事業承継支援について

Similar documents
(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

<4D F736F F F696E74202D E93788E968BC68FB38C7090C590A789FC90B38A E >

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

例えば毎年 子供 2 人に対し110 万円づつ贈与し続けるのであれば 10 年間で2,200 万円の財産を無税で子供に移すことができます 贈与税の基礎控除額を上手く活用する方法だけでも 計画的に行うことがどれだけ大切なのかご理解いただけると思います とにかく財産を所有している人が高齢になればなるほど

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

Microsoft Word - 36号事業承継.doc

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

1. 改正のポイント (3) 影響改正が株価に与える影響は下表の通り また現在及び将来の株価が変動するため事業承継計画全体へ影響が出る 改正が株価に与える影響 改正内容 会社規模の判定基準 ( 大会社及び中会社の範囲拡大 ) 株式保有特定会社の判定基礎 ( 株式及び出資の範囲拡大 ) 類似業種比準価

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

××税制(所得税・法人税・法人住民税・事業税)

納税猶予打切りリスクの緩和 利子税率の引き下げ 承継 5 年超で 5 年分の利子税の免除 債務控除方式の変更 債務控除を株式以外の財産から行うことで 納税猶予の効果を高める < 平成 27 年度税制改正 > 贈与税の納税猶予 免除制度の拡充 1 代目が存命中に 2 代目が 3 代目に納税猶予 免除制

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

<4D F736F F D208E968BC68FB38C7082CC964097A596E291E882C982C282A282C42E646F63>

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

平成19年12月○日

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

<4D F736F F D208C6F89638FEE95F182A082EA82B182EA E34816A>

Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

平成16年版 真島のわかる社労士

Microsoft Word 役立つ情報_税知識_.doc

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

平成 29 年度税制改正解説資産課税 納税義務の見直し 1 国外財産に関する相続税 贈与税の納税義務の範囲が見直されます 被相続人が日本国籍を有しない者であって 一時的滞在 ( 2) をしていたものを除く 2

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

服部法律事務所ニュース 遺言書について その4(相続税)

. 個人投資家の年齢層と年収 個人投資家 ( 回答者 ) の年齢層 8% 6% 28% 2~3 代 5% 2% 3% 4 代 5 代 6~64 歳 65~69 歳 7 代以上 個人投資家 ( 本調査の回答者 ) の過半数 (56%) は 6 歳以上のシニア層 昨年調査 6 歳以上の個人投資家 56%

第 5 章 N

2017年度税制改正大綱 資産税関連の主な改正点

03_税理士ラスパ_相続税法_答案用紙-1.indd

プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

株式保有会社の相続税評価の緩和

平成 22 年 4 月 1 日現在の法令等に準拠 UP!Consulting Up Newsletter 無対価での会社分割 バックナンバーは 当事務所のホームページで参照できます 1

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

(0830時点)PR版

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

相続対策としての土地有効活用

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

2011年税制改正のポイント

1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

2. 改正の趣旨 背景 中小企業経営者の高齢化が進んでいるが その半数以上が事業承継の準備を終えていない このような現状を放置すると中小企業の廃業の増加により地域経済に深刻な打撃を与える恐れがある 事業承継の円滑な実施は 事業が継続されることによる雇用の維持に加え 休廃業企業のうち一定数は経常利益が

平成29年度     地域経済動向調査      調査報告書

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

IFRS基礎講座 IAS第12号 法人所得税

<918A91B190C F0939A91AC95F BD90AC E A>

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

< F2D A91B C FC90B38E9197BF>

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

Microsoft Word - 【jigyou_syoukei_02】事業承継対策・経営承継円滑化法_ _.doc

速報!  平成27年度税制改正セミナー

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

【問】適格現物分配に係る会計処理と税務処理の相違

1.修正申告書を作成する場合の共通の手順編

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

<90C596B192CA904D B835E B8358>

受付番号 123456

<4D F736F F D D8D878C768E5A96E291E88F E291E A88C497708E >

(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

公益法人の寄附金税制について

所令要綱

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

例題 B さんは 被相続人 A から H22 年 7 月 7 日に C 社上場株式 50,000 株を相続した この年の C 社株式の株価推移は以下の通りである このとき C 社株式の相続税評価額は? ( 終値月平均値 ) 4 月平均 5 月平均 6 月平均 7 月平均 7/7 終値 500 円 5

< F31322D89FC90B390C C18F578D8692C7985E5B315D2E6A74>

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

★889133_相続税ハンドブック_本体.indb

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

医療法人への移行の案内.indd

 

<TAC> 無断複写 複製を禁じます ( 税 18) 相上 (8)C10-1 相続税法 上級 演習 8 テキスト 2 第 8 回 - 解答 点 - 第一問 問 1 持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において 税負担の不当減少を防 止

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

Ⅰ 法人関連税制 1 減価償却制度 2 年連続の大改正になった背景 減価償却制度については 平成 19 年度税制改正により 残存価額および償却可能限度額の取扱いが廃止される大改正が行われ 定率法はいわゆる 250% 定率法 と呼ばれる従来にない新しい計算の仕組みが採用されました そして平成 20 年

日興証券

日本基準基礎講座 有形固定資産

改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

2 b. 廃業 3) 事業承継計画 1 現状の把握 a. 事業承継に係る関係者の状況 中小家の親族関係 その他の関係者 氏名 年齢続柄 備考 氏名年齢 備考 中小太郎 60 歳 本人 T 社の創始者 ( 代表取締役社長 ) A 63 歳 T 社の専務取締役 ( 太郎の右腕 最近病気がち ) 中小花子

6 課税上の取扱い日本の居住者又は日本法人である投資主及び投資法人に関する課税上の一般的な取扱いは 下記のとおりです なお 税法等の改正 税務当局等による解釈 運用の変更により 以下の内容は変更されることがあります また 個々の投資主の固有の事情によっては異なる取扱いが行われることがあります (1)

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

< 業種別 > 2 製造業主要判断 の推移 製造業 29/ /3 見込 /6 予想 < 製造業 > 当期 は 8.0( 前期比 -1.7) 当期 は 9.1( 同 -8.9) 当期 は 5

Transcription:

一橋大学経済学部商工中金寄附講義 中小企業の経済学 第 9 回事業承継対策について 2015 年 6 月 10 日 株式会社商工組合中央金庫 ソリューション事業部原田康平

1. 事業承継対策の必要性 1

近年 企業における経営者の年齢は上昇を続けています その主要因としては 中小企業における経営者の平均年齢が上昇を続けていることがあげられます また 事業承継の形態としては 子息 子女への親族内承継を主体としたものから その他の親族や親族外への承継も増加傾向にあります ( 歳 ) 63.50 資本金規模別の代表者の平均年齢の推移 63.25 63.33 63.33 63.17 62.92 62.83 62.92 63.00 62.92 63.00 63.00 63.25 63.08 63.75 事業承継形態の変遷 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 (%) 62.50 61.50 20 年以上前 79.7 13.9 6.4 60.50 59.50 58.50 57.50 56.50 55.50 56.67 57.75 57.50 57.17 56.92 56.17 55.92 55.67 55.42 58.75 59.00 59.17 59.33 59.42 59.58 58.50 58.17 57.92 57.67 57.92 58.00 58.00 58.00 57.92 57.33 56.92 56.50 56.67 資本金 10 億円以上 資本金 1,000 万円未満 全社長平均 10 年 ~19 年前 5 年 ~9 年前 0 年 ~4 年前 41.6 48.6 60.6 20.4 20.2 24.3 38.0 31.2 15.1 子息 子女 その他の親族 親族以外 54.50 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 後継者教育に関する実態調査 (2003 年 ) ( 東京商工リサーチ ) 全国社長分析 (2011 年 1 月帝国データバンク ) 2

企業における経営者の引退年齢は 若干ながら上昇を続けていますが 概ね 70 歳までには引退されているケースが多くなっています 中小企業の経営者の平均年齢が 60 歳に近い現況 (P2 参照 ) を考慮すると 事業の承継までの期間が 10 年程しか残されていない現状が分かります 年齢別人口と経営者の平均引退年齢の推移 1990 年 2000 年 2010 年 90 90 90 80 70 60 50 小規模事業者の経営者平均引退年齢 68.1 66.1 中規模企業の経営者平均引退年齢 80 70 60 50 69.8 67.5 80 70 60 50 70.5 67.7 40 40 40 30 30 30 20 20 20 10 10 10 0 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 0 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 0 0 1000000 2000000 3000000 ( 出典 ) 年齢人口 : 総務省 国政調査 経営者平均引退年齢 : 中小企業庁 中小企業白書 (2013) ( 備考 ) 経営者平均引退年齢については 事業承継時期 0~4 年前 を 2010 年 10~19 年前 を 2000 年 20~29 年前 を 1990 年においている 3

中小企業経営者に対し 後継者の育成のために必要な期間を質問したところ 3 年以上の期間を要するとの回答が 9 割に上りました 他方 事業承継に係る準備状況については 60 代で 6 割弱 70 代で 5 割弱 80 代でも 4 割強の経営者が不十分であるとの認識をもっています 資料 :2014 年度中小企業白書より抜粋 4

事業承継に係る準備状況が不十分と認識している一方 事業承継課題は経営の根幹に関わることが多いことから 誰に相談すればよいのか といったことに悩みを抱えられている中小企業経営者も多い状況にあります 中小企業経営者における事業承継の相談先 中小企業の事業承継に関するアンケート調査 (2009 年 )( 商工中金 ) 5

他方 平成 27 年 1 月 1 日より相続税 贈与税の改正が行われました 納税負担が増すことから事業承継を含めて相続対策を考える方が増加してきています 内容改正前現行制度 基礎控除 50,000 千円 +10,000 千円 法定相続人の数 30,000 千円 +6,000 千円 法定相続人の数 税率構造 相続税 相続税の基礎控除引き下げ 相続税の税率構造の見直し 未成年者控除 障害者控除の控除税の引き下げ 10%,15%,20%,30%,40%,50% の 6 段階 10%,15%,20%,30%,40%,45%,50%,55% の 8 段階 贈与税 高齢者の資産を現役世代に移転させるため贈与税の税率構造が緩和 20 歳以上の者が直系尊属から贈与を受ける場合 一般の贈与よりも低い贈与税率 相続税の最高税率 55% に合わせ 贈与税の最高税率も 55% へ 内容改正前現行制度 税率 直系尊属からの贈与 10%,15%,20%,30%,40%,50% の 6 段階 10%,15%,20%,30%,40%,45%,50%,55% の 8 段階 直系尊属以外からの贈与と同様税率構造の緩和 ( ) 20 歳以上の者への直系尊属 ( 父母 祖父母等 ) からの贈与に限る 6

事業承継に難しさを考えてみましょう A 氏 B 氏 C 氏が 100 万円ずつ出資して株式会社 A を設立 A 氏 B 氏 C 氏が出資した100 万円の価値は? A 氏 B 氏 C 氏 A 氏 B 氏 C 氏 株式会社 A 出資金 300 万円 株式会社 A 出資金 300 万円利益 1 億円 純資産 15 億円 問題 各々 100 万円を出資してできた株式会社 A は 30 年後 毎年 1 億円の利益を生み出し 15 億円もの純資産 ( 内部留保 ) を蓄積することができました A 氏 B 氏 C 氏それぞれ高齢になり 株式を後継者に集約しようと考えています 出資した金額 100 万円はいくらになっていると思いますか? 7

回答 いつ 誰に株式を移転させるかによって 株価は異なります ( 例 1)A 氏 B 氏 C 氏に血縁関係があり A 氏の子 D 氏に集約させる場合 相続税法上の株価 ( 参考資料を参照 ) にて評価します ( 原則的評価 ) 類似業種比準価格方式 純資産価格方式 類似業種比準価格方式と純資産価格方式の折衷方式 仮に純資産価格方式で算定する場合は 1 人あたり 5 億円の株価となります ( 例 2)M&A により血縁関係の無い第三者に株式を売却する場合 お互いの経済的合理性を勘案し 合意する価格となります ( 参考とする価格 )DCF 方式 純資産価格 + 営業権 類似会社方式 取引事例方式 配当還元方式など 純資産価格方式 + 営業権 ( 利益の 5 年分を営業権と仮定 ) の場合 株価の総額は 20 億円 ( 一人当たり 6.7 億円 ) となります 中小企業の株価は複数の評価方法があるんだ 毎年変わるし 渡す相手によっても株価が変わるので困惑する経営者も多いよ 100 万円が 5 億円に 8

2. 具体的な事業承継支援 9

わが国における中小企業は 大多数が中小企業 ( 同族企業 ) が多いことを踏まえ 中小企業における主な事業承継支援手法をご紹介します 同族経営 親族が承継する 親族内株主 親族外株主 親族が承継しない 廃業 所有 ( 株式 ) 親族単独経営 親族共同経営 社外経営者招聘 社内役員等昇格 社内役員等昇格 社外経営者招聘 私的整理 ( 清算等 ) 法定手続 ( 破産 ) 経営 税務対策 MB0 EBO M&A 対応 グループ再編 金融機関が対応可能な業務 10

事業承継において 親族内での承継は 依然重要な支援局面の一つです そのため 親族間で株式を移転させる際の株価算定の基本的な考え方についてご紹介します 1 類似業種比準価額 評価会社 ( 分子 ) と類似会社 ( 分母 ) の配当 利益 純資産を比準して計算 A B b + c C 3 + d D 1 5 斟酌率 0.7 0.6 0.5 1 株当りの資本金等の額 50 円 株価 配当利益純資産 類似業種株価 比準割合が他の項目に比べ 3 倍のため 利益が大きい会社ほど株価が上がる傾向にあります 会社の規模によって掛目が変わります 2 純資産価額資産 負債について時価評価 ( 相続税評価額 ) し 株価を計算 ( A - B ) - ( A - B )-( C - D ) 38% 株価 ( 発行済株式数 )-( 自己株式数 ) B : 相続税評価額による負債総額 D : 帳簿上の負債総額 A 相続税評価額による資産の評価額 簿価総資産 C 土地等の含み益 簿価総負債 B D 純資産価額 382 % 控除 11

株式の移転に際しては 譲渡のほか 贈与 相続など様々な手法が存在しますが 様々な局面で税制上の課題が生じることも事実です ここでは 事業承継にまつわる主要な税制をご紹介いたします 効果要件留意事項 暦年贈与基礎控除 110 万円なし 高い税率基礎控除内 110 万円での贈与を続けるには時間がかかる 相続時精算課税制度 贈与時に納付した贈与税を相続時に精算する制度 ( ) 特別控除額 2,500 万円 60 歳以上の親から 20 歳以上の子への贈与 相続時に贈与により取得した財産を相続財産に加算して相続税額を計算 ( 納付済の贈与税額は相続税より控除 ) 非上場株式に係る納税猶予制度 経営承継相続人が 相続 贈与により取得した議決権の 3 分 の 2 までの株式について 課税価格の 80% に対応する相続税額を猶予 ( 死亡により免除 ) 親族内承継で以下を満たす 後継者筆頭株主かつ同族で過半を 保有 先代経営者代表者経験あり 筆頭株主かつ同族で過半を保有 適用要件を満たさなくなった場合 納税猶予に係る相続税を利子税と併せて納付する必要 猶予株式の継続保有 雇用を 80% 維持 (5 年間 ) 等 贈与税額の計算 =( 贈与財産 - 特別控除 2,500 万円 ) 20% 12

3. 商工中金における事業承継支援事例 13

ケース Ⅰ 株式移転の事例 ガソリンやプロパンガスなどのエネルギー販売事業を行う A 社は 安定した収益力を背景に 財務の磨き上げを進めてきました 同時に 社長は今後の更なる企業成長のためには 円滑な事業承継の実現が必要であると強く感じていました しかし 株価は毎期上昇を続けており 後継者は社長子息と決定しているものの 今後の事業承継の進め方に大きな悩みを抱えていました 相談を受けた商工中金は 提携税理士と同行し 株価算定の実施のほか 具体的な承継手法スキームの提案を行うとともに 社長の経営方針や後継者の育成方針についてディスカッションを行いました その結果 太陽光パネルの設備投資を行う予定であったことから 即時償却制度の効果により株価が抑制された状態となることが分かったため 同タイミングで株式を移転する方針としました 株式移転 会社をもっと発展させるぞ! 即時償却制度の活用で株価が抑制! 14

ケース Ⅱ 第三者に株式を譲渡した事例 (M&A) B 銀行 ( 第一地方銀行 ) は 業歴 30 年を有し 防犯用レンズ分野に高い技術力を有するレンズ製造メーカーである C 社より 社長が高齢となるも後継者が不在であることを理由とし M&A による事業承継の相談を受けておりました 地域に限定のある B 銀行内のネットワークでは買い手探索に苦慮し 同行より商工中金宛相談を受け 買い手候補 D 社を紹介しました D 社は 光学レンズの卸売業者で 営業力に強みを有し 海外展開を検討していた一方 独自ブランドの開発 獲得に課題を抱えていました 両者のニーズが合致し スムーズな交渉の結果 D 社による SC の M&A が行われました 商工中金では 独自のネットワークに加え 複数の地域金融機関と連携を強化しています 後継者をどうしよう 相手探索依頼 B 銀行 C 社 相手が見つからない D 社 15