2 contents( 目次 ) 特集新たなセーフティーネットトピックス会議だより地域コミュニティミルクパーラー丹戸靖の おいしい酪農経営の話 技術情報公庫からのお知らせ家畜改良事業団からのお知らせ窓シリーズ酪農テレックス28122022262728293038表紙写真 2017.12 撮影 (A N) 表紙写真は 12 月 5 日某所温泉に浸かり 庭園に舞い降りた雪に魅了されスマホにてショットしたものです 季節は 本格的に冬本番を迎え 氷点下を記録する日も増してくるものと思います 酪農家の皆様にとっても 牛舎に設置のウオーターカップや水道の凍結で 何かと作業に支障が生じるものと思います 水 身体も凍る時期は 血行促進 癒やしの場を求めて温泉にでも どっぶり 浸かってみられては如何でしょうか 何をゆうとるんじゃ忙しゅうて そがん事にゃーなりゃせんけえ - とおっしゃる方もあるかもしれませんが どうぞ どうぞ そこは段取りをつけて足を運んでみて下さい 温泉に浸かりますと 血行が促進され硬直した筋肉がほぐれ体調管理の点でも有効とされます 血行が良くなると心も穏やかになると言われます 温泉嫌いな方 是非一度お試し下さい 平成三十一年一月 農業者対象の収入保険制度がはじまります!保険加入希望者は 早めのご準備を (12 月 15 日 ( 金 ) 農水省による収入保険説明会 )
3 特集新たなセーフティーネット一.収入保険制度とは!?収入保険制度は 新たな農業経営のセーフティネットとして 二〇一九年(平成三十一年)からの導入を予定しているものです 収入保険制度は 農業経営者ごとの収入全体を見て総合的に対応する保険制度を目指すものです 農業のセーフティネットとしては 現行制度として 農業災害補償制度がありますが 農業災害補償制度は 1自然災害による収量減少が対象であり 価格低下等は対象外 2対象品目が限定的で 農業経営全体をカバーしていない といった課題があります ただし 肉用牛 肉用子牛 肉豚及び鶏卵は 対象品目から除外されています 肉用牛肥育経営安定対策(牛マルキン)等の畜産品目ごとの経営安定対策の対象品目では 販売価格だけでなく 生産コストの差をも補塡する制度となっており 農業者に有利な制度となっています 仮に 収入保険制度 と 牛マルキン などの経営安定対策のどちらか一方を選択して加入する仕組みとした場合 収入保険制度を選択するメリットがほとんどありません 広酪は 十二月四日から八日に亘り県内五箇所の会場にて地区懇談会を開催し ここでは 改正畜安法にからみ平成三十年四月一日からはじまる新たな生乳生産者補給金制度や NOSAI広島の担当者に同席を願い平成三十一年一月一日からはじまる農業事業者を対象とする収入保険制度の概要等の説明にあたりました また 十二月十五日は 農林水産省経営局の主催による 収入保険制度に関する広島県説明会 が広島県庁にて開催され 農林水産省大臣官房参事官徳田正一氏から説明を受けました 本誌前月号( 二百八十三)では 昭和四十一年四月に制定された加工原料乳生産者補給金暫定措置法が平成三十年三月三十一日付けをもって廃止となること 代わって改正畜安法のもとで新たな加工原料乳生産者補給金制度が平成三十年四月一日からはじまることに関する概要を紹介しました 近年はこの様に 国の制度が法改正のもとに目まぐるしく変化する中で 今回は 収入保険制度に関する概要を紹介します 自然災害 価格低下の収入減少が補てんされる!?
4 本来 収入保険制度は 品目の枠にとらわれずに農業経営全体をカバーすることを目的とするものですが 牛マルキンなどの経営安定対策の対象品目である畜産品目は収入保険制度の対象品目から除外し これら対象外品目と対象品目との複合経営の場合 対象品目のみを対象として加入できる仕組みとされました 二.収入保険制度の対象者!?青色申告を行い 経営管理を適切に行っている農業者(個人 法人)が対象になります 青色申告を五年間継続している農業者を基本とし 青色申告の実績が加入申請時に一年分あれば加入できますが 申込年を含む過去の青色申告期間が五年に満たない場合は 補償限度額が引き下げられます なお 保険期間開始前に農業経営の承継 譲渡があった場合には 継承人 譲渡人の青色申告の期間を含めることができます 加入条件となる青色申告については 正規の簿記 (複式簿記)及び 簡易簿記 が該当しますが 現金主義( 現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書 を税務署に提出して申告する)は対象となりません また 農作物共済等の農業共済制度や酪農経営に関する制度で言えば 加工原料乳生産者経営安定対策(ナラシ事業)等の類似制度との重複加入は認められません しかし 農業共済制度のうち 固定資産的家畜を対象とする死亡廃用共済 疾病傷害共済 樹体共済及び園芸施設共済(施設内農作物を共済目的としないものに限る)については 収入保険制度と重複して利用できます 収入保険は任意の加入制度であり 加入するかどうかの選択は農業者に委ねられます 収入保険制度と重複して利用できないナラシ対策等 収入減少影響緩和対策(ナラシ対策) 野菜価格安定対策 加工原料乳生産者経営安定対策 いぐさ 畳表農家経営所得安定化対策三.収入保険制度の対象収入!?一対象収入の基本と対象品目自ら生産した農産物及び畜産物( 農産物等 という)の販売収入であって 次の品目は対象収入から除外されます 販売収入から除外される品目 肉用牛(牛マルキンを利用することができる牛に限る) 肉用子牛(肉用子牛生産者補給金を利用することができる子牛に限る) 肉豚(豚マルキンを利用することができる豚に限る) 鶏卵 栽培管理をしていない農産物二加工品の取扱い加工品は対象収入から除外しますが 自ら生産した農産物等を加工 販売し 農業所得として申告しているもの(法人の場合は 仮に個人であった場合に所得税法上農業所得となるもの)は対象収入に含めることができます 例えば 精米 もち 荒茶 仕上げ茶 梅干し 畳表 干し柿 乾ししいたけなどが該当します 三補助金の取扱い補助金は 原則として収入保険制度の対象収入に含めません 収入保険制度の補塡金や農業災害補償制度の共済金も補助金と同様に対象収入に含めません ただし 次の数量払については 実態上 販売収入と一体的に取り扱われているため 販売収入に含めることになります 販売収入として一体的に取り扱われる販売収入〇 畑作物の直接支払交付金(営農継続支払を含む)〇甘味資源作物交付金〇でん粉原料用いも交付金〇加工原料乳生産者補給金四雑収入の取扱い雑収入は原則として対象収入に含めません ただし 雑収入に計上されるもののうち 数量払交付金のほか 次のものは実質的に農産物の販売金額と同等のものとして 販売収入に含めることになります
5 販売収入に含める精算金 手当金 補償金等〇JA等からの農産物の精算金〇 家畜伝染病予防法に基づく手当金 植物防疫法に基づく補償金〇JTの葉たばこ災害援助金五農産物等の販売収入の計算方法!?次のとおりです 農産物等の販売収入=農産物の販売金額+事業消費金額+(期末棚卸高[金額]-期首棚卸高[金額])所得税法における収入算定方法にならった方法となります ただし 家事消費金額は自家消費で販売を目的としたものではないので 販売収入の計算に含めません 四.収入保険による補塡金!?当年の収入が原則として九十%(保険方式補償限度額八十~五十%[十%単位で選択]+積立方式の補償幅十%or 五%)を下回った場合に補償限度額を下回った額の九十%(支払率九十~五十%[十%単位で選択])の補塡金が支払われます 補償限度額から一割 つまり 基準収入の二割(原則)までの下落分であれば積立方式の補塡金として補塡され 基準収入の二割(原則)を超える下落分は保険金として補塡されます ただし 補償限度額が九割となるのは 申込みの日の属する年又は事業年度までの過去五年間の青色申告期間(申込時点で四年以上の青色申告実績)がある場合です 青色申告期間に応じて補償限度額は次の通りとなります 保険料は危険段階別に設定保険料は危険段階別に設定されることになっており 保険金の受領が少ない者の保険料率は段階的に引き下げられます このため 保険金を請求するかどうかは任意で 基準収入の二割(原則)を超える販売収入の下落があっても 保険方式の保険金を受け取らずに積立方式の補塡金のみを受け取ることができます 基準収入が一千万円の農業者が 補償限度九十%(保険方式八十%+積立方式十%) 支払率九十%を選択した場合の補塡金額の試算は次のとおりです 青色申告期間 5 年 ( 申込時点の実績 4 年 ):90%( 保険方式の補償限度額 80%) 青色申告期間 4 年 ( 申込時点の実績 3 年 ):88%( 保険方式の補償限度額 78%) 青色申告期間 3 年 ( 申込時点の実績 2 年 ):85%( 保険方式の補償限度額 75%) 青色申告期間 2 年 ( 申込時点の実績 1 年 ):80%( 保険方式の補償限度額 70%) 青色申告期間に応じる補償限度額 補填金額の試算特集新たなセーフティーネット
6 五.収入保険の積立金 保険料!?六.収入保険制度と他制度の選択!?一主たる経営品目との関連畜産農業者など主たる経営品目が収入保険制度の対象品目となっていなくても耕種品目との複合経営であれば 収入保険制度に加入することができますが 収入保険に加入するメリットは小さくなります このため 主たる経営品目が収入保険制度の対象品目かどうかが 収入保険制度の加入の是非を検討する第一のポイントになります ティネットとして不十分ですので 農業共済にも加入すれば共済掛金の負担が生じ 収入保険の保険料よりも高くなることもあります また 収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)は最大二十%までの収入減少にしか対応しておらず 二十%を上回る大幅な価格下落のリスクがある場合は 収入保険制度に加入するメリットが大きくなります 三雇用維持など経営安定との関連家族経営については 大幅な価格下落があっても数年後に回復するのであれば 自家保険の考え方により 複数年の平均で所得を確保できれば問題ないという考え方も成り立ちます しかしながら 雇用中心の経営では 価格下落を理由に給与の減額や遅延をすることは許されませんので 収入保険制度に加入して 大幅な価格下落があった場合のキャッシュフローを確保する必要があります 七.収入保険に関する経営指導一区分経理の対応肉用牛 肉用子牛 肉豚 鶏卵は収入保険制度の対象品目から除外されましたので 会計上 収入保険制度の対象品目と対象外品目の売上高を区分しておく必要があります 耕種と畜産の複合経営では まず 耕種と畜産をそれぞれ別の部門に設定して部門管理をすることをお勧めします そのうえで 米や小麦 大豆といった農畜産物の種類ごとに売上げの仕訳に摘要を設定するか売上高の勘定科目に補助科目を設定して区分すると良いでしょう 畜産物について 生乳は収入保険制度の対象品目 肉用子牛は対象外になりますが 同様に摘要等で区分します 子牛でも 肉用子牛生産者補給金制度の対象となる六か月齢以上の肉用子牛は収入保険制度の対象外になりますが ヌレ子など六か月齢未満のものは収入保険の対象となりますので 摘要等でこれらを区分できるようにしておきましょう 収入保険制度が始まる平成三十一年分だけでなく 過去五年間の平均収入で計算する基準収入も対象収入とそれ以外に区分する必要がありますので 平成二十六年分以降の対象収入を把握できるよう準備をしておくことが大切となります 1 保険料 = 基準収入 保険方式の補償限度 (80% を上限に選択 ) 支払率 (90% を上限に選択 ) 保険料率 2 積立金 = 基準収入 積立幅 (1 割 ) 支払率 ( 同上 ) 1/4 基準収入が 1,000 万円の農業者が 補償限度 90%( 保険方式 80%+ 積立方式 10%) 支払率 90% を選択した場合の試算は次のとおりです 保険料 7.2 万円積立金 22.5 万円合計 29.7 万円保険料は掛捨てとなりますが 積立金は自らのお金であり 補塡に使われない限り翌年に持ち越されます 二価格動向との関連主たる経営品目に価格下落のリスクがある場合 セーフティネットに加入する必要がありますが セーフティネットには収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)などもあり 収入保険制度とどちらか一方を選択して加入する仕組みになっています 例えば 稲作の場合 収入保険制度に加入する代わりにナラシ対策に加入することもでき ナラシ対策では 掛け捨ての保険料負担がありません しかしながら ナラシ対策だけではセーフ保険料 積立金の計算方法は 次の通りです
7 八.最後に収入保険制度は 平成三十一年一月からはじまりますが 現在 NOSAI広島では この制度を農業者に対して広く周知徹底するために 十月七日には 地元紙 中国新聞 の三面に 収入保険がはじまります! とする新聞広告をもっての広報や説明会を通じての行動にあたられています 広酪では 十二月の地区懇談会の冒頭にNOSAI広島の担当者から収入保険制度の概要説明を聴く機会を設定しました 近年 予期せぬ自然災害が多く発生は 農業収入に大きな減収をもたらしたことで これらを救済する制度 措置が不十分で困惑する農業者も多く生じたとの情報紹介もありました 酪農経営の継続安定を図るうえで リスク保全に収入保険制度に関心を深められてみては如何でしょうか 以下には 収入保険制度にかかる Q&A の一部を紹介しておりますので参考にして下さい 収入保険制度に関する問い合わせは NOSAI広島本所 若しくは最寄りの支所にお尋ね下さい Q&A Q A Q1 マルキン等とは別立てとし ナラシ対策等とは選択制としているのはなぜですか 1. 収入保険と収入減少を補てんする機能を有しているナラシ対策等 ( 1) の類似制度との関係については 国費の二重助成を避けつつ 農業者がそれぞれの経営形態に応じた適切なセーフティーネットを利用できるよう 収入保険とこれらの制度の何れかを選択して加入することが可能とされています 2. ただし マルキン等 ( 2) は 収入保険やナラシ対策等と異なり 収入減少だけでなくコスト増も補てんする仕組みであることから 収入保険とは別立てとし 肉用牛などのマルキン等の対象品目は収入保険の対象外となります 3. これにより マルキン等の対象畜産物と他の品目との複合経営を行っている場合は 他の品目部分のみ収入保険に加入することができます 1 農業共済 ナラシ対策 野菜価格安定制度及び加工原料乳生産者経営安定対策 い草 畳表農家経営所得安定化対策 2 牛マルキン 豚マルキン 肉用子牛生産者補給金制度及び鶏卵生産者経営安定対策 Q2 酪農経営では 生乳販売のほか ヌレ子や乳用種雌牛の個体販売もありますが これらについて収入保険の対象になりますか 酪農経営については 生乳販売による収入が主体である中で ヌレ子 ( 搾乳牛から出生し 生後間もなく販売される乳用種雄子牛 ) や乳用種雌牛 ( 将来 搾乳牛になるもの ) 廃用牛の個体販売も行っている経営もあります この場合 これらの家畜も収入保険の対象となります Q3 加工原料乳生産者経営安定対策 ( 加工原料乳ナラシ ) と収入保険は選択加入となりますが 一方で加工原料乳生産者補給金を受給するためには 加工原料乳ナラシへの加入が要件となっており 収入保険を選択すると当該補給金を受けられなくなるのではないですか 加工原料乳生産者補給金については これまで 加工原料乳ナラシへの加入を要件としてきたところですが 今回の補給金制度の見直しにより 当該要件を外すこととしています これにより 酪農家は 収入保険に加入しつつ 加工原料乳生産者補給金を受給することが可能となります 特集新たなセーフティーネット