飛田氏.indd

Similar documents
2. 各検討課題に関する論点 (1) 費用対効果評価の活用方法 費用対効果評価の活用方法について これまでの保険給付の考え方等の観点も含め どう考 えるか (2) 対象品目の選定基準 1 費用対効果評価の対象とする品目の範囲 選択基準 医療保険財政への影響度等の観点から 対象となる品目の要件をどう設

資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価に関する検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 当該分野の有識者による検討を行い 科学的な観点から参考となる考え方やデータを提示

Microsoft PowerPoint 費-4v4専門部会資料 福田修正 pptx

<4D F736F F F696E74202D C5974C82E8816A94EF817C E397C38B5A8F CC94EF977091CE8CF889CA82CC955D89BF82C68A C982C282A282C481698A54985F816A2E >

薬-1 長期収載品と後発品

中医協総 医薬品及び医療機器の費用対効果評価に関する取扱いについて 1 既収載品に係る費用対効果評価の手続き (1) 対象品目の指定中央社会保険医療協議会の定める以下の選定基準に基づき 費用対効果評価専門部会において指定 公表されたものとする 次の全ての要件を満たす品

現在検討中の主な制度改正内容

資料の目的 平成 30 年 3 月 7 日の合同部会において 費用対効果評価の制度化に向けた検討を進めるにあたり 科学的な事項については 医療経済学等に関する有識者による検討を行い 中医協の議論に活用することとされた 本資料は 基準値についての検討を行うにあたり 当該分野の有識者による検討を行い 科

長期収載品について 長期収載品とは 明確に定義はされていないが 一般的には 後発医薬品のある先発医薬品をいう 長期収載品と後発医薬品の間には 実質的に 以下のような役割分担が生じている 安定供給 長期収載品 安定供給することが求められており 具体的には 医療機関から継続供給を求める意見が強いことなど

タイトル

データの取り扱いについて (原則)

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

J P M A N E W S L E T T E R 2015 年 3 月号 No.166 Topics トピックス イギリスにおける医療技術評価 (HTA) に関する議論の動向 イギリスではここ数年間で 医薬品の価格制度を含めた医療技術の評価制度をめぐる議論が活発になっています 今回は 国際委員

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

☆表紙・目次 (国会議員説明会用:案なし)

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる

することを可能とするとともに 投資対象についても 株式以外の有価証券を対象に加えることとする ただし 指標連動型 ETF( 現物拠出 現物交換型 ETF 及び 金銭拠出 現物交換型 ETFのうち指標に連動するもの ) について 満たすべき要件を設けることとする 具体的には 1 現物拠出型 ETFにつ

( 参考 ) 平成 29 年度予算編成にあたっての財務大臣 厚生労働大臣の合意事項 ( 平成 29 年 12 月 19 日大臣折衝事項の別紙 ) < 医療制度改革 > 別紙 (1) 高額療養費制度の見直し 1 現役並み所得者 - 外来上限特例の上限額を 44,400 円から 57,600 円に引き上

る として 平成 20 年 12 月に公表された 規制改革推進のための第 3 次答申 において 医療機器開発の円滑化の観点から 薬事法の適用範囲の明確化を図るためのガイドラインを作成すべきであると提言したところである 今般 薬事法の適用に関する判断の透明性 予見可能性の向上を図るため 臨床研究におい

Microsoft PowerPoint - 眞鍋様.pptx

介護保険制度改正の全体図 2 総合事業のあり方の検討における基本的な考え方本市における総合事業のあり方を検討するに当たりましては 現在 予防給付として介護保険サービスを受けている対象者の状況や 本市におけるボランティア NPO 等の社会資源の状況などを踏まえるとともに 以下の事項に留意しながら検討を

医療機器開発マネジメントにおけるチェック項目

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

<4D F736F F F696E74202D F2817C CBB8D7382CC96F289BF8AEE8F8090A C982C282A282C42E B8CDD8AB

<4D F736F F F696E74202D EF8B638E9197BF82CC B A6D92E894C5816A E >

診調組技 医療技術評価提案書記載要領 ( 案 ) ( 通則 ) 1. 医療技術評価分科会において評価を行う技術は 以下の通りである (1) 評価の対象となる技術の範囲評価の対象となる技術は 原則として以下に含まれる技術である 1 医科診療報酬点数表第 2 章特掲診療料

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

2. 検討 ~ 医療に関する事故の特殊性など (1) 医師等による医療行為における事故 医師等が患者に対してどのような医療行為を施すべきかという判断は 医師等の医学的な専門知識 技能に加え 医師等の経験 患者の体質 その時の患者の容態 使用可能な医療機器等の設備等に基づきなされるものである ( 個別

お知らせ 柔道整復師の資格を取得される皆さま 関係の皆さまへ 平成 30 年 4 月から 柔道整復療養費の受領委任を取り扱う 施術管理者 になる場合は 実務経験と研修の受講が必要となる方向で 以下のとおり検討しています 柔道整復療養費の受領委任の取扱いを管理する 施術管理者 になるための要件について

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

PowerPoint プレゼンテーション

ための手段を 指名 報酬委員会の設置に限定する必要はない 仮に 現状では 独立社外取締役の適切な関与 助言 が得られてないという指摘があるのならば まず 委員会を設置していない会社において 独立社外取締役の適切な関与 助言 が十分得られていないのか 事実を検証すべきである (2) また 東証一部上場

Microsoft Word - N1222_Risk_in_ (和訳案).docx

資料 4 医療等に関する個人情報 の範囲について 検討事項 医療等分野において情報の利活用と保護を推進する観点から 医療等に関する個人情報 の範囲をどのように定めるべきか 個別法の対象となる個人情報としては まずは 医療機関などにおいて取り扱われる個人情報が考えられるが そのほかに 介護関係 保健関

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

博士論文 考え続ける義務感と反復思考の役割に注目した 診断横断的なメタ認知モデルの構築 ( 要約 ) 平成 30 年 3 月 広島大学大学院総合科学研究科 向井秀文

< F2D E968BC681698E968CE3816A817A C8250>

資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

サマリー記載について

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

医療機関群の具体的な設定について (1) 診調組 D 基礎係数に係る医療機関群の設定方針 ( 平成 23 年 9 月 7 日中医協総会承認 ) 平成 23 年 9 月 7 日の中医協総会において DPC/PDPS 調整係数の見直し 基礎係数の導入に伴い設定する医

ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱

Microsoft Word - M 平成30年度診療報酬改定の基本方針

柔軟で弾力的な給付設計について

[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

政策課題分析シリーズ14(本文2)

本事業の意義 実効性 ( 見直しの必要性 ) 医療情報データベース基盤整備事業 ( 平成 23 年度 ~ 10 協力医療機関 ) 日本再興戦略 ( 平成 25 年 6 月 14 日 ) 医療 介護情報の電子化の促進 医薬品の副作用データベースシステムについて データ収集の拠点となる病院の拡充や地域連

どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

4.2 リスクリテラシーの修得 と受容との関 ( ) リスクリテラシーと 当該の科学技術に対する基礎知識と共に 科学技術のリスクやベネフィット あるいは受容の判断を適切に行う上で基本的に必要な思考方法を獲得している程度のこと GMOのリスクリテラシーは GMOの技術に関する基礎知識およびGMOのリス

Microsoft Word - 【6.5.4】特許スコア情報の活用

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

1) 3 層構造による進捗管理の仕組みを理解しているか 持続可能な開発に向けた意欲目標としての 17 のゴール より具体的な行動目標としての 169 のターゲット 達成度を計測する評価するインディケーターに基づく進捗管理 2) 目標の設定と管理 優先的に取り組む目標( マテリアリティ ) の設定のプ

このジニ係数は 所得等の格差を示すときに用いられる指標であり 所得等が完全に平等に分配されている場合に比べて どれだけ分配が偏っているかを数値で示す ジニ係数は 0~1の値をとり 0 に近づくほど格差が小さく 1に近づくほど格差が大きいことを表す したがって 年間収入のジニ係数が上昇しているというこ

薬事法等の一部改正に伴う特許法施行令改正に係る事前評価書

< F2D D8791CC817995D28F578CE B38CEB94BD8966>

< F2D816994D48D FA957493FC816A >

IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

資料 1 SUT タスクフォース 意見取りまとめ (1) ー SUT 産業連関表の基本構成の考え方ー 2017 年 8 月 8 日国民経済計算体系的整備部会 部会長 SUTタスクフォース座長宮川努 1

Microsoft PowerPoint  税-1(平成28年度補てん状況把握)

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

<4D F736F F F696E74202D208ED089EF95DB8FE182CC8B8B957482C CC8CA992CA82B52E707074>

P00041

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

○○○の課題と検討

資料 2-2 SUT タスクフォース 意見取りまとめ (1) ー SUT 産業連関表の基本構成の考え方ー 2017 年 8 月 24 日国民経済計算体系的整備部会 部会長 SUTタスクフォース座長宮川努 1

1. 口座管理機関 ( 証券会社 ) の意見概要 A 案 ( 部会資料 23: 配当金参考案ベース ) と B 案 ( 部会資料 23: 共通番号参考案ベース ) のいずれが望ましいか 口座管理機 関 ( 証券会社 ) で構成される日証協の WG で意見照会したところ 次頁のとおり各観点において様々

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

医療事故調査・支援センター~センターの役割と手引~

( 図表 1) 平成 28 年度医療法人の事業収益の分布 ( 図表 2) 平成 28 年度医療法人の従事者数の分布 25.4% 27.3% 15.8% 11.2% 5.9% n=961 n=961 n= % 18.6% 18.5% 18.9% 14.4% 11.6% 8.1% 資料出所

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382C98AD682B782E D5F E646F63>

現状では法制度を工夫しても 違憲の疑いが強い

Microsoft Word - 第10回消費税分科会資料税1-1(1月6日段階暫定)④

14 日本 ( 社人研推計 ) 日本 ( 国連推計 ) 韓国中国イタリアドイツ英国フランススウェーデン 米国 図 1. 1 主要国の高齢化率の推移と将来推計 ( 国立社会保障 人口問題研究所 資料による ) 高齢者を支える

厚生労働省による 平成 30 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1) に対する 八王子介護支援専門員連絡協議会からの質問内容と八王子市からの回答 Q1 訪問看護ステーションによるリハビリのみの提供の場合の考え方について厚労省 Q&A(Vol.1) での該当項目問 21 問 22 問 23 A

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

野村資本市場研究所|顕著に現れた相続税制改正の影響-課税対象者は8割増、課税割合は過去最高の8%へ-(PDF)

図表 1 人口と高齢化率の推移と見通し ( 億人 ) 歳以上人口 推計 高齢化率 ( 右目盛 ) ~64 歳人口 ~14 歳人口 212 年推計 217 年推計

料 情報の提供に関する記録 を作成する方法 ( 作成する時期 記録の媒体 作成する研究者等の氏名 別に作成する書類による代用の有無等 ) 及び保管する方法 ( 場所 第 12 の1⑴の解説 5に規定する提供元の機関における義務 8 個人情報等の取扱い ( 匿名化する場合にはその方法等を含む ) 9

H28秋_24地方税財源

ミクロ経済学Ⅰ

<4D F736F F F696E74202D D94EF2D322D F948A4F8D9182C482CC94EF977091CE8CF889CA955D89BF82CC8A E

PowerPoint プレゼンテーション

16_27

<4D F736F F F696E74202D208E9197BF375F90DA8EED94EF977082CC82A082E895FB82C982C282A282C42E B93C782DD8EE682E890EA97705D>

終わりを告げ 新たに根拠に基づく医療 (Evidencebased Medicine; EBM) が登場した [2] このEBMは 科学的に検証されたデータに基づいて医学上の診断法や治療法を選択することを目指す考え方 科学的方法 および それらの実践的教育の体系化を意味した 科学的に検証されたデータ

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

障害年金認定の地域間格差是正に関する意見書

抗精神病薬の併用数 単剤化率 主として統合失調症の治療薬である抗精神病薬について 1 処方中の併用数を見たものです 当院の定義 計算方法調査期間内の全ての入院患者さんが服用した抗精神病薬処方について 各処方中における抗精神病薬の併用数を調査しました 調査期間内にある患者さんの処方が複数あった場合 そ

Microsoft Word - 2-① 補償ガイドライン平成27年版(本文)Ver3.1.1.do

臨床評価とは何か ( 独 ) 医薬品医療機器総合機構医療機器審査第一部方眞美

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

地方創生応援税制 ( 企業版ふるさと納税 ) の運用改善 ( 別紙 1) 平成 31 年度税制改正 企業版ふるさと納税の一層の活用促進を図るため 企業や地方公共団体からの意見等を踏まえ 徹底した運用改善を実施する 地方創生関係交付金と併用する地方公共団体へのインセンティブ付与 地方創生関係交付金の対

再生医療の制度的な対応の検討について 薬事法等制度改正についてのとりまとめ平成 24 年 1 月 24 日厚生科学審議会医薬品制度改正部会 1 再生医療製品については 今後も 臓器機能の再生等を通じて 重篤で生命を脅かす疾患等の治療等に ますます重要な役割を果たすことが期待される 特に ips 細胞

個人情報保護法の3年ごと見直しに向けて

Transcription:

イギリスの事例をふまえて 調査部副主任研究員飛田英子 目 次 1. はじめに 2. わが国の医薬品政策 (1) 薬事承認 (2) 薬価決定 (3) 問題点 3. 経済評価 ( 費用対効果 ) の考え方 (1) 効果指標の選択 (2) 費用指標の選択 (3) 費用対効果の算出方法 4. イギリスの取り組み (1) イギリスの公的医療制度の概要と経済評価導入の背景 (2)NICEによる経済評価 (3)NICEに対する批判 (4) 価値に見合った薬価設定システム 5. わが国へのインプリケーション J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 13

要 約 1. 本稿では わが国の医薬品政策の問題点を総括した後 先駆的取り組みで注目されるイギリスの事例を紹介し わが国へのインプリケーションを導く 医薬品政策の改善は 患者の利益向上はもちろん 新薬開発を通じた経済成長の促進 さらには医療費の効率化による財政健全化等 わが国の主要な政策課題解決に向けたカギの一つである 2. 公的医療制度のある国では 医薬品を給付対象にするか ( 保険収載 ) あるいは価格をいくらにするか ( 薬価決定 ) は一般的に政府が決める それは 保険収載と薬価決定が 新薬への患者アクセスや医療財政 医薬品企業の国際競争力に大きく影響するためである しかし わが国の医薬品政策はこうした影響が十分に考慮されているとは言い難い 第 1に わが国の保険収載の評価基準は品質 安全性および有用性にとどまり 経済性が無視されている 経済性の考慮とは いわばメリハリ付けである 費用対効果に優れる薬を積極的に保険収載し さらに高い価格をつけ そうでない薬を外し あるいは低い価格をつけることで 新薬開発を促すと同時に 医療財政の効率化を図るのである 第 2に わが国では薬価決定に際して医薬品のもつ本来の価値が全く考慮されない 例えば 新薬の価格は原価や類似品の価格が基準になるが 販売後の情報提供等に必要なソフトの費用は原価に算入されないうえ 大きな効果が見込まれても類似品がある場合には 類似品に引きずられる形で低い価格がつけられる さらに 上市後は 2 年ごとに流通価格をベースに機械的に引き下げられる このため 多額の研究開発費を投じて画期的な新薬を開発したとしても コスト回収に時間がかかり 企業の開発インセンティブを削ぐ結果を招いているとの指摘がある 3. 他方 海外では保険収載や薬価決定に 経済評価 を取り入れるのが一般的である その手法の一つが QOL( 生活の質 ) を考慮した生存年 (QALY)1 単位が改善するのにいくらの費用が必要かを定量的に求める 費用対効果 であり これを基準に保険収載の可否や薬価が決定される なかでも最も先駆的に取り組んでいるのがイギリスである 同国では 国立医療技術評価機構 (NICE) が新薬の経済評価を行い 既存薬に比べて1QALY 改善に必要な追加費用を考慮して公的医療制度の給付対象に推奨するか否かを判断する なお このような取り組みは新薬の患者アクセスを大きく左右するため 当然ながら国内の批判は小さくないが 終末期や小児の患者に対する基準を緩める等 様々な改善策も打ち出されている さらに 2009 年以降薬価制度の抜本的な見直しが進行中である 上市後に新たな効果が認められた場合には薬価を引き上げる等 価値に基づく価格 決定を徹底することにより 患者アクセスの改善を図るのと同時に 医薬品企業の高付加価値化が目指されている 4. わが国とイギリスでは医療制度や薬価の仕組みが異なるため こうしたイギリスの取り組みをそのまま導入することはできない しかし 経済評価という概念が医療費の抑制や医薬品企業の研究開発インセンティブ さらには患者の利益に寄与していることを考えると わが国にも経済評価の視点を取り入れるべきといえよう 具体的には 次のような環境整備が求められる 第 1に そもそも何を 14 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

もって 効果 とするのかといったこと等についての国内統一ルールの作成や評価を担う人材の育成 診療記録の電子化等 費用対効果を評価する諸体制の構築である 第 2 に 価値に見合う価格決定に 向けた薬価制度の根本的な見直しである 第 3 に 特に倫理面での国民理解の確保である J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 15

1. はじめに医療 介護分野に成長産業としての期待が集まっている これまでも歴代内閣の成長戦略で主要項目として取り上げられてきたのに続き 昨年末に発足した新政権の産業競争力会議でもメイン分野として取り上げられている なかでも 医薬品は世界的に高い成長が見込める有望分野の一つである IMS Healthによると 世界の医薬品の市場規模は2011 年の9.6 千億ドルから2016 年には12 千億ドルに年平均 3 6% の成長を続ける見通しである 医療保険財政の悪化が深刻化するなか わが国の医薬品産業の成長を高めるには積極的に外需を取り込む必要がある 欧米企業に比べてどれだけ新薬を開発できるかが今後の行方を握るカギともいえよう ところで 公的医療制度のある国では 医薬品を保険給付や償還の対象にするか否か あるいは医薬品の価格をいくらに設定するかについて 政府が決めるのが一般的である 医薬品 とくに新薬の開発は 患者の利益に大きく資するのみならず 世界市場のシェア拡大にも貢献する しかし 同時に医療費の増加につながり 最終的には国民負担の増加に帰着する そこで 海外では新薬の給付適用や薬価の決定に際して 品質 有効性 安全性に加えて 経済評価 を活用する動きが広がっている 費用対効果に優れた新薬を給付対象にすると同時に 価値のある医薬品に対しては高い価格を保障することで 医療費の増加抑制と国内医薬品企業の開発インセンティブ向上の同時達成が目指されている 一方 わが国では 保険適用に際しては品質 有効性 安全性が専ら重視され 経済性はほとんど考慮されない また 薬価についても 医療費抑制の観点から価値とは関係なく低めに設定され その後も段階的に引き下げられるシステムになっている 世界市場で競争する国内企業にとっては厳しい環境といえ こうした悪条件がわが国企業の国際競争力にマイナスに働いているとの指摘もある そこで 本稿では医薬品政策に積極的に経済評価を適用しているイギリスの取り組みを整理し わが国へのインプリケーションを探ることとする 構成は次の通りである まず 2. でわが国の医薬品政策を保険適用と薬価決定について概観する 続いて3. で経済評価の考え方を整理し 4. で実際にイギリスにおいてどのように適用されているかをみる 最後に 5. でわが国に経済評価を導入するに際して必要な視点や対策を考察する 2. わが国の医薬品政策わが国の医薬品の市場規模は2011 年で9.4 兆円であり うち保険給付の対象として医師の処方を受けて初めて購入できる 医療用医薬品 は8.7 兆円と9 割超を占める ( 注 1) 企業が新たに製造する医薬品が保険給付の対象になるためには 医薬品として製造 販売が認められたうえで ( 薬事承認 ) 公的医療保険でカバーされるサービスの価格表 ( 医薬品の場合は 薬価基準 ) に収載される必要がある ( 保険収載 ) 薬価基準に収載される時点ではすでに当該医薬品の薬価が決まっているので 保険収載のプロセスは新薬の薬価決定とほぼ同じと位置付けることができる これらのプロセスはすべて政府によって行われる 具体的に 1 薬事承認 2 薬価決定 に分けてみると以下の通りである 16 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

(1) 薬事承認 薬事承認に関する審査は 医薬品医療機器総合機構 (PMDA:Pharmaceutical and Medical Device Agency) が担当する PMDA は 2004 年に設立された独立行政法人であり 承認審査の他に 医薬品の 副作用による健康被害に対する救済 ( 健康被害救済 ) や 市販後の安全性に関する情報の収集 分析 提供 ( 安全対策 ) を主業務としている 図表 1 は 承認審査業務のフローチャートである まず PMDA は企業から提出された申請資料の 内容の信頼性に関して調査した後 外部専門家と の協議を踏まえつつ品質や薬理 臨床等について 審査し 結果を厚生労働大臣に提出する 厚労大 臣は薬事 食品衛生審議会に諮問し 答申をもと に承認 非承認を最終決定する このプロセスは 1997 年から導入され 当初は調査 審査に最低で も 2 年程度かかっていたが 人員体制の強化や審 査業務の迅速化を進めた結果 現在では特段の問 題がない場合は申請受付から承認まで 12 カ月が目 標とされている (2) 薬価決定薬事承認を受けた医薬品が保険収載されるためには 企業は保険適用希望書を厚労省に提出し 審査を受ける必要がある 厚労省は企業から提出された薬価算定に係る資料を基に 保険適応の可否を決定し 薬価算定案を作成する その後 企業との交渉を踏まえて 最終的に中央社会保険医療協議会 ( 中医協 ) の了承のもとに決定される 仮に交渉が決裂した場合 薬価は決まらないので 薬事承認されても保険収載はされないことになる ちなみに 保険収載は 薬事承認から原則 60 日以内 最長 90 日以内になされるべきというルールがある ここで 薬価決定のメカニズムについて簡単に整理しておきたい 薬価の算定ルールは新薬と既存薬で異なり 新薬では 同じ効果を持つ類似薬が存在する場合は 類似薬効比較方式 存在しない場合は 原価計算方式 既存薬については R 幅方式 が適用される ( 図表 2) まず 原価計算方式は 製造 ( 輸入 ) 原価に販売費および一般管理費 営業利益 流通経費 消費税を加えて薬価を求める 一方 類似薬効比較方式は 1 日当たりの薬の費用が既存類似薬と等しい水準をベースに 既存薬に比べて有効性や画期性に優れている点が認められれば加算を行う その後 外国価格との調整や規格間の調整が行われたうえで最終的な薬価が決まる 次に 既存薬のR 幅方式は 実勢価格の加重平均に 市場流通の安定のための調整幅として一定幅 ( R% 現在は2%) を加えた額を新しい薬価とする ( 注 2) なお 既存薬の価格改定は 2 年ごとの薬価改定で行われる このようにわが国では 医薬品の価格は 新薬として市場に流通した時 ( 上市時 ) に原価や類似品価格を基準に決められた後 2 年ごとに実勢価格に引きずられる形で下げられる構造になっている この J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 17

ため 多額の研究開発費を投じて新薬を開発しても そのコストの回収に時間がかかり 革新的な新薬の創出への対応が遅れる結果を招いているとの指摘があった そこで 2010 年度から 新薬創出 適応外薬解消等促進加算 が試験的に導入されている 保険収載後 15 年以内で後発医薬品が収載されていない 薬価差益が全医薬品の加重平均を超えない 等の条件を満たす医薬品については 実勢価格に関係なく薬価が据え置かれることになった (3) 問題点以上がわが国の保険収載と薬価決定の仕組みである 審査業務の迅速化や新薬開発型企業への配慮等 随時見直しや改善が講じられているものの 問題点も指摘されている ( 長坂 [2006] 他 ) ひとつは 保険収載プロセスで経済性が無視されている点である 新薬が保険適用されれば 治療の可能性が広がるので患者にとっては大きなベネフィットとなる しかし同時に 新薬の開発には多額の費用が必要なのでその価格は当然高くなり その利用が広がる場合には保険財政を大きく圧迫することになる 医療費に制約がない場合には無制限に新薬の利用を促進できるが 保険料率や税収に限界があることを考えると 限られた財源をどの治療に優先的に配分するか あるいは 既存薬に代わって新薬を投与した場合にどの程度の改善が見込まれるのかという効果と費用を比較し 小さな効果しか見込めないのに高額な医薬品を保険適用から外すといったメリハリが必要になってくる こうしたなか 医療サービスや医薬品の公定価格を審議する中医協では費用対効果評価専門部会が 2012 年 5 月にスタートした 革新的な医薬品や医療機器の保険収載を判断したり価格を決める際に 品質や有効性 安全性に加えて費用対効果の視点を考慮すべきかが今後議論されることになる ちなみに わが国でも薬事申請の際に 経済性 の評価として費用対効果に関する資料の添付が1992 年から認められている もっとも その割合は2000 2002 年の23%( 注 3) から2006 年度以降は3% 18 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

( 注 4) に大きく減少している もう一つは わが国の薬価システムが新薬開発インセンティブにマイナスに働いている点である こ れは 上市時の価格設定やその後の価格改定で 医薬品の持つ本来の価値が全く考慮されないためであ る まず 上市時の価格についてみると 類似医薬品の存在の有無によって類似薬効比較方式か原価計算 方式が適用されるが いずれも新薬にどの程度の治療効果があるのかといった価値を算定根拠にしてい ない それどころか 本来の価値より低めに価格が設定される傾向にあることが指摘されている 例え ば 類似薬効比較方式では 既存薬の相対的に低い薬価によって最新薬の価格が引き下げられる 画期 性や有用性を評価した加算があるものの 基準が厳しすぎて適用されるケースが極めて少ない 等が指 摘されている また 原価計算方式でも 正確な原価の把握が困難である ( 固定費のプロジェクト間案 分の問題 原価計算過程で使用される各種係数が業界平均値であり新薬開発型企業にとって不利 等 ) 原価の対象がモノに限定され副作用の情報提供等のソフトの価値が無視される 等が問題視されている 一方 既存薬については 大病院や巨大卸のバーゲニング パワーにより実勢価格が常に公定価格を 下回る市場構造のもと 改定のたびに薬価は引き下げられることになる 新薬創出 適応外薬解消等促 進加算の導入によって後発医薬品が収載されない医薬品については価格の維持が図られることになった が いったん後発医薬品が上市された場合には 次の改定でそれまでの加算分が実勢価格ベースで算定 される薬価からさらに引き下げられるというペナルティが課される さらに 保険収載後 10 年以内の医 薬品を対象に 年間販売額が上市時の予想販売額の 2 倍以上 かつ年間 150 億円を超えた場合には 最大 25% 薬価を引き下げるという 市場拡大再算定ルール がある つまり 折角画期的な新薬を開発して 市場を拡大したとしても 価格が恣意的に引き下げられるのでそのまま売上高の増加に結び付かないこ とになっている このような 頑張った者が報われない わが国の薬価システムは 企業の研究開発意欲を削ぎ わが 国医薬品産業の国際競争力を弱める結果を招いているとの指摘がなされてきた 中村 [2010] によると 1990 年代前半は欧米と同程度であったわが国発の 新薬数のシェアは 2000 年代以降はヨーロッパの 半分 アメリカの 3 分の 1 程度にまで落ち込んで いる 国際競争力の弱まりは 輸入品のシェア拡大か らも確認することができる ( 図表 3) 医療用医 薬品の国内市場が 1990 年の 5.1 兆円から 2011 年に は 8.7 兆円に拡大するなか 輸入品は 0.5 兆円から 2.5 兆円に 5 倍に急増した この結果 市場全体 に占めるシェアも 9% から 29% と 現在では約 3 割に達している ( 注 1) 厚生労働省 薬事工業生産動態統計調査 なお 医療用医薬品の他には 消費者が薬局で医師の処方なしに直接購入でき J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 19

る 一般用医薬品 ( いわゆるOTC 医薬品 ) 等がある ( 注 2) 一般に 医療機関は公定価格を下回る価格で医薬品を購入している この実勢価格との差額は 薬価差益 と呼ばれる ( 注 3) 池田 [2004] 2000 年 12 月 2002 年 12 月に薬価収載された82 成分のうち19 成分で提出あり ( 注 4) 中医協議事録 (2012 年 6 月 27 日 ) 2006 年度以降に収載された267 成分のうち8 成分で提出あり ( 確認ベース ) 3. 経済評価 ( 費用対効果 ) の考え方では 海外ではどのような医薬品政策が採られているのであろうか 保険収載や薬価決定の具体的なプロセスは国により異なるが 医療技術評価 (HTA) という手法が共通して採用される傾向にある ここで HTAとは 医薬品や医療機器 診断 治療などの医療技術が 健康改善に有効かという医学的側面 社会にどのような影響を及ぼすかという社会的側面 健康改善のためにその技術を用いることが費用に見合うかという経済的側面から 包括的に評価すること ( 注 5) をいう 世界で初めて国立の HTA 機関が1987 年にスウェーデンで誕生したのに続き 現在では欧米のみならずアジア諸国でもHTA を管轄する公的機関が設立されている ( 注 6) 経済評価の手法の一つとして幅広く活用されている 費用対効果 を例に 具体的な仕組みをみていくと 以下の通りである ( 注 7) (1) 効果指標の選択まず 効果を表す指標を選択する 具体的には 1 生存年 2 疾患ごとに定められた治癒 ( 治療目的 ) を達成した割合 3 糖尿病でのHbA1C 等 対象となる疾患の状態を表す特定の検査値 等があるが 生存年では異なる疾 患間の比較が可能だが 生活の質 ( いわゆる QOL:Quality of Life) が考慮されない 治癒率や臨床検査値ではデータの収集が容易であるが 異なる疾患間の比較ができない等 各々長所と短 ( 図表 4) 効果指標の種類 効果指標利点欠点 生存年 質調整生存年 (QALY) 異なる疾患間の比較が可能 臨床試験等での指標が活用可能 生存年とQOLの双方を考慮 異なる疾患間での比較が可能 治癒率 ( 治療目標達成率 ) 臨床試験等での指標が活用可能 臨床検査値 データの入手が容易 ( 資料 ) 中医協資料等を基に日本総合研究所作成 QOL が考慮されず データ収集が困難 データ収集が困難 QOL の定量化が困難 異なる疾患間での比較が困難 治癒 の定義が困難 判断基準を個々の疾患毎に設ける必要 異なる指標間での比較が不可能 当該医療技術の効果を表すとは限らない 判断基準を個々の指標毎に設ける必要 所がある ( 図表 4) そこで 多くの国では質調整生存年 (QALY: Quality Adjusted Life of Years) が効果指標として活用されている 図表 5はQALYの概念図である 完全な健康を1 死亡を0とする効用値としてQOLを設定し 患者のQOLを新薬 既存薬の別に一定期間ごとにグラフ化する 両者の間に挟 まれた部分の面積が既存薬に比べた新薬の効果で あり QALY 単位で表示される QOL の設定や 20 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

データ収集が難しいという問題はあるものの 生存年と異なり QOL が考慮されるうえ 海外ではすで に一定の運用実績が上がっている (2) 費用指標の選択 費用指標としては 直接医療費 直接非医療費 間接費の大きく3 種類がある ( 図表 6) まず 直接医療費は公的医療制度における医療費で 患者自己負担を含む 次に 直接非医療費は医療費以外に実際に生じる費用を示し 通院時の交通 ( 図表 6) 費用指標の種類 費用指標内容 直接医療費公的医療費 ( 含む自己負担 ) 直接非医療費 本人や家族が支払う医療費以外の費用 通院の交通費 補装具費 保険対象外の薬剤費 等 間接費用 仕事ができないときの労働損失 ( 機会費用 ) ( 資料 ) 中医協資料等をもとに日本総合研究所作成 費や補装具等の公医療制度の対象にならない支出や 公的介護保険における介護費等が含まれる 一方 間接費用は仕事や家事ができない時の労働損失 いわゆる 機会費用 である 実際に金銭のやり取りが生じるわけではないうえ 医療費に比べて間接費用の金額が大きい場合には 医療費の効率性の観点からの判断が困難になる このため 経済評価の際に間接費用を考慮するとしている国でも 間接費用を含めないベースでの分析を同時に実施するのが一般的となっている ( 注 8) (3) 費用対効果の算出方法費用対効果を定量的に求める場合 分子の費用は金額で表わすことができるが 分母の効果はいずれの指標を用いたとしても金銭表示が難しい また 分母の大きさによって結果が大きく異なるケースもでてくる ( 注 9) そこで 効果 費用ともに差分を取って費用対効果を測る計算方法が広く用いられている これを 増分費用効果比(ICER:Incremental Cost Effectiveness Ratio) という 既存薬から新薬に替えることで 治療成果は改善するが 一方で莫大な費用もかかる 倫理的側面に立てば いくら費用がかかろうとも人命を重視すべきであるが 仮にそれにより保険財政が破綻することになれば 国民全員が十分な医療を受けることができなくなる こうした場合 追加的な費用が幾らまでならば社会的に許容されるかが重要になってくる こうした視点を世界で初めて実際に政策に反映させたのがオーストラリアである 同国は1993 年に医薬品を公的保障の対象に含めるか否かに際しての評価基準に費用対効果を取り入れ 現在ではこうした手法が世界の主流になっている このうち最も先駆的に取り組んでいるのがイギリスである 同国は医薬品を含む医療技術の評価に費用対効果を積極的に取り入れる一方 これによって生じる諸問題に柔軟に対応することにより 資源の有効配分や医療の質の改善 新薬開発インセンティブの強化等が目指されている ( 注 5) 個人や集団の健康増進 疾病予防 検査 治療 リハビリテーション及び長期療養の改善のための保健医療技術の普及と利用の意思決定支援を目的として行うものであり 当該医療技術を適用した場合の効果 影響について 特に健康結果を中心とした医学的な側面 経済的な側面及び社会的な側面から 総合的かつ包括的に評価する活動 ( 医療技術評価の在り方に関する検討会報告書 1997 年 6 月 27 日 ) J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 21

( 注 6) 国立のHTA 機関を擁さないわが国やアメリカは少数派である ( 注 7) この他 経済評価には一定の効果のもとで費用を比較する費用最小化分析 効果をすべて金銭価値に置き換えて費用との関係を比較する費用便益分析 等がある ( 注 8) 間接費用を含めない国としてはイギリス フランス カナダ オーストラリア等 一方 含める国としてはスウェーデン ノルウェー オランダ 韓国等 ( 注 9) 例えば 新しい治療法によってケースAではQALYが1から2に ケースBでは10から11に改善するとする 費用はA B ともに100 万から150 万円に増えるとする このとき ケースAでは1QALY 当たりの費用が100 万円から75 万円に減るので 新しい治療法の方がコスト的に有利である 一方 ケースBでは10 万円から14 万円に増えるので 旧い治療法の方が有利になる このように QALYを1 単位改善するのに必要な費用が50 万円であるにもかかわらず 分母の大きさによって結果が逆転する事態が生じることになる 4. イギリスの取り組み イギリスの取り組みについて見る前に 同国の公的医療制度の概要と 経済評価が導入されるに至っ た背景について簡単に整理しておきたい (1) イギリスの公的医療制度の概要と経済評価導入の背景イギリスの公的医療制度は 税を財源とするNHS(National Health Service) である 患者は歯科や医薬品を除いて原則自己負担ゼロで医療を受けることができる一方 初診が登録医 (GP:General Practitioner) に限定される 専門医の診療を受ける場合には登録医の紹介状を必要とする等 アクセス面で一定の制約を受ける 低い自己負担で懸念されるモラル ハザードを防止するには いわゆるゲート キーパーによる受診のコントロールが不可欠なためである また 予算の管理は地域単位で行われており 医療として必要な治療か否か 公的医療制度でカバーされる新薬か否か 等の判断は各地域によって異なっている こうした仕組みは 予算管理の面では優れているかもしれないが 患者の医療アクセスの平等性という面では問題がある 患者が受ける医療は 自身が登録するGPの能力や居を構える地域の医療政策によって大きく左右されるためである こうした医療の地域間格差 ( 郵便番号を使った当たりくじ(Postcode lottery) といわれる) を是正するために導入されたのが経済評価である 例えば 一般に新しい医薬品や医療機器は価格が高いので 公的医療制度の対象に含めるか否かは 予算状況や政策担当者の判断等により地域で異なる結果となる可能性がある そこで 国が費用対効果のエビデンスに基づいて客観的 定量的な診療ガイドラインを示すことができれば 地域間の判断のバラツキの解消 ひいては地域間のアクセスの公平性の確保が実現されることになる 経済評価が導入されたもう一つの背景は 資源の有効配分の必要性の高まりである 医療技術の進化にともなって医療コストの増加圧力が強まるなか 高額な医療技術を公的医療制度のもとであまねく提供していくには限界がある 仮に公的保障対象の決定に際して何らかの優先順位を決めることができれば 国民の最大公約数的な合意を備えた医療制度を限られた予算内で維持することができる この優先順位の判断基準として経済評価が導入されることになったわけである (2)NICE による経済評価 イギリスで経済評価を担うのは国立医療技術評価機構 (NICE:The National Institute for Health 22 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

and Clinical Excellence) である NICE の主な業務は 診療や公衆衛生 医療技 術に関するガイドラインの作成であり 新薬の評価は医療技術に関するガイダン ス ( 指針 ) として示される そこで 経 済評価の方法とガイダンスの内容および 経済評価に対する国内の評価 について みると 以下の通りである まず 経済評価の方法は Guide to the Methods of Technology Appraisal に詳しく掲載されており 図表 7 はその 概要である 現在のガイドは全 80 ページ から成る第 3 版 (2008 年 6 月発行 ) で 第 2 版 (2004 年 4 月 ) の全 54 ページから 大幅に内容が拡充されている これによると 例えば新薬の経済評価は既存薬と比べた場合の増分費用 (ICER) で測られ 1QALY 当たり何ポンドかで表示される この値を閾値である 2 万 3 万ポンドと比較して 当該新薬の経済性 が評価されることになる 発行者 NICE 次に この結果を踏まえて NICE から新薬の NHS での使用についてガイダンスが出される リスト アップされた医薬品のみが保険収載の対象になるわが国のポジティブ リスト方式と異なり イギリス では使用禁止の医薬品のみが一覧表に示され 残りは原則自由というネガティブ リスト方式が採用さ れている このため ガイダンスは NHS での使用を 1 推奨する 2 一部集団にのみ推奨する 3 推 奨しない の 3 通りで示される NHS での使用が推奨されない場合 医師は当該医薬品を患者に提供 することができるが NHS からの償還を受けられない可能性が高まる このため 3 の非推奨は事実 上非承認と同じ効力を有することになるとされている ( 図表 7)NICE による経済評価の概要 目的 NICE の評価において医療技術評価の原則と方法の概要を提供すること アウトカム ( 効果 ) 指標生存や QOL に影響を与える指標 QALY が望ましい 費用指標 NHS と対人福祉サービスの立場から見た費用 間接費用は含まない 対象期間医療技術間のアウトカムや費用の差を反映するために十分長い期間 割引率効果 費用ともに 3.5% 結果が大きく影響を受ける場合は 0~6% 費用対効果の表示 QALY を 1 単位上げるのに必要な追加費用 ( 増分費用効果比 ICER) 望ましい値 ( 閾値 ) は 20,000~30,000 ポンド ( 資料 ) 池田 [2005] 等を基に日本総合研究所加筆 修正 ちなみに 2000 年 3 月 1 日から 2012 年 12 月 31 日に評価された医療技術 498 のうち 何の問題もない推 奨が 300 限定つきの推奨が 84 研究のみでの使用が 25 非推奨が 70 であった ( この他 経済性以外の 理由で評価から外れたものが 6 企業からデータ提出拒否を受けたものが 13) (3)NICEに対する批判 NICEによる経済評価の対象はすべての医療技術ではなく 国の医療財政に大きな影響を与えるような比較的高額なもの あるいは使用に地域差がみられるものに限られている また 1QALY 当たりの費用についても 必ずしも3 万ポンド以下である必要はなく 確実な成果が見込まれる場合や 革新性があり測定しきれない実質的な効果が明らかに期待される場合には推奨される余地が残されている しかし NICEの判断は患者の医薬品へのアクセスに大きな影響を与えるため 推奨されなかった場合には患者団体や医薬品企業からの反発は不可避である 例えば 2006 年には軽度のアルツハイマー型 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 23

認知症治療薬に対して 経済性の理由によりNHSでの使用が中等度の治療に制限されたことを受け 患者団体と医薬品企業がNICEを提訴するという事態に至った そこで 2008 年末以降 NICEとNHSから様々な措置が講じられている 例えば 1 終末期において一定の延命効果の認められる抗がん剤等の医薬品について費用対効果の閾値を緩和する 2 公定価格を変えずにNHSの薬剤費負担の一部を実質的に企業に肩代わりさせる 3 余命 24カ月以内で一定の条件を満たす ( 注 10) 場合に限ってQALYの算定に用いる際の効用値を健常人と同値にする 4 分析期間が30 年超の小児疾患等については効果の割引率を1.5% に引き下げる 等である こうした追加的な見直しに加えて 価値に基づく価格 (VBP:Value Based Pricing) の実現に向けて薬価制度の抜本的な改革も進行中である NICEによる経済評価が正しい結果であるためには 比較対象となる既存薬の価格がその価値に見合っていることが前提となるが 現在のイギリスの薬価は必ずしも価値を反映していないとの指摘がある また 価値に基づく薬価が実現されれば NHSは価値を上回る余計なコストを負担する必要がなくなる 次節では 薬価改革の内容を整理することとする (4) 価値に見合った薬価設定システムイギリスの薬価制度は 医薬品価格規制制度 (PPRS:Pharmaceutical Price Regulation System) と呼ばれ その最大の特徴は医薬品企業が一定の制約下で原則自由に価格を設定できることにある ( 注 11) 安定した収益が見込めることから企業にとっては望ましい制度であるが 価格が必ずしも価値を反映していないとの指摘もある そこで 2009 年にPPRSの見直しが行われたのに続いて 2014 年からはVBPへの移行が予定されている 2009 年改革の内容と2014 年以降の制度の概要は 以下の通りである 2009 年改革の柱は 1 価格弾力制と2 患者アクセス保障の2 点である いずれも費用対効果を柔軟に測定することにより 患者アクセスの改善を図る内容となっている まず 価格弾力制は 市販後に新しいエビデンスや適応の拡大が認められれば1 回に限り薬価を最大 30% 引き上げることができる制度である 逆に 良い情報が得られなければ薬価は引き下げられることになる 一方 患者アクセス保障は 費用対効果の問題でNICEの推奨が難しい場合に患者のアクセスを確保するための措置であり 具体的には支払調整方式とアウトカム調整方式の二つの方法がある 支払調整方式とは 薬価は据え置いたまま値引きやNHSへの払い戻しにより実質的な価格を引き下げ 費用対効果が許容範囲に改善すればNHSでの使用を可能にする仕組みである また アウトカム調整方式とは 1 将来 NICEと合意したエビデンスが得られれば価格を上げる 2 得られなければ価格を下げる 3 NHSでの使用を認める代わりに患者をモニタリングし 期待された効果が得られたか否かに応じて価格を調整する ( リスク シェアリング ) の三つの方法がある 次に 2014 年以降に導入予定であるVBPについては その詳細は未定であるものの 2010 年 12 月に保健省から出された諮問文書 A new value-based approach to the pricing of branded medicines : a conclusion のなかで基本的な考え方が示されている これによると VBPにおける新薬の価値は 新薬がもたらす便益と 同額を他のNHS 患者に投じた 24 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

場合に得られる便益を比較して評価される 評価に際して用いられる閾値は NICEのように1QALY 当たり一律の金額ではなく 新薬がもたらす便益に重みづけして設定される 具体的には まず標準的な閾値が設定され 1 重症あるいは医療ニーズの高い疾患に対する医薬品 2 革新性の高い医薬品 3 社会的便益が大きいと認められる医薬品 については閾値を引き上げる 企業は 閾値の範囲内で自由に価格を設定することができる しかし より高い価格を希望する場合には 上記 1 3に該当することをエビデンスで示すことが求められる このように イギリスでは経済評価の導入 見直しと薬価制度の抜本改革が同時並行で進められており 薬価については企業に価格決定権を残す一方で 価格にふさわしい価値であるかが厳しく問われることになる 医薬品企業は一層の研究開発への取り組みを余儀なくされるものの NICEガイダンスの推奨を得られれば処方数の確実な増加を見込むことができる このようにみると イギリスでは 限られたNHS 予算のもとで 医薬品企業の高付加価値化に向けた環境整備と真に価値のある医薬品に対する患者アクセスの改善の同時達成が目指されているといえよう ( 注 10) 具体的には 1 余命が24カ月以内 2 既存治療に比べて明確な延命効果 3 代替治療が存在しない 4 適応となる患者数が少ない ( 注 11) 具体的には 1 利益率に上限が設けられる 利益率規制 2 最初の値決めは自由だがその後の値上げに関しては規制を受けるという 価格規制 3NHSとの再交渉により価格が下がることもあるという 価格削減 の三つ 5. わが国へのインプリケーションイギリスとわが国では医療制度や薬価の仕組みが異なるため イギリスでの取り組みをそのままわが国に適用することはできない しかし 経済評価という概念が医療費の抑制 医薬品企業の研究開発インセンティブ さらには患者ベネフィットの向上に寄与していることを踏まえると わが国にも経済評価の視点を取り入れるべきであろう そこで そのために必要な対応を整理すると 以下の通りである 第 1は 経済評価導入に向けた環境整備である わが国では PMDAが医薬品や医療機器の承認審査を担っているが 経済性はほとんど重視されていない 図表 8は各国のHTA 機関と経済性評価に関するデータ提出の必須化の状況を示したものであるが 先進国のみならずアジア 諸国でも保険の承認や薬価の決定に経済性データが活用されていることが分かる これに対してわが国では参考資料としての提出が可能になっているだけで 医薬品政策に活用されることはない そこで まず経済評価に関する国内統一ルールの作成が必要 ( 図表 8) 各国の HTA 機関および経済性評価データ提出の必須化 HTA 機関 経済性評価に関するデータ提出の必須化 オーストラリア PBAC カナダ CADTH イギリス NICE 韓国 HIRA ( 新薬のみ ) 中国 PE center シンガポール PEDU 台湾 HTA/CDE タイ HITAP フィリピン PhiHealth HTA Committee 日本 PMDA 薬価申請時に参考資料として提出可 ( 資料 )CRECON ホームページ ( 注 ) は必須 は必須ではないものの償還の決定に活用 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 25

になる 具体的には 効果指標や費用指標として何を用いるか 効果指標としてQALYを採用する場合にはQOLをどう定義するか 割引率を何 % に置くか 等についてガイドラインを示すことが求められる また 費用対効果を評価する人材の育成も課題である NICEでは40 50 人の専門職員が技術評価を担当しているが 日進月歩の勢いで進化する医療技術を前にマンパワー不足が問題となっている 今後 わが国が経済評価を行っていくためには 医療や計量の技術を備えた人材を早急に育成 確保することが課題となる この他 医薬品企業にとっては経済性評価に関するデータの提出が義務化されることになるため 診療記録の電子化をはじめとする体制整備も必要となろう 第 2は 薬価制度の見直しである わが国の薬価は政策的側面から決められることが多く 仮に上市時に原価を反映した価格付けがされたとしても その後は2 年ごとの改定の度に引き下げられる等 本来の価値が反映されているとは言い難い こうした状況がわが国企業の国際競争力を弱めていることは上述の通りであり 医薬品産業を成長産業のひとつに掲げるのであれば 政府に対しては まずわが国特有の歪んだ価格構造を改めることが求められよう ちなみに イギリスの目指す価値に見合う価格体系がわが国で実現した場合 改定の度に薬価を下げてきたこれまでの場合に比べて薬剤費は総額で増える可能性は否定できない しかるに わが国で高付加価値な医薬品が開発されれば 海外シェアの拡大を通じてその利益は国内に還元されるうえ 患者にとっても医薬品の価値を価格を通じて知ることができれば大きなメリットともいえよう さらに 国民理解の確保をはじめ倫理面への対応も重要である 経済評価を保険収載や薬価決定に活用する場合 患者数が少ないために高価にならざるを得ない医薬品等は費用対効果の観点から承認されない可能性が高まる また イギリスのケースのように 症状の程度によって使用が認められる者と認められない者が出てくるといった事態も想定される こうした患者アクセスの制限については 当然ながら倫理面からの反対意見は不可避であろう 実際 イギリスでも人命を金銭で測るような仕組みに対して根強い抵抗がある模様であり ゲート キーパー制がなく医療機関へのフリー アクセスが保障されているわが国では とくに反発は大きなものになると予想される 無尽蔵に保険給付を認めれば医療財政が破綻するというリスクについて地道に国民に理解を求めていくと同時に 経済評価の方法を柔軟に見直すことが不可欠といえよう 最後に 医薬品産業は有望な成長分野の一つと期待される一方で 保険収載や価格設定に関する政策はグローバル スタンダードとはかけ離れた独自色の強い内容のままである わが国医薬品産業の国際競争力の強化と患者利益の向上を両立するためには 国の全責任のもとで品質 安全性 有効性のみを評価基準とするこれまでの構造から 企業や患者に一定の自己責任を求めつつ 経済性という評価基準を取り入れていく構造に転換する必要があると考える 新政権に対しては 経済成長や規制緩和といった個別のアプローチではなく 横断的 総合的な観点で取り組むことを期待したい (2013. 3. 11) 26 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5

参考文献 [1] 池田俊也 [2005]. 薬剤経済学研究の政策決定への利用と研究ガイドライン 医療技術 医薬品 pp.71-100 [2] 池田俊也 小野塚修二 [2004]. 医薬品の価格算定と薬剤経済学 応用への道筋 医薬産業政策研究所リサーチペーパー シリーズNo.19 [3] 医薬経済学フロンティア研究会 [2009]. ドイツIQWiG 医療技術評価ガイドライン その概要と意義 社会保険旬報 No.2409 pp.18-25 [4] 大日康史 菅原民枝 [2005]. 医療 公衆衛生政策における費用対効果分析とその応用 フィナンシャル レビュー July-2005 pp.164-196 [5] 葛西美恵 [2011]. 英国における医療経済評価の政策利用と日本への示唆 日本医療 病院管理学会誌 Vol.48 No.4 pp.25-33 [6] 葛西美恵 小林慎 池田俊也 [2011]. 医療技術評価(HTA) の政策立案への活用可能性 ( 後編 ) 海外の動向とわが国における課題 医療と社会 Vol.21 No.3 pp.233-247 [7] 白岩健 福田敬 [2009]. イギリスPPRS 改革と薬価制度における医療経済評価の適用可能性 社会保険旬報 No.2389 pp.6-11 [8] 白岩健 福田敬 渡辺茂 津谷喜一郎 [2009]. イギリスNICEにおける医療技術評価の現状と医療技術ガイダンスのレビュー 医療経済研究 Vol.21 No.2 pp.155-169 [9] 全国保険医団体連合会 [2012]. 公正で透明な薬価制度改革 のための要望書 2012 年 11 月 8 日 [10] 長坂健二郎 [2006]. 日本の薬価制度 そのメカニズムとインプリケーション 大阪阪大論集 第 57 巻 第 1 号 pp.71-96 [11] 中村洋 [2002]. 革新的医薬品に対する薬価算定方式としての原価計算方式の妥当性に関する経済分析 医療経済研究 Vol.11 pp.43-61 [12] 中村洋 [2005]. 新たな薬価制度構築に向けて: 医療保険財政の健全化と革新的医薬品促進の両立に向けて 医療と社会 Vol.15 pp.97-108 [13] 中村洋 [2010]. 医薬品産業の課題と国民 患者の視点に立った 成長戦略 社会保険旬報 No.2410 pp.47-53 [14] 中村洋 [2010]. 新薬創出 適応外薬解消等促進加算 の意義と課題 社会保険旬報 No.2431 pp.30-31 J R I レビュー 2013 Vol.4, No.5 27