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固相抽出 高速液体クロマトグラフ法による陰イオン界面活性剤の分析に関する外部精度管理 栃本博, 小杉有希, 富士栄聡子, 保坂三継, 矢口久美子 External Quality Assurance of Analysis on Anionic Surface Active Agent by Solid Phase Extraction High Performance Liquid Chromatography Hiroshi TOCHIMOTO, Yuki KOSUGI, Satoko FUJIE, Mitsugu HOSAKA and Kumiko YAGUCHI 東京都健康安全研究センター研究年報第 58 号別刷 2007

固相抽出 高速液体クロマトグラフ法による陰イオン界面活性剤の分析に関する外部精度管理 栃本博 *, 小杉有希 *, 富士栄聡子 *, 保坂三継 *, 矢口久美子 ** External Quality Assurance of Analysis on Anionic Surface Active Agent by Solid Phase Extraction High Performance Liquid Chromatography Hiroshi TOCHIMOTO*, Yuki KOSUGI*, Satoko FUJIE*, Mitsugu HOSAKA*and Kumiko YAGUCHI** Keywords: 陰イオン界面活性剤 anionic surface active agent, 固相抽出 - 高速液体クロマトグラフ法 solid phase extraction high performance liquid chromatography, 外部精度管理 external quality assurance はじめに東京都では, 東京都水道水質管理計画 ( 平成 5 年 12 月 14 日策定, 平成 16 年 7 月 5 日改正 ) に基づき, 東京都健康安全研究センター ( 以下, 当センター ) が中心となり, 都内の水道事業者及び厚生労働大臣の登録を受けた検査機関における水道水の水質検査に対する外部精度管理を実施している. 平成 18 年度には陰イオン界面活性剤 ( 固相抽出 - 高速液体クロマトグラフ法 ), ナトリウム及び硬度について実施した 1). 水質基準項目としての陰イオン界面活性剤の分析法は, 平成 16 年に従来のメチレンブルー法から固相抽出 - 高速液体クロマトグラフ法に変更となった 2). 今回行った固相抽出 - 高速液体クロマトグラフ法による陰イオン界面活性剤の外部精度管理は, わが国ではまだ報告がみられない. そこで, その概要を当センターでの検討事項を含め報告する. 外部精度管理の方法 1. 外部精度管理の実施前の予備実験 1) 固相カラムの検討固相カラムはスチレンジビニルベンゼン共重合体とシリカゲル系の2 種類が公定法 2) に採用されている. この2 種類の固相カラムを使用した場合の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム ( 以下 LASとする ) の回収率を調べた. ミネラルウォーター ( サントリー南アルプス天然水 )5 L に5 種混合標準液 ( 和光純薬製デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (C10), ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (C11), ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (C12), トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (C13), テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (C14) 各 1 mg/ml メタノール溶液 ) を10 倍希釈して0.2 ml 添加した低濃度試料 ( 各濃度 0.004 mg/l,5 種合計 0.02 mg/l, 水質基 準の10 %) と1 ml 添加した高濃度試料 ( 各濃度 0.02 mg/l, 5 種合計 0.1 mg/l, 水質基準の50 %) を調製した. それぞれビーカー 10 個に500 mlずつ分取し,waters Sep-Pac Plus PS2( スチレンジビニルベンゼン共重合体, 以下 PS2) と Waters Sep-Pac Plus C18( シリカゲル系, 以下 C18) の固相カラム5 個ずつに通水 ( 流速 :20 ml/min) した. さらにビーカーに吸着した陰イオン界面活性剤 3) を洗い出すために各ビーカーを20 mlの精製水で3 回ずつ洗浄し, 各カラムに通水した. 次いでカラムに吸着されたLASをメタノールで溶出し, 溶液中のLAS 濃度を高速液体クロマトグラフ法で測定した. 高速液体クロマトグラフの測定条件は次のとおりである. 装置 :Waters 2695, 蛍光検出器 :Waters 2475( 励起波長 221 nm, 測定波長 284 nm), カラム :Wakopac Navi C18-5 (4.6 250 mm), 流速 :1.0 ml/min, 移動相 : アセトニトリル 水 (65:35) の混合液 1 Lに過塩素酸ナトリウム12.3 gを溶解したもの, カラム温度 :40, 注入量 :20 μl 2) 試料中の陰イオン界面活性剤の経時変化の検討公定法によると陰イオン界面活性剤の1 回の測定は試料 500 mlを必要とする 4) ため,5 回測定では2.5 Lを必要とする. しかし, 試料として2.5 Lを配布すると, 試料の全調製量が多くなり, また配布試料を携帯しての長時間の運搬は困難である. そこで, 試料の全調製量を少なくし, 配布試料の運搬を容易にするため, 配布試料量を500 ml 強とし, 測定時に5 倍に希釈することにした. 測定時の設定濃度は水質基準の25 % の0.05 mg/lを想定し, 配布試料の濃度はその5 倍の0.25 mg/lとした. この濃度で配布試料とした場合の濃度変化の有無について, 以下のように調べた. 3 Lのビーカーに精製水を3 L 入れ,LASの5 種混合標準液 ( 各 1 mg/ml) を10 倍希釈したものを1.5 ml 添加し, 各 0.05 mg/l,5 種合計 0.25 mg/lの陰イオン界面活性剤の溶液 * 東京都健康安全研究センター環境保健部水質研究科 169-0073 東京都新宿区百人町 3-24-1 * Tokyo Metropolitan Institute of Public Health 3-24-1, Hyakunin-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 169-0073 Japan ** 東京都健康安全研究センター環境保健部環境衛生研究科

を調製した. 最初と最後の約 200 mlを捨て,100 mlずつ100 mlの蓋付ガラス瓶に分取した. これを配布試料として想定し ( 実際の1/5 量 ), 冷蔵保存した. 試料調製後 0,1,2, 4,7 日目に3 本ずつ取り出し, 各ガラス瓶のLAS 濃度を測定した. 固相カラムは,C18を使用し, 通水の流速は20 ml/minとした. 瓶の全量を使用し, 瓶の全量を通水した後に, 精製水 10 mlで瓶を3 回洗浄した後に, この洗浄液も合わせて通水した. メタノールで溶出した後,LAS 濃度を高速液体クロマトグラフ法で測定した. 2. 外部精度管理の実施の概要 1) 配布試料の調製法ステンレス製の調製用タンクにミネラルウォーター 40 L を入れ,5 種類のLASの標準液 ( 和光純薬製各 1 mg/ml メタノール溶液 ) を添加し, 調製した. 各 LAS 濃度の設定値, 配布試料の濃度及び標準液の添加量を表 1 に示した. 表 1. 外部精度管理用 LAS 溶液の濃度の設定値及び配布試料の調製 LAS 設定値 (mg/l) 設定値 (mg/l) 標準液 (1 mg/ml) ( 測定時 ) ( 配布試料 ) 添加量 (ml) 合計 0.060 0.30 12.0 C10 0.008 0.04 1.6 C11 0.020 0.10 4.0 C12 0.010 0.05 2.0 C13 0.010 0.05 2.0 C14 0.012 0.06 2.4 C10: デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム C11: ウンデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム C12: ト デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム C13: トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム C14: テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 測定時の設定濃度は, 予備試験より少し高い0.060 mg/l ( 水質基準の30%), 配布試料の濃度はその5 倍の0.30 5) mg/lとした. 各 LASの濃度の割合は, 市販の洗剤の割合を一部参考にして設定した 配布試料は, 最初と最後の約 2 Lを捨て,500 mlのガラス容器 ( 試薬瓶 ) の口まで分注した. 配布試料の調製は, 試料配布日の前日に行なった. 配布試料 10 本毎に1 本を取り出し,5 倍希釈し, ロット差を調べた. 経時変化は, 試料調製後 0, 1, 2, 4,7 日目に残りの配布試料から1 本ずつ取り出し,LAS 濃度を測定 (5 回繰り返し ) した. 配布試料は, 冷蔵保存した. 2) 実施時期試料調製日の翌日, 平成 18 年 11 月 14 日に試料を配布し, 11 月 30 日までに分析結果の提出を求めた. 3) LAS の分析各検査機関は試料受領後, 配布試料について, 次のように分析を実施することとした. (1)500 ml 容量の瓶に口一杯入れてある配布試料の水量を正確に測定し, 精製水で容器を数回共洗いし, 試料に加えた後, 試料の全量を 5 倍に希釈してから分析試料とする. (2) 分析は, 希釈した試料を500 mlずつに分割し, それぞれについて行う ( 計 5 回測定 ). (3) 標準液は, 配布試料と同時に渡した LAS の 5 種混合標準液 ( 和光純薬製各 1 mg/ml メタノール溶液 ) を使用する. 4) 報告書の提出 5 回測定した 5 種の LAS の合計濃度と各濃度, 測定条件, 検量線, 分析チャート, 操作手順のフローシートなどの提出を求めた. 5) 評価方法データ処理と評価は, 厚生労働省の水道水質検査の外部精度管理に準じた 6). すなわち, 各機関の5 回測定の平均値 ( 以下測定値 ) を用いてGrubbsの棄却検定で外れた機関の値を棄却した後,Zスコア及び中央値の誤差率の計算を行った. 判定基準は, Z <3 ( Z はZスコアの絶対値 ) または中央値の ±10 % 以内に入っていること及び機関内変動係数 10% とした. 判定基準外の機関についてはその原因と改善策についてレポートの提出を求めた. 結果及び考察 1. 外部精度管理の実施前の予備試験 1) 固相カラムの検討表 2 に2 種類の固相カラムによる回収率を示した. 低濃度試料では,PS2の5 種平均の回収率は106.3 %, 範囲 100.7 ~120.5 %,C18では平均 94.3 %, 範囲 87.3~99.9 % であった. 高濃度試料では,PS2の各回収率は平均 102.5 %, 範囲 98.0~105 %,C18では平均 97.7 %, 範囲 93.6~99.4 % であった. 両方のカラムとも回収率が100 % 近くであったが,PS2の回収率の方がやや高い傾向がみられた.PS2での回収率は,C11で低濃度試料, 高濃度試料とも最高値を示し, 低濃度試料は120.5 % と特に高く,5 種平均の回収率も106.3 % と引き上げた. その理由としてPS2から溶出する妨害物質 7) があり, 低濃度ほど影響が大きいためと推定された. そこで, 以下の検討では使用する固相カラムはC18 を使用することにした. また, 各 LASについてみると, 低濃度試料のPS2を除いて, ベンゼン環の側鎖の炭素数が多い LASで回収率が低くなる傾向がみられた. 2) 試料中の LAS 濃度の経時変化の検討図 1 に予備試験の経時変化の検討結果を示した. 測定値は 0.24~0.25 mg/l, 回収率は約 100 % で, 経時変化はみられなかった. 2. 外部精度管理の結果 1) 配布試料のロット差及び経時変化 10 本毎に1 本の割合で抜き取った調製試料のLAS 濃度の 2

表 2.2 種の固相カラムによる LAS(5 種 ) の回収率 低濃度試料 (5 種合計 0.02 mg/l, 各濃度 0.004 mg/l) LAS *1 固相カラム PS2 *2 C18 *3 平均 106.3 94.3 C10 100.7 96.9 C11 120.5 99.9 C12 102.5 97.2 C13 103.1 90.4 C14 104.9 87.3 高濃度試料 (5 種合計 0.1 mg/l, 各濃度 0.02 mg/l) LAS *1 固相カラム PS2 *2 C18 *3 平均 102.5 97.7 C10 104.0 99.4 C11 105.0 98.9 C12 103.1 99.2 C13 102.6 97.1 C14 98.0 93.6 *1: LAS の種類は表 1 を参照 *2: スチレンジビニルベンゼン共重合体 *3: シリカゲル系 濃度 (mg/l) 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00 0 2 4 6 8 日数 図 1. 予備試験における LAS 濃度の経時変化 ( 平均値 ± 標準偏差,n=3) 有意な差はなかった. 図 2 に当センターが行なった7 日間のLAS 濃度の測定値を示した. 測定値は0.055~0.056 mg/l で経時変化はみられなかった, 設定値に対する回収率は約 92 % 程度で, 予備試験の回収率 ( 約 100 %) より低かった. その原因は, 配布試料では希釈操作が加わることから, 容器に付着したLASの回収が不完全なことが推定された. なお, 表 3 に外部精度管理における評価基準内の参加機関を, 固相抽出操作を配布日の翌日から4 日後までと5 日後から8 日後までに行なった2 グループに分類し, 各グループのLASの合計測定値の平均値と標準偏差を示した.2 グループの値に有意な差はなかった. この結果は, 上記の当センターの経時変化の検討結果と一致した. 濃度 (mg/l) 0.06 0.05 0.04 0.03 0.02 0.01 0 0 2 4 6 8 日数 図 2. 配布試料のLAS 濃度の経時変化 ( 平均値 ± 標準偏差,n=5) 表 3. 外部精度管理における抽出日の違い による測定値の比較 配布から 全機 評価基準 平均値 標準偏差 の抽出日 関数 内機関数 (mg/l) (mg/l) 1~4 日後 17 15 0.0544 0.0035 5~8 日後 8 7 0.0559 0.0042 2) 測定結果の概要 精度管理に参加した検査機関は, 厚生労働大臣登録検査 機関 24 機関と水道事業者 1 機関の合計 25 機関であった. 各機関の結果を図 3 に示した. 各プロットにおいて は5 回測定の平均値, ひげは ± 標準偏差を示した. 実線は中央 値, 破線はZスコア=±3, 一点鎖線は中央値 ±10 % を示 している.No.31の測定値は12.8 mg/lで, 棄却検定により 棄却された. 陰イオン界面活性剤の外部精度管理の解析結果の概要を 表 4. 解析結果の概要 ( 棄却検定後 ) 参加検査機関数 25 棄却検定後の機関数 24 最大値 (mg/l) 0.0626 最小値 (mg/l) 0.0386 平均値 (mg/l)* 0.0535 標準偏差 (mg/l) 0.0057 機関間変動係数 (%) 10.7 中央値 (mg/l) 0.0541 中央値の-10% 値 (mg/l) 0.0487 中央値の+10% 値 (mg/l) 0.0595 Z スコアの-3 値 (mg/l) 0.0441 Z スコアの+3 値 (mg/l) 0.0640 中央値の誤差率の絶対値が 10% を超え Z が 3 以上の機関数 3 機関内変動係数が 10% 以上の機関数 0 *:24 機関の測定値の平均値 3

0.07 0.06 濃度 (mg/l) 0.05 0.04 0.03 1 (2) 3 (4) (5) 6 7 8 9 10 11 12 13 14 (15) 16 17 (18) 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 (29) 30 *31 検査機関 図 3. 参加機関のLASの測定値 :5 回測定の平均値 ± 標準偏差, 実線 : 中央値, 一点鎖線 : 中央値 ±10%, 破線 :Zスコア ±3 検査機関の ( ) 内は当該項目不参加機関,*31: 値が縦軸範囲外のため表示不可 表 5.LASの合計及び個々の測定値 LAS * 設定値 最大値 最小値 平均値 標準偏差 変動係数 中央値 設定値に対する (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (mg/l) (%) (mg/l) 中央値の割合 (%) 合計 0.060 0.0626 0.0386 0.0535 0.0057 10.7 0.0541 90.2 C10 0.008 0.0146 0.0054 0.0085 0.0018 21.5 0.0081 101.3 C11 0.020 0.0219 0.0013 0.0191 0.0020 10.6 0.0195 97.5 C12 0.010 0.0118 0.0065 0.0088 0.0011 12.8 0.0089 88.6 C13 0.010 0.0113 0.0059 0.0084 0.0014 17.0 0.0082 81.8 C14 0.012 0.0124 0.0062 0.0088 0.0014 16.3 0.0086 71.8 *:LASの種類は表 1 を参照 表 4 に示した. 棄却後の全参加機関の測定値の範囲は 0.0386~0.0626 mg/lであった. 測定値の平均値と標準偏差は0.0535±0.0057 mg/lであった. 中央値は0.0541 mg/lで, 中央値に対する誤差率は-29~16 % の範囲内にあった. 中央値の ±10 % の範囲は0.0487~0.0595 mg/lで, Zスコアの範囲は-4.66~2.57,Zスコアの ±3 の範囲は0.0441~ 0.0640 mg/lであった.zスコアの ±3 の範囲は中央値の ± 10 % の範囲より広かったので,Zスコアにより評価した. Z が3 以上の検査機関は棄却検定により棄却された No.31を含む3 機関 (No.23,24,31) であった. 機関内変動係数は, すべての機関において厚生労働省の求める精度 10 % の範囲内にあった. 棄却された機関を除く機関間変動係数は10.7 % で, ナトリウム (5.9 %) や硬度 (3 %) 1) に比べて高く, 陰イオン界面活性剤については前記のような容器への付着に加えて, 抽出 溶出などの前処理があることが主な要因であると考えられた. 検査機関におけるZスコアの値のヒストグラムを図 4 に示した.Zスコアが ±1.5 の範囲内に25 機関中 17 機関があり,Z スコアが-3 を下回った機関がNo.23と24の2 機関, 3 を超えた機関はNo.31( 棄却検定により棄却 ) であった. 表 5 に配布試料のLASの設定値 ( 合計及び5 種 ), 棄却検 定後の解析結果 ( 最大値, 最小値, 平均値, 標準偏差, 機関間変動係数, 中央値, 設定値に対する中央値の割合 ) を示した. 機関間変動係数は試料濃度の設定値が最高濃度で最低値を示し, 最低濃度で最高値を示した. 個々のLASの設定値に対する中央値の割合は,71.8~101 % で,5 種類のLASのベンゼン環の側鎖の炭素数が多いほど設定値に対する中央値の割合は低く, テトラベンゼンスルホン酸ナトリウム (C14) が最低であった. この結果は, 精度管理前に検討した予備試験結果と類似した. 6 5 頻度 4 3 2 1 0-3.0-2.5~-3.0-2.0~-2.5-1.5~-2.0-1.0~-1.5-0.5~-1.0-0.5~0 0~0.5 0.5~1.0 1.0~1.5 1.5~2.0 2.0~2.5 2.5~3.0 3.0 zスコア図 4.LASの精度管理におけるZスコアのヒストグラム

3) 固相カラムの差違について使用した固相カラムは, スチレンジビニルベンゼン共重合体系 ( 有機ポリマー系 ) が16 機関, シリカゲル系が9 機関であった. 評価基準内の機関において, これら2 種の固相カラムの測定値を表 6 に示したが, 有意な差はなかった. 予備実験の有機ポリマー系の固相カラムでは溶出する物質 7) があるため測定値が高めになることが予想されたが, C11の濃度だけ比較しても有意な差が見られなかった. その理由としては, 配布試料の設定濃度がやや高めであったため, 予備実験の高濃度試料の結果にみられるように影響がほとんど現れなかったためと考えられた. 表 6.2 種類の固相カラムによる測定値の比較固相の種類全機評価基準平均値標準偏差関数内機関数 (mg/l) (mg/l) * 有機ポリマー系 16 15 0.0547 0.0013 シリカゲル系 9 7 0.0552 0.0020 *: スチレンジビニルベンゼン共重合体系 4) 液体クロマトグラフ用カラムによる差違について 5 種類のLASを液体クロマトグラフによって分析すると, 個々の成分について3 本から5 本のピークとして分離するカラム ( 全ピーク測定カラム ) と個々の成分を1 本のピークとして分離するカラム (1 本ピーク測定カラム ) 8) がある. 今回の検査機関の液体クロマトグラフ用カラムを集計したところ, 全ピーク測定カラムを使用した機関は18 機関で,1 本ピーク測定カラムを使用した機関は7 機関であった. 評価基準内の機関において, 両者の測定値の平均値と標準偏差を表 7 に示したが, 有意な差はなかった. 当センターでも, 精度管理の試料を用いて全ピーク測定カラムと1 本ピーク測定カラムの測定値を比較した. 全ピーク測定カラム Wakopak Navi C18と1 本ピーク測定カラム Wakosil AS-Aqua(4.6 250 mm, 流速 0.7 ml/min, 注入量 10 μl, 他の条件はNavi C18と同じ ) を用いた. そのチャートを図 5 に示し, 表 8 に測定結果を示した. 両カラムによる合計及び各成分の測定値に有意な差はなかった. 5) 評価基準外の機関報告された結果を評価基準により判定すると, 機関内変動係数はすべての機関が10 % の範囲内にあったが,No.31 の機関 ( 測定値 12.8 mg/l) は棄却検定で棄却され,No.23, 24の2 機関はZスコアが-3 を下回り, かつ中央値の-10 % 値も下回った ( 図 3). そのため, 評価基準外のこれら3 機関に対して, その原因と改善策についてのレポートの提出を求めた. 棄却検定により棄却されたNo.31の機関の原因は,250 倍に濃縮して測定した結果を勘違いによりそのまま記載したためであった. 実際に報告すべき濃度は0.051 mg/lで, この値は検査機関の中央値に近かった. この回答は妥当と思われた. 表 7. 全ピーク測定カラムと1 本ピーク測定カラムによる測定値の比較分離カラム全機評価基準平均値標準偏差の種類関数内機関数 (mg/l) (mg/l) 全ピーク測定 18 15 0.0541 0.0044 1 本ピーク測定 7 7 0.0552 0.0033 表 8. 各 LASの全ピーク測定カラムと1 本ピーク測定カラムによる測定値の比較 (mg/l, n=5) LAS Navi C18 WS AS-Aqua 平均値標準偏差平均値標準偏差合計 0.05260 0.00224 0.05279 0.00211 C10 0.00787 0.00035 0.00764 0.00035 C11 0.01875 0.00075 0.01940 0.00084 C12 0.00849 0.00038 0.00835 0.00038 C13 0.00831 0.00042 0.00839 0.00036 C14 0.00918 0.00057 0.00901 0.00047 Zスコアが評価基準外であったNo.23の機関 ( 測定値 : 0.0390 mg/l) の原因は, ランプ交換直後に測定し, 安定期間が不十分だったとの回答を得た. ランプの交換により感度が変化することはあると思われるが, 測定値の変動係数は小さく, また, 標準液とサンプルを同時に測定しているためサンプルの濃度だけ30 % 近く低くなることは考えにくい. よって他の原因も検討する必要がある. No.24の機関 ( 測定値 :0.0386 mg/l) は, その後, 回収率試験を行い良好な結果を得ることができ, 原因を特定できなかったという回答を得た. 上記の 2 機関とも, 中央値より約 30 % 近く低い値を報告しており, 液体クロマトグラフによる測定だけで回収率が低下することは考えにくく, 固相抽出が不完全であることが考えられた. 固相抽出が不完全な原因としては, コンディショニングが不完全であることや固相カラムの乾燥及び固相カラムのロット差など 9) が推定される. その改善策としては, コンディショニングの適正化, コンディショニング後固相カラムが乾燥する前に試料を負荷することなどが考えられる.2 機関ともにシリカゲル系の固相カラムを使用しており, シリカゲル系の固相カラムは乾燥しやすいため, 特に注意が必要である. また, サンプルの測定と同時に添加回収率試験を行うことは, 固相抽出全般の操作確認のために有効であると考えられる. まとめ外部精度管理を行なう前に予備実験を行なった. 配布試料を想定して試料を作成した.LAS は吸着性があるため測定操作に精製水で配布試料の容器を洗浄する操作を加えて, 経時変化を検討した. その結果, 試料調製後 7 日間の回収率が約 100 % であることを確認した. そこで, 測定時に配布試料の 5 倍希釈及び配布試料の容器の洗 5

C10-1 C10-2 C10-3 C11-1 C11-2 C11-3 C11-4 C12-1 C12-2 C12-3 C12-4 C13-1 C13-2 C13-3 C13-4 C14-1 C14-2 C14-3 C14-4 C14-5 C10 C11 C12 C13 C14 図 5. 各 LAS の全ピーク測定カラム (Wakopac Navi C18-5) と 1 本ピーク測定カラム (Wakosil AS-Aqua) のクロマトグラム ( 試料 LAS 合計 1 mg/l, 各 0.2 mg/l) 浄操作を測定条件に加えて, 固相抽出 - 高速液体クロマトグラフ法による LAS の外部精度管理を実施した. 1. 評価基準内にあった機関は,25 機関中 22 機関で良好であった. Z が3 以上の検査機関は, 棄却検定により棄却された1 機関を含む3 機関であった. 棄却検定後の測定値の平均値は0.0535 mg/l, 中央値は0.0541 mg/l,zスコアの ±3 の範囲は0.0441~0.0640 mg/lであった. 各検査機関内の変動係数は,10 % の範囲内にあり良好であった. 機関間変動係数は10.7 % で, ナトリウム5.9 %, 硬度 3.0 % に比べて高く, 抽出 溶出の前処理があるためと考えられた. 2. 当センターで, 配布試料の濃度は1 週間ほとんど変化しないこと, ベンゼン環の側鎖の炭素数が多いLASで回収率が低い傾向がみられること, また, 分離カラムについて全ピーク測定カラムと1 本ピーク測定カラムによる測定値に有意な差がみられないことを確認した. これらは, 外部精度管理の集計結果と一致した. 3. 評価基準外であった3 機関の原因は, 計算ミス, 分析装置の調整不足及び不完全な固相抽出などが考えられた. 不完全な固相抽出の改善策としては, 的確なコンディショニングの実施, 固相の乾燥などに注意を払うと共に, サンプルの測定と同時に添加回収試験を実施することが有効である. 文献 1) 東京都福祉保健局健康安全室環境水道課 : 平成 18 年度水質精度管理講評会, 平成 19 年 3 月. http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/eisei/water/seidok anri_h18.pdf (2007 年 8 月 30 日現在, なお, 本 URL は変更または抹消の可能性がある ). 2) 平成 15 年 7 月 22 日付厚生労働省告示第 261 号. 3) 宮野啓一, 小泉義彦, 高木総吉, 渡邉功 : 大阪府立公衛研所報,44,73-79,2006. 4) 平成 17 年 3 月 30 日付厚生労働省告示第 125 号 5) 日本水道協会, 日本水道協会雑誌,73 (3),21-47,2004 6) 平成 17 年度水道水質検査の精度に関する調査結果 : 厚生労働省健康局水道水質管理室 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/jouho u/suisitu/pdf/o2.pdf(2007 年 8 月 30 日現在, なお, 本 URL は変更または抹消の可能性がある ). 7) 坪田てるみ, 金田恵美子, 小林博美, 山本春樹, 山中直 : 滋賀衛科セ所報,40,78-80,2005. 8) 宮野啓一, 小泉義彦, 高木総吉, 渡邉功, 大阪府立公衛研所報,43,17-22,2005. 9) 日本ウォーターズ株式会社, ウォーターズ企業内セミナー水道水質検査のためのサンプル前処理,2007. 謝辞多くの資料を戴いた大阪府立公衆衛生研究所宮野啓一氏に深謝します.