早期警戒のための 大雨 洪水リスク情報のあり方 * 平成 28 年度京都大学防災研究所一般研究集会 集中豪雨に際して行政機関が採るべき洪水リスク対応手法の法的伝統とその革新 災害 ( リスク ) 情報の伝達 共有 及び 創生 の視点に基づく学際的検討を踏まえて 京都大学防災研究所気象水文リスク情報 ( 日本気象協会 ) 研究分野 辻本浩史 * 本研究は日本気象協会と共同で実施中のものである
本日の内容 1. 平成 28 年 8 月 24 日京都大学防災研究所 HP に対する反応 2. 早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 ( 気象業務法等に対する? を織り込みながら ) 1
本日の内容 いまは これから目指したいこと 出典 :tenki.jp 2
平成 28 年 8 月 24 日京大防災研 HP に対する反応 4 月の熊本地震と並ぶリーチ数を 8 月 24 日に記録! 熊本地震 8 月 24 日 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 沖縄と九州から近畿は強い日差しが照りつけ 厳しい暑さが続いた 大阪の最高気温は 35 度 5 分で 8 月の猛暑日日数が 21 日と統計開始以来 最多 東海や北陸 関東も晴れ間が出たが 所々で雨雲が発達 東北や北海道は晴れて 気温が 30 度前後まで上がった (8 月 24 日 tenki.jp より ) 3
平成 28 年 8 月 24 日京大防災研 HP に対する反応 関東 北海道理上陸した台風 9 号 日本の南には西進して日本から遠ざかりつつあった台風 10 号 出典 :tenki.jp 4
平成 28 年 8 月 24 日京大防災研 HP に対する反応 8 月 24 日京大防災研 HP に UP した記事 台風 10 号の進路に注意を! アンサンブルデータが示す進路予想 ECMWF のアンサンブル予報データを解析した結果 5
平成 28 年 8 月 24 日京大防災研 HP に対する反応 2016 年 8 月 24 日 SNS のコメントより これはすごいな あくまで研究成果として気象業務法で怒られることなく こうゆうのを出せるなら いろいろと望みがあるのかしら テレ〇で ECMWF まじか ECMWF をそのままテレビでやるとかやばいね 色んなところが ECMWF のデータを公然と出してくるから涙をのんで非公開にしてるのが馬鹿らしくなってくる 6
平成 28 年 8 月 24 日京大防災研 HP に対する反応 やばい とか まじか って 悪いことをしているつもりはないけど 同僚からも 大丈夫? 辻本さん 気象庁対応は大丈夫なの? と心配される始末 そもそも気象業務法って? 7
予報業務とは? 気象業務法では ( 予報業務の許可 ) 第 17 条気象庁以外の者が気象 地象 津波 高潮 波浪又は洪水の予報の業務を行おうとする場合は 気象庁長官の許可を受けなければならない 2 前項の許可は 予報業務の目的及び範囲を定めて行う 解説 ( 注 ) によると 業務とは何事かを反復継続して行うことを指し営利性の有無や繁閑を問わない よって研究発表のために行われる実験的な予想のようなものは許可を必要としない この意味においては今回の (1 回きり?) 行為は 業務 に該当せず? 注 ) 気象業務法の解説新山末爾四杯舎 8
特定向け予報と一般向け予報 解説 ( 注 ) によると 特定向け予報企業や個人と契約し その契約者のためだけに提供する予報 ( 台風の進路等について独自予想の提供が認められる ) 一般向け予報特定向け以外の予報 気象庁長官は予報業務の許可にあたって 台風に関して気象庁のもの以外の情報の提供を制限する 注 ) 気象業務法の解説新山末爾四杯舎 9
平成 28 年 8 月 24 日京大防災研 HP に対する反応 8 月 24 日京大防災研 HP に UP した記事 台風 10 号の進路に注意を! アンサンブルデータが示す進路予想 問題は 京大防災研は予報業務の許可を受けているのか? 一般向け予報では独自の進路予想は 気象庁以外のモデル (ECMWF) を使用 10
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 ここからが研究の具体的内容 私の研究モチベーション より早期の段階で 細かな精度はさておき 広範囲に起こりうる大雨 洪水の 危険度 を 一般の方にわかりやすいコンテンツとして 提供する事 ( 提供できる社会を実現する事 ) 11
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 用いたデータは ECMWF( ヨーロッパ中期予報センターのアンサンブルモデル ;European Centre for Medium-Range Weather Forecasts) 出典 : 数値予報解説資料 ( 数値予報研修テキスト ) 第 43 巻第 2 章 数値予報システムの最近の改善 12
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 ECMWF を用いた理由 ( 別に高い精度に惹かれたわけではありません ) 少々お高いが 細かいデータも入手可能 いろいろ事情はあるのだろうが 同様の気象庁データを入手しようとすると 週間アンサンブル予報システムの場合は解像度が間引かれて ( 約 40km 約 120km) 配信されたり そもそも気象庁部内用のため配信されなかったり ( 台風アンサンブル予報システム ) 13
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 予報円ではなく 3 つの確率付き予報進路 ( 三択 ) を提示 - ECMWF-ENS を使うと 10 日先まで 51 通りの台風進路と雨を予測可能 上陸 (30 日 )7 日前時点 紀伊半島から関東付近に 80% の確率で上陸 14
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 予報円ではなく 3 つの確率付き予報進路 ( 三択 ) を提示 - 上陸 (30 日 )6 日前時点 全体的に東へシフト中部地方から東北地方に上陸することはほぼ確実 15
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 予報円ではなく 3 つの確率付き予報進路 ( 三択 ) を提示 - 上陸 (30 日 )5 日前時点 更に東へシフト 29 日 ~30 日にかけて関東地方から東北地方に上陸することはほぼ確実 出典 :tenki.jp 16
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 予報円ではなく 3 つの確率付き予報進路 ( 三択 ) を提示 - 上陸 (30 日 )4 日前時点 関東北部から東北地方に上陸する予測にまとまりつつある 17
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 予報円ではなく 3 つの確率付き予報進路 ( 三択 ) を提示 - 上陸 (30 日 )3 日前時点 前日と傾向変わらず東北地方に初めてのパターン ( 太平洋側から ) 上陸の見込み 18
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 予報円ではなく 3 つの確率付き予報進路 ( 三択 ) を提示 - 上陸 (30 日 )2 日前時点 東北北部は厳戒態勢 19
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 雨に関する注意喚起情報 - 初期時刻 :2016 年 9 月 29 日 13 時 35 分日本気象協会 tenki.jp の注意喚起 台風の通過する可能性が高い東北地方では あすの雨量が非常に多くなる見込みです 台風に吹き込む東風のぶつかる太平洋側で 特に雨の量が多くなりそうです 仙台市や盛岡市の 8 月 1 か月の降水量の平年値は 180 ミリくらいです このため 場所によっては 8 月 1 か月に降る雨量の 2 倍くらいの雨が 1 日で降ってしまうことも考えられます 東北地方では明日を中心に 重大な災害の起こるおそれが高まっていますので 土砂災害や低い土地の浸水 河川の増水や氾濫に厳重に警戒して下さい (tenki.jp の記事より ) 20
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 初期時刻 :2016 年 8 月 28 日 21 時 予測雨量 : シナリオ別のアンサンブル平均 - より具体的な雨の予測情報 - 観測雨量 予測のメッシュサイズ (25km) に平均化した値 予測雨量 : シナリオ別のアンサンブル最大 ( 最悪シナリオ ) 21
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 初期時刻 :2016 年 8 月 28 日 21 時 - より具体的な雨の予測情報 - 予測雨量 ( 平均 ) 予測雨量 ( 最悪 ) 観測雨量 予測のメッシュサイズ (25km) に平均化した値 22
水防法 気象業務法等の歩み 昭和 24 年水防法制定昭和 27 年気象業務法制定昭和 30 年水防法改正 : 共同洪水予報スタート平成 5 年改正 : 気象予報士制度 一般向け予報業務の許可平成 13 年水防法改正 : 都道府県との共同洪水予報開始平成 25 年改正 : 特別警報の開始 23
気象庁が発表する洪水警報の基準の一例 洪水警報の基準 ( 京都府福知山の場合 ) 雨量基準流域雨量指数基準複合基準指定河川洪水予報による基準 3 時間雨量 100mm 牧川流域 =21 和久川流域 12. - 由良川下流 福知山 由良川中流 綾部 24
流域雨量指数の計算式 出典 : 気象庁 HP http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/ryuikishisu.html 25
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 洪水リスクポテンシャル指数 - 台風コース 予測雨量 洪水リスク 簡易的な方法で判りやすい広範囲の洪水リスク情報 26
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 洪水リスクポテンシャル指数 - 1 全国の河道網を作成 (1km メッシュ ) 2 各メッシュの洪水到達時間内の流域平均雨量をレーダアメダス解析雨量 ( 過去 10 年 ~20 年分 ) から作成 久慈川 小本川 3 各メッシュの洪水到達時間内の流域平均雨量を予測雨量から作成 ( 最大 10 日先まで ) 4 2 と 3 を比較 27
早期警戒のための大雨 洪水リスク情報 - 結論 : 私が公開したい 3 つの図 - より早期の段階で 細かな精度はさておき 広範囲に起こりうる大雨 洪水の 危険度 を 一般の方にわかりやすいコンテンツとして 28
気象業務法に対する??? シングルボイス ( 台風や洪水について ) である必要性は? ( 誰でも容易に様々な情報を入手できる ) 情報は全て公開が原則 防災情報の作り手は行政だけではない ( 住民自らが自らの命に責任をもつ ) 行政からの情報を一方的に受身で聞くのではなく 住民自ら情報をもとに判断する力を身につけていくことが重要なのでは? 29
ご清聴ありがとうございました 30