浸透が不十分でした ( 図 1) 以上のように ブランチングが ぽろたん の剥き方に最も適しました 貯蔵による品質の変化クリは 9~ 10 月に収穫が集中するため 加工用としては数ヶ月の貯蔵が求められます そこで ぽろたん の特徴である 剥けやすさ が 貯蔵によって影響がないのか調査しました その結

Similar documents
圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

リンゴ黒星病、うどんこ病防除にサルバトーレME、フルーツセイバーが有効である

(Microsoft Word - H24\202\324\202\307\202\244\213K\212i.doc)

表 30m の長さの簡易ハウス ( 約 1a) の設置に要する経費 資材名 規格 単価 数量 金額 キュウリ用支柱 アーチパイプ ,690 直管 5.5m 19mm ,700 クロスワン 19mm 19mm ,525 天ビニル 農 PO 0.1mm

本文_提出用.indd

<4D F736F F D CA48B8690AC89CA8FEE95F E496D882CC8EED97DE82AA817582CD82E982DD817682CC90B688E781418EFB97CA814189CA8EC095698EBF82C98B7982DA82B789658BBF2E646F63>

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採


バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

復興庁 農林水産省食料生産地域再生のための先端技術展開事業 被災地の早期復興に資する果樹生産 利用技術の実証研究 クリ ぽろたん のジョイント栽培マニュアル早期成園化 低コストの樹形管理と防除技術 宮城県農業 園芸総合研究所神奈川県農業技術センター国立研究開発法人農研機構果樹茶業研究部門

ハクサイ黄化病のヘソディム

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)

<82BD82A294EC82C697CE94EC82CC B835796DA>

<4D F736F F D208CC D882CC8DCD947C8B5A8F708E77906A2E646F63>

平成19年度事業計画書

コシヒカリの上手な施肥

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

本日のお話 つなぐことの意味 技術の効果 ( 第一期実用技術開発事業 ) 現地実証と産地への実用化 適用樹種拡大研究への発展 更なる共同研究 実用化に向けて

<4D F736F F D A6D92E894C5817A966B945F8CA C E482AB82B382E282A9816A81698DC58F4994C5816A2E646F63>

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

140221_葉ネギマニュアル案.pptx

1 試験分類  効率的農業生産技術確立対策試験

PowerPoint プレゼンテーション

140221_ミツバマニュアル案.pptx

2 3

メラレウカ苗生産技術の検討 供試品種は レッドジェム, レボリューションゴールド を用い, 挿し木を行う前日に枝を採取し, 直ちに水につけ持ち帰り, 挿し穂の基部径を 0.8~1.2mm,1.8~2.2mm,2.8~3.3mm で切り分けた後, 長さ約 8cm, 基部から 3cm の葉を除いた状態に

資料 2 農業データ連携基盤の構築について 農業データ連携基盤 (WAGRI) WAGRI とは 農業データプラットフォームが 様々なデータやサービスを連環させる 輪 となり 様々なコミュニティのさらなる調和を促す 和 となることで 農業分野にイノベーションを引き起こすことへの期待から生まれた造語

< F2D C18EEA95F182518D C834D E838D836F836C834C836D F E6A7464>

月中旬以降の天候によって塊茎腐敗による被害が増加する事例も多い 平成 28 年度は疫病の発生面積率は19.9% と例年に比べてやや少なかったものの 塊茎腐敗の発生面積率は 14.8% と例年に比べてやや多かったとされる ( 平成 現在 北海道病害虫防除所調べ ) かつては 疫病には

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

ネギ 防除法

の差については確認できないが 一般的に定温で流通している弁当の管理方法等についてアンケートにより調査した その結果 大部分の事業者が管理温度の設定理由として JAS 規格と同様に食味等の品質の低下及び微生物の繁殖を抑えることを挙げ 許容差は JAS 規格と同様に ±2 としていた また 温度の測定方

1 試験分類  効率的農業生産技術確立対策試験

わかっていること トマトすすかび病について

研究成果 業務需要に向けたリーキの品種選定と栽培技術開発 ~ 水田輪作による秋冬どり栽培が可能 ~ 1. はじめにリーキは 西洋ネギ ( ポロネギ ) ともいわれ 根深ネギより太く短い葉鞘を形成します しかし リーキの葉身はニンニクやニラのように平らで 筒状の葉身を持つ根深ネギとは明らかに様相が異な

     くらぶち草の会の野菜、畑作栽培技術

Ⅲ-3-(1)施設花き

隔年結果

PowerPoint プレゼンテーション

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援

1. 取組の背景射水市大門地域は 10a 区画の未整備な湿田が多く 営農上の大きな障害となっていた 昭和 62 年に下条地区で県内初の大区画圃場整備が実施されたのを皮切りに 順次圃場整備が進んでいる 大区画圃場整備事業が現在の 経営体育成基盤整備事業 になってからは 農地集積に加えて法人化等の担い手

普及技術 6 トルコギキョウ10 月出しとカンパニュラ3 月出しの無加温電照輪作体系 3 利活用の留意点 1) 赤色 LEDランプは, 株式会社鍋精製 (DPDL-R-9W, 波長 nm) を用い, 地表面から光源先端までの距離は1.5m,2m 間隔で設置している (PPFD:0.6~

研究情報 渋ガキ 刀根早生 果実の海外輸出流通技術の開発 かき もも研究所主任研究員 岩橋信博 これまでかき もも研究所ではカキの海外輸出のため 改良ダンボールや 1 メチルシクロプロペン (1-MCP) を活かした出荷技術の確立に取り組んできました 改良ダンボールは水分ストレスを抑制し 1-MCP

溶液栽培システムを利用した熱帯果樹栽培

白紋羽病の病徴 果樹の地上部にこんな症状が出ていたら要注意 春先の発芽が遅れ 花芽分化が多く 開花時期が早まる 徒長枝の本数が少ない または伸長が悪い 梅雨明け後期に 葉が萎れたようになる 秋期に葉の黄化や 落葉が早くなる 果実の肥大が悪く 熟期が早まる 徒長枝の伸長が悪い 菌 糸 束 秋期の葉の早

PowerPoint プレゼンテーション

営農のしおり(夏秋キク)

<4D F736F F D C8B9E945F91E58EAE90B682B282DD94EC97BF89BB2E646F63>

2 ブドウの病害虫

untitled

ÿþ

本剤の使用に当たっては 使用量 使用時期 使用方法を誤らないように注意し 特に初めて使用する場合には病害虫防除所等関係機関の指導を受けることをおすすめします 安全使用上の注意事項 本剤は眼に対して刺激性があるので眼に入らないよう注意してください 眼に入った場合には直ちに水洗し 眼科医の手当を受けてく

Transcription:

茨城県農業総合センター園芸研究所 011 年 11 月 30 日 No.19 編集 発行 / 茨城県農業総合センター園芸研究所所在地 / 茨城県笠間市安居 3165-1 TEL /099-45-8340 クリ ぽろたん 果実の利用 クリの風味を活かした甘露煮を作るための諸条件 はじめに茨城県は クリの生産量が日本一の大産地です これまで流通加工研究室では 生産農家や加工業者とともに クリの低温貯蔵に関する研究や クリの風味を活かした甘露煮加工法の開発に取り組んできました 甘露煮加工には主に早生 ~ 中生の品種が用いられます 平成 19 年に 渋皮が剥けやすい品種 ぽろたん が登場し クリ剥き作業を省力化できるものとして話題になっています また 当研究室では 既存の品種で クリの風味 を活かした甘露煮加工法を開発しました そこでこの開発した加工法を新品種 ぽろたん に適用するために 剥き方 貯蔵条件などを明らかにしました ぽろたん の剥き方について ぽろたん は 鬼皮と渋皮に傷を付けて加熱すると 鬼皮と渋皮をまとめて剥くことができます 試験では代表的な電子レンジ オーブン ブ 表 1 加熱方法と剥皮性 ( 剥けやすさ )(%) 剥皮性のレベル レンジ オーブン ブランチング 凍結 + レンジ 1 48 9 40 0 48 6 48 55 3 3 18 10 15 4 3 13 3 10 5 0 15 0 0 計 100 100 100 100 割果率 0 0 0 0 付表 a) 剥皮性のレベル分け基準 1: 加熱中に または加熱後触った程度で剥ける : 素手で数秒 ( 概ね 10 秒以内 ) で剥ける 3: 素手で1 分以内に剥ける 4: 包丁を用いれば1 分以内に剥ける 5: 剥けないか 1 分以上かかる 付表 b) 剥皮条件 ( 長径 1 周傷入れ果実使用 ) レンジ :5 果ずつ 800W90 秒 オーブン :10 果ずつ 0 5 分 ブランチング :10 果ずつ沸騰水中に3 分 凍結 +レンジ :- 40 凍結果実を 果ずつ 800W 1 分 ランチング ( 沸騰水中で 3 分ゆでる ) による方法を比較しました また 果実を長期保存するために 凍結保存した果実を電子レンジで加熱 剥皮する方法 ( 凍結 + レンジ ) も併せて比較しました さらに それぞれの方法で剥皮した果実を用い 流通加工研究室主任研究員佐野健人 これまでに開発した甘露煮加工法の適用性を検討しました 剥皮方法は 電子レンジおよび凍結 + レンジは 剥皮時の割れが多くオーブンでは剥皮が十分できませんでした ( 表 1) ブランチングは剥けやすく 割れが少なく 優れることが分かりました さらに 剥いた果実の甘露煮食味評価は ブランチングが レンジより優れました ( 表 ) なお レンジの甘露煮は表面色が暗く 内部への糖液の 表 甘露煮の硬度と食味評価 加熱方法 硬度 ( kg ) 食味評価 (0 ± ) レ ン ジ 0.61 - オ ー ブ ン 0.5 + 1.0 ブランチング 0.43 + 0.4 凍結 +レンジ 0.77-0. 硬度 :φ 5mm 貫入式硬度計 5 個の平均値 食味評価 :5 名による官能評価 レンジを基準 (0) として -( 劣 ) +( 優 ) の 5 段階評価 図 1 甘露煮の断面 ( 左 : レンジ右 : ブランチング ) 1

浸透が不十分でした ( 図 1) 以上のように ブランチングが ぽろたん の剥き方に最も適しました 貯蔵による品質の変化クリは 9~ 10 月に収穫が集中するため 加工用としては数ヶ月の貯蔵が求められます そこで ぽろたん の特徴である 剥けやすさ が 貯蔵によって影響がないのか調査しました その結果 貯蔵しても ぽろたん は剥け難くはならず 却って レベル 1 ( 数秒以内で剥けるもの ) の割合は高くなりました ( 図 ) しかし 貯蔵期間が長くなるほど障害果率が高くなりましたが 障害果率の増加は 貯蔵温度を -1 に下げることで + に比べ かなり抑えることができました ( 図 3 4) 図 貯蔵期間と剥皮性 基準 条件は表 1 付表と同じ -1 貯蔵果実をブランチング剥皮した さらに 貯蔵せずに甘露煮に加工すると 3~4 割程度の果実で割れ 崩れが生じますが 貯蔵によって少なくすることができました ( 図 4 上 ) なお 他の品種では甘露煮加工による割れの発生は 1 割以下で ぽろたん は貯蔵しても割れがやや多いようです また 正品率 ( 甘露煮の表面に部分的な変色の無い果実率 ) は ヶ月以降で低くなりました ( 図 4 上 ) なお 貯蔵 4 ヶ月での甘露煮は 部分的な変色が無い正品でも 貯蔵 0~ ヶ月に比べ全体の色調が暗く 明らかに異なった外観でした ( データ省略 ) 以上のように 貯蔵は -1 で 1 ヶ月程度が適当であることが分かりました 図 3 貯蔵温度と果実品質等 右上の写真は障害果の例 図 4 甘露煮の品質 ( 上図 : 品質割合 下写真 : 品質の例 ) 写真は 左から 正品 少し変色 部分変色 全体変色 おわりに ぽろたん は 通常削り取ってしまう果肉表面を残すことができるため 歩留まりの向上や より強いクリの風味を活かした加工品の開発が可能になると期待されます その一方 果肉表面の障害が目立ちやすく 加工 調理時に果肉が割れやすい欠点があることが試験を通して分かってきました そこで 今後 ぽろたん の剥きやすい特徴や独特の食感を活かした加工品 加工方法の開発 改善に取り組んでまいります ホームページで ぽろたん からクリご飯用の剥きグリを簡単につくる方法や 美味しい焼き栗にする方法を紹介しています ぽろたん が広く出回るのは ~3 年先になる見込みですが 是非お試し下さい

研究成果情報 各研究室の研究成果から ひらたねなしカキ 平種無 の樹上脱渋方法 本県のカキ生産は 甘ガキの 富有 を中心に 筑波山や霞ヶ浦周辺の比較的温暖な地域で限定的に栽培されてきました さらに 秋季の気温が低く 甘ガキの生産に適さない県北地域を中心に 収穫前に樹上で渋をぬく 樹上脱渋を行う渋ガキ 平核無 の栽培が増加しています 樹上脱渋方法は 1 事前にポリ袋 ( 11) に脱渋用固形アルコールを 1 個入れ 輪ゴム ( 16) を二重にかけます 処理は降雨のない日を選び ヘタを出して袋かけをします 3 処理期間は 1~ 日間とし 袋の底を切り 固形アルコールを取り除きます 4 スカート状になった袋は 収穫まで被覆したままにして 果面の保護に利用します 9 月 14 日 ~ 10 月 9 日の間に処理するとほぼ完全に脱渋します ただし 処理時期が早いほど褐斑 ( ゴマ ) が多く入り ( 図 1) 果色が早く赤くなりますが 果肉にはやや硬さが残ります ( 表 1) ( 果樹研究室 ) 9/14 処理 10/9 処理 図 1 処理時期の違いと褐斑 ( ゴマ ) 程度 表 1 固形アルコールの処理時期の違いがカキ 平核無 の品質に及ぼす影響( 平成 1 年 ) 樹上脱渋 1 処理日 果色果頂部 ブドウ シャインマスカット のポット育苗時の土壌管理方法 硬度 lbs 糖度 Brix% 9/5 処理 無処理 褐斑点 ( ゴマ ) 9 月 14 日 6.5 8.9 15.7 3.0 9 月 5 日 5.8 8.0 15.0.8 10 月 9 日 5.5 7.1 15.3 0.5 注 1 収穫日は全て 11 月 5 日注 褐斑 3: 多 : 中 1: 少 0: なし 改植または新植後にできるだけ早く成園化することは 果樹経営にとって大変重要です この早期成園化の手段の一つとして 新梢の長い苗木を密植する方法が有効です そこで ブドウ シャインマスカット において 新梢の長い苗木を育成するための土壌管理方法について検討しました その結果 ポット育苗における窒素施肥量を 0g/ 樹 日潅水量を L/ 樹 土量を 0L/ 樹とすることで 新梢の長い苗木を効率的に育成することができました ( 図 1) なお ポットについては不織布製 ( 図 ) などの排水性の良いものを利用します また 窒素については被覆肥料 (180 日タイプ ) を利用すると省力的で 肥効も安定します ( 土壌肥料研究室 ) 図 1 土壌管理の違いが新梢長伸長に及ぼす効果 図 不織布製ポットを利用した苗木育成 3

メロン イバラキング の果実成熟特性 本県育成のメロン イバラキング (H 品種登録 ) は果実肥大性や食味の評価が高く 栽培面積が拡大しています 品質の良い イバラキング を生産するためには 適期収穫が基本となることから 成熟日数と果実品質との関係について調査しました 5 月下旬収穫作型において開花日から 54 57 60 63 66 日目に収穫して 糖度や果肉硬度 食味官能評価を調査しました 54 日目収穫は果肉内側の糖度は 15% 以上でしたが 収穫時の果肉はやや硬く 青臭さが感じられました 57 日目収穫は収穫時の硬さや青臭さは感じられましたが 収穫後 7 日目の甘さは強く感じられ 総合評価も高まりました 63 日目収穫は収穫後 7 日目に発酵臭が感じられ 総合評価が低下しました 以上のことから イバラキング は一般に目安とされている果肉内側の糖度 15% を基準に収穫 ( 開花日から 54 日目 ) すると 果肉がやや硬く 青臭さを感じる場合があるため 収穫前には必ず試し切りを行い 肉質を確認して収穫時期を決定する必要があります ( 野菜研究室 ) 1.7 1.4 0.8 0.0 0.7 0.7 0.4 0.0 0.4 1.0 1.1 1. 0.3 0. 0.1 0.8 図 1 成熟日数別の糖度分布と食味評価 (5 月下旬収穫 ) 温湯散布によるイチゴ栽培における化学農薬削減の試み イチゴは栽培期間が約 1 年間と長く 化学農薬の使用量が多い野菜です 当所では 化学農薬の使用回数削減を目的に 茨城大学等と共同研究を行い イチゴにお湯を散布 ( 図 1) して うどんこ病 アブラムシ オンシツコナジラミの発生を抑制できることを明らかにしました また 生育や収量に影響を与えず 病害虫を防除するお湯の最適な処理条件は 葉面温度が 50 散布時間は 1 株当たり 0 秒でした ( 図 ) この処理条件のもと 1 週間間隔で温湯散布を行い 生物農薬等の環境保全型防除資材と組み合 わせて病害虫の防除を行った結果 育苗期から本圃栽培期間を通して 収量や品質に影響を与えることなく ( 図 ) 慣行の 1/3 程度 (1 回 15 剤 ) の化学農薬で栽培することができました 温湯散布は環境にやさしい 新たな防除法として期待されています ( 野菜研究室 ) 図 1 温湯散布装置 図 温湯散布時間の違いがイチゴの収量に 及ぼす影響 4

7 月東京盆出荷作型コギク露地電照栽培での品種毎の好適電照消灯日 コギクは盆 彼岸に高値で取引される品目で 本県では 7 月東京盆 8 月旧盆 9 月彼岸の需要期にあわせた栽培が行われています 近年 気象変動によって開花期が需要期からずれることが多くなっており 現在 8 月旧盆 9 月彼岸出荷作型では夜間に電照すると開花を抑制できるコギクの性質を利用して 需要期に開花させる露地電照栽培が導入されています しかし 7 月東京盆出荷作型では 露地電照栽培方法が確立されていませんでした そこで 7 月東京盆出荷作型での品種毎の電照消灯日を検討し 露地電照栽培方法を明らかにしました 試験を 3 年間くり返したところ 電照により多くの品種で開花期の年次変動を小さくすることができました 電照は定植の 1 週間後に開始して 常陸サニール ビー 玉姫 たそがれ は 5/6 に 雪舟 白鳥 常陸サニーホワイト は 5/1 に はるか は 5/16 に電照を終了すれば 7 月東京盆需要期に出荷することができます ( 花き研究室 ) 真空調理による花豆 常陸大黒 のドライパックへの加工方法 図 1 電照の消灯日が採花日に及ぼす影響 (H0 ~ ) 無電照と 5/1 消灯は H0 ~ の3ヵ年 他は H1 と H のヵ年の平均 バーは標準偏差を示す 花豆 常陸大黒 (H14 品種登録 ) は 県の生物工学研究所で育成した大粒で光沢のある黒一色の品種であり 県北地域の特産品として期待されています 現在 煮豆やお菓子の素材として 甘く味付けされたものが主流ですが 総菜等にも幅広く活用できるよう 薄い塩味のついたドライパックへの加工を検討しました まず 生豆を 1% の塩水に漬し 重量が. 倍以上になるまで十分吸水させます 豆の渋みが気になる場合は 吸水させた豆の水をきり 沸騰水 中で 10 分ほど茹でます 吸水させた豆を 10 以上の耐熱性のある袋 ( ナイロンポリ等 ) に入れ 軽く脱気して真空包装します その後 袋ごと圧力鍋に入れて 10 分間加熱し 調理と殺菌を同時に行って完成です 冷めると硬くなるため 食べる際に温めると ホクホク感が戻りおいしくいただけます 解凍した際に皮がはがれやすくなるため 冷凍には不向きですが 冷蔵で ヶ月程度保存することができます ( 流通加工研究室 ) 図 1 調理例 ( 左 : サラダ中 : シチュー右 : 豆ご飯 ) 5

土壌くん蒸剤を利用したネギ黒腐菌核病の防除 近年 県内の 5~6 月収穫作型のネギ栽培圃場において 黒腐菌核病 ( 図 1) による被害が増加しています 本病に対する各種土壌くん蒸剤の有効性を検討するため 所内の汚染圃場において ダゾメット粉粒剤 30kg/10a 全面土壌混和 メチルイソチオシアネート D-D 油剤 40L/10a 土壌注入及びカーバムナトリウム塩液剤 60L/10a 散布混和処理を行いました 薬剤処理は 10 ~ 11 月に行い 処理後は土壌表面をビニルで被覆しました 翌年 月にビニルを 図 1 ネギ黒腐菌核病の地際部の病徴 除去し 施肥 耕耘後 ネギ ( 品種 春扇 ) を作付けし 7 月上旬に発病状況を調査しました 各薬剤の防除価は ダゾメット粉粒剤が 71 ~ 90 メチルイソチオシアネート D-D 油剤が 61 ~ 91 カーバムナトリウム塩液剤が 55 ~ 58 であり いずれも実用的な防除効果が認められました ( 表 1) なお 多発圃場では 病原菌が土壌深層部まで存在し 防除効果が劣る場合があります 発生初期の防除が効果的です ( 病虫研究室 ) 表 1 ネギ黒腐菌核病に対する土壌くん蒸剤の防除効果 試験区 ダゾメット粉粒剤 30 kg /10a メチルイソチオシアネート D-D 油剤 40L/10a カーバムナトリウム塩液剤 60L/10a レンコン黒皮症を引き起こすレンコンネモグリセンチュウ 処理方法 全面土壌混和 試験 1 回目試験 回目試験 3 回目 (H19 年薬剤処理 ) 1 (H0 年薬剤処理 ) 1 (H1 年薬剤処理 ) 1 発病株 率 (%) 防除価発病株 率 (%) 防除価発病株 率 (%) 防除価 1.9 73 4.9 90 11.7 71 注入 17.9 63 4.4 91 15.6 61 散布混和 未実施 1.6 55 16.7 58 無処理 48.6 48.0 39.7 1 各試験とも 試験 1 回目では 4 反復の 試験 回目及び 3 回目では 3 反復の平均値を示す 数値が大きいほど効果が高いことを示す 防除価 =(1 -( 試験区の平均発病株率 / 無処理区の平均発病株率 )) 100 試験に使用した農薬は平成 3 年 10 月 1 日現在 ネギ黒腐菌核病に登録のある薬剤である 茨城県は日本のレンコンの 45%(H1) を生産する全国第 1 位の大産地です レンコンは 霞ヶ浦湖畔の広い地域で栽培されており 夏場には大きく茂る葉と可憐に咲く花が一面に広がります レンコンは 1 年を通じて煮物などに利用されますが 見通しの良い 縁起物としてお正月料理にも欠かせない存在です ところが 近年 通常は真っ白なレンコンの表皮に黒褐色の斑点が多数発生して 商品価値が低下してしまう いわゆる レンコン黒皮症 ( 図 1) と呼ばれる症状が問題になっています 黒皮症は病害虫 生理障害など様々な原因が考えられましたが 千葉県や徳島県での調査から 線虫 による加害が疑われるようになりました そこで 本県で発生した黒皮症のレンコンを調査したところ 細根や芽の部分からレンコンネモグリセンチュウ ( 図 ) が分離され 接種試験により症状が再現されたため この線虫が黒皮症を引き起こすことが明らかになりました 今後 この線虫に対する有効な防除方法の確立を目指し 研究を続けていきます ( 病虫研究室 ) 図 1 レンコン黒皮症 図 レンコンネモグリセンチュウ頭部 6

トピックス 園芸研究所主催の研究会から 平成 3 年度 消費者と園芸研究所との集い を開催しました ~ ブドウ研究の今 ~ 平成 3 年 9 月 14 日 消費者と研究員との交流会を開催しました 本会は話題の新品種や新技術をメインテーマとして 消費者への研究紹介及び消費者のニーズの把握を目的に 平成 17 年度から年 1 回開催しています 今回は 欧州系ブドウを取り上げました ホームページ等で案内し 募集したところ 4 名の消費者の方々が出席されました 内容 1 園芸研究所における高品質ブドウ生産に関する研究 ( 根域制限栽培 ( 図 1) 摘芯栽培 ジョイント栽培 新品種 ( 図 ) 等 ) 及びブドウに含まれる機能性成分に関する研究を紹介しました ブドウ圃場 ハウスにおいて栽培試験について紹介しました 3 シャインマスカット 巨峰 安芸クイーン ピオーネ ロザリオビアンコ ウインク の 6 品種を参加者に試食して頂き アンケートによりご意見を頂きました ( 図 3) 4 ブドウに加え 研究全般及び園芸の生産振興方策等について意見交換を行いました 寄せられたご意見 ご感想 1 ブドウについては シャインマスカット の盆前出荷の可能性や今後の県のブドウ振興の方向性等について ブドウ以外では TPP への対応方針や生産者間の技術の平準化の必要性等 踏み込んだ質問がありました 試食では シャインマスカット と 安芸クイーン が好評でした 3 今回の催しに対する感想は 良かった 50% やや良かった 3% で 栽培の状況をみることができた 食べたことのない品種の味を比べられた 等の感想を頂きました 今後 テーマの工夫 開催案内の見直し 試食コーナーの充実等に努めます また 今回出された高品質 安全 省力の重要性等についての意見は ブドウだけでなく 研究の課題化 推進に生 かしていきたいと思います ( 研修委員会 ) 図 1 ブドウの根域制限栽培図 話題の新品種の紹介図 3 試食と食味評価 7

トピックス 園芸研究所主催の研究会から メロン の主要課題現地検討会を開催しました 平成 3 年 5 月 10 日に園芸研究所において イバラキング をテーマに主要課題現地検討会を開催しました 産地ではメロンの収穫が本格化する時期でしたが 生産者や関係機関など県内のメロン関係者 39 名の参加がありました 検討会ではまず イバラキング の特徴と栽培のポイントについて 特にネット発生を安定化させるために 最低気温の確保や玉直しの方法などを説明しました 産地から栽培状況について 肥大性や食味について高い評価を得ていますが ネットの不揃いやうどんこ病の発生が見られると報告がありました イバラキング は 4 月下旬から 6 月上旬を収穫期間とする作付けが可能と考えられますが 果重やネット発生のコントロールにはさらなる検討が必要です また 収穫適期と日持ち 食べ頃の 関係にも不明な点があることから 安定生産のための取り組みを継続してまいります ( 野菜研究室 ) 図 1 収穫期の イバラキング の圃場検討 ネギ の主要課題現地検討会を開催しました 平成 3 年 6 月 3 日に ネギの周年生産 をテーマに検討会を開催したところ 3 名の参加がありました 4~5 月どりネギ栽培における抽苔抑制 ( 野菜研 ) ネギの黒腐菌核病の総合防除法 ( 病虫研 ) 初夏どりハウスネギ栽培における土壌水分管理技術 ( 土壌肥料研 ) ネギのおいしさ評価とおいしいネギの栽培技術 ( 流通加工研 ) 等 ネギに関する研究成果を検討しました ( 図 1) また 所内圃場 ( 図 ) においては ネギの効果的なトンネル換気方法及び短葉性ネギの栽培法について意見交換をしました 参加者からは現地への成果の導入状況や具体的活用方法 短葉性ネギの今後の展開方法についての質問があり 関心の高さが伺われました 引き続き 春 ~ 初夏どりを中心に 高品質安定生産技術の開発に努めます ( 野菜 病虫 土壌肥料 流通加工研究室 ) 図 1 研究成果の室内検討 図 収穫中の初夏どりネギの現地検討 8