2. 新港区の複合一貫輸送ターミナル改良事業の概要 新港区では 主要な課題として次の (1)~(3) の 3 点が挙げられる (1) 既存の矢板式岸壁が供用開始から 40 年以上経過しており 施設の老朽化が進み倒壊の危険性がある (2) 貨物の増大や貨物輸送形態の変化に伴いシャーシやトラック等による

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目次 1. 事業概要 (1) 新潟港の概要 1 (2) 事業の目的 2 (3) 整備内容 3 2. 事業の効果の発現状況 (1) 便益の抽出 4 (2) 便益計測の考え方 5 (3) その他の効果 8 (4) 費用便益分析結果 9 3. 社会経済情勢の変化 事後評価結果 対応

目次 1. 大阪港の概要 1 大阪港の概要 大阪港の位置 大阪港の取扱貨物量 外貿コンテナ貨物の取扱状況 大阪港の再編計画 2. 対象事業の概要 5 整備目的 事業の主な経緯 整備対象施設の概要 事後評価に至る経緯 3. 費用対効果分析 7 便益項目の抽出 需要の推計 便益計測 荷主の輸送コストの削

目次 1. 事業の概要 1 (1) 事業の目的 1 (2) 事業の経緯 5 (3) 事業の概要 6 2. 投資額及び整備期間 7 (1) 投資額 ( 事業費 ) 7 (2) コスト縮減結果 7 (3) 整備期間 7 3. 事業の必要性等 8 (1) 本整備事業による効果 8 (2) 定量的な効果 9

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残存耐力有無の閾値となる変形率に対象施設の桟橋高さを乗じることにより, 残留水平 変位に関する残存耐力評価指標を予め算出する. 算出した残存耐力評価指標と被災後の外 観調査で得られる施設天端の残留水平変位と比較することにより, 速やかに鋼部材の応力 状態の概要を把握することができる. dir = 残


別紙 Ⅰ 対象事業の概要環境影響評価法 ( 平成 9 年法律第 81 号 以下 法 という ) 第 15 条に基づき 事業者である国土交通省関東地方整備局及び横浜市から 平成 30 年 6 月 22 日に送付のあった環境影響評価準備書 ( 以下 準備書 という ) の概要は次のとおりである 1 事業

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目 次 1. 事業の概要 1) 事業の目的 P 1 2) 概要及び進捗状況 P 2 2. 事業の効果 1) 効果項目の抽出と便益の計測 P 3 2) 便益として計測する効果 1 陸上輸送コスト削減便益 P 4 2 滞船コスト削減便益 P 5 3) その他の効果 1 排出ガス発生の抑制 P 6 2 沿

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プレゼンテーションタイトル

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竹富南航路整備事業 再評価資料 平成 26 年 12 月 10 日 沖縄総合事務局開発建設部

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本事例の注意点 この工法比較検討の事例は 平成 29 年 8 月 29 日付のNETIS 検索データを用いています この工法比較検討の事例は キーワード検索 と 工種検索 を用いています その理由は キーワード検索のみでは 検索漏れ検索漏れが考えられるため 工種分類でも検索を行っています NETIS

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平成 28 年度 室蘭港における控えアンカー鋼管矢板構造による岸壁改良 室蘭開発建設部室蘭港湾事務所第 1 工務課 石橋克典髙野池僚岡元節雄 室蘭港築地地区西ふ頭は 港奥に位置し静穏が確保されているため 荷役作業とともに休憩のニーズが高く 利用の頻度が高い岸壁である 西 3 号ふ頭は昭和 38 年に

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資料 2-2(1) 小樽港本港地区 臨港道路整備事業 再評価原案準備書説明資料 平成 21 年度北海道開発局

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6) その他 :1 月公表で追加 ( 本官 ) 政府調達協定対象 1-3 工 事 名 : 大阪港北港南地区航路 (-16m) 附帯施設護岸 (1) 基礎等工事 ( 第 2 工区 ) 2) 工事場所 : 大阪市此花区夢洲東地先 3) 工 期 : 約 9 ヶ月 4) 工事概要 : 基礎工 1 式 被覆工

目次 1. 事業の概要 1 (1) 事業の目的 1 (2) 事業の経緯 6 (3) 事業の概要 7 2. 投資額及び整備期間 8 (1) 投資額 ( 事業費 ) 8 (2) コスト縮減結果 9 (4) 整備期間 9 3. 事業の必要性等 10 (1) 本整備事業による効果 10 (2) 定量的な効果

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1-2 工事名 : 大阪港北港南地区航路 (-16m) 附帯施設護岸 (1) 被覆工事 ( 第 2 工区 ) 2) 工事場所 : 堺市堺区匠町 3 番地先 3) 工期 : 約 8ヶ月 4) 工事概要 : 被覆 根固工 ( 被覆ブロック製作 ) 1 式 ( 工事発注規模 )1 億 5,000 万円以上

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委員会資料

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日本海側拠点港の対象 < 対象港湾 > 日本海側に存在する国際拠点港湾及び重要港湾 26 港 < 対象機能 > 1. 輸送モード 国際海上コンテナ 国際フェリー 国際 RORO 船 外航クルーズ( 定点クルーズ 背後観光地クルーズ ) 国際定期旅客 2. 貨物 原木 その他の貨物 資料 : 国土交通

目次 課題 1 課題 2 課題 3 課題 4 課題 5 課題 6 課題 7 課題 8 : 効果的な誘致活動港湾貨物とクルーズ船との調整 : クルーズ船の効果的な受入体制 : : クルーズ船旅行客に対する観光情報サービスの適切な提供クルーズ船受入に対する航行安全性の確認 : CIQ 手続き時の旅客負荷

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調査の目的 概要 1. 調査の目的 南海トラフ巨大地震の発生時にも円滑に支援物資輸送を行うため 中国 四国 九州地域における広域連携を通じ 鉄道 海運 ( 船舶 ) トラックなど多様な輸送モードの活用による支援物資物流システムの構築を目的として行ったもの 国 ( 中国 四国 九州の各運輸局 ) が主

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(3) 事業を巡る社会経済情勢等の変化 伯方港木浦地区に係留する小型船の隻数について 漁船の数は若干減少しているものの 小型船係留施設の充足率は低水準で変わらず 係留施設が不足している状況に変わりはない 4. 事業の進捗状況及び進捗の見込み ( うち用地費 ) 23 末投資事業費 (1) 事業の進捗

を誘発すると共に 家屋等の災害廃棄物とともに港内外水域に漂流 沈没することとなり 航路や泊地等の水域施設が使用不可能な状況となった また 押し波 引き波により 航路や泊地等の水域施設において 洗掘あるいは埋没が発生し 洗掘された箇所では 防波堤の転倒等が誘発され 埋没した箇所では 計画水深の確保のた

議案内容:新潟港港湾計画の改訂について

数値目標 事業開始前 ( 現時点 ) 平成 28 年度 (1 年目 ) 平成 29 年度 (2 年目 ) 平成 30 年度 (3 年目 ) 港湾取扱貨物量 556 万トン 4 万トン 0 万トン 20 万トン 観光入込客数 2,899.4 万人回 -9.5 万人回 1.9 万人回 1.9 万人回 7

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4 予測結果では 海側で少し環境目標値を超えているのですけれども 対岸の東海市のところは 新日鐵住金の工場等でしょうか 東海市側も臨港地区になりまして ご指摘の通り新日鐵住金等があるエリアです なお 対岸までの距離は約 1km ですが 住宅地までは約 3.5km です 5 煙源が地面に近く 施工区域

近畿地方の港湾における 地震 津波対策の基本方針 平成 24 年 11 月 19 日 近畿地方の港湾における地震 津波対策検討会議

平成 20 年 12 いばらきの港の概要 茨城港 (Ibaraki Port) 港 常陸那珂港 洗港を統合し 港区 (HitachiDistrict) 茨城港がスタート 茨城港 完成 動 バラ貨物等の多様な物流 需要に対応する港 常陸那珂港区 (Hitachinaka District) 島港 北関

東南アジア航路 韓中航路 日韓航路等において スペース交換 航路の合理化 新航路の共同開設などについて加盟船社同士が協調することで 競争力の回復を図ることを目的としている KSP は 2017 年 11 月の第 1 弾では東南アジア航路で 3 隻 釜山 - 博多 門司航路で 4 隻の撤退 2018

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(3) 技術開発項目 長周期波の解明と対策 沿岸 漁場の高度利用 ライフサイクルコストに基づく施設整備と診断技術 自然災害( 流氷 地震 津波など ) に強いみなとづくり 等 30 項目 技術開発項目として 30 項目の中から 今後 特に重点的 積極的に取り組んでいく必要のある技術開発項目として 1

災害想定 内閣府中央防災会議資料 地域防災計画等 港湾施設の脆弱性評価 被害想定 応急復旧目標の設定 船社 荷主 船舶代理店へのヒヤリング ( 輸送需要 復旧期間の想定 ) 復旧目標期間 優先順位の設定 ボトルネック ( 阻害要因 ) の抽出 必要な資源( ヒト, モノ, 情報 ) 復旧期間等 ある

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保 証 最 低 基 準

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既存構造物がある場合の基礎地盤の液状化対策案 国土交通省の 都市防災推進事業 ( 市街化液状化対策事業 ) と連動して住宅地域を囲む周辺道路 下水 ( ライフライン ) の液状化対策と協同して住宅地の液状化対策を実施する 対策工法 WG ( 加倉井 中井 秋葉 田村 畑中 ) 都市防災推進事業 (

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平成 28 年度補正予算和歌山県における事業計画総括表 ( 単位 : 千円 ) 事業区分 負担基本額 地方負担額 河川関係 1,382, ,040 道路関係 3,651, ,314 公園関係 - - 港湾関係 ( 港湾海岸事業を含む ) 445, ,550 空港関


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大阪湾広域臨海環境整備センターは、昭和57年3月に設立されて以来、30年余りにわたって、全国で唯一の府県域を超えた広域的な廃棄物の適正な最終処分を海面埋立てにより行う「フェニックス事業」を地方公共団体及び港湾管理者と一体となって推進してきたところであり

で 四国南西部の 防災拠点港 に位置づけられており 災害時の復旧活動や復興活動において 海上輸送による十分な機能が発揮できるよう求められている 大島漁港においても 離島における基地港としての施設整備が必要不可欠である このような背景から地域再生計画においては 八幡浜港と大島漁港を安全 安心な港に整備

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伏木富山港における大型クルーズ船受入機能強化等 基盤整備調査 調査成果報告書 別添 3 調査主体 富山県 対象地域 富山県高岡市 対象となる基盤整備分野 港湾. 調査の背景と目的伏木富山港は 平成 3 年 月に日本海側拠点港の 外航クルーズ ( 背後観光地クルーズ ) に選定されたほか その他の機能

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[ 参考 ] 地震以降の神戸発着の旅客 フェリーの輸送実績では 既存航路について 高速船やフェリーの発着港シフト 神戸抜港などがあった [ 神戸港復興記録 ~ 阪神 淡路大震災を乗り越えて ~ 神戸市港湾整備局 (1997/5),p.65] 04) 海外では 船会社が神戸港向け ( 神戸港経由を含む

目 次 1. 事業の目的 概要 1 2. 事業目的の達成状況 5 3. 今後の事業へ活かすレッスン 8 4. まとめ 9

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図 維持管理の流れと診断の位置付け 1) 22 22

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目 次 1. 和歌山下津港の概要 1 2. 対象事業の概要 2 3. 事業の必要性 3 4. 今後の事業進捗の見込み コスト縮減や代替案立案等の可能性 対応方針 ( 原案 ) 13

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工期 : 約 8 ヶ月 約 11 ヶ月 1-3 工事名 : 大阪港北港南地区岸壁 (-16m)(C12 延伸 ) 埋立工事 ( 第 2 工区 ) 2) 工事場所 : 大阪市此花区夢洲東 1 丁目地先 3) 工期 : 約 9ヶ月 4) 工事概要 : 埋立工 1 式 ( 工事発注規模 )2 億 5,00

秋田県内の重要港湾 秋田港 船川港 能代港の整備につきましては 平素よりご配慮を賜り厚く御礼申しあげます 秋田では 経済発展著しい日本海対岸や東南アジア諸国の成長を取り込み地方創生を実現するため 環日本海の経済交流を推進し 諸外国との貿易拡大に地元企業と行政が一体となって取り組んでおります これを支


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平成 30 年度香川県内の主要事業 一般国道 11 号国分寺町役場北交差点改良 河川工作物関連応急対策事業土器川土器川潮止堰河川改修事業土器川土器 飯野箇所 一般国道 32 号成合大橋 ( 下り ) 耐震補強 高松港朝日地区国際物流ターミナルの整備 備讃瀬戸航路航路の埋没浚渫 高松環状道路 高松空港

2. 沈埋函鋼殻製作における施工管理 図 -2 フルサンドイッチ構造図 ( 鋼殻断面写真 ) 本事業は海底部に 7 函の沈埋函を沈設する. 沈設順序は ( 号函 ) を予定しているが, 地震動等に伴う変形に追従するために構造が複雑な 1 号函及び 2 号函に先行して 3 号

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鹿児島港耐震強化岸壁の整備について ~ 全国初 スパッド付き深層混合処理船を活用したシラス地盤改良 ~ 鹿児島港湾 空港整備事務所副所長 今林章二 企画調整課 黒岩寛 工務課 林田威将 1. はじめに鹿児島港は 桜島を擁する錦江湾の中程に位置し 東洋のナポリとも称され我が国有数の景観に囲まれた港湾であり 昭和 26 年 重要港湾に指定されている 同港は古来より旅客 交通 物資流通 あるいは都市開発の各般にわたり鹿児島市を中心とした背後圏の拠点港湾として また国内外クルーズ船が多数寄港する南九州の中核である鹿児島県の海の玄関口として発展している 特に 同港を発着とする県内離島 沖縄地方を結ぶ航路は 県内離島 沖縄の住民にとって重要な海上交通手段であるとともに 生活必需品 主要物資 郵便物等の輸送を行っていることから主要な生活航路となっている その中でも同港新港区の複合一貫輸送ターミナルは 奄美 沖縄地方への貨物量の 7 割を取り扱っており 人流 物流の拠点として重要な役割を果たしている 本報告では この新港区の複合一貫輸送ターミナル改良事業 ( 以下 本事業という ) の概要 本事業で整備した耐震強化岸壁 (-9m) 改良工事 ( 以下 本工事という ) の概要並びに 定期フェリーが輻輳する狭隘な水域での航行安全に対応した新型作業船の導入効果や鹿児島特有のシラス地盤の改良に対する施工上の課題と解決策への取り組みについて報告するものである 本港区 新港区 写真 -1 鹿児島港本港区 新港区

2. 新港区の複合一貫輸送ターミナル改良事業の概要 新港区では 主要な課題として次の (1)~(3) の 3 点が挙げられる (1) 既存の矢板式岸壁が供用開始から 40 年以上経過しており 施設の老朽化が進み倒壊の危険性がある (2) 貨物の増大や貨物輸送形態の変化に伴いシャーシやトラック等による輸送が増加していることから 背後の荷さばき地や駐車場等のふ頭用地の不足が深刻である また フェリー乗降客と荷役機械が輻輳しており 荷役効率が悪く 過去に荷役機械による人身事故が発生していることから 安全確保についても懸念されている (3) 鹿児島港は 県人口の約 3 割が集中する県都鹿児島市に位置し 県内離島及び奄美諸島を経由する沖縄への定期航路 ( 人流 物流 ) の基地港であることから 大規模地震時における交易機能 ( 生活物資輸送 ) を持続させるために耐震強化岸壁が必要である 写真 -2 既存岸壁の老朽化 ( 整備前 ) 写真 -3 狭隘なふ頭用地における荷役状況 ( 整備前 ) これらの課題に対応するため 本事業として 既存の岸壁 2 バースを海側に 30m 拡張 ( 前出し ) して新たな岸壁を整備することで 老朽化対策とふ頭用地を確保し その内 1 バースは大規模地震発生時において緊急物資輸送対応のため 10,000GT 級 RORO 船が着岸可能な水深 9m の耐震強化岸壁として整備するものである 写真 -4 乗降客と荷役機械の輻輳 ( 整備前 ) 完成イメージ 埠頭用地 2014 年 3 月 15 日一部供用 耐震強化岸壁 (-9.0m) 2014 年 3 月 15 日供用 貨物上屋 2014 年 3 月 15 日一部供用 旅客ターミナル 2014 年 3 月 15 日供用 航路 泊地 (-9.0m) 整備中 岸壁 (-7.5m)( 改良 ) 整備中 写真 -5 鹿児島港新港区複合一貫輸送ターミナル改良事業の実施状況 (H27.4) と完成イメージ

3. 耐震強化岸壁 (-9m) 改良工事の概要 本工事の構造形式 工法及び施工フローを以下に述べる 3.1 構造形式 工法の検討新港区における耐震強化岸壁の構造形式は 基本設計の結果から要求性能を満たし経済的な重力式岸壁を採用した 重力式岸壁の基本設計では この耐震強化岸壁に求める要求性能を大規模地震 ( レベル2 地震 ) 発生時に早期に利用可能な復旧ができる性能として許容変位量を 200 cm程度とした レベル 2 地震動に対する動的解析 (FLIP) を行った結果 地盤改良無しの残留変位量が 300 cm以上になったことから 地盤改良の必要が生じた そこで 最適な地盤改良工法を検討した結果 深層混合処理工法を採用した 3.2 施工フロー施工フローを以下に述べる なお 以下の1から11までの数字は図 -1 の施工フローチャートと図 -2 の耐震強化岸壁 (-9m) 標準断面図に記載している数字に対応している 1 地盤改良工スパッド付き深層混合処理船を用いて地盤改良を行い 本岸壁に必要な強度を持つ地盤を造る 2 床掘工硬土盤グラブ浚渫船を用いて 地盤改良によって盛り上がり固化した土砂を取り除く 3 基礎捨石工改良した地盤上に捨て石を投入し ケーソンの基礎マウンドを造る 新港区 国 谷山二区 1 地盤改良工 4 ケーソン製作 ( 陸上 ) 10 11 2 床堀工 3 基礎捨石工 6 ケーソン運搬 ( 海上 ) 5 ケーソン進水 45678 7ケーソン据付 8 中詰工 鹿児島県 建築 ( 旅客ターミナル ) 建築 ( 貨物上屋 ) 23 9 9 裏込工 ボーディングブリッジ 1 10 上部工 付属工 道路 駐車場等整備 11 舗装工 - 凡例 - 国 鹿児島県 供用 ( 平成 26 年 3 月 ) 図 -1 施工フローチャート 図 -2 耐震強化岸壁 (-9m) 標準断面図

4 5 6 7 ケーソン製作 進水 運搬 据付本工事に使用するケーソン ( 重さ約 1,600t) を鹿児島港谷山二区の陸上ヤードで製作し 起重機船 (2,200t 吊 ) を用いて海上に進水させる 進水したケーソンは新港区の現場まで引船を使って約 15 kmの距離を 4 時間掛けて曳航し 現場で起重機船 (120t 吊 ) を用いてケーソン全 13 函の据付を行う 8 中詰工ケーソン内部に中詰め材 (20kN/m 3 ) を投入後 蓋コンクリートを打設する 9 裏込工据付けたケーソンから既存岸壁の間にかけて裏込雑石を投入する 10 上部工 付属工上部コンクリートの打設 係船柱 防舷材 車止め等の取付けを行う 11 舗装工コンクリート舗装を行い エプロンを施工する 4. 耐震強化岸壁 (-9m) 改良工事の技術的な課題と解決策今回の地盤改良は 軟弱地盤にセメント等の安定材を混合攪拌し 現地盤を化学的に固結させる深層混合処理工法を採用し 海上施工となることから 深層混合処理船 ( 写真 -6) を採用している 本工事を施工する新港区は湾内の水域が狭い上に航行船舶が頻繁に輻輳するため 航行船舶への配慮が必要である また シラス層はせん断抵抗が大きく改良厚さが 20m 以上あり 改良が困難であることから これらの課題と解決策について以下に述べる 写真 -6 スパッド付き深層混合処理船 4.1 全国初のスパッド付き深層混合処理船の導入新港区の湾内は水域が狭く 定期フェリーや貨物船等の航行船舶が頻繁に輻輳し また 今回の施工範囲が港口付近にあることから 往来する船舶から退避行動を取りつつ作業を進めなければならないため 非常に困難な現場条件となった 図 -3 のとおり 深層混合処理船のアンカーワイヤーの展張範囲が定期フェリーの入出港の妨げとなり 作業船の退避に時間を要するなど ( 退避対象船舶約 3 隻 /12h) 十分な作業時間が取れない そこで 作業船の退避時間を短くするため 全国図 -3 作業状況図 ( 新港区 ) 初となるスパッドとアンカーワイヤーを併用したスパッド式深層混合処理船を採用した 図 -4のとおり 定期フェリー等の入出港の妨げとならないよう移動時以外はスパッド付き深層混合処理船のアンカーワイヤーを緩めて海底に自沈させ 柱状のスパッドを海底に打ち込み船体を固定し施工した

スパッドを深層混合処理船に取り入れたことにより 航跡波等による作業船や掘削ビットの動揺を抑え 約 30mを超える深度まで効率的かつ精度の高い施工を可能とした 作業船を移動させる際には 独自の船体位置管理システムを使って作業船 施工範囲 隣接港口航路の位置関係をリアルタイムに監視しながら 緩めていたアンカーワイヤーを引張することで移動し 施工時の移動時間及び直近の岸壁から定期フェリーが入出港する際の退避時間の短縮を図るなど 作業時間の確保に努めた また 定期フェリー等の運航に支障がないよう アンカー設置後 ( 図 -4) の水深 ( アンカー天端高 ) と位置を正確に把握し 関係各社 ( 海域利用社 ) に事前周知した スパッド スパッド 図 -4 スパッドとアンカーワイヤーの併用 写真 -7 船体固定用スパッド 4.2 シラス層に対応する深層混合処理装置の改良地盤改良するシラス層は厚さが20m 以上あり N 値が 10 前後で角張ったガラス粒子を多く含むことからせん断抵抗力が大きいため 掘削時の貫入 攪拌 引抜障害が発生する可能性が高い 改良前 改良後 そこで 写真 -8,9のとおり せん断抵抗が大きいシ 写真 -8 超鋼製掘削ビット増設 ラス地盤の貫入 攪拌 引抜障害に対応するため 攪拌 翼の形状変更 ( 引抜不能を防止するため攪拌翼端部に上 向きのビットの設置 ) ウォータージェットによる貫入 補助 超硬性掘削ビットの増設 ( 攪拌軸 1 本あたり7 基を 9 基 ) を行った また 層厚が20mを超えるシラス地盤では 施工の際 攪拌翼の摩耗が激しく 超硬性の鋼製部材が1 週間に 20mmも摩耗し 修理や部品交換の時間が作業工程を圧迫 した 作業工程を回復するため 定期フェリー等の入出港に伴う本船の退避時間 (1~2 時間程度 / 回 最大 4 回 / 写真 -9 攪拌翼の形状変更 日 ) を活用し アタッチメントの摩耗 損壊箇所の溶接補強と部品交換を行い 作業効率 向上を図った

5. おわりに鹿児島港新港区は 離島 沖縄向け定期航路が就航し 離島 沖縄の生活を支えるターミナルを有しており 利用頻度も高く ユーザーから耐震強化岸壁 (-9m) 改良工事の早期完成を求められ 平成 23 年に現地着手し 平成 26 年 3 月に供用した 工事期間の制約を受ける中 今回 スパット付き深層混合処理船の投入と掘削ビット等アタッチメントの改良により早期に完了することができた 現在 耐震強化岸壁 (-9m) に隣接する岸壁 (-7.5m)( 改良 ) の工事を進めているが 港口の可航エリア内で浚渫船と定期フェリー等が輻輳していることから 上記の航行安全対策 ( 退避 アンカー位置情報等 ) に留意しつつ ユーザーの早期完成に応えられるよう 作業を進めていきたい 整備箇所写真 -10-10 整備後の耐震強化岸壁 (-9m) 写真 -11 岸壁 (-7.5m)( 改良 ) 工事の施工状況