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[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

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国外転出時課税制度(出国税)の導入

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

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5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

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1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

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1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

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て 次に掲げる要件が定められているものに限る 以下この条において 特定新株予約権等 という ) を当該契約に従つて行使することにより当該特定新株予約権等に係る株式の取得をした場合には 当該株式の取得に係る経済的利益については 所得税を課さない ただし 当該取締役等又は権利承継相続人 ( 以下この項及

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はじめに 私は国税庁 国税局において長年 法人税行政に携わって来ましたが 平成に入りますと取引 ( 人 物 金 ) の国際化に伴う法人税行政の国際化対応が求められて来ました 当時から私は 税の国際化の影響を最も受けるのは相続税である ( 理由 : 多文化共生による相続人の多様化 言語の多様化 適用す

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14. 相続税 贈与税の国外財産に対する納税義務の見直し 1. 改正のポイント (1) 趣旨 背景富裕層の海外移住等による相続税 贈与税の租税回避行為が問題視されるなか 平成 29 年度改正においては一定の国外財産に係る課税強化が行われた一方 一時的に国内に住所を有していた外国人については課税対象を縮小する改正が行われた 今年度改正においては 平成 29 年度改正によって新たに全世界財産課税の対象とされた一定の外国人等について 国外財産を課税対象外とする改正が行われる (2) 内容平成 29 年度改正により新たに全世界財産課税の対象となった外国人 ( 被相続人 贈与者 : 出国した外国人で過去 15 年以内に 10 年超 相続人 受贈者 : 国内に住所なし 日本国籍なし ) 等について 被相続人 贈与者が国内に住所を有していた期間中継続して日本国籍なしであれば 国外財産は課税の対象外となる (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する (4) 影響平成 29 年度改正により新たに全世界財産課税の対象となった一定の外国人等につき 国外財産が課税の対象外となる 14-1 ( 相続税 贈与税 )

2. 改正の趣旨 背景 国内に住所を有しないことにより相続税 贈与税の課税を免れる租税回避行為を抑制するため 平成 12 年度改正 ( 相続人 受贈者の国籍による納税義務判定の導入 ) 平成 25 年度改正 ( 相続人 受贈者が日本国籍なしの場合の課税強化 ) が行われてきた 平成 29 年度改正では 被相続人 ( 贈与者 ) 相続人 ( 受贈者 ) のいずれもが国内に住所を有しない場合の納税義務判定期間の延長 (5 年 10 年 ) 相続人 ( 受贈者 ) が国内に住所なし 日本国籍なしの場合の課税強化が行われた一方 高度外国人材等が日本で働きやすいよう 一時的に国内に住所を有していた外国人に対しては課税対象の縮小が行われた 平成 29 年度改正により 出国した一定の外国人については 国内財産だけでなく新たに国外財産についても課税の対象となったが 母国に戻った外国人が死亡した場合などにも国外財産に対して日本の相続税を課税することが問題視されたため 今年度改正において 出国した外国人からの相続 贈与については 原則として国外財産に課税しないよう改正が行われる 3. 改正の内容 (1) 改正前の納税義務判定のまとめ 1 平成 29 年度 ( 昨年度 ) 改正の内容 ( イ ) 国外移住による租税回避の防止親子ともに海外に移住し 5 年超 経過したのちに 国外財産を贈与 相続することにより国外財産を課税対象外とする租税回避行為を抑制するため 5 年超 を 10 年超 と改正し 課税強化を図った ( ロ ) 相続人 受贈者が国内に住所なし 日本国籍なしの場合の課税強化海外で出生し日本国籍を取得しなかった子 ( 国内に住所なし ) に対し 親が一時的に住所を国外に移したうえで国外財産を贈与する租税回避行為を抑制するため 被相続人 贈与者が相続 贈与前 10 年以内に国内に住所を有していた場合には国外財産も課税対象に含める改正が行われた ( ハ ) 一時的に国内に居住する外国人に係る納税義務の緩和外国人がたまたま国内に住所を有する時に死亡すると 国外に住む親族が国外の財産を相続する場合であっても日本の相続税が課税されてしまい 外国人が日本で働く際の懸念事項となっていたため 在留資格により一時的に滞在している場合等については国外財産を課税対象外とする改正が行われた 14-2 ( 相続税 贈与税 )

2 納税義務判定のまとめ ( 改正前 ) ( イ ) 被相続人 贈与者 相続人 受贈者 一時居住者 国内に住所なし 日本国籍あり 10 年以内に住所なし 日本国籍なし 国内 国外財産ともに課税 ( イ ) 国内に住所なし 一時居住被相続人 / 一時居住贈与者 日本国籍なし (2) 改正後の納税義務判定のまとめ 1 平成 30 年度 ( 今年度 ) 改正の内容 非居住被相続人 / 非居住贈与者 ( 注 2) 10 年以内に住所なし非居住被相続人 / 非居住贈与者 ( 出典 ) 財務省 平成 29 年度税制改正の解説 を一部改編 (A) 出国後の外国人に係る相続税 贈与税の納税義務の見直し相続人 ( 受贈者 ) が国内に住所なし 日本国籍なしの場合等では 被相続人 ( 贈与者 ) が一時居住被相続人 ( 贈与者 ) 非居住被相続人( 贈与者 ) に該当しなければ 国外財産についても課税対象となるが 相続 贈与前 15 年以内に10 年超日本に滞在して帰国した外国人については 非居住被相続人 ( 贈与者 ) に該当しないことされていた 今年度改正により 非居住被相続人 ( 贈与者 ) の範囲が拡大され 日本に10 年超滞在して帰国した外国人についても 継続して日本国籍なしであれば 国外財産については課税対象外となる ( 短期非居住贈与者からの贈与について 一定の場合を除く ) - 73 - ( ハ ) ( ロ ) 国内財産のみに課税 在留資格により滞在していた者で 相続 贈与前 15 年以内に国内に住所を有していた期間が合計 10 年以下のもの ( 注 2) 相続 贈与前 15 年以内に国内に住所を有していた期間が合計 10 年以下の者で この期間継続して日本国籍なしであったもの

(B) 例外 ( 国外財産も課税される場合 ) 出国前 15 年以内に 10 年超日本に滞在した外国人が出国後 2 年以内に行う国外財産の贈与 ( 受贈者 : 国内に住所なし 日本国籍なし ) について 出国後 2 年以内に再び国内に住所を戻した場合には 当該国外財産も贈与税の課税対象とされる ( 継続して日本に居住する外国人の租税回避を防止するため ) 2 納税義務判定のまとめ ( 改正後 ) 被相続人 贈与者 相続人 受贈者 一時居住者 国内に住所なし 日本国籍あり 10 年以内に住所なし 日本国籍なし 短期非居住贈与者 ( 注 2) 国内に日本国籍 ( 贈与税のみ ) ( 注 5) 住所なし なし 非居住被相続人 ( 注 3) 非居住贈与者 ( 注 4) 10 年以内に住所なし非居住被相続人 / 非居住贈与者 国内財産のみに課税 在留資格により滞在していた者で 相続 贈与前 15 年以内に国内に住所を有していた期間が合計 10 年以下のもの ( 注 2) 一時居住被相続人 / 一時居住贈与者 出国前 15 年以内において国内に住所を有していた期間が合計 10 年超の者で その期間中継続して日本国籍なしであったもののうち 出国から 2 年を経過していないもの ( 注 3) 相続前 10 年以内において 国内に住所を有していた期間中 継続して日本国籍なしであった者 ( 注 4) 出国前 15 年以内において 国内に住所を有していた期間中 継続して日本国籍なしであった者 ( 短期非居住贈与者を除く ) ( 注 5) 短期非居住贈与者からの贈与については 一旦申告不要とされる 国内 国外財産ともに課税 短期非居住贈与者が出国後 2 年以内に国内に住所を戻した場合には 全世界財産課税の対象となる 短期非居住贈与者が国内に住所を戻さず出国後 2 年を経過した場合には 非居住贈与者に該当し国内財産課税の対象となる (A) (B) - 74 -

3 具体例 ( 被相続人 贈与者の日本での滞在期間と改正の影響の関係 ) 日本での滞在期間が 10 年超の外国人から 国外居住の外国人に対する相続 贈与の場合 H19.1 H29.12 日本に入国本国に帰国 11 年間駐在 継続して日本国籍なし H30.3 H30.4 相続 贈与 1 納税義務 あり 相続 贈与 2 納税義務改正前 あり 改正後 なし 本国に帰国後 2 年以内に 再び日本に住所を戻した場合には納税義務あり ( 贈与の場合 ) 参考 14-6 ( 短期非居住贈与者からの贈与 ) 日本での滞在期間が 10 年以下の外国人から 国外居住の外国人に対する相続 贈与の場合 H21.1 H29.12 日本に入国本国に帰国 H30.3 H30.4 相続 贈与 1 相続 贈与 2 9 年間駐在 継続して日本国籍なし 納税義務 なし 納税義務 なし 今年度改正による影響なし 14-5 ( 相続税 贈与税 )

4 具体例 ( 短期非居住贈与者から国外居住の外国人への贈与と贈与税申告義務の関係 ) 出国後 2 年以内に日本に住所を戻さなかった場合 H29.12 本国に帰国 ( 日本に10 年超滞在 ) H30.4 贈与 H31.3 贈与税申告期限 申告義務なし H31.12 2 年経過時 課税の対象となる 非居住贈与者 からの贈与とみなす 課税されない 出国後 2 年以内に日本に住所を戻した場合 H29.12 本国に帰国 ( 日本に10 年超滞在 ) H30.4 贈与 H31.3 贈与税申告期限 申告義務なし H31.10 再度日本に居住 H32.3 贈与税申告期限 申告義務あり 課税の対象となる 再度申告義務が生じる 課税される 4. 適用時期 平成 30 年 4 月 1 日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する 14-6 ( 相続税 贈与税 )