庁 1

奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

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表紙

PowerPoint プレゼンテーション

断水戸数 ( 万戸 ) 00 総断水戸数断水発生事業体数 東日本大震災 万戸 264 事業体 阪神 淡路大震災 26.6 万戸 7 市町村 事業体 ( 市町村 ) 数 < 東日本大震災 > 4 月 7 日 4 月 日 4

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1 首都直下地震の概要想定震度分布 (23 区を中心として震度 6 強の想定 ) 首都直下地震 想定震度分布 出典 : 中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ 首都直下地震の被害想定と対策について ( 最終報告 ) ( 平成 25 年 12 月 ) 2

2-20. 復旧迅速化に係る電気事業者の社内マニュアルにある主な項目 東北地方太平洋沖地震時における主な資材 役務融通実績 東北地方太平洋沖地震における主な資材 役務融通実績 ( 平成 23 年 3/11~11/30) 東北電力に対する融通実績 ( 応援会社 :8 社 ) 東京電力に対す

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1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

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関西電力の防災対策


家族みんなの防災ハンドブック 保存版

電磁界情報センターへの 資金協力について

<GK クルマの保険 ( 車両保険 )> ( 自動車によるあて逃げに限ります ) お客さまのおクルマは 車両保険 に加入していますか? 自動車保険の車両保険では 一般車両 もしくは 10 補償限定 のいずれでも 台風や集中豪雨による洪水の事故が対象となります 地震 噴火またはこれらによる津波 によっ

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安全防災特別シンポ「原子力発電所の新規制基準と背景」r1

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建設の施工企画 写真 2 浦安液状化 断層型 逆断層型 写真 3 地震の種類 北アメリカプレートと その下に 有毒ガス測定 沈み込んでいる太平洋プレートとの間で起きた 海溝型地震 3 追跡の概要 1 対象箇所の選定 対象箇所は 次に示す条件で選定した ① 震度 5 強以上が記録され

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2 本紙について 本紙は 通信回線の管理者等が脆弱性評価を行うにあたって 有用と考えられるポイントを 電気通信事業者の視点で取りまとめた参考資料である 大規模災害等が発生し 電気通信ネットワークがケーブル切断等により途絶した場合 電気通信事業者は電気通信事業法第 8 条の重要通信の規定に照らし 重要

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建築物等震災対策事業について

スライド 1

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国土技術政策総合研究所 研究資料

広域統一フォーマットExcel_栃木11月版

防災業務計画 株式会社ローソン

岩手支社管内の配電用変圧器の空容量 1/4 安代配電塔 1B 伊手変電所 1B 猿ヶ石発電所 1B 遠野変電所 1B 0.0 2B 下船渡変電所 1B 0.0 2B 河原町変電所 1B 0.0 2

東日本大震災を踏まえた今後の災害対策の取り組みについて

る 1 減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業において 公共施設の整備改善事業の用に供するために土地等が地方公共団体等に買い取られる場合 2 第二種市街地再開発事業の用に供するために土地等が地方公共団体等に買い取られる場合 (3) 特定住宅被災市町村の区域内にある土地等が 国

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宮城県総合防災情報システム(MIDORI)

大阪湾広域臨海環境整備センターは、昭和57年3月に設立されて以来、30年余りにわたって、全国で唯一の府県域を超えた広域的な廃棄物の適正な最終処分を海面埋立てにより行う「フェニックス事業」を地方公共団体及び港湾管理者と一体となって推進してきたところであり

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アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

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を誘発すると共に 家屋等の災害廃棄物とともに港内外水域に漂流 沈没することとなり 航路や泊地等の水域施設が使用不可能な状況となった また 押し波 引き波により 航路や泊地等の水域施設において 洗掘あるいは埋没が発生し 洗掘された箇所では 防波堤の転倒等が誘発され 埋没した箇所では 計画水深の確保のた

東日本大震災 鳴らされていた警鐘

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序章 計画改定の背景 足立区では 昭和 57 年 3 月に 大地震による火災から区民の生命と財産を守る た め 足立区防災まちづくり基本計画 を策定し この計画に基づき各種事業を展開し てきました その後 平成 7 年 1 月 17 日に発生した阪神 淡路大震災では 密集市街地に被害が 集中し 改め

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PowerPoint プレゼンテーション

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2011 年 12 月 15 日発行 東日本大震災リスク レポート ( 第 5 号 ) 次の大地震 大津波への対応 : 防災計画の見直しと企業に求められる対応 発行 : 三菱商事インシュアランス株式会社リスクコンサルティング室 はじめに 1 本年 3 月 11 日 ( 金 ) の東日本大震災の発生か

東日本大震災初動期復旧期復興期創造的復興2

福岡国際会議場 413 会議室 13:10 13:40 災害時の医療機能継続 のための対策 最終更新 2016/11/ 年 11 月 18 日一般財団法人リスクマネジメント協会リスクマネジメント研修インストラクター上野均 1

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防災情報のページ

1. 西部ガス熊本支社管内の観測 SI 値 西部ガスの地震計が観測した SI 値 供給停止判断基準の SI 値 60 カイン以上を広範にわたり観測 須屋 82.4 カイン 熊本工場 77.0 カイン 津久礼 49.6 カイン 菊陽第一 69.0 カイン 徳王 83.6 カイン 竜田 カイ

(溶け込み)大阪事務所BCP【実施要領】

熊本地震に係る対応について

既存の高越ガス設備の耐震性向上対策について


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スライド 1

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(2) 地震発生時の状況地震発生時の運転状況ですが 現在 20 清掃工場で40 炉が稼動していますが 地震発生当日は32 炉が稼動しており 8 炉は定期補修や中間点検のため停止していました 地震後は設備的な故障で停止したのが2 炉ありまして 32 炉稼動していたうち2 炉が停止したというのが地震発生

緊急緊急消防援助隊について消防援助隊の概要 目的 地震等の大規模 特殊災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施する消防の援助体制を国として確保 創設の経緯等 阪神 淡路大震災での教訓を踏まえ 平成 7 年に創設 平成 15 年 6 月消防組織法の改正により法制化 平成 16 年 4 月

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5 安全 減災措置 建物建物は地震対策はなされていますか? 耐震補強 耐震 制震 免震設備状況 ( リスト ) 耐震 安全性診断 ( 発災前 ) 耐震 安全性診断を受けていますか? 施行証明書 実施状況 ( リスト ) 応急危険度判定 ( 発災後 ) 転倒 転落の防止措置 6 本部への被害状況の報告

東日本大震災に係る災害等廃棄物処理事業の実地調査について

H28秋_24地方税財源

企業経営動向調査0908

震災からの教訓とICTの役第部 ICT が導く震災復興 日本再生の道筋 第 4 節 東日本大震災の教訓を踏まえた ICT 災害対策の強化 1 政府全体の動き 章3 大1 第(1) 内閣府における対応 震災を受け 中央防災会議では 地震津波対策の全般的見直しとして 平成 23 年 4 月 27 日に

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まさしく先人から引き継いだ電力社員のスピリッツそのものであります 未だに余震も発生しておりますが 九州電力においては 引き続き 電力供給に最善を尽くすとともに 電事連といたしましても 必要な支援は速やかに実施してまいりたいと考えております 4 月から小売全面自由化が始まり 電力各社はお互いがライバル

需給地点および施設 Ⅶ 供給方法および工事 ⑴ 電気の需給地点 ( 電気の需給が行なわれる地点をいいます ) は, 当社の 電線路または引込線とお客さまの電気設備との接続点といたします ⑵ 需給地点は, 需要場所内の地点とし, 当社の電線路から最短距離にある 場所を基準としてお客さまと当社との協議に

過去に経験のない規模の巨大地震 津波が発生 東日本大震災の概要 死者 行方不明者数 死者 15,355 名 行方不明者 8,281 名 (6 月 4 日現在 警察庁調べ ) 建築物被害 ( 住家 ) 全壊 10 万 9,147 棟 半壊 6 万 9,789 棟 一部破損 31 万 7,710 棟 全

津波に対する水門 陸閘等の操作指針について 1. 目的 本指針は, 水門 陸閘等に関して, 海岸, 河川, 港湾, 漁港等の管理者 ( 以下 施設管理者 という ) と現場操作員が平常時及び津波発生時に実施すべき事項や, 施設に関する閉鎖基準等及び配備体制などの基本的な方針を定め, 本県沿岸に襲来す

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南海トラフ巨大地震における被害想定 ( 上水道 ) 上水道の被害想定は 津波 停電 揺れによる被害の合計であり 被災直後の断水人口は最大で 34 百万人 被害の大きい地域では最大 8 週間の復旧予測日数 (95% 復旧 ) と想定されている 上水道の被害想定 施設種類被害状況 ( 被災直後 ) 復旧

津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

平成 19 年 7 月 20 日付, 経済産業大臣からの指示文書 平成 19 年新潟県中越沖地震を踏まえた対応について ( 指示 ) ( 平成 原第 1 号 ) に基づき, 浜岡原子力発電所 ( 以下, 発電所 という ) における自衛消防体制の強化ならびに迅速かつ厳格な事故報告体

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参考資料 2 東日本大震災時の評価 < 電気設備地震対策 WG 報告書 ( 平成 24 年 3 月 ) の概要について > 平成 26 年 1 月 22 日商務流通保安グループ電力安全課

- 目次 - 1. 東日本大震災による設備被害等の概要 2. 地震による設備被害と今後の対応 3. 津波による設備被害と今後の対応 4. 復旧状況と今後の対応

1. 東日本大震災による設備被害等の概要 1 (1) 東北地方太平洋沖地震の概要 発生日時 :2011 年 3 月 11 日 ( 金 )14 時 46 分地震規模 :M9.0( 震源深さ約 24km) 震央位置 : 三陸沖 ( 牡鹿半島の東南東約 130km 付近 ) 各地の震度 : 震度 7( 宮城県栗原市 ) 震度 6 強宮城県 福島県 茨城県 栃木県津波の状況 : 岩手県宮古市 8.5m 以上 大船渡市 8.0m 以上宮城県石巻市 7.6m 以上福島県相馬市 7.7m 以上など津波を確認 気象庁 HP より 1

1. 東日本大震災による設備被害等の概要 2 (2) 設備被害の概要 ( 地震 津波による被害 ) 設備 火力発電設備 ( 基 ) 変電設備 ( 配電用含む ) 架空送電設備 地中送電設備 架空配電設備 変圧器 ( 台 ) 鉄塔 ( 基 ) ケーフ ル ( 回線 ) 電柱 ( 基 ) 東京電力 被害数 / 設備数 1 14/ 81 17/ 2,997 15/ 30,555 30/ 3,714 14,288/ 5,818,237 被害率被害数 / 設備数 1 17% 5/ 20 0.57% 30/ 1,712 0.05% 46/ 28,205 0.81% 20/ 472 東北電力 0.25% 36,048/ 3,038,915 被害率被害数 / 設備数 1 25% 20/ 64 ( 参考 ) 兵庫県南部地震 ( 関西電力 ) ( 地震による被害のみ ) 被害率 31% 1.8% - 6.9% 2 0.16% 20/ 10,765 0.19% 4.2% 385/ 5,795( 条 ) 3 6.6% 1.2% 11,289 ( 被害数のみ ) 0.5% 1 被害数 : 被害のあった設備の数 ( ただし 変電設備は使用不能となった設備の数 架空 地中送電設備は早急復旧を要する設備の数 ) 設備数 : 東京電力 東北電力 関西電力が保有する設備の数 ( 変電 架空送電 地中送電設備は 震度 5 弱以上の地域における設備の数 ) 2 被害のあった変電所 50 ヵ所の変圧器に対する使用不能となった変圧器の被害率 3 設備数は平成 7 年時の調査数であり また単位は ( 条 ) であるため 今回調査と単純な比較はできない ( 例えば 同一回線で 5 ヵ所に被害があった場合 今回調査では 1( 回線 ) 平成 7 年時調査では 5( 条 ) とカウントされる ) 2

2. 地震による設備被害と今後の対応 1 各電気設備の耐震性区分と確保すべき耐震性 平成 7 年に発生した兵庫県南部地震 ( 阪神 淡路大震災 ) を受け 電気設備防災対策検討会 ( 委員長 : 関根東京理科大学教授 ) が設置 開催され 防災基本計画において示された構造物 施設等の耐震性確保についての基本的考え方に基づき 各電気設備の耐震性区分及び確保すべき耐震性を以下のとおり整理 耐震性区分 Ⅰ 対象設備 : 一旦機能喪失した場合に人命に重大な影響を与える可能性のある設備 ( ダム LNG タンク ( 地上式 地下式 ) 油タンク ) 確保すべき耐震性 : 一般的な地震動に際し個々の設備毎に機能に重大な支障が生じないこと 高レベルの地震動に際しても人命に重大な影響を与えないこと 耐震性区分 Ⅱ 対象設備 : 耐震性区分 Ⅰ 以外の電気設備 ( 水路等 水タンク 発電所建屋 煙突 ボイラー及び付属設備 護岸 取放水設備 変電設備 架空 地中送電設備 架空 地中配電設備 給電所 電力保安通信設備 ) 確保すべき耐震性 一般的な地震動に際し個々の設備毎に機能に重大な支障が生じないこと 高レベルの地震動に際しても著しい ( 長期的かつ広域的 ) 供給支障が生じないよう 代替性の確保 多重化等により総合的にシステムの機能が確保されること 一般的な地震動 : 供用期間中に 1~2 度程度発生する確率を持つ一般的な地震動 高レベルの地震動 : 発生確率は低いが直下型地震又は海溝型巨大地震に起因する更に高レベルの地震動 3

2. 地震による設備被害と今後の対応 2 耐震性区分 区分 Ⅰ 区分 Ⅱ ダム LNG タンク油タンク 設備被害概要今後の対応 水力発電設備 ( 水路 取放水設備等 ) 火力発電設備 ( 発電所建屋 ボイラー等 ) 変電設備 ( 配電用含む ) 送電設備 ( 送電鉄塔 碍子等 ) 配電設備 ( 配電柱 配電線等 ) 電力保安通信設備 油タンクの浮屋根上への油の飛散が確認されたが 火災 タンク外への油の溢流などの発生はなし その他は特段の被害なし 導水路の損傷等が発生 ボイラー内のチューブ等の損傷等が発生 一部の停電した変電所においても設備の多重化により 数日で機能復旧が図られた 一部の変圧器 開閉器等に損傷が発生 地震動による鉄塔の倒壊はなかった 支持碍子の折損等が発生 地盤の液状化による電柱の傾斜等が発生 電力線搬送に用いる屋外機器の一部折損等が発生 人命に影響を与える被害は発生しておらず 求められている耐震性は確保されている 総合的にシステムの機能は確保されており 耐震性区分に応じた耐震性能は基本的に満足していると判断され 現行の確保すべき耐震性について変更の必要はないものと考えられる 今回得られた知見を 今後 新増設 更新される設備の設計に反映 4

3. 津波による設備被害と今後の対応 1 中央防災会議における津波対応の基本的考え方 中央防災会議の下に設置された 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震 津波対策に関する専門調査会 ( 平成 23 年 4 月 27 日設置 ) では 想定津波を 頻度の高い津波 と 最大クラスの津波 の 2 種類とし 対応の基本的考え方を報告 ( 同年 9 月 28 日 ) 頻度の高い津波 ( 供用期間中に 1~2 度程度発生する津波 ) 頻度の高い津波に対する対策は 引き続き 海岸保全施設等の整備を進める 最大クラスの津波 ( 発生が極めてまれである最大クラスの津波 ) 住民の避難を軸に 土地利用 避難施設 防災施設などを組み合わせて ソフト ハードの取り得る手段を尽くした総合的な津波対策を確立することを基本とする 上記報告の考え方を踏まえ 電気設備の津波への対応の基本的考え方は 以下のとおりとすることが適当 電気設備の津波への対応の基本的考え方 頻度の高い津波 ( 供用期間中に 1~2 度程度発生する津波 ) 需要地 ( 市街地等 ) への津波の浸水は 海岸保全設備等により防がれることが期待される ただし 一旦機能喪失した場合人命に重大な影響を与える可能性のある設備については 個々の設備毎に機能に重大な支障が生じないよう対策を施すことが基本 最大クラスの津波 ( 発生が極めてまれである最大クラスの津波 ) このクラスの津波については 被害を防ぐような設備とすることは 費用の観点から現実的ではない 今回の津波被害や復旧の実績を踏まえ 設備の被害が電力の供給に与える影響の程度を考慮し 可能な範囲で被害を減じ 或いは 復旧を容易とするような津波の影響の軽減対策が基本 5

3. 津波による設備被害と今後の対応 2 区分 設備 被害 概要 区分 Ⅰ LNG タンク 区分 Ⅱ 油タンク 火力発電設備 ( 発電所建屋 ボイラー等 ) 変電設備 ( 送電用 ) 送電設備 ( 送電鉄塔等 ) 変電設備 ( 配電用 ) 配電設備 ( 配電柱 配電線等 ) 電力保安通信設備 特段の被害なし がれき等の流入による設備損壊 頻度の高い津波 個々の設備毎に機能に重大な支障が生じないよう対策を施す 現行の敷地高さ 防潮堤の有効性の確認を行う 被害の想定を踏まえ 従来の対策の有効性を確認する 需要地である市街地への浸水は 海岸保全施設等により防がれる 地域の防災計画 浸水後の需要の有無等との整合を図り 地域と協調して 被害を減じ又は復旧を容易とする設備形成を進める 沿岸部に通信ルートがある場合には 多重化などを行う 今後の対応 最大クラスの津波 人命に重大な影響を与えないよう類似の石油コンビナート等との整合をとった対策を行う 供給力確保の観点から 個々の設備の重要度や地域毎の被害想定を踏まえ 復旧の迅速化を図るための対応を進める 損壊すると広範囲かつ長期にわたる供給支障を及ぼすような著しい影響を与える場合 170kV 以上の主要基幹変電所 送電線路 ( 電源線を除く ) については 津波の影響がある海岸部に設置しないことが重要である こうしたおそれのある既設設備については 被災時に系統操作等を行っても 電力供給に著しい支障を及ぼすことが予想される場合には 減災対策等の津波の影響を緩和する取組みが必要である 津波による被害を受け 電力需要が喪失するエリアについては 被災後の復旧で対応する 応急復旧で対応する ( 可搬型衛星通信システムの活用等 ) 耐震性区分 Ⅰ Ⅱ と同様の区分とする ( ただし 水力発電所は津波の影響を受けないため除外 ) 6

4. 復旧状況と今後の対応 1 事業者最大停電戸数復旧の状況 東北電力 約 466 万戸 発災後 3 日で約 80% の停電を解消 発災後 8 日で約 94% の停電を解消 東京電力約 405 万戸 発災後 7 日ですべての停電を解消 阪神 淡路大震災の経験で得られた教訓は 有効に機能した ( 応援側が当面必要な食料 車両の燃料等を持参する自己完結型の応援 50Hz/60Hz 発電機車の活用など ) 発電所の迅速な復旧のため 損傷した機器の代わりに移動用機器 仮設の設備 設備の流用による復旧 浸水した機器の洗浄による再使用による復旧など様々な工夫が行われた 送電線の巡視におけるヘリコプターの活用は 被災地域が広大 立入困難であったため有効であった 変電所における変圧器の漏油状況 磁器のずれ等を指標化することにより迅速な運転継続 可否の判断が行われた 配電柱の位置を GPS 座標で登録することで 土地に不案内な復旧作業員が カーナビゲーションシステム等で迅速に到着できた 復旧活動の状況 参考 震災 8 日後 (3 月 19 日時点 ) の他ライフラインの復旧状況 分野 ガス ( 都市ガス ) 復旧状況 約 4 万戸 / 約 46 万戸 ( 約 9%) が復旧 通信固定電話回線約 70 万回線 / 約 100 万回線 ( 約 70%) が復旧携帯電話基地局約 9,000 局 / 約 12,000 局 ( 約 75%) が復旧 上水道 下水道 約 62 万戸 / 約 162 万戸 ( 約 38%) が復旧 4 施設 /48 施設 ( 約 8%) が復旧 復旧作業に着手不可能な地域 ( 家屋流失地域 福島県内の立入制限区域など ) を含む 7

4. 復旧状況と今後の対応 2 津波による被害の復旧に関する新たな知見 浸水による被害を受けた電動機 制御基盤等は 洗浄により再使用できるものもあり 早期復旧に寄与したが 上水 工業用水などのインフラ設備復旧が必要となった 津波による設備被害の復旧にあたっては がれき類の撤去 排水作業等に時間を要したとともに 周辺地域も含め広範囲で被災したため 食料 宿泊施設 ガソリンなどが不足したことへの対応が必要であった 復旧に関する課題への対応 阪神 淡路大震災の経験で得られた教訓は有効に機能した 被災 ( 津波 ) 後の復旧を迅速化するため 今回の知見等を踏まえたマニュアルの検証 整備 今後 復旧迅速化のため関係機関との連携強化が必要 協力会社社員を含めた緊急通行の協議 現場へ到着するための道路情報の入手 車両燃料の確保 衛星写真の活用 工業用水等の早急な確保 8