幼児期 学童期 思春期の メンタルヘルス ハートクリニック町田 家族教室 2011 年 1 月 30 日 ( 日 ) 大谷遊介
幼児期 学童期 思春期の メンタルヘルス 発達障害 って言葉 いろんな意味で使われているのをご存じですか?
医学上の 広い意味での 発達障害 WHO(ICD-10:1992) 心理的発達の障害 1: 乳幼児期か小児期に発症 2: 脳の成熟過程で 機能の発達に障害または遅れ 3: 寛解も再発もしない 固定した経過 4: 障害がおこるのは : 言語 視空間技能 協調運動 1 会話 / 言語 2 学力 3 運動機能 4 混合型 5 広汎性発達障害 6 他の心理的発達の障害 * 多動性障害は 行動および情緒の障害 に含める
医学上の 狭い意味での 発達障害 米国精神医学会 (DSM-Ⅳ:1994) 広汎性発達障害 だけを発達障害とする 医師のなかでも 発達障害 という言葉を 別の意味で使う人がいることに注意してください しかも
行政 教育用語としての 発達障害 平成 17 年発達障害者支援法の施行 平成 19 年特殊教育 特別支援教育への全面転換 特別支援教育の理念 ( 文部科学省平成 19 年 4 月 ) これまで特殊教育の対象としてきた障害だけでなく 知的な遅れのない発達障害も含めて 特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍するすべての学校 ( 幼稚園 保育所 小 中 高等学校 ) で実施 幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズを把握し その持てる力を高め 生活や学習上の困難を改善又は克服するため 適切な指導及び必要な支援を行う
例えば 東京都発達障害者支援センター (TOSCA) 発達障害者支援法 にもとづく専門機関 対象 : 発達障害 ( 自閉症 アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害 学習障害 注意欠陥多動性障害など ) の本人 家族 医療や教育 福祉 行政機関などの関係者 1 本人および家族に対する直接支援 2 情報提供および他機関との連携 3 関係調整 4 普及啓発 研修
発達障害の範囲 厚生労働省大塚専門官作成 < 主な発達の領域 > 運動の発達認知の発達社会性の発達学習能力の発達 < 障害名 > 脳性麻痺 精神遅滞 広汎性発達障害 ( 自閉症 アスペルガー症候群 ) 学習障害 (LD) 身体障害者福祉法知的障害者福祉法 支援法 < 法律名 > 注意 行動コントロールの発達 言語能力の発達 微細運動の発達 注意 欠陥多動性障害 (ADHD) 発達性言語障害 発達性協調運動障害 政令 発達障害者支援法 その他 その他の障害 省令 7
文部科学省の全国調査 ( 平成 14 年 ) 全国 5 地域 公立小 中学校 計 370 校の通常学級 41,579 人の児童生徒 知的発達に遅れはないものの学習面や行動面で著しい困難を示す児童生徒男 8.9% 女 3.7% 学習面か行動面で著しい困難 6.3% 学習面で著しい困難 4.5% 行動面で著しい困難 2.9%
学習面 行動面での困難 学習面で著しい困難 ( 計 4.5%) 聞く 又は 話す に困難 1.1% 読む 又は 書く に困難 2.5% 計算する 又は 推論する に困難 2.8% 行動面で著しい困難 ( 計 2.9%) 不注意 の問題 1.1% 多動性- 衝動性 の問題 2.3% 対人関係やこだわり等 の問題 0.8%
機能のばらつき 機能 a b c d x y z 学習障害 LD 精神遅滞 MR 自閉症 発達検査に用いられる知能検査 WISCⅢ 知能検査 :5-16 歳 言語性 IQ 動作性 IQ 群指数 新版 K 式発達検査 :0 歳 - 成人 運動 認知 言語 社会性
発達障害かも? と 気になる 症状 目を合わせず ほほえみ返し をしない 指さして親の注意をひこうとしない 人見知りをしなかった 人見知りがとても強かった 初語が遅かった( が その後とてもおしゃべりになった ) 迷子になっても 泣きもせず平気だった 友達をつくろうとせず 一人で 手をヒラヒラさせたり クルクル回ったりして楽しそうにしている 手先が不器用で 歩き方もいつまでもぎこちない 音に敏感で 大声や機械音を聞くと耳をふさいで固まる 小学校に入って 先生に 落ち着きがない と言われた 小学校で 話すのは平気だが文字を読むのに苦労する
発達障害 のキーワード 二次障害 :IQ の高い発達障害の子どもで 子どもの 発達の問題 ( 中核症状 ) に周囲が気づかない 努力不足 しつけの問題と誤解 本人は努力やがまん 行動の偏りやコミュニケーションの障害により 適応ができず 対人関係が難しい 周囲からの否定的評価 不快な失敗体験の繰り返し ストレス 自尊感情の傷つき 自閉 うつ パニック 様々な行動の障害 学 習の遅れ 不登校等の関連症状が出現する 早期発見 : 子どもの特性を早期に知り 特性に合った育て方 中核症状は残っても適応力が向上 関連症状の改善 二次障害の防止
幼児期 学童期 思春期の メンタルヘルス 広義の発達障害 それぞれを簡単に見ていくと
学習障害 (LD) * 感覚器の障害があっても 障害の程度により診断 * 通常 7-10 歳で明らかになる ADHD 等の併存が多い 読字障害: 測定された読字能力が 生活年齢 測定された知能 教育の程度から期待できるより低い * 学童の5%( 男女差なし ) 有効な治療教育で改善 算数障害: 数名 演算記号 九九の記憶が困難 計算速度が遅い * 学童の1%( 女児に多い ) 治療教育 ほめる 必要 書字表出障害: 文字 文法 句読法が不得意 * 学童の4%( 男児で3 倍 ) 治療教育の継続が必要
発達性協調運動障害 幼児期 ~ 学童期に明らかになる ADHD LDと合併も 日常動作 粗大運動 微細運動が不器用 座る 這う 歩く等の運動発達指標への到達の遅れや 体育 書字の不得意から発見されることがある 知能検査で 言語性検査の得点が平均かそれ以上で 動作性検査の得点が平均以下となる * 学童の5%( 男児がで2-4 倍多い ) 感覚統合教育 適応体育教育プログラムが必要 不器用さは通常 思春期 成人期まで持続
コミュニケーション障害 表出性言語障害 : 単語想起と文作成による音声言語 の発達が 非言語的知能および受容性言語 ( 聞いて 分かる ) の発達に遅れる * 学童の 3-5%( 男児で 2 倍 ) 軽症 :50% は自然回復 重症 :1.5 歳で判明 言語療法後も複数の言語障害 受容 - 表出混合性言語障害 : 平均して 4 歳までに発症 音韻障害 : 特定の音素を脱落させたり他に置き換える * 言語療法が有効 多くは 8 歳までに改善 吃音症 : 不随意に音節が繰り返し 延長 / 語が中断 * 有病率は 3-4%( 男性で 3-4 倍 ) 発症は 2-7 歳 * 軽症以外は言語療法後も悪化 寛解の長期経過
広汎性発達障害 (PDD): 自閉性障害 1 対人的相互反応の障害 自分にとって重要な人々に特別な関心を持たない 視線合わせ 表情 身振りなどによる対人相互反応の著明な障害 年齢相応の仲間関係を作れない 他人との興味や喜びの共有( 情緒的相互性 ) の欠如 2コミュニケーションの障害 話し言葉の発達の欠如/ 遅れ 常同的 反復的な発話 年齢相応の ごっこ遊び の欠如 3 興味の限定 ( こだわり ) 行動が常同的 儀式的
広汎性発達障害 (PDD): 自閉性障害 ( 続き ) * 小児の0.05%( 男児で4-5 倍多い ) 発症は3 歳前 * 構造化された行動療法が有効 言語と学業の訓練も必要 * 攻撃的行動 自傷行為抑制のために抗精神病薬 *IQ70 以上 コミュニケーション技能が5-7 歳までに見られれば予後は改善 *2/3は 重度の障害を負ったまま 他者に依存した生活を送る 特定不能の広汎性発達障害 : 自閉性障害の症状をもつが より良好な言語機能をもち 障害の自覚がある * 適切な教育と精神療法により予後が改善する
広汎性発達障害 (PDD): アスペルガー障害 1 対人的相互反応の障害 : 自閉性と同じ 3 行動 興味の限定的 常同的様式 : 自閉症と同じ * 自閉性障害で見られる2 コミュニケーションの障害 が目立たない * 言語や知的発達 および 年齢相応の自助技能には明らかな遅れがない * 有病率は 自閉性障害よりも高い * 適応機能に応じた治療 攻撃的行動が強い場合 抗精神病薬を投与 *IQの高さ 社会技能の高さに応じて予後が良い
注意欠陥 / 多動性障害 (ADHD) 1 不注意症状が6つ以上 : 注意不足 注意持続困難 課題の回避 話しを聞かない 指示に従えない 順序立てられない 物をなくす 気が散る 忘れっぽい 2 多動性 - 衝動性症状が6つ以上 : そわそわ動く 席を離れる 動き回る 静止困難 多弁 順番が待てない 会話やゲーム中に他人を妨害する 3 上記症状のいくつかが 7 歳以前に存在する * 学童の3-7%( 男児で3-5 倍 ) 3 歳までに発症 * 行動療法 特殊教育 中枢神経刺激薬 抗うつ薬 * 部分寛解 二次障害が多い 学習上の問題は一生
町田市周辺の特別支援教育 町田市立小学校 42 校の29 校 中学校 20 校の11 校に 特別支援学級が設けられている 東京都立町田の丘学園 ( 特別支援学校 ) 22.5.6 現在 A 部門 : 肢体不自由教育 ( 小学部 23 中学部 22 高等部 31 名 ) B 部門 : 知的障害教育 ( 小学部 87 中学部 51 高等部 113 名 ) 1 児童 生徒個々の実態に応じた教育課程の編成 実施 個別指導計画に基づく指導 個々に応じた教材 教具の整備 自閉症教育の推進(B 部門 ) 2キャリア教育の充実 3 特別支援教育センター的機能の発揮
町田市子ども発達センターすみれ教室 1 相談 : 0-6 歳の就学前の子どもと家族を対象に 発達相談に応じる 発達相談 : 子どもの発達についての相談を専門職が行う 個別相談 : 発達相談を利用した後で 専門職が助言 指導 療育体験グループ : 発達相談の後 療育の体験が必要と判断された場合に参加 訪問相談 : 幼稚園 保育園に通うセンター利用者の困難について 園を訪問して相談を行う 2 グループ指導 : 幼稚園 保育園に通っている児童を対象 3 研修会 : 保護者を対象 4 親子通園 :0-6 歳の子どもで 発達に遅れや心配があり 療育が必要な場合に通園 5 認可通園 :3-6 歳の子どもで 継続的な療育が必要な場合に入園できる