程度であり, 紫外線の影響は決して軽視できないものである. アスファルト系舗装の破損を考えてみると, 塑性変形や疲労ひび割ればかりでなく, 表面縦ひび割れ ( 所謂, わだち割れ ) や排水性舗装の骨材飛散等の, 新たな形態の損傷が問題視される事が多くなってきている. わだち割れの要因としては, 荷

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土木学会舗装工学論文集第 8 巻 2003 年 12 月 アスファルト材料の紫外線劣化とカーボンブラック添加効果 山口勝之 1 佐々木厳 2 明嵐政司 3 1 非会員工修東海カーボン株式会社知多研究所主任研究員 ( 元土木研究所交流研究員 ) ( 470-2341 愛知県知多郡武豊町字五号地 1 番 ) E-mail:kyamaguc@tokaicarbon.co.jp 2 正会員独立行政法人土木研究所材料地盤研究グループ新材料チーム研究員 ( 305-8516 茨城県つくば市南原 1 番地 6) E-mail:isasaki@pwri.go.jp 3 非会員工博独立行政法人土木研究所材料地盤研究グループ新材料チーム上席研究員 ( 305-8516 茨城県つくば市南原 1 番地 6) E-mail:mei@pwri.go.jp アスファルトバインダの紫外線に関わる促進劣化試験法 プレス成膜試料によるUV 劣化試験 を適用して, 市販のストレートアスファルト及び改質アスファルトⅡ 型バインダの劣化挙動を調査した. その結果, 同法が屋外暴露による劣化状態を良く再現する有効な試験法である事が確認された. また紫外線による劣化はアスファルト層の表面付近に限られるものの, その部分の劣化程度は温度及び雰囲気圧力の条件がともに厳しいPAV 促進劣化試験よりも苛酷である事が判明した. 更にカーボンブラックの添加は, 劣化の進行に伴う構成成分の比率変動と, 紫外線照射による酸素含有官能基 ( カルボニル基 ) の生成を抑える事ができ, アスファルト材料の耐久性を向上する有効な策と考えられる. Key Words : asphalt binder, ultraviolet-rays radiation, accelerated aging, carbon black dynamic shear rheometer, composition analysis, FT-IR spectroscopy 1. はじめに舗装用アスファルト材料が, 貯蔵, 施工時及び供用期間中に, 熱, 空気 ( 酸素 ), 紫外線等に曝される事で次第に粘性を失い, ひび割れしやすい性状へと変化 ( 劣化 ) していく事はよく知られた事実である. アスファルトバインダ及び舗装について, その製品としての初期性能だけでなく, 中長期的な性能評価が必要との観点から, 供用中の劣化状態を室内で効率良く再現する各種の促進劣化試験が開発, 確立されてきている. 例えば, 貯蔵, 混合から施工時の熱劣化に対しては, 薄膜加熱試験あるいは回転式薄膜加熱試験が, また供用中の酸化劣化に対しては, 米国 SHRP(Strategic Highway Research Program) で開発された加圧劣化試験が活用されている. これら加熱や酸化と並んで, 紫外線に関しても, 1), 2), 3), その影響を指摘する報告 4) が数多くなされている. しかしながら舗装分野における耐候性試験方法は 5), 目視確認を調査項目としたカラー舗装を対象としたもののみであり, アスファルトバインダの紫外線に起因する材料劣化を定量的に評価できる試験方法は, 現在に至って確立, 規格化されていない. 紫外線による劣化はアスファルト層の表面付近ほど 6) 著しく, その影響が及ぶ範囲は500μm 程度と報告 されている. 近年急速に普及しつつある排水性舗装のモルタル膜厚は実測データ 7) によると45~65μm 251

程度であり, 紫外線の影響は決して軽視できないものである. アスファルト系舗装の破損を考えてみると, 塑性変形や疲労ひび割ればかりでなく, 表面縦ひび割れ ( 所謂, わだち割れ ) や排水性舗装の骨材飛散等の, 新たな形態の損傷が問題視される事が多くなってきている. わだち割れの要因としては, 荷重やダブルタイヤ等の交通要因とともに, 舗装の表層, それも極表面部分でのバインダ劣化 ( 老化 ) を指摘する報 8), 告 9) が多い. 舗装表面部分でのバインダ劣化は酸化の影響も大きいものの, 紫外線の影響を無視する事はできない. 片脇ら 9) は, アスファルト混合物の疲労試験において, 紫外線劣化 ( サンシャインウェザーメータ400 時間 ) により, わだち割れが発生するまでの時間が1/10まで短縮する事を報告している. また排水性舗装の骨材飛散は, 交差点部等における捻り荷重や初期強度の不足が議論されているが, 表層の内部深くまで光の影響が及ぶ開粒度混合物である事を考慮すると, 紫外線によるバインダ劣化の影響を確認しておく必要があると言える. 一方, カーボンブラックは, ゴムや樹脂等の高分子工業分野で広く用いられる耐候性改善用の添加材で, 数十から数百 m 2 /gのbet 吸着比表面積を有する 100nm 写真 -1 カーボンブラックの電子顕微鏡写真 微粉末炭素材料 10) である. またその形状は, 電子顕微鏡写真 ( 写真 -1) に見られる様に, 一次粒子と呼ばれる微小球が葡萄状に繋がったものが一般的である. 舗装分野でも, これをアスファルト材料に添加する試み自体は以前より行われている. しかしながらこれまでの報告は, 補強充填効果による弾性率の 11), 12), 13), 14), 増加や粘性の温度依存性低減傾向等 15) に止まっており, 高分子分野ではよく知られる耐候性 16), 改善材 17) としての可能性, 即ち, アスファルト材料におけるカーボンブラックの紫外線劣化抑制効果について詳細に調査, 検討した例は見当たらない. 本研究では, アスファルトバインダの紫外線に関わる促進劣化試験法 プレス成膜試料によるUV 劣化試験 を考案し, 同法を適用した際のアスファルト材料の物理的, 化学的劣化挙動を明らかにした. また, カーボンブラック添加による劣化抑制効果についても報告する. 2. 方法 (1) 試料作製手順試料作製手順は図 -1に従って行った. まず, ベースアスファルトバインダと, 予め 150 で24 時間乾燥処理を施したカーボンブラックを, モルタルミキサータイプの万能混合撹拌機 ( ダルトン製 2XDMV-Qr 型 ) に同時投入し,60 で45 分間の混練りを行い, 未劣化試料を作製した. 次いで室内促進劣化試験として, 薄膜加熱試験 ( 以下,と略称), 更に加圧劣化試験 ( 同, PAV) を行った. また 劣化試料については後述する薄膜成形手法 ( プレス成膜法 ) を用い, 室内試験による紫外線劣化試験 ( 同,UV) と屋外暴露試験を行い, 各劣化段階における性状評価試験に供した. 混合 促進劣化 PAV 促進劣化 ベースアスファルト未劣化試料 劣化試料 PAV 劣化試料 カーボンブラック 薄膜成形 ( プレス成膜法 ) UV 促進劣化 UV 劣化試料 屋外暴露 屋外暴露試料 図 -1 試料作製手順 252

(2) 促進劣化試験 a) 薄膜加熱試験 () JIS-K2207に準拠し, 未劣化試料を内径 140mmφ の専用皿に50±0.5g 秤量し, 空気中,163 で5 時間の処理を行った. b) 加圧劣化試験 (PAV) SHRP 試験規格 18) (B005) に準拠し, 試料について,2.05±0.1MPaの加圧空気中,100 で20 時間の処理を行った. c) 紫外線劣化試験 (UV) 紫外線による劣化は, アスファルト層の表面から深さ方向に, 次第にその影響が小さくなる. このため, この劣化挙動を定量的に把握するためには出来るだけ試料の厚さを薄くする事が必要となる. その方法として, 加熱による伸展, 有機溶剤を使用した成形等が試みられてきた. ところが, 成分変性の可能性, 比重差分離に加え, 溶剤を完全に除去する事が困難といった問題点があり, 紫外線劣化を的確に評価する事が困難であった. そこで上記問題を解決するために, 新たな紫外線促進劣化試験法として, プレス成膜試料による UV 劣化試験 を考案した. これは, 所定量のアスファルト試料をフッ素樹脂 (PTFE) シートで挟み込み, 適宜プレスする事により薄膜に成形し, 冷却後 PTFEシートの片面を剥がして直接紫外線照射を行うものである. 写真 -2に試料プレス前後の外観写 真を示す. この方法は熱劣化の影響が排除でき, 簡単迅速に均一な膜厚の薄膜供試体が得られる上に, 試料回収が容易といった利点もある. 本研究では, 後述するストレートアスファルトと改質アスファルトⅡ 型バインダの 劣化試料 1.5gを, それぞれ 60,100 下で135mmφに伸展し, 紫外線の影響が充分に及び得る100μm 厚の薄膜供試体を準備した. 紫外線照射装置には, アスファルト試料の変形を避けるため, 供試体を水平に設置できるアトラス社製サンテスタXF180CPSを用いた. 劣化条件としては, キセノンランプ照射強度を700W/m 2 ( 波長範囲 300~800nm) とした. これは, 高分子材料の劣化と密接に関係する波長範囲 300~400nmに換算すると,78W/m 2 に相当する. またブラックスタンダード温度は, 夏場の舗装体表面温度に相当する60 とした. d) 屋外暴露試験上記 c) と同一の手順で作製した 劣化試料の薄膜供試体を, 南向き, 傾斜 5 の条件で茨城県つくば市内に設置し,1ヶ月並びに2ヶ月間の屋外暴露試験を行った. 但しここでの供試体は, 薄膜試料上面に5mmの空間を設けてガラス板 ( 波長範囲 300~ 400nmのUV 透過率 60%) を配した開放型二重構造とした. これにより, 屋外放置による夾雑物等の混入と水による劣化の影響を排除した. 屋外暴露試験における劣化条件を表 -1に示す. 試料表面温度が最高でも45 前後である事から熱劣化の影響は少なく, 紫外線が主たる劣化要因と言える. 尚, 正味のUV 積算照射量は, 環境観測における紫外線量の実測値に, 供試体上面ガラス板の透過率 60% を掛ける事で求めた. 写真 -2 プレス成膜法による試料プレス前後の外観写真 (3) 試験材料実験に用いた市販のベースアスファルト2 種及びカーボンブラック ( 東海カーボン 製 #7350F) の基本的性状を, それぞれ表 -2, 表 -3に示す. 本文中では, ストレートアスファルトと日本改質アスファルト協会規格の改質アスファルトⅡ 型を, それぞれ 表 -1 屋外暴露試験における劣化条件 測定項目 屋外暴露 1 ヶ月 屋外暴露 2 ヶ月 備考 実測 UV 積算照射量 KJ/m 2 7,640 17,620 波長範囲 300~400nm 最大 UV 照射強度 W/m 2 16.1 19.7 薄膜試料表面温度 43.5 ~ -7.6 46.3 ~ -8.7 最高温度 ~ 最低温度 253

表 -2 アスファルトバインダの基本的性状 略号 試験規格 密度 at 15 g/cm 3 1.033 1.034 JIS-K2207 6.12 Hubbard bottle 法 針入度 at 25 1/10mm 90 50 JIS-K2207 6.3 軟化点 46.0 60.0 JIS-K2207 6.4 R&B 法 引火点 348 346 JIS-K2265 COC 法 粘度 at 135 cp 365 - JIS-K2207 6.14 Cannon-Fenske 法 表 -3 カーボンブラックの基本的性状 ( 東海カーボン 製 #7350F) 略号 CB 試験規格 窒素吸着比表面積 N 2 SA *1) m 2 /g 80 JIS-K6221 BET 法 *2) DBP 吸収量 *3) 24M4DBP 吸収量 cm 3 /100g 100 JIS-K6221 cm 3 /100g 84 JIS-K6221 アグリゲート径 Dst ( D 50 ) *4) nm (nm) 90 (74) ASTM D3849 DCF 法 *1) Measured by nitrogen adsorption of BET method *2) Measurement of void volume of bulk carbon black using dibutylphthalate as absorbate *3) DBP absorption after four compressions of 24MPa *4) Measured by disc centrifuge (DCF), と表記する. また各々にカーボンブラックを10pha ( parts per hundred asphalt),2pha 添加したバインダ試料を, それぞれ StAs+CB10pha, +CB2pha と表記し, 以下の評価試験に供した. (4) 試験項目 a) 動的粘弾性試験物理的性状試験は, レオメトリックス社製 RAAを用い,SHRP 試験規格 18) (B003) に準拠して動的粘弾性状の測定を行った. アスファルト材料は, 劣化の進行に伴い低温域での性状が特に低下する事から, 試験温度は20 ( パラレルプレート8mmφ 2mmギャップ,10rad/sec.) とした. 19), 20) b) 組成分析試験劣化に伴う化学的性状変化を調べるため, 石油学会規格 JPI-5S-22-83 カラムクロマトグラフィーによる組成分析法 に準拠し, 及び StAs+CB10phaバインダの組成分析を行った. c) FT-IR 分析 ( フーリエ変換式赤外分光光度計 ) アスファルト材料の酸化劣化の指標となる酸素含有官能基の挙動 21) を調べるために,FT-IR 分析を行った. 分析装置に パーキンエルマージャパン製 G* at 20 (KPa) 100000 10000 δ at 20 (deg.) 60 50 40 30 1000 20 +PAV + 屋外 暴露 1ヶ月 + 屋外暴露 2 ヶ月 +PAV + 屋外 暴露 1ヶ月 + 屋外暴露 2 ヶ月 a) G* at 20 b) δ at 20 図 -2 屋外暴露試験と PAV 促進劣化試験の苛酷度比較 254

Spectrum Oneを用い,0.03g/mlクロロホルム試料溶液について,KBr 液体用セル,0.1mmスペーサの条件で測定を行った. 評価には,1600cm -1 付近の内部参照吸光度に対する,1700cm -1 付近に現れるカルボニル伸縮振動に起因する吸光度の比 R C=O を用いた. 尚, スペクトルのバックグラウンドは1825 cm -1 ~ 550cm -1 とした. 3. 結果 (1) 劣化に伴う動的粘弾性状の挙動調査 a) 屋外暴露によるバインダの劣化程度 及びバインダについて, 劣化から屋外暴露 2ヶ月経過後までの20 動的粘弾性状 ( G*,δ) の変化を,PAV 劣化試料の結果と併せて図 -2に示す. ここで,G* は, 動的複素弾性率あるいは動的複素剛性率などと称される粘弾性指標であり,δは応力- 歪み間の位相角である. 何れのベースバインダにおいても屋外暴露による劣化は極めて短時間に進行し, 僅か1ヶ月の間に, 温度及び雰囲気圧力の条件がともに厳しいPAV 劣化を上回る G* の上昇と, 粘性の喪失を意味するδ の低下が見られる. また外観上もひび割れの発生に止まらず, 劣化した表層の一部が粉末化して消耗する現象も見受けられた.PAV 促進劣化試験は, 舗装体として供用後 5~10 年の劣化状態を再現するものとされているが,100μm 厚というアスファルト層の表面付近においては, 屋外暴露による劣化の方がより大きな材料変化を生じると言える. b) プレス成膜試料によるUV 促進劣化試験と屋外暴露試験の再現性次にプレス成膜試料を用いて, 室内 UV 促進劣化試験と屋外暴露試験の比較を行う. 波長範囲 300~ 400nmに相当するUV 積算照射量と20 動的粘弾性状の関係を, 及びのベースバインダ毎に, それぞれ図 -3, 図 -4に示す. 何れのベースバインダも, 屋外暴露あるいはUV 照射の初期の段階で変質が大きく, その後劣化の進行は漸減する傾向にある. また屋外暴露試験の結果は,UV 劣化試料の性状変化を表すライン近傍に位 G* at 20 (KPa) 100000 10000 1000 UV 促進劣化試験 (700W/m2) UV 促進劣化試験 (300W/m2) 屋外暴露試験 0 5000 10000 15000 δ at 20 (deg.) 60 50 40 30 20 UV 促進劣化試験 (700W/m2) UV 促進劣化試験 (300W/m2) 屋外暴露試験 0 5000 10000 15000 UV 積算量 KJ/m 2 UV 積算量 KJ/m 2 a) G* at 20 b) δ at 20 図 -3 プレス成膜試料による UV 促進劣化試験と屋外暴露試験の再現性 - バインダ G* at 20 (KPa) 100000 10000 1000 UV 促進劣化試験屋外暴露試験 0 5000 10000 15000 δ at 20 (deg.) 60 50 40 30 20 UV 促進劣化試験屋外暴露試験 0 5000 10000 15000 UV 積算量 KJ/m 2 UV 積算量 KJ/m 2 a) G* at 20 b) δ at 20 図 -4 プレス成膜試料による UV 促進劣化試験と屋外暴露試験の再現性 - バインダ 255

置しており,UV 積算照射量当たりの劣化度合いは室内 UV 促進劣化と屋外暴露で同等と言える. この事は, プレス成膜試料を用いる事により, 室内 UV 促進劣化試験が屋外暴露による劣化状態を極めて良く再現できる事を示している. またバインダでは,UV 照射強度の影響をみるために,UV 照射強度を300W/m 2 ( ブラックスタンダード温度 60 ) とした劣化試験も行った. 図 -3a),b) より,UV 積算照射量が同じである 700W/m 2 48hrと300 W/m 2 112hrの試料の劣化状態は一致している. 即ち, この範囲においてはUV 照射強度にかかわらず,UV 積算照射量により粘弾性状の変化を判定できる事が判る. c) カーボンブラック添加による劣化抑制効果ここでは, カーボンブラック添加の有無によるバインダ劣化挙動の比較を行う. 及び StAs+CB10phaバインダの各種促進劣化試験による 20 動的粘弾性状の変化を図 -5に示す. また 及び+CB2phaバインダの結果を図 -6に示す. まずバインダ ( 図 -5) に着目すると, StAs+CB10phaバインダはカーボンブラックの補強 充填効果により, 劣化からPAV 劣化まではベースバインダであるよりも G* が大きい. しかしながら,StAs+CB10phaバインダのUV 劣化後の G* はバインダと同等レベルになっており,UV 劣化に伴う G* の変化は小さい.UV 劣化におけるδは,StAs+CB10phaバインダの方が バインダよりも大きく, 劣化後も粘性を維持している事が判る. 一方, バインダ ( 図 -6) では, 補強効果は期待せず劣化抑制のみを主目的とし, カーボンブラックの添加量を2phaとした. このため, 劣化の段階でベースバインダとほぼ同等の動的粘弾性状を有する試料 ( +CB2phaバインダ ) を得た. その結果,バインダよりも劣化抑制効果が際立ち,PAV 劣化及びUV 劣化による G* の上昇とδの低下が抑えられた. 特にカーボンブラック未添加のバインダが,UV 照射 24hrから 48hrにかけて, なお弾性化 ( 硬化 ) が進行しているのに対し, +CB2phaバインダは劣化の進行が遅くなる傾向にある. またバインダでは, PAV 劣化においてもカーボンブラック添加による劣 G* at 20 (KPa) 100000 10000 StAs+CB10pha δ at 20 (deg.) 60 50 40 30 StAs+CB10pha 1000 +PAV +UV24hr 20 +PAV +UV24hr a) G* at 20 b) δ at 20 図 -5 カーボンブラック添加の有無による劣化挙動比較 - バインダ 100000 60 G* at 20 (KPa) 10000 +CB2pha δ at 20 (deg.) 50 40 30 +CB2pha 1000 +PAV +UV24hr 20 +PAV +UV24hr a) G* at 20 b) δ at 20 図 -6 カーボンブラック添加の有無による劣化挙動比較 - バインダ 256

化抑制傾向が認められる. (2) 組成分析による成分比率の挙動調査物理的劣化挙動の調査に引き続き, 化学的性状の調査としてまず組成分析試験を行った. 及びStAs+CB10phaバインダの, 各種促進劣化試験における4 成分構成比率を図 -7に示す. ここで, カーボンブラックは成分分離の最初の操作で用いる n- ヘプタンに不溶であるため, アスファルテン成分として回収される. 従ってStAs+CB10phaバインダについては, 実測データのアスファルテン成分から, カーボンブラック添加重量 (10pha) を差し引いた補正後の百分率値とした. 既往の調査では, 劣化の進行に伴い芳香族成分が減少し, レジン成分及びアスファルテン成分が増加する事 19) が知られているが, 本研究のバインダ ( 図 -7a)) においても同様の傾向が認められた. また成分比率からも,UV 劣化の方がPAV 劣化よりも劣化状態の著しい事が判る. この結果は, UVによる劣化が,PAV 劣化を上回る変質 ( G* の上昇とδの低下 ) を示した動的粘弾性状の傾向と一致している. また 劣化からPAV 劣化までは目立った変化の無い飽和成分が,UV 劣化により14.6% に減少している結果も注目される. 一方カーボンブラックを添加したStAs+CB10pha バインダ ( 図 -7b)) は, 全ての促進劣化試験においてベースバインダよりも構成成分の比率変動が小さい. またカーボンブラック添加の有無による差異はUV 劣化で最も顕著に見られ, StAs+CB10phaバインダは, 飽和成分や芳香族成分の残存比率が大きい一方で, アスファルテン成分は少ない. この点についても, 動的粘弾性試験におけるカーボンブラック添加バインダの変質が小さい傾向と一致している. (3) FT-IR 分析による酸素含有官能基の挙動調査更に酸化劣化の指標となる酸素含有官能基の挙動を調べるために,FT-IR 分析を行った. カーボンブラック添加有無バインダの各種促進劣化試験におけるカルボニル基吸光度比 R C=O を図 -8に示す. 構成成分比率 (%) 100% 80% 60% 40% 20% 12.0 20.1 49.1 14.6 17.9 24.0 43.2 27.2 37.0 23.3 28.0 34.0 アスファルテン成分 レジン成分 Asphaltene Resin Aromatic Saturate 芳香族成分 構成成分比率 (%) 100% 80% 60% 40% 20% 12.0 13.9 20.1 23.3 49.1 43.9 18.9 16.4 24.9 29.2 38.4 37.7 A R A S 18.8 18.2 17.9 14.6 飽和成分 18.8 18.9 17.8 16.7 0% 未劣化 未劣化 +PAV 0% 未劣化未劣化 () StAs+CB10pha StAs+CB10pha StAs+CB10pha +PAV a) バインダ b) StAs+CB10pha バインダ 図 -7 劣化に伴う構成成分の比率変動にみるカーボンブラック添加の影響 0.4 0.4 カルボニル基吸光度比 R C=O 0.3 0.2 0.1 StAs+CB10pha カルボニル基吸光度比 R C=O 0.3 0.2 0.1 +CB2pha 0.0 +PAV +UV24hr Degradation mode ORG +PAV +UV24hr 未劣化 0.0 +PAV +UV24hr Degradation mode ORG +PAV +UV24hr 未劣化 a) バインダ b) バインダ 図 -8 劣化に伴う酸素含有官能基の挙動にみるカーボンブラック添加の影響 257

及びバインダの何れにおいても, 全ての促進劣化試験により, 酸化の進行を示すR C=O の増加が見られる. 中でもUV 劣化によるR C=O の増加は著しく, 僅か24hrのUV 照射によりPAV 劣化を上回る変化が見られる. カーボンブラック添加の有無による差もUV 劣化で大きい. これらの結果は, 動的粘弾性試験で,UVにより劣化したバインダが PAV 劣化以上に弾性化が進んだ事, 並びにカーボンブラック添加によりUV 劣化が抑えられた傾向と一致している.バインダ( 図 -8a)) では, カーボンブラック添加による酸化の抑制がUV 劣化でのみ認められるのに対し, バインダ ( 図 - 8b)) では,PAV 劣化においてもカーボンブラック添加によりR C=O の増加が抑えられている. また改質 Ⅱ+CB2phaバインダは,UV 照射に伴う劣化の進行が遅くなる傾向も見られる. 4. 考察 (1) プレス成膜試料によるUV 劣化試験 の課題 100μm 厚の薄膜供試体を用いてUV 劣化挙動を調査した結果,UV 積算照射量当たりの劣化度は, 室内 UV 促進劣化試験と屋外暴露試験で同等であり, 紫外線によるバインダ劣化はUV 積算照射量で再現できる事が判った ( 図 -3, 図 -4). 本研究では屋外暴露 2ヶ月までの比較に止まったが, 同法が屋外暴露における紫外線による劣化状態を良く再現する有効な試験法である事が確認された. 本研究では300~700W/m 2 の範囲で,UV 照射強度の動的粘弾性状への影響は見られなかった ( 図 -3). しかしながら,UV 照射強度は劣化の深さに影響を及ぼすと考えられるため, 膜厚と併せて最適化の検討を行う必要がある. また試験法の確立に向けて, 多種多様のバインダ調査や, 屋外暴露とのより長期的な比較照合も必要と考えている. 本試験法により, 熱や空気 ( 酸素 ) と並ぶ劣化因子である紫外線の影響が個別に把握でき, アスファルト材料の劣化機構の解明も容易になるものと考えられる. (2) アスファルト材料のUV 劣化 UVによる劣化は, アスファルト層の表面付近に限られるが, その変質の程度は著しく,100μm 厚の薄膜をUV 照射強度 700W/m 2 ( 波長範囲 300 ~ 400nm) で24 時間処理した材料の劣化は, 舗装体として供用後 5~10 年の劣化状態を再現するとされる PAV 劣化を上回る事が判明した. 森吉ら 2) は, 種々の室内劣化試験の中でも, 薄膜試料に紫外線を照射したものの曲げ強度が最も低下した事を報告しているが, 本研究の結果は, これを支持する. たとえ表面付近だけとは言え,UVにより劣化した表層に発生した亀裂には, 車輌の通行等により引張応力が集中し, 容易に表面破壊に至る事が予想される. 片脇ら 9) は, わだち割れにおける紫外線の影響を指摘しているが, 本研究におけるUVによる劣化程度の結果とともに, 舗装の表面破壊には紫外線が深く関わっている事が考えられる. またUVによる劣化は極めて短時間に進行するため, 粉末化したアスファルトバインダはフィラーとともに損耗し続け, やがては粗骨材の剥落を引き起こす原因ともなり得る. 特に, 排水性舗装の様な表層の内部まで光の影響が及ぶ開粒度混合物であれば, 一層 UVの影響は大きく, 軽視できない劣化因子と考えられる. UV 劣化について, 化学的性状の観点から反応機構の考察を試みる. まず組成分析試験 ( 図 -7) では, 芳香族成分が全ての促進劣化試験で減少する一方で, 飽和成分はUV 劣化でのみ顕著な減少が見られた. この事は, 芳香族成分は熱や酸素,UVに敏感に反応してレジン成分とアスファルテン成分に変質するが, 飽和成分はUV 照射によってのみ大きく変質する事を示唆している.Huangら 22) は, アスファルトバインダから分離した構成成分の各々にUV 照射を行った結果, 飽和成分の高分子量化が最も著しかった事を報告をしている. 本研究の結果はこれと一致するものであり, アスファルト材料の紫外線劣化においては, 特に飽和成分に注目すべきと考えられる. FT-IR 分析試験 ( 図 -8) では, 及び改質 Ⅱバインダの何れにおいても,24 時間のUV 照射により,PAV 劣化を上回る酸素含有官能基 ( カルボニル基吸光度比 R C=O ) の増加が見られた. この結果より阪上ら 3) が指摘する様に,UV 劣化の支配要因は酸化反応である事が考えられる. 但し, 先の組成分析試験における飽和成分の挙動も加味すると, 酸化の過程はUV 劣化とPAV 劣化では異なるものと思われる. アスファルトの再生利用に関する技術向上を図る上でも, バインダの劣化機構解明は重要である. UV 劣化機構についても, 今後更なる詳細な調査が必要である. (3) カーボンブラック添加効果カーボンブラックの添加により, 及びバインダの何れにおいても,UV 劣化による構成成分の比率変動 ( 図 -7) と, 酸素含有官能基 258

( 図 -8) の増加が抑えられた. その結果, 動的粘弾性状の変化 ( 図 -5, 図 -6) も小さいものとなった. これらは, カーボンブラックの遮光効果や紫外線吸収効果 16) によるものと考えられる. 一般に樹脂の分野では, 耐候性改善のためのカーボンブラック添加 10), 量は2~3% が適当 17) とされている. 本研究では, バインダに対し, 補強効果も期待してカーボンブラックを10pha 添加としたが,UV 劣化抑制の観点からは, 添加量過剰であったとも考えられる. バインダ ( 図 -6) では, カーボンブラック添加の効果がより鮮明に表れた. 即ち, +CB2phaバインダの性状変化は,UV 照射 24hrから 48hrにかけてほぼ横這いとなり, カーボンブラック未添加のバインダとの性能格差は, 長期供用中に更に拡大していくものと思われる. また バインダでは,PAV 劣化においてもカーボンブラック添加による劣化抑制傾向が認められた. バインダのPAV 劣化においては, 劣化状態に, カーボンブラックの添加有無による明確な差異が認められなかった. この事から, 改質アスファルトに含まれる改質材の酸化劣化抑制に対して, カーボンブラックが何らかの働きをしたものと考えられる. 以上から, カーボンブラックの添加はアスファルト材料のUV 劣化を抑制でき, 耐久性を向上させる有効な策と考えられる. 開粒度混合物における排水性舗装用高粘度バインダは改質材配合量の多い事も加わり, カーボンブラック添加効果もより発揮されるものと思われる. 本研究では,1 種類のカーボンブラックを対象として調査を行ったが, 今後, カーボンブラックの形状や表面性状の影響についても調査が必要と考えられる. 5. 結論 (1) プレス成膜試料によるUV 劣化試験紫外線に関する促進劣化試験法 プレス成膜試料によるUV 劣化試験 を考案した. 市販のストレートアスファルト及び日本改質アスファルト協会規格の改質アスファルトⅡ 型バインダの劣化挙動を調査した結果, 同法が, 屋外暴露による劣化状態を室内で効率良く再現する有効な試験法である事が確認された. 今後は試験法の確立に向けて, 屋外暴露試験とのより長期的な比較照合,UV 照射強度と膜厚の最適化等の検討を行っていく必要がある. (2) アスファルト材料のUV 劣化 UVによる劣化は, アスファルト層の表面付近に限られるものの, その部分の劣化程度は, 温度及び雰囲気圧力の条件がともに厳しいPAV 促進劣化試験よりも苛酷で, 著しい変質を生じる事が判明した. 排水性舗装の様な表層の内部まで光の影響が及ぶ開粒度混合物であれば, 一層 UVの影響は大きく, 今後益々重要視されるべき劣化因子となろう. (3) カーボンブラック添加効果ゴムや樹脂の分野ではよく知られるカーボンブラックの耐候性改善効果が, アスファルト材料に対しても機能する事が確認された. 即ち, カーボンブラックの添加により, 紫外線劣化に伴うアスファルトバインダ構成成分の比率変動と, 酸化劣化の指標となる酸素含有官能基 ( カルボニル基 ) の生成が抑えられ, その結果, 動的粘弾性状の変化が小さくなる事が確認された. カーボンブラックの添加はアスファルト材料の劣化を抑制でき, 耐久性を向上させる有効な策と考えられる. 参考文献 1) 竹村健 : アスファルトの劣化に関する研究 (Ⅰ), 北海道開発土木研究所月報第 114 号,1962. 2) 森吉昭博, 土田茂, 岳本秀人, 山本泰幹 : 長期間供用した道路および表面遮水壁のアスファルト舗装の性状, 道路建設,14/11,pp. 44-50,2002. 3) 阪上信次, 小林治二 : 石油アスファルトの紫外線劣化, 石油学会誌,Vol. 8,No. 10,pp. 44-50,1965. 4) 明嵐政司, 佐々木厳, 大坂貞勝 : アスファルトの劣化における紫外線の影響に関する検討, 第 23 回日本道路会議論文集,pp. 482-483,1999. 5) 日本道路協会 : 舗装試験法便覧別冊 ( 暫定試験方法 ), 1996. 6) 竹村健 : アスファルトの劣化に関する研究 (Ⅱ), 北海道開発土木研究所月報第 119 号,1963. 7) 増井裕明 : 排水性混合物の最適アスファルト量決定に関する研究, 建設省土木研究所交流研究員平成 5 年度報告書,pp. 125-128,1994. 8) 由井大介 : アスファルト舗装のわだち割れの原因究明と予防策の提案, 日本道路公団技術情報第 90 号,pp. 8-13, 1987. 9) 片脇清士, 川西礼緒奈 : アスファルト舗装のわだち割れ発生原因に関する一考察, 第 19 回日本道路会議論文 259

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