平成 25 年 5 月 18 日健康セミナー 乳がんの治療について NTT 東日本札幌病院外科 小西和哉
1 本日の内容 検診 診断 治療方針 治療の実際 進行度 薬剤感受性 内分泌受容体 HER2 タンパク
がん罹患率 2 日本人女性 16 人に 1 人が乳癌 欧米女性 8 人に 1 人が乳癌
がん生存率 3
乳がん罹患率 4
乳がんの危険因子 5 肥満 閉経後は発生リスクを高めます 既往歴 ( 乳がん 卵巣がん ) 家族歴 閉経年齢が遅い 母 姉妹 エストロゲンが関係 出産数少ない初産年齢高い授乳経験ない エストロゲンが関係 アルコール タバコ 運動不足 エストロゲンプロゲスチン 経口避妊薬 わずかに乳がん発生リスクを高めます わずかに乳がん発生リスクを高めます
6 乳癌の症状 しこり 検診 乳頭分泌 痛み 腋窩リンパ節 その他
マンモグラフィー 7 大胸筋 乳がん 乳腺
8 乳腺の量が多いと異常は分かりにくい エコー所見
マンモグラフィー 9 石灰化はマンモグラフィーの方が分かりやすい
10 乳がん検診 マンモグラフィー 10 人に 1 人が精密検査 50 人に 1 人が乳がん 0.2~0.3% 乳がんが発見される 異常なし の人の 2700 人に 1 人が 1 年以内に自分で乳がんを発見 エコー ( 超音波検査 ) 偽陽性が増える マンモグラフィーとエコーどちらを検査すればいいのか? 長所が違います石灰化マンモグラフィー小さなしこりエコー
精密検査細胞診 針生検 11
12 乳がんと診断されたら 乳がんの広がりの診断 CT MRI 骨シンチグラフィ 薬物の効果予測 病理検査 内分泌受容体 HER2 全身状態 内臓機能診断 血液検査 レントゲン 心電図 併存疾患 呼吸機能検査
13 乳がんの治療 手術 乳腺切除 乳房温存手術 全乳房切除 リンパ節切除 センチネルリンパ節生検 リンパ節郭清 薬物療法 内分泌療法 化学療法 ( 抗がん剤 ) 分子標的療法 放射線治療 温存乳房の再発予防 全乳房切除後の再発予防
非浸潤がん浸潤がん 14 乳管
乳がんの進行度 15 進行度 0 非浸潤癌 進行度 1 ~2cm かつリンパ節転移なし 進行度 2 2~5cm またはリンパ節転移あり 進行度 3 5cm 以上かつリンパ節転移あり 進行度 4 遠隔転移あり
内分泌受容体 HER2 タンパク 16 女性ホルモン 70% 内分泌受容体 HER2 タンパク 10% 内分泌療法化学療法 乳がん細胞 化学療法抗 HER2 療法 10% 10% 内分泌療法化学療法抗 HER2 療法 化学療法
乳がんの治療方針 17 進行度 0 手術 薬物療法放射線 進行度 1 手術 薬物療法放射線 進行度 2 手術 薬物療法放射線 薬物療法 手術 薬物療法放射線 進行度 3 薬物療法 手術 薬物療法放射線 進行度 4 薬物療法 ( 手術 )
乳がんの治療方針 18 進行度 0 手術 薬物療法放射線 進行度 1 手術 薬物療法放射線 進行度 2 手術 薬物療法放射線 薬物療法 手術 薬物療法放射線 進行度 3 薬物療法 手術 薬物療法放射線 進行度 4 薬物療法 ( 手術 )
19 進行度別の 5 年生存率 進行度 0 97.58% 進行度 1 96.63% 進行度 2 90.93% 進行度 3 72.48% 進行度 4 42.65%
20 再発後の生存率 乳がん患者全体の約 30% が再発します 再発の多くは治療開始後 3 年以内に発生します 5 年以上経過してからの再発もありえます ( 他のがんと違うところです ) 5 年生存率 30% 10 年生存率 5% 再発乳がんが全て消える可能性はほとんどありません 再発部位によって予後が異なります
手術 21 乳腺切除 乳房部分切除 乳房切除 リンパ節 センチネルリンパ節生検 腋窩リンパ節郭清
乳房再建 22 自己組織 広背筋 形成外科が必要 人工物 エキスパンダー 腹直筋 インプラント 手術時間長い 傷 筋肉の欠損 保険適用 感染に弱い 放射線治療後は難しい インプラントは自費
23 左乳がん術後 9 ヶ月 ( 放射線治療後 ) 左乳房部分切除 センチネルリンパ節生検 腋窩切開 外側脂肪組織で補填
24 左乳がん術後 3 週 左乳房部分切除 センチネルリンパ節生検 乳房下溝線切開 上腹部有茎真皮脂肪弁で補填
25 右乳がん術後 3 週後 右乳房部分切除 腋窩リンパ節郭清 外側切開 外側脂肪組織で補填
26 左乳がん術後 3 ヶ月 ( 放射線治療中 ) 左乳房部分切除 乳輪弧状切開
27 乳がん治療の内分泌治療薬 タモキシフェンの再発抑制効果 47% 以上 内分泌受容体に作用 ノルバデックスタスオミンフェアストン 卵巣機能抑制 ゾラデックスリュープリン アロマターゼ阻害薬 アリミデックスフェマーラアロマシン 内分泌受容体を破壊 フェソロデックス 黄体ホルモン ヒスロン H
内分泌療法 28 再発予防 再発治療 閉経前 ノルバデックスタスオミン + ゾラデックスリュープリン ノルバデックスタスオミン + ゾラデックスリュープリン ヒスロン H 閉経後 アリミデックスフェマーラアロマシン ノルバデックスタスオミン アリミデックスフェマーラアロマシン ノルバデックスタスオミンフェアストン フェソロデックス ヒスロン H
乳がん治療の化学療法 29 アンスラサイクリン系アドリアシンアドリアシン + エンドキサン +5FU ファルモルビシンファルモルビシン + エンドキサン AC CAF EC ジェムザールナベルビンカンプトハラベン メソトレキセートエンドキサン 5FU ( パラプラチン ) CMF タキサン系 +5FU FEC タキソテールタキソールアブラキサン ゼローダティーエスワンユーエフティフルツロン
30 乳がん治療の分子標的薬 HER2 陽性乳癌 ハーセプチン タイケルブ ( ゼローダと併用 ) ( アバスチンタキソールと併用 )
化学療法 31 再発の危険 大きい乳癌リンパ節転移陽性癌細胞の悪性度が高い 術前治療 術後補助療法 再発治療 アンスラサイクリン系アドリアシンファルモルビシン AC 療法 CAF 療法 EC 療法 FEC 療法 タキサン系 ( ハーセプチン併用 ) タキソテール TC 療法 タキソール GT 療法 アバスチン併用 アブラキサン ステロイド不要
化学療法によって防ぐことができる再発 32 1000 800 600 24% 12% 17% 無再発再発 400 200 0 無治療 CMF CEF AC - タキサン
33 60 歳台両側乳がん進行度 3 化学療法前 化学療法後
80 歳台左乳癌 女性ホルモン 内分泌受容体 HER2 タンパク 34 フェマーラ 1 錠 / 日内服 9 ヵ月後 2 年 2 ヵ月後フェマーラを継続中
35 40 歳台左乳癌進行度 1 女性ホルモン 内分泌受容体 乳房部分切除 センチネルリンパ節生検 温存乳房への放射線治療 50Gy/25 回 ノルバデックス 5 年間 タモキシフェン 5 年間 ± 卵巣機能抑制 2 年間
36 60 歳台左乳癌進行度 1 女性ホルモン 内分泌受容体 乳房部分切除 センチネルリンパ節生検 温存乳房への放射線治療 50Gy/25 回 アリミデックス 5 年間 アロマターゼ阻害薬 5 年間タモキシフェン アロマターゼ阻害薬タモキシフェン
37 40 歳台左乳癌進行度 2 女性ホルモン 内分泌受容体 乳房部分切除センチネルリンパ節生検 腋窩郭清 AC 療法 タキソール療法 ノルバデックス 5 年間 温存乳房への放射線治療
38 50 歳台左乳癌進行度 2 内分泌受容体 HER2 タンパク FEC 療法 4 コースアブラキサン + ハーセプチン 4 コース 乳房部分切除 腋窩郭清 温存乳房への放射線治療 50Gy/25 回 ノルバデックス 5 年間ハーセプチン 1 年間
60 歳台右乳癌進行度 2 39 HER2 タンパク アブラキサン + ハーセプチン ( タキサン系 + ハーセプチン ) 4 コース CEA 113 ng/ml CEA 4.4 ng/ml
40 40 歳台右乳癌進行度 3 初診時 EC 療法後 アブラキサン療法後 タキソテール 1 コース後
41 再発したときの治療 局所再発 ( 乳房内再発 リンパ節再発 ) 遠隔再発 ( 骨 内蔵 ) 手術 薬物療法 薬物療法 放射線療法 薬物療法
再発した時の内分泌療法 42 閉経前 ノルバデックスタスオミン + ゾラデックスリュープリン ヒスロン H 閉経後 アリミデックスフェマーラアロマシン ノルバデックスタスオミンフェアストン フェソロデックス ヒスロン H
43 再発乳がんに対する化学療法 1 奏効率は 30~50% 程度 アンスラサイクリン系アドリアシンファルモルビシン AC 療法 CAF 療法 EC 療法 FEC 療法 タキサン系 ( ハーセプチン併用 ) タキソテール タキソール GT 療法 アバスチン併用 アブラキサン
44 再発乳がんに対する化学療法 2 奏効率は 20% 程度 ゼローダティーエスワンユーエフティフルツロン ジェムザールナベルビンカンプトハラベンパラプラチン 内服 脱毛少ない脱毛少ないハーセプチンと併用 臨床試験で生存期間延長投与時間短い
45 60 歳台左乳癌進行度 2 6 年後の再発癌性胸水 右大腿骨転移 肝転移 胸水除去癒着療法 内分泌療法 化学療法 放射線療法骨転移治療薬
46 アリミデックス アレディア ゼローダ ヒスロン H 照射 30Gy ピシバンール Picibanil 胸腔内注入胸腔注入 CEA CA15-3 NCC-ST-439 2005 年 3 月 2005 年 11 月 2006 年 3 月 2006 年 6 月 癌性胸水骨転移 肝転移
50 歳台左乳癌進行度 2 8 年後の再発多発肺転移 左鎖骨上リンパ節転移 HER2 タンパク 47 ゼローダ ハーセプチンナベルビン ハーセプチンタイケルブ ゼローダ 2 年 2 ヶ月後 CEA 118 ng/ml CEA 39 ng/ml 2 年 10 ヶ月外来化学療法継続中
48 放射線療法 乳房への治療 (50 グレイ /25 回 ) 乳房部分切除後の乳房内再発予防 放射線治療しないと 30% 乳房内再発放射線治療すると 10% 乳房内再発 乳房切除後のリンパ節領域 胸壁の再発予防 乳がんが 5cm 以上の大きさリンパ節転移が 4 個以上 遠隔転移への治療 外照射ガンマーナイフストロンチウム 骨転移 脳転移
49 緩和医療 がん治療 緩和医療 がん治療 緩和医療 苦痛症状 ( 痛み 気持ちの落ち込み 仕事のこと 家族のこと お金のこと など ) を解決しながら治療を継続することが重要です 医療用麻薬を使用しても廃人になることはありません
乳癌検診受診率 ( 都道府県別 ) 50
本日のまとめ 51 検診乳がんの診断治療方針治療 ( 初回治療 ) 手術 マンモグラフィーエコー 病理診断 CT MRI 骨シンチグラフィ 進行度内分泌受容体 HER2 タンパク 手術薬物療法放射線療法 乳房部分切除乳房切除センチネルリンパ節生検リンパ節郭清 薬物療法 内分泌療法月経状態化学療法 ( アンスラサイクリン系 タキサン系 ) 分子標的療法 ( 抗 HER2 療法 ) 放射線療法 局所再発を予防 緩和医療 治療をあきらめることではない
本日の詳しくお話できなかったこと 52 初回治療の副作用再発乳がんの診断再発乳がんの治療遺伝性乳がん妊娠と乳がんの関係男性乳がん緩和医療の実際医療費の問題
御清聴ありがとうございました