研究論文 20164028 201340 壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 ( 第 3 報 ) 列型過給直噴ディーゼルエンジンへの適用 * 川口 暁生 ) 立野 学 ) 山下 英男 猪熊 洋希 山下 晃 高田 倫行 山下 親典 小山石 直人 脇坂 佳史 Heat Insulation by by Temperature Swing in Combustion Chamber Walls (Third report) - Application for Multi Cylinder Turbo Charged Direct Injection Diesel Engines - Akio Kawaguchi Manabu Tateno Hideo Yamashita Hiroki Iguma Akira Yamashita Noriyuki Takada Chikanori Yamashita Naoto Koyamaishi Yoshifumi Wakisaka In the former report (Second report), authors investigated the novel insulation technology by a single cylinder DI diesel engine, and showed the effectiveness of this concept. In this report, it was applied to multi cylinder diesel engines, to investigate the effectiveness in real field application. The results of single cylinder engine were confirmed in the study with the multi cylinder engine, but in higher EGR ratio condition, surface roughness of the insulation coating on piston deteriorated fuel efficiency improvement. By keeping the surface roughness of machined finish in the cavity, it was showed that the deterioration of the fuel efficiency due to the roughness was recovered. KEY WORDS: Heat Engine, Engine Component, Efficiency, Combustion Analysis, Heat Insulation (A1). 緒 言 近年, 自動車の動力源多様化が進んでおり, 電気自動車や燃料電池車の発展は目覚ましいものがある. 一方で先進国 都市部を除いては 今後も燃料の調達や取扱いが容易な内燃機関に求められる役割は拡大が予想され, その効率向上への要求はますます高まっている. 本研究ではエンジンの熱効率向上を目指し, 筒内からの熱損失低減に取り組んできた. ディーゼルエンジンにおいては,1980 年頃から燃焼室壁面を遮熱化する研究が多く実施されてきた. 代表的な例としては, 熱伝導率が低く, 耐熱性も兼ね備えたセラミックスで燃焼室壁面を構成し, その背面を空気層として遮熱化を図ったエンジンがある. これらの遮熱手法は, 壁面の遮熱化により燃焼室から冷却水への熱損失を低減し, そのエネルギーをピストン仕事に振り分け, あるいは増加する排気エネルギーをターボチャージャにより回収して熱効率を向上することを狙いとしている. しかし一方で, 燃焼室壁温が常時上昇することにより作動ガスを加熱し, 吸気効率の悪化 NOx 排出量の増加を招いてしまうこと, また遮熱層が高温となるためにその信頼性が低下するなどの欠点が報告されている. また上記遮熱手法をガソリンエンジンに適用すると, 吸気効率 年 月 日受理. 年 月 日 自動車技術会春季学術講演会において発表. トヨタ自動車 株 静岡県裾野市御宿 番地 ) 同上 ( 愛知県豊田市トヨタ町 番地 ) 株 豊田中央研究所 ( 愛知県長久手市横道 ) の悪化のみならずノッキングの悪化を招く悪影響があった. そこで筆者らは, 従来遮熱手法の欠点を克服するために, 吸気行程での燃焼室壁温を上げない遮熱手法を提案し, 実現を目指してきた. 基本とする考え方は, ガス温度に応じて壁表面温度を変化させることで, 吸気 圧縮行程では壁温の上昇を抑制して吸気加熱を防止し, 膨張 排気行程ではガスと壁面との温度差を減少させ, 吸気加熱防止と熱損失低減を実現するものである. 本報では, 上記遮熱手法の列型過給直噴ディーゼルエンジンへの適用を試み, その効果およびメカニズムを解析することで, 実用化への可能性を検討した結果を報告する. 2. 壁温スイング遮熱法以下に筆者らが検討してきた壁温スイング遮熱法 のコンセプトを示す. 壁面に形成する遮熱層の熱伝導率 ( 以下 λ), 体積比熱 ( 以下 ρc) を小さくしていくと,1 サイクル中でも遮熱膜の表面温度は大きく変化する ( 図 1;Wall temperature of swing insulation). 図 1 に示すように燃焼期間中では燃焼ガスの温度上昇に追従して遮熱層の表面温度が上昇し, その結果ガスとの温度差が減少して熱損失が低減する. 遮熱壁表面が常に高温となる従来遮熱手法と, 本遮熱手法を比較すると, 遮熱膜の熱容量が小さいため表面温度は排気行程で急速に低下し, 吸気行程において吸気の加熱が発生しない点が最も大きな差であると言える. この結果吸気効率を悪化させず, 圧縮端温度上昇による NOx の増加も抑制できる. 特に SI エンジンにおいては, 適切な膜形成を行うと吸気行程での遮熱膜 Vol.47,No.1,January 2016. 47
報の単筒機関における結果をターボ過給式多気筒エンジンで検証することであり, 上記単筒機関に燃焼系諸元を合わせてある. エンジン B は本遮熱技術の実用化適用対象として, 最新の排気規制に対応し, 実用環境対応がなされた量産プロトタイプでの効果検討を行うものである. それぞれのエンジン諸元を表 2 に, 燃焼室形状を図 4 に示す. Fig.1 Wall temperature of heat insulation 表面温度は通常の燃焼室壁面温度よりも低下するため, ノッキング発生頻度をむしろ低下させることができる. 本報告ではこの壁温スイング遮熱法を実現する遮熱膜とし て第 2 報及び第 4 報 で報告した, シリカ強化多孔質陽極酸化被膜 Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum ( 以下 SiRPA) を適用した. その構造を図 2 に示す. Thermal conductivity W/mK 1000 100 10 1 0.1 0.01 Air Aluminum alloy Aluminum oxide SiRPA*** YSZ* Glass balloon** 1 10 100 1000 10000 Volumetric specific heat kj/m 3 K Yttria-Stabirized Zirconia ** Heat-resistant Glass balloon *** SiRPA plotted by bulk density Fig.3 Comparison of thermopysical property Table2 Specifications of applied diesel engines Fig.2 Schematic drawing of Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum (SiRPA) Engine A Engine B Bore Stroke φ86mm 96mm φ92mm 103.6mm Displacement 2231 cm 3 2755 cm 3 Compression Ratio 14.1 15.6 Port Swirl Ratio 2.1 2.2 Fuel Injection System Common Rail, G3P Common Rail, G4S Nozzle Type Mini Sac Mini Sac Table1 Thermophysical Properties of SiRPA φ 86 Volumetric Specific Heat Capacity @500K Thermal Conductivity @500K 1300kJ/m3K 0.67W/m K φ 58.7 15.5 表 1 に SiRPA の物性値を示す. この材質は, ピストン材として使用されている高シリコンのアルミ合金に厚膜の陽極酸化膜 を成膜したのちに, 燃焼圧によるガス侵入防止と膜強度向上のため, 高耐熱性のシリカ系封孔材を塗布含侵 焼成し, 厚さ数 μm の保護被膜を形成したものである. 細孔構成は, 第 4 報 を参照されたい.SiRPA の熱物性を他の代表的な材料と比較して図 3 に示す. ジルコニアなどのセラミックス溶射の遮熱材に対し, 約 1/3 の低熱伝導率, 約 1/2 の低体積比熱が実現できている. 3. 供試エンジン本報告では 2 種類のエンジンにて遮熱膜の評価を行った. それぞれのエンジン評価の狙いとしては, エンジン A では第 2 Piston cavity of engine A Piston cavity of engine B Fig.4 Schematic drawing of each piston cavities 48 自動車技術会論文集
Table3 Engine test conditions Engine A Engine B Engine Speed (rpm) 2000 1400 Common Rail Pressure (MPa) 55 58 EGR Ratio (%) 0 40 Fuel Injection Quantity(mm3/stroke) 10 10 Fig.5 Comparison of Cylinder pressure and ROHR, between Base and SiRPA 率の向上と排気エネルギーの増加の両立が実現できている. エンジンB; 実用化検討 全面被膜ピストンによる実機燃費試験 単筒機関での正味仕事改善効果が多気筒エンジンでも確認されたため,SiRPA 膜の実用化を前提としたプロトタイプエンジンBのピストン頂面全面に被膜して評価を行った. 評価は各種計測器の誤差を最小限にするため, 同一個体のエンジン 計測器を使用 また評価時の状態量のバラつきを抑えるため 増し試験を実施し, 十分に条件が一致したデータを採用した. 同一点における燃料消費率の繰り返し計測誤差は 以下であった. 図 は表 の試験条件における, エンジンAとBの SiRPA 膜追加による燃費効果を比較したものである.Aに対してB では効果が大幅に目減りしていることがわかる. この時のエンジンBの熱バランスは, エンジンAにおいて図 6で見られたような冷却損失の低減が実現できておらず, 正味仕事の増加も少ないことがわかった. Fig.7 BSFC improvement comparison between engine A and B Fig.6 Heat balance comparison in engine A. エンジン性能試験 エンジンA; 単筒エンジン結果の検証 表 に示した SiRPA 膜をエンジンAのピストン頂面全面に成膜して性能試験を実施した. 試験条件は表 に示す. 図 はエンジン A の指圧と熱発生率を, 図 は熱バランスを, 遮熱膜が無い場合 ( 以後,Base と記す ) と SiRPA 膜ありの場合で比較している. 熱バランスは下から, 正味仕事, 摩擦損失, ポンプ損失, 冷却損失, 排気損失, 未燃損失の順である. 正味仕事は動力計のトルク, 摩擦損失はポンプ損失を除く図示仕事と正味仕事との差, ポンプ損失は指圧計で計測した負の仕事, 未燃損失は排気分析計から THC,CO 成分の熱量を算出, 排気損失は IMEP をサイクル効率で除算し 冷却損失は全体から各種損失を引くことで算出した. SiRPA 膜ありの方が Base よりも熱損失が低減し, 図示仕事と排気エネルギーが増加しており, スイング遮熱による熱効 この差が生じる要因として, 表 のエンジンの試験条件に 着目すると, エンジンAに対しエンジンBはEGR 率が大幅に高いことがわかる. このEGR 率は対応する排気規制や車両重量に応じて適合されている. 筆者らは第 報にて, 率増加に伴う燃焼重心の遅角化により, 本研究での削減対象となっている冷却損失の割合自体が減少し, 結果として燃費効果が目減りする影響を示した. ただし, この燃費効果の目減りは燃焼遅角化だけでは説明できず, 表面粗度の影響についても簡単に言及したが, これについて本報で詳細に検討を行った. 単筒機関による燃費影響因子の解析 機械加工の燃焼室壁面の表面粗さが μ 以下であるのに対し, 遮熱膜である 膜の表面粗さは ~μ と大きくなっている. これは などアルミ合金中に分布する晶出物が陽極酸化により生成するアルミナの成長量を不均一にすることに起因し, ピストン用の高シリコン合金に厚い陽極酸化被膜を成膜する場合, 特に顕著となる. 図 にその断面顕微鏡写真の一例を示す. Vol.47,No.1,January 2016. 49
Surface of porous anodized aluminum Micro pore Silica Aluminum alloy Fig.8 Structure and surface roughness of porous anodized aluminum 図 は燃焼室キャビティー, スキッシュ面, バルブリセスからなる頂面の表面粗さを μ とした通常の機械加工面のピストンと, これを μ までサンドブラストで粗くしたピストンをそれぞれ装着した単筒機関で, それぞれ 率を変化させた時の図示燃費への影響を示す. 単筒機関の燃焼系諸元は表 のエンジンAに同じで 運転条件は, 燃料噴射量 である. いずれのピストンでも 率の増加と共に燃費は悪化するが, 表面粗さの増大のみでも燃費は悪化し, 高 率側ではさらにその差が拡大している. 図 はこの表面粗度の差による燃費への影響が, 率の増加によって拡大する割合としてプロットし直したものである. 高 率ほど表面粗さ悪化の影響が拡大することが明確に確認できる. Fig.9 Effect of surface roughness and EGR ratio for ISFC Fig.10 ISFC deterioration by the difference of piston surface roughness (Ra1μm Ra5μm) with EGR ratio variation Fig.11 Heat balance comparison of different surface roughness in high EGR ratio 図 11 はEGR 率 22% の時の熱バランスを,μ と μ の燃焼室表面粗さについて比較したものである. 表面粗さが大きいと冷却損失が ポイント増加していることがわかる. 図示しないが,EGR 率 % の場合の表面粗さ増大による冷却損失の増加は ポイントであったことから, 高 E GR 率の場合ほど表面粗さが冷却損失増大に及ぼす影響は, 大きくなることが示された. 急速圧縮装置による燃焼可視化解析 表面粗さの影響が最も大きいのは壁面上の流動速度が最大となる燃焼室噴霧衝突部であると推定し, この部分を模擬した構成を急速圧縮装置 ( 以下 ) にて再現し, 噴霧燃焼観察を行った. その装置の構成を図 に, 諸元と運転条件を表 に示す. 尚, 効果を明確にするために噴霧衝突面の表面粗さの水準は とμとした. Table 4 Specification of ambient and injection condition Fig.12 Schematic overview of rapid compression machine 50 自動車技術会論文集
Fig.13 Effect of surface roughness on the flame mixing speed Fig.14 Schematic image of the influence of surface roughness for diesel mixture formation 直接観察画像を図 に示す.μ では噴霧衝突後, 壁面沿いに火炎が高速で移動 拡散する様子が見られる 一方で, μ では上記に比較して壁面上とその近傍で火炎の伸展が 遅くなっていることが観察される. さらに燃料噴射後 の画像において,μ では噴霧衝突面近傍に依然として輝炎が滞留していることが観察できる. これを燃焼室内に当てはめて, 現象を模式的に推定したのが図 である. 表面粗さが大きい場合は壁面上の噴霧 混合気の移動速度が低下し, 拡散が遅くなる. また, 高 率の状態では酸素濃度が低いため, 噴霧により形成された燃料蒸気が燃焼可能な空燃比となるためには, 低 率の時よりも広い空間に拡散されることが必要になる. このため 率が高いほど表面粗さの影響が大きくなったものと考えられる. この現象について CFD を用いた傾向の再現を試みた. ソフトウエアは市販の STAR-CD を使用し, 噴霧壁面衝突モデルは Bai モデルを用いた. なめらかな表面には標準壁関数を使用し, 粗い表面には Specify のオプションを用いて, 差を明確にするために D=100μm と大きめの粗さ設定とした. エンジン運転条件は 2000rpm, 平均有効圧 1.64MPa である. 図 はその当量比分布 温度分布を噴霧軸線上断面で時系列に示したものである. なめらかな表面の場合は混合気の運動量減衰が少なく, 衝突面から壁面沿いに反転した後, 中央突起部より上方に拡散が進む. 一方, 面粗さが大きくなるとウォールジェット流の減衰により混合気移動速度が遅くなり, キャ ビティー内部での滞留時間が長くなる. この時の温度分布も 同様に, キャビティー内部の燃焼室壁面に近い部分に高温ガスが滞留し続ける様子が観察され, このような現象が冷却損失の増大につながっていることが示唆された. Fig.15 Equivalence ratio and temperature Distribution by CFD simulation 面粗度による影響としては, ほかに表面積の増大による熱伝達量の増加も考えられるが,EGR 率の高さにより燃費効果差異を生ずる要因としては影響が小さいと考えられるため, 今回は解析の対象から除外した. また, 面粗度悪化による散乱放射の増加に関しても, 筒内の熱伝達の大部分は乱流熱伝達であり, 放射による熱伝達は全体の 程度 と相対的に低く影響は小さいと考えられる. 遮熱と燃焼の両立 高 率の燃焼適合において, 噴霧衝突部の表面粗さの重要性が明確になったため, 遮熱効果と適正な燃焼を両立するための方策を検討した. 噴霧の衝突 拡散が行われるキャビティー内は面粗度が低い機械加工面のままとし, 遮熱膜はリップ上のテーパー面より外側のみを成膜するという思想で構築した燃焼室被膜範囲を図 に示す. Vol.47,No.1,January 2016. 51
図 はエンジンBにて, 当初のピストン燃焼室全面に 膜を形成した時と, 図 の部分にのみ 膜を形成した時の,に対する燃費改善効果を示す. 試験条件は表 に同じである. キャビティー内の混合気形成 燃焼を阻害していた表面粗さの増大を, 金属加工面をそのまま残すことで防止し, 本来の混合気形成とそれに連なる燃焼過程に戻すことで, 燃費効果も大幅に改善した. また, 図 は同様にに対する排気温の差 ( 上昇代 ) を比較したものである. 膜の面積割合が減ったにもかかわらず, 排 Fig.16 Schematic drawing of SiRPA formed area except cavity Fig.17BSFC improvement comparison between SiRPA Including Cavity and Except Cavity Fig.18 Exhaust gas temperature difference from Base Fig.19 Cylinder pressure and ROHR comparison of each cavity Fig.20 Heat balance comparison between Base and SiRPA except cavity 気温の上昇代はほとんど変わっていない. これは 膜の面積割合減少による熱損失増加分と, キャビティー内の面粗度をと同等に維持し, 燃焼の遅延 高温ガスの燃焼室壁面近傍での滞留を防止したことによる熱損失抑制分が, 相殺できたためと考えられる. 図 はベース, 全面 被膜, 図 の部分へ 被膜をしたピストンの指圧と熱発生率を示す. 図 の部分へ 被膜をしたピストンでは上死点後の熱発生率ピークに若干の増大が見られ, これは冷損低減により見かけの熱発生率が増加したものと考えられる. 燃焼の遅延については, さほど大きな差は見られなかった. 図 は, この時の熱バランスをベースと比較したものである. 図 7で示した時の燃費改善効果を大幅に上回り, またベースよりも冷却損失が低減し, 正味仕事と排気損失が増加していることが確認できた. 筆者らはこのキャビティー内には遮熱膜を加工しない手法が最終的なものとは考えておらず, さらなる燃費効果の拡大には遮熱面積の拡大が重要であることは認識しており, 今後もその取り組みは続けていく. しかしながら現在得られる表面粗度の遮熱膜を効果的に燃費効果につなげる現実解としては, この手法は当を得たものであると考えている.. まとめ及び結論 ガス温度に追従して表面温度を変化させる, 壁温スイング遮熱膜を4 気筒過給直噴ディーゼル機関に適用し, 熱効率向上効果を検討した. その結果, 以下の知見を得た. (1) 第 報での単筒機関と燃焼系 適合条件を合わせた4 気筒過給直噴ディーゼル機関での評価にて, 冷却損失が低減し, 正味仕事と排気損失が増加し, その結果として燃費が改善していることが確認できた. (2) 実用化を前提としたプロトタイプエンジンにそのまま遮熱膜を適用すると, 上記燃費改善効果が大幅に目減りした. これは膜形成による表面粗さの増大が, 高 率の燃焼に及ぼす悪影響が大きいためと考えられる. (3) 噴霧衝突部の表面粗さによる混合気拡散への影響を急速 52 自動車技術会論文集
圧縮装置での観察と により解析し, 面粗度が大きい場合はウォールジェット流の減衰により混合速度が低下し, 高温の燃焼ガスの壁面近傍滞留時間が長くなることが示唆された. これが燃焼速度低下と熱損失増加の要因の1つと考える. (4) 表面粗さに起因する燃焼悪化に対応するために, ピストンキャビティー内は面粗度が良好な機械加工面のままとし, スキッシュリップ上から外側のみ遮熱膜を成膜することにより, 高 条件においても冷却損失低減効果が得られ, 燃費が改善することを確認した. 謝 辞 本技術は Thermo Swing Wall Insulation Technology, 略称 TSWIN と名付けられ, エンジンの日本国内向けに世界で初めて実用化された. ここに至るまでの研究開発の過程で, 豊田中央研究所 中北清己氏, トヨタテクニカルテ ィヘ ロッフ メント 瀬口和比古氏 トヨタ自動車 岩田一康氏, 鈴木隼人氏, 仲野泰彰氏, 岸本岳氏, 伊藤寿記氏, 肘井巧氏, 梶川義明氏, その他多くの関係者に貴重な助言とご協力を頂いた. ここに感謝の意を表する. 参 考 文 献 (1) Roy Kamo, Walter Bryzik: Adiabatic Turbocompound Engine Performance Prediction, SAE technical Paper 780068 (1978) (2) Hideo Kawamura and Mitsuru Akama: Development of adiabatic engine installed energy recover turbines and converters of CNG fuel, SAE technical Paper 2003-01-2265 (2003) (3) Katsuyuki Osawa, Roy Kamo, Edgars Valdmanis: Performance of Thin Thermal Barrier Coating on Small Aluminum Block Diesel Engine, SAE technical Paper 910461 (1991) (4) 神本武征ほか, 夢の将来エンジン P103-128 自動車技術叢書 1 ( 公社 ) 自動車技術会 (2009) (5) 小坂英雅ほか ; 壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 ( 第 報 ), 自動車技術会論文集, (6) 脇坂佳史ほか ; 壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 ( 第 報 ), 自動車技術論文集, p39-45, (7) 西川直樹ほか ; 壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 ( 第 報 ), 自動車技術論文集, p55-60, (8) JIS H 0201 アルミニウム表面処理用語, (1998) (9) Takeshi Hashizume et-al, Low Cooling Heat Loss and High Efficiency Diesel Combustion using Restricted In-Cylinder Flow, COMODIA 2012 proceedings, JSME No.12-201, P43-49, (2012) Vol.47,No.1,January 2016. 53