2010 年上海訪日旅行市場動向調査報告書 2 0 1 0 年 5 月日本政府観光局上海事務所 調査概要 [ 調査目的 ] 上海を中心とした華東地域における訪日旅行の需要 市場動向を探る [ 調査対象 ] JNTO 上海事務所管轄地域内訪日旅行取扱旅行会社 全体 上海市 江蘇省 浙江省 福建省 雲南省 重慶市 四川省 46 14 11 5 7 3 2 4 [ 回収率 ] 100% [ 調査方法 ] Eメール ファックス MSNによる調査票送付 回収 [ 調査期間 ] 2010 年 2 月 22 日 ~3 月 15 日 [ 集計方法 ] 回答数の少ない雲南省 重慶市 四川省 ( 西南地区 ) はまとめて集計を行った 1.2010 年に販売強化する旅行目的地 [ 設問 : 販売を強化する旅行目的地 ] ( 複数回答 ) 回答者が主に訪日旅行担当者という影響もあるが 日本 (46 票 ) は販売強化エリアとして重要視されている 次いで多いのは 台湾 (29 票 ) 2008 年に中国からの訪台団体観光が解禁されて以来急増しており 2010 年 1 月 ~3 月期の訪台外客数では日本 (29.2 万人 ) を抜いて中国 (52.5 万人 ) が初めて首位となった なお 2009 年の訪台中国人数は約 97 万人だった ( 台湾交通部観光局発表 ) 続いて 欧州 (18 票 ) 豪州 ニュージーランド (18 票 ) クルーズ (15 票 ) となっている クルーズ旅行は日本と韓国など一度に数カ国を巡る商品が多く 値段も手ごろなため人気が高い 1
2.2010 年の訪日旅行の見通し 設問 :2010 年の訪日旅行の見通しは? 全体 上海 江蘇 浙江 福建 雲 重 四 増加する 37 9 11 3 7 7 前年並み 7 3 0 2 0 2 減少する 2 2 0 0 0 0 2010 年の訪日旅行について 全体で約 8 割の旅行社が 増加する と回答した 増加 と回答した社のコメントでは理由として 訪日旅行の評判が良い 日本による宣伝広告が強化された ツアー商品の選択肢が増えた 航空券代が安くなった などが挙げられた 上海でのみ 減少する と回答した旅行社があったが その理由として 上海万博により日本からの訪中旅行者が増え 日本行き団体航空座席が取りにくくなる という懸念が挙げられた 上海万博の影響 を聞いた設問でも 上海の旅行社からは ( 航空座席が取りにくくなるので ) 中国人の海外旅行が減る という回答が最も多く挙げられた 個別ヒアリングでも 航空券が取れない という声が良く聞かれる 一方 その他の市場では 海外旅行が増える として楽観的な見通しを示している旅行社が多い [ 設問 : 上海万博の開催により海外旅行への影響はあるか?] ( 複数回答 ) 2
3.2010 年に期待する訪日旅行のテーマ 2010 年に期待する訪日旅行のテーマについて 全体では 1 位 買い物 (33 票 ) 2 位 桜 (31 票 ) 3 位 紅葉 (30 票 ) 4 位 温泉 (29 票 ) 5 位 スキー 雪遊び (25 票 ) という順位になった 前回調査 (2009 年 3 月実施 43 社対象 ) の結果と比較すると 2 位であった温泉が順位を下げたほかは 上位の順位に大きな変化はない 医療観光 産業観光 マンガ アニメ は今回初めて加えた選択肢であるが このうち マンガ アニメ (22 票 ) と 産業観光 (19 票 ) は 和食 (15) 票 と テーマパーク (14 票 ) を上回った 一方 市場別で見ると 最も多くの関心を集めたのは 上海市 江蘇省では 温泉 浙江省では 桜 紅葉 ( 同点 ) 福建省では スキー 雪遊び 雲南省 重慶市 四川省では 産業観光 となり 傾向が分かれた JNTO 訪問地調査でも 2009 年は訪日動機に 温泉 が初めて 1 位となっている 近年 中国では健康志向が高まっているが その表れと言えるかもしれない [ 設問 :2010 年に期待できる訪日旅行のテーマは?] ( 複数回答 ) 参考 2009 年調査におけるランキング ( 全体のみ ) 1 位 2 位 3 位 4 位 5 位 6 位 7 位 8 位 買い物温泉桜紅葉スキーテーマハ ーク和食ゴルフ 3
4.2010 年の訪日旅行商品売れ行き予想 2010 年の訪日旅行商品の売れ行き予想を聞いた設問では 最も多かったのが 北海道 + 東京 or 関西 (39 票 ) であった これは北海道と東京または関西を組み合わせた旅行商品を指す 2 位に 北海道 (34 票 ) がつけており 2010 年も北海道人気が継続することを印象付けた 続いて東京 ~ 名古屋 ~ 大阪を巡る 定番ルート (27 票 ) ( 日本では ゴールデンルート と呼ばれる ) と 東京滞在型 (27 票 ) が同点で 3 位となった 訪日が初めての旅行者は通常 定番ルート を好むが 旅行社によると初訪日でも北海道を選ぶ客が増えているという 東京滞在型 (27 票 ) 関西滞在型 (24 票 ) などリピーター向きの滞在型商品が順調な伸びを見せており 訪日旅行が 2 度目以上の旅行者が増えてきていることがわかる 一方 中央道ルート は 増加 と 変化なし が同数 (17 票 ) となっており伸び悩みが見られる 圧倒的なボリュームを活かした仕入が行われる 定番ルート と比べ割高になってしまう点が苦戦の要因と考えられる その他の地域では 沖縄 (15 票 ) が最も奮闘した 近年中国では海南島やバリ島など 島リゾート への関心が高いが 当地で開催するセミナー等でも沖縄に対する反応は良く 今後の売れ行きに注目したい [ 設問 :2010 年の訪日旅行商品売れ行き予想 ] ( 複数回答 ) 4
次に 市場別の売れ行き予想を見ていきたい 上海市では 人気の 北海道 + 東京 or 関西 北海道 東京滞在型 関西滞在型 は全体の傾向と同じだが 定番ルート と 中央道ルート はやや停滞気味である 訪日が初めての旅行者はより多くの訪問地を含んだコースを好むが 上海では他市場よりリピーターの増加が進んでいることを示すものであろう 上海市 江蘇省でも北海道が人気だが 上海に比べ 定番ルート 中央道ルート への支持率が依然として高い 省都 南京市は上海事務所管轄地域内で最も 中央道ルート の販売に熱心な旅行社が多く その傾向は継続されるようである その他の滞在型も増加がみられるものの 全体的には 予定なし の回答が目立つ 江蘇省 5
浙江省はサンプル数が少ないものの 北海道 + 東京 or 関西 東京滞在型 定番ルート への支持が多く 東京 を含んでいることが支持される商品の特徴に挙げられる 旅行社からも 東京が入っていないと売り難い という声が聞かれる 上海などに比べ日本に関する情報が不足していることもその要因であろう また 2009 年 12 月から JAL が杭州路線から撤退したことで 中国人観光客向けの座席供給量が慢性的に不足する事態となっている 浙江省 福建省では北海道人気が飛び抜けているが その背景には亜熱帯に位置していることから雪や涼しい気候への憧れが強いことが考えられる 東京滞在型 の人気が他市場に比べて低いのは 東京への直行便がアモイ - 成田 ( 全日空 週 7 便 ) のみで 省都 福州からは出ていないことも要因のひとつであろう ( 2010 年 4 月 6 日より 深セン航空の福州 - 成田チャーター便が週 3 便で就航 ) 深セン航空の福州 - 関空便が増便 ( 週 4 便 ) したことから福州では関西ツアー商品造成の意欲が高まっている 一方 全日空のアモイ - 関空便は同 3 月末より運休となり 商品造成への影響が懸念される 福建省 6
雲南省 重慶市 四川省は経済発展し市民の旅行意欲も高いが 日本への就航便はあるものの上海や北京を経由しており 費用 時間ともに負担が大きい また 繁忙期には航空座席の供給量が絶対的に不足することから訪日旅行市場は実需通りに拡大しない状況が続いている 訪日旅行商品としては定番ルートが主流であった雲南 重慶 四川市場においても北海道人気が広がっていることは注目に値する 中央道ルート が他市場に比べて特に少ないが 費用や知名度の低さが要因であろう 雲南 重慶 四川 5.2010 年に増加が期待できる訪日旅行者層 2010 年に増加が期待できる訪日旅行者の年齢層を問う設問に対して 全体としては 40~50 代女性 に最も支持が集まったが 上海では 20~30 代女性 が最も多い [ 設問 :2010 年に増加が期待できる訪日旅行者層 ] ( 複数回答 ) 7
6. 旅行商品の販売において 消費者に訴求力のある媒体 [ 設問 : 消費者に訴求力のある媒体 ( 全体 )] 旅行商品の販売において訴求力のある媒体を聞いた設問では 新聞 (37 票 ) が群を抜いて支持を得た 中国では旅行商品の広告は新聞に掲載されるのが一般的である 以下 テレビ CM(21 票 ) テレビ番組 (19 票 ) 交通広告 (18 票 ) と続く 意外にも ウェブサイト (11 票 ) は ラジオ (12 票 ) よりも低い結果となった 地域別でみると 新聞 テレビは満遍なく支持がある その他の媒体では 上海市では 交通広告 の評価が最も高いが これは地下鉄等の公共交通機関が発達していることによるだろう 江蘇省では ラジオ が評価されているが 南京市や蘇州市では人気のラジオ番組とタイアップして旅行 PR を行う手法が成果を上げている [ 設問 : 消費者に訴求力のある媒体 ( 市場別 )] 8
7. 日本側に期待する事項 [ 設問 : 日本に期待する事項 ( 全体 )] 日本側に期待する事項については 販売促進支援 (38 票 ) 視察ツアーの実施 (31 票 ) 送客報奨金制度の実施 (28 票 ) など直接的な支援となるが多かった 個人ビザ緩和 (33 票 ) への期待も高かった 一方 旅行博覧会への参加 (11 票 ) 観光セミナーの実施 (14 票 ) はあまり支持が高くなかった 市場別でみると 個人ビザの扱いの多い上海市では ウェブサイト (10 票 ) 中国語標識 (11 票 ) の充実を求める回答が多い その他の市場では 日本独自の広告 イベント開催 など日本の知名度アップにつながる施策を求める声が比較的強いようである [ 設問 : 日本に期待する事項 ( 市場別 )] 9
8. 総括 2008 年秋に端を発した世界金融危機によって世界の外国旅行市場は大きな打撃を受けた 日本では 2009 年の訪日外客数が対前年比 18.7% の 678 万人と大きく後退する中で 中国市場は主要市場で唯一健闘し 100 万人超えを維持した 2010 年に入ってからも中国市場からの訪日客は順調に増加しており 2010 年 1 月 ~3 月までの累計では 台湾市場を抜き暫定 2 位となっている また 3 月単月で見ても桜鑑賞ツアーの人気などもあって訪日中国人は 123,500 人と単月で過去最高を記録した このような快調を背景に 今回の旅行社へのアンケート結果は 2010 年の訪日旅行の順調な伸長を予測するものとなった 特に映画 非誠勿擾 のヒットが契機となって一大ブームを起こした北海道旅行の人気は 映画公開から 1 年以上過ぎた今も衰えを見せることなく さらに北海道と他地域を組み合わせた商品の登場など波及効果が継続 拡大している これは口コミにより北海道旅行の評判が急激に広まったことが大きい 一方 2010 年の旅行商品売れ行き予想の結果を見る限り 特定の訪日ツアー商品に集中していることから訪問地多様化への道のりは依然として容易ではない 目下の懸念としては 上海万博の影響が挙げられる 万博を訪れる日本人観光客向けの需要が拡大し 上海発着の日本便の団体航空座席が取りにくくなっているという声が旅行社からも寄せられている 万博開催期間は 5 月 ~10 月までの半年間であるが この間に夏休みのほか中国最大の旅行シーズンである国慶節 (2010 年は 10 月 1 日 ~7 日 ) が含まれている 座席供給不足及び航空券価格の高騰が続けば せっかくの訪日旅行人気にも影響が出かねない JNTO 上海事務所は航空各社に中国側旅行社の懸念を伝え善処を求めているが 東京 大阪の基幹路線以外の地方路線を利用した商品造成の促進にも取り組んでいきたい 以上 10