農業者年金 6 つのポイント 3 農業の担い手には保険料の国庫補助あり (1) 保険料の国庫補助が設けられている趣旨 農業者年金制度には 農業者の老後生活の安定及び福祉の向上 とともに 農業者の確保に資する という農業政策としての目的があります この目的を達成するよう ア若い時期から長い期間 農業の担い手として頑張る方を支援する イその中でも 農業経営が確立されずに農業所得が低い時期 ( 若い年代 ) を厚く支援する ウ家族がそろって加入する場合を支援するために 一定の要件を満たす農業の担い手に対して 保険料の国庫補助が設けられています (2) 保険料の国庫補助の要件 保険料の国庫補助は ア 60 歳までに保険料納付期間等 ( カラ期間含む ) が 20 年以上見込まれる イ農業所得 ( 配偶者 後継者の場合は支払いを受けた給料等 ) が 900 万円以下 ウ認定農業者で青色申告者など 次の 保険料の国庫補助対象者と補助額 の表の必要な要件に該当する という 3 つの要件を満たす方が 月額 2 万円のうち 1 万円から 4 千円の国庫補助 を受けることができます
保険料の国庫補助対象者と補助額 区分 1 2 3 4 必要な要件 認定農業者で青色申告者 認定就農者で青色申告者 区分 1 又は 2 の者と家族経営協定を締結し経営に参画している配偶者または後継者 ( 注 ) 認定農業者または青色申告者のいずれか一方を満たす者で 3 年以内に両方を満たすことを約束した者 国庫補助額 35 歳未満 35 歳以上 10,000 円 6,000 円 (5 割 ) (3 割 ) 10,000 円 6,000 円 (5 割 ) (3 割 ) 10,000 円 6,000 円 (5 割 ) (3 割 ) 6,000 円 4,000 円 (3 割 ) (2 割 ) 5 35 歳まで (25 歳未満の場合は 10 年以内 ) に区分 1 の者となることを約束した後継者 ( 注 ) 6,000 円 (3 割 ) - 保険料の国庫補助を受ける期間の保険料は 2 万円で固定され 加入者が負担する保険料は 2 万円から国庫補助額を差し引いた金額となります ( 注 ) 区分 3 及び区分 5 の 後継者 は経営主の直系卑属である必要があります 保険料納付期間が 20 年以上の特例 60 歳までに保険料納付期間が 20 年以上見込まれることとは 保険料を納められるのは60 歳までですから 単純には 40 歳になるまでの方でないと保険料の国庫補助は受けられなくなりますが 40 歳以上の方でも 旧農業者年金制度加入者で脱退一時金又は特例脱退一時金を受給されなかった方は 旧農業者年金制度の保険料納付済期間も新制度の保険料納付期間に合算できますので 保険料の国庫補助が受けられる場合があります 例えば 50 歳の方で 旧農業者年金制度に 10 年加入した場合には これから 10 年の保険料納付期間が見込まれ 合わせて保険料納付期間が 20 年以上となりますので この要件をクリアすることができます
保険料の国庫補助が受けられる期間は ア 35 歳未満であれば要件を満たしているすべての期間イ 35 歳以上であれば 10 年以内とされ 通算して 20 年以内となっています 保険料の国庫補助を受けられる期間が終了すると通常加入の保険料 ( 月額 2 万から6 万 7 千 ) となります 例えば 区分 1( 認定農業者で青色申告者 ) で 20 歳から加入して国庫補助を受ける場合 20 歳から 35 歳になるまでの 15 年間は1 万円の補助が 35 歳から 40 歳になるまでの 5 年間は6 千円の補助が受けられ 補助額は最高 216 万円となります なお 政策支援を受けている期間中の保険料は補助をあわせて 2 万円で固定されますが 期間終了後は通常加入 ( 通常加入への変更手続きが必要 ) に移行するため 保険料は 2 万円から 6 万 7 千円の間で千円単位で自由に設定できるようになります 20 歳加入 ( 補助対象区分 1,2,3) の場合の保険料の国庫補助 ( 金額 期間 ) 国庫補助 (5 割 10,000 円 ) 特例保険料 (5 割 10,000 円 ) 国庫補助 (3 割 6,000 円 ) 特例保険料 (7 割 14,000 円 ) 通常保険料 (20,000~67,000 円 ) 20 歳 35 歳 40 歳 60 歳 アの期間 (15 年 ) イの期間 (5 年 ) 特例保険料 10,000 円 特例保険料 14,000 円 ( 補助期間合計 20 年 ) 補助額合計 216 万円 ( 参考 1)30 歳加入の場合 30 歳 45 歳 アの期間 (5 年 ) 特例保険料 10,000 円 イの期間 (10 年 ) 特例保険料 14,000 円 ( 補助期間合計 15 年 ) 補助額合計 132 万円 ( 参考 2)39 歳加入の場合 39 歳 49 歳 イの期間 (10 年 ) 特例保険料 14,000 円 ( 補助期間合計 10 年 ) 補助額合計 72 万円
(3) 特例付加年金の受給要件 国庫補助による保険料とその運用益は 将来 農業経営から引退 ( 経営継承 ) すれば 特例付加年金として受けることができます 農業者老齢年金と特例付加年金の概念図 保険料の国庫補助 を受けない者 保険料 + 運用益 農業者老齢年金 保険料の国庫補助 国庫補助 + 運用益 経営継承 特例付加年金 を受けた者 保険料 + 運用益 農業者老齢年金 この特例付加年金を受給する要件は 以下の二つです ア保険料納付済期間が 20 年以上 次の期間の合計が 20 年以上であること ( ア ) 保険料納付済期間 ( イ ) カラ期間 ( ) ( ウ ) 旧制度の保険料納付済期間 ( エ ) 旧制度のカラ期間 カラ期間 とは 農業者年金の加入者が厚生年金の適用となるなどして農業者年金から脱退した場合に 一定の要件に該当する厚生年金の加入期間などを 年金額の算定には反映しませんが 20 年間の加入期間 に算入することができる期間です <カラ期間の例 > いずれも農業者年金の加入者が 出稼ぎで厚生年金に加入した期間 農業に従事しながら会社勤めをして ( 兼業となって ) 厚生年金に加入した期間 ( 最長 10 年 ) 農林漁業団体の常勤役員になって厚生年金に加入した期間 農業法人化して厚生年金に加入した期間 国民年金の保険料納付を免除された期間
イ経営継承 ( ア ) 農地等の権利を持っている方 対象となる農地等 1 農地 採草放牧地 2 残存耐用年数が 10 年以上の畜舎又は温室 3 残存耐用年数が 10 年未満の畜舎 温室などの農畜産物の生産に使っている施設 ( パイプを直接地面に差し込む等の簡易なビニールハウス本体は除かれます ) 権利移転等後継者又は第三者 ( 注 ) に権利の移転 設定 ( 期間 10 年以上 ) をして 農業経営から引退する後継者又は第三者 ( 注 ) に権利の移転 設定をするか 農業に使わなくする ( 売却 供用廃止 用途変更 ) かして 農業経営から引退する ( 注 ) 第三者 は 1 及び 2 と 3 では要件が異なります 1 及び 2 の第三者は 60 歳未満の経営者 農業法人 農地保有合理化法人 JA 等 3 の第三者には このような要件はありません ( イ ) 農地等の権利を持っていない方 家族経営協定の経営参画条項を変更することにより 農業経営から引退する ( 注 )( ア ) ( イ ) ともに 経営継承の時期についての年齢制限はありません 特例付加年金と経営移譲年金を併給する場合の注意点旧農業者年金に加入していた方が 経営移譲年金を受給するためには 65 歳までに経営移譲することが必要です このため 現行の農業者年金で保険料の国庫補助を受けていた方が 旧農業者年金の加入者でもあった場合 特例付加年金と経営移譲年金を併せて受給するためには 65 歳までの経営継承 ( 移譲 ) が必要となりますので 注意してください
(4) 保険料の国庫補助の活用に当たってのポイント ア 国庫補助による保険料とその運用益による年金 ( 特例付加年金 ) を受給するには 経営継承 が必要 この場合 ( ア ) 農地や農業施設の権利を持っている方の経営継承は その権利を後継者や第三者に継承 ( 移転 設定 ) する必要がありますが この経営継承の時期は 例えば 65 歳までという年齢制限はなく ご自分の体力や経営の都合に合わせた時期にすることができます このため 65 歳から農業者老齢年金を受給しながら農業を続け 65 歳以降にしかるべき時期が来た時点で 経営継承して特例付加年金を受給するという選択もできます ( イ ) 農地等の権利を持たない配偶者の経営継承は 家族経営協定を変更 ( 共同経営者 としての立場を削除 ) すればよいのです 家族経営協定と保険料の国庫補助 1 家族経営協定とは農業就業人口の 6 割は女性が占めています それにもかかわらず就業条件が不明確で 女性には利益の分配も行われない状況がみられます 家族経営協定とは 家族皆で経営方針 仕事の役割 給料 休日などについて 話し合って取り決めごとを書面にします 2 保険料の国庫補助を受けるための要件 経営主 ( 認定農業者又は認定就農者でかつ青色申告者 ) と その配偶者又は後継者 が 下記 3 の内容を定めた家族経営協定を締結していることです 3 保険料の国庫補助を受けるために家族経営協定に盛り込むべき事項 1 農業経営に関する基本的事項 ( 規模 生産方式 経営管理の方法 農業従事の態 様その他 ) についてその配偶者又は後継者の合意に基づいて決定されること 2 農業経営から生じる収益が 経営主とその配偶者又は後継者の双方に帰属するこ と 3 将来の経営継承について 経営主とその配偶者又は後継者の合意により行うこと
( ウ ) 将来 経営継承ができなかった場合には 国庫補助による保険料とその運用益による年金 ( 特例付加年金 ) は受給できなくなりますが 自分が掛けた保険料とその運用益による年金 ( 農業者老齢年金 ) は 無条件で 65 歳から受給できます イ 20 年以上加入 できること この場合 ( ア ) 旧制度 ( 平成 13 年 12 月末までの加入 ) に加入されていない方は 現行制度への加入を 40 歳の誕生月 ( ただし 各月 1 日生まれは誕生月の前月 ) までにする必要があります ( イ ) 旧制度に加入されていた方で 脱退一時金又は特例脱退一時金を受給してい ない方は 旧制度の加入期間も現行制度の加入期間に合算できます ( ウ ) 35 歳未満の方は 35 歳になるまでの期間すべてが国庫補助の対象になり 35 歳以上の方でも 10 年間は補助対象になります ( なお 両方の期間を通算して 20 年以内 ) つまり 若いうちに加入した方が補助を長く受けることができます ( エ ) 60 歳までに 20 年間の加入期間 ( カラ期間を含む ) が実現できなかった場合には 国庫補助による保険料とその運用益による年金 ( 特例付加年金 ) は受給できなくなりますが 自分が掛けた保険料とその運用益による年金 ( 農業者老齢年金 ) は 無条件で 65 歳から受給できます
ウ保険料の国庫補助を受ける期間は 自分の支払う保険料と国庫補助による保険料を合わせて月額 2 万円を超えることはできない この場合 ( ア ) 保険料の国庫補助対象期間が過ぎるか 国庫補助を受けることを選択しなく なった後に 2 万円以上の保険料を選択できることとなります ( イ ) 保険料の国庫補助を選択する期間が短くても 20 年加入要件や経営継承な どの要件を満たしていれば 国庫補助による保険料とその運用益による年金 ( 特例付加年金 ) は受給できます エ同一家族 ( 経営 ) 内で 要件を満たせば何人でも補助の対象になる この場合 農業所得 900 万円以下という所得の要件は ( ア ) 経営主は申告する農業所得の金額 ( イ ) 配偶者や後継者の方は 経営主から支払われた給料等の金額で判断すること となります つまり その経営全体の所得ではなく それぞれの所得が 900 万円以下であれば良いということです 保険料の国庫補助は 一つの経営で要件を満たせば何人でも受けられます! 最近は 配偶者や後継者の方が経営主と家族経 営協定を締結して保険料の国庫補助を受けられ る方が増えています!