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Transcription:

東京港臨港道路南北線 ~ 沈埋函製作の施工管理について ~ 髙宮一真 関東地方整備局東京港湾事務所第一建設管理官室 ( 136-0082 東京都江東区新木場 1-6-25) 国際コンテナ戦略港湾である東京港は多数の貨物が取り扱われており, コンテナ物流の幹線道路である第二航路海底トンネルの交通混雑が頻発している. また, 新たな国際海上コンテナターミナルの整備により更なる周辺交通量の増大が予想されることから, 安定的な物流を確保するため, 中央防波堤地区と有明地区を結ぶ延長約 2.5 キロメートルの臨港道路南北線が計画された. 沈埋トンネル工法が採用され,2019 年度内工事完成を目指し現在工事を実施している ( 図 -1 参照 ). 本事業では沈埋函鋼殻製作 えい航 コンクリート打設までに取り組んだ施工管理について述べる. キーワード臨港道路, 沈埋トンネル, 浮遊打設 施工管理 1. はじめに 東京港臨港道路南北線事業は, 鋼殻とコンクリートで製作した沈埋函を海底に沈設して繋げる沈埋トンネル工法を採用しており,2016 年から施工を行っている. 沈埋トンネル工法とはまず造船ドックにて鋼板を用い 沈埋函の骨組みとなる鋼殻を製作する. その後鋼殻にコンクリートを打設することで一体化させ, トンネル築造場所に沈設させる工法である. 同規模の沈埋トンネルであれば通常 8 年から 10 年程度かけて整備されているが, 2020 年に開催される東京オリンピック パラリンピックの馬術やボート カヌー競技の会場に中央防波堤地区が選定され, 現状では物流関係車両とオリパラ輸送車両の輻輳により安定した物流機能が確保できないことから, 本事業を約 4 年で完成させる計画である. そこで工程を短縮させるために, 沈埋函の構造について最も函体製作工期が短い鋼殻内部にコンクリートを充填させるフルサンドイッチ構造 ( 図 -2 参照 ) を採用した. また, 国内最長である長さ 134m の沈埋函を 7 函製作する ( 図 -3 および図 -4 参照 ) が, 東京湾外で製作し沈設場所まで沈埋函を安全に輸送するための台船が国内には存在しないため, 東京湾内において沈埋函を製作可能なドックを選定した. 上記のとおり, 短期間で施工を行いながらも品質を確 1 保するため, 沈埋函製作工程の中で鋼殻製作からコンクリート打設まで様々な工夫をしながら施工管理を行った. 図 -1 東京港臨港道路南北線整備位置

2. 沈埋函鋼殻製作における施工管理 図 -2 フルサンドイッチ構造図 ( 鋼殻断面写真 ) 本事業は海底部に 7 函の沈埋函を沈設する. 沈設順序は 1 2 3 4 5 7 6( 号函 ) を予定しているが, 地震動等に伴う変形に追従するために構造が複雑な 1 号函及び 2 号函に先行して 3 号函から鋼殻製作を開始した. 3 号函の鋼殻製作は横浜本牧ドックにて行ったが, ドックの使用可能期間の制約を受け, 2016 年 7 月 ~12 月の 6 か月間で行わなければならなかった. そこで鋼殻を 80 ブロックに分割して全国 9 カ所の工場でブロック製作を開始し, それらを横浜本牧ドックに輸送して大組立製作を行った. ブロック製作が全国に点在することもあり, 全体工程を踏まえながら各工場の製作工場の工程管理や品質管理を確実に行う必要があった. その中で施工管理の面で以下の工夫を行った. (1) 実寸大の模型を用いた溶接確認鋼殻の板厚が 8mm と非常に薄いため, 溶接時に歪みが生じやすかった. そこで全国のブロック製作工場の担当者を横浜本牧ドックに集め, 事前に製作していた実寸大模型を使用し, 溶接歪の修正方法を確認するなど研修会を行った. その結果, 全国の製作担当者が共通認識を持つことができ, 工場ごとによるブロックの品質もばらつくことなく製作することができた. 図 -3 沈埋函規模イメージ図 (2) 作業環境の工夫大組立製作を 7 月から開始したが, 夏の日中は鋼殻が熱を吸収し, 鋼殻内部の温度が 50 ~60 まで上昇する. 図 -4 南北線平面 縦断イメージ図 2

そのため, 非常に作業効率が悪かった. そこで作業時の環境を考慮し, 鋼殻内部の温度が上昇する昼間は各ブロックの接続やブロック間の仮溶接を行い, 鋼殻内部の温度が低下した夜間に鋼殻内の本溶接を行った. また, 昼間においてはスポットクーラーの設置や冷却ファン付き作業着の着用 ( 写真 -1 参照 ) など熱中症対策も併せて行い, 作業しやすい環境づくりに努めた. その結果, 作業環境を向上させたことで溶接作業者の負担を軽減させ 溶接能力低下による品質低下を防止することができた. 写真 -3 鋼殻製作完了 ( 出渠準備状況 ) 3. 沈埋函鋼殻えい航における施工管理 写真 -1 冷却ファン付き作業着着用状況 写真 -2 大組立製作状況 3 号函鋼殻製作ドックでは使用期間の制約があったため, 別の場所での鋼殻内コンクリート打設を計画した. そのため鋼殻の喫水が約 7.5m とほとんど浮上している状態で, 横浜本牧ドックからコンクリート打設場所である千葉県船橋市の京葉食品コンビナート岸壁までのえい航を行う必要があった. そこで以下の工夫を行った. (1) えい航時の安全対策沈埋函のえい航は航行船舶が多い東京湾内となるため, 一般船舶の航行の支障にならないよう安全にえい航する必要があった. そこで海上保安部と協議し, 一般船舶の航行が昼間と比較して少ない夜間から早朝にかけてえい航を行うよう時間調整を行った. その結果,20 時に横浜本牧ドックを出渠し, えい航距離約 24 マイル ( 約 45 キロメートル ) を 2~3 ノットというゆっくりとした速さでえい航しながら, 翌朝 6 時に京葉食品コンビナート岸壁に係留した. また, えい航中は曳船および安全監視船をそれぞれ 4 隻ずつ配備 ( 図 -5 参照 ) したことで周辺航行船舶に注意喚起を行うとともに, 夜間のえい航ということで沈埋函 図 -5 沈埋函 (3 号函 ) えい航姿図 3

函上にバルーン灯光器, 安全監視や曳船に船外灯を設置することで航行船舶が視認しやすいようにするなど, 航行する一般船舶に対して安全対策を行った結果, 係留完了まで安全にえい航することができた.( 写真 -4 参照 ) 写真 -4 鋼殻えい航状況 4. 沈埋函鋼殻コンクリート打設における施工管理 横浜本牧ドックからえい航して京葉食品コンビナート岸壁に係留させた後, 沈埋函を海上に浮かせた状態で陸上からポンプ車等を使用し, 鋼殻内部にコンクリートを充填させる浮遊打設方法 ( 写真 -5 参照 ) を本事業では採用したが, その際にも以下の工夫を行った. 初期硬化時に振動を与えると容易に形状が変化したり, 計量誤差によって品質が大きく変化するなど厳しい品質管理が必要となる. そこで交通渋滞予測システムを利用し,3 プラントから供給されるコンクリートについてプラント出場から現場搬入までの時間を確認することで品質にばらつきが出ないようにする. また, 現場搬入時に通常 150 m3ごとに行うスランプフロー試験を 75 m3ごとに行う ( 写真 -6 参照 ) ことで, 品質確認を密に行い, 品質不良のコンクリートを打設することがないよう管理した. (2) 鋼殻内へのコンクリート充填上記のとおり高流動コンクリートは非常に流動性が高く, 鋼殻内の隅々まで自己充填が可能である. しかし, 鋼殻内部に充填するため不可視部分が存在するとともに充填具合の確認が行いにくい. そこで各打設箇所の頂部鋼板から 200mm の高さまで充填されると, 打設速度を半分に設定し, ゆっくりと充填が進行するよう施工を行った. また, 空気抜き孔にアクリルパイプを設置し, 30cm 以上コンクリートが立ち上がったことを目視確認することで充填と判断するよう打設管理を行った ( 写真 -7 参照 ) 結果, 中詰めコンクリート固化後の打音検査において不可視部分にもしっかり充填されていることが確認できた. (1) 高流動コンクリートの品質管理本事業の沈埋函構造はフルサンドイッチ構造のため, 打設孔より鋼殻内部にコンクリートを流し込むが, 孔径が非常に小さく締め固めを行うことができない. そこで締め固めが必要な通常のコンクリートではなく, 締め固めが不要で施工できる高流動コンクリートを採用した. 高流動コンクリートとは, 材料分離抵抗性を失うことなく流動性を著しく高めたコンクリートのことであるが, 写真 -6 スランプフロー試験状況 写真 -5 高流動コンクリート打設状況 4 写真 -7 高流動コンクリート立ち上がり状況

5. 考察および今後の課題 沈埋函鋼殻製作においては, ドックの使用期間の制約により工程を遅延することができず, 夏の暑い時期に各工場で製作されたブロックを大組立するなど作業条件が厳しい中であった. しかし長さ 134m の出来形許容値が ±21mm に対して ±10mm 以下の高い精度で完成させることができた. これをケーススタディとして残り 6 函の製作も同様に高い精度で完成させることが求められる. 沈埋函鋼殻えい航においては, えい航時間の調整等の安全対策を行い, 鋼殻の損傷なく次の作業場所までえい航することができた. 今後も沈設まで複数回えい航を行う必要があること, さらに続いて 6 函が同様となることから最後の沈埋函が沈設場所にえい航されるまでは引き続き安全および鋼殻の損傷に留意していかなければならない. 沈埋函鋼殻コンクリート打設においては, 高流動コンクリートの品質確保および充填具合の確認が非常に重要であったが, 品質管理および打設方法の遵守を厳しく行った. 今後の工程では夏場の打設も発生することから一層厳しい品質管理が求められる. 今後も沈埋函の製作はもちろん, 接続部や沈設場所の 施工も進み, 完成に向けて日々確実に品質出来形および施工管理を行っていく必要がある. 特に沈埋函と陸上トンネルを接続するニューマチックケーソンおよび最初の沈設函である 1 号函を精度よく沈下 沈設させることが非常に重要となる. 6. おわりに 本事業は 2019 年度末の工事完成を目指し, 従来の沈埋トンネル工法よりも短期間で施工を行っている. その中でも品質と安全の確保を第一とし, 無事故 無災害を目標に確実な施工を行っていく. 参考文献 1) 日本埋立浚渫協会 : 沈埋トンネル工法と施工事例 2) 日本コンクリート工学会 : 構造物 建造物に見られる不易流 行 Vol.51 No.1P116-119 最近の沈埋トンネル工法と充てんコンクリートの浮遊打設に ついて 3) 沿岸技術研究センター : 沿岸センター研究論文集 Vol.1 P57-60 沈埋トンネルに関する技術研究 5