自己乳化型グリセリルモノステアレート レオドール MS-165V (RHEODOL MS-165V) レオドール MS-165V は 酸に安定なモノグリセライド系非イオン性界面活性剤で あり その特長ある性質を利用して すぐれた化粧品をつくることができます 目 次 1. 化粧品用グリセリルモノステアレートの種類 2 2. 化粧品への代表的な応用例 2 3. 自己乳化型乳化剤としての応用例 5 4. 石けんと併用したクリーム例 5 5. 製品特性 6 6. 使用上の注意 7 7. 荷姿 7 1
1. 化粧品用グリセリルモノステアレートの種類化粧品に使用されるグリセリルモノステアレート (GMS) には次の3 種があります (1) 非自己乳化型これは グリセリルモノステアレート ( 以後 GMSと略す ) の中で最も簡単なものです これを単独で使用しても 良好なO/Wエマルションを得ることはできません この製品が親水性界面活性剤というよりも 親油性の高い界面活性剤であるためです これを乳化剤として用いるときは 親水性の乳化剤 例えば レオドールTW シリーズ( ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル ) エマノーン ( ポリエチレングリコール脂肪酸エステル ) または石けんを同時に配合して用いなければなりません レオドールTW シリーズまたは エマノーン と併用したGMSは 中性あるいは酸性のクリームやローションをつくるのに最適です しかし 石けんと併用したGMS 乳化剤は アルカリ性の化粧品にしか用いられません 当社には高純度の非自己乳化型乳化剤として レオドールMS-50 および レオドールMS-60 があります (2) 自己乳化型これは 親水性乳化剤と非自己乳化型 GMSとを配合してつくられ O/Wエマルションをつくるのに用いられます この型のものは 一般に普通のGMSに5~25% の石けんを加えることによってつくられますので アルカリ性クリームやローションにのみ用いることができ 酸性あるいは電解質物質を含む化粧品には用いることができません (3) 自己乳化性酸安定型この型の乳化剤は 非自己乳化型 GMSを改良してつくられ 制汗剤あるいは温和な酸 電解質を含む化粧品をつくるのに最適です これでつくったクリーム ローションには皮ふの ph にあうように酸を加えても分離は起きません 自己乳化性酸安定型 GMSを得るには多くの方法がありますが 当社の レオドール MS-165V は 非イオン性界面活性剤で構成されているという特長があり どんな化粧品成分あるいは薬効成分を加えても 乳化の安定なすぐれた化粧品が得られます 2. 化粧品への代表的な応用例 レオドール MS-165V は これらの3 種のGMSが必要とされる製品には どれにでも応用できます 弱酸性 または中性クリームやローションに適しますが 特にどうしても酸性でなければいけない制汗剤 またはさまざまな電解質を含む化粧品にも最適な乳化剤です レオドール MS-165V は非イオン性であり 化粧品の成分選択も自由にでき 非イオン性でない石けんを配合したGMSを使用した場合より 安定なエマルションを得ることができるのです レオドール MS-165V とGSMを用いた配合品について 簡単な成分を乳化することにより エマルションの安定性 化粧品用としての適合性を検討しましたが たいへん良い結果を得ることができました レオドール MS-165V を用いた処方例を次に示しておりますので 一般のGMS 製品と比較してみてください 2
(1) 制汗剤 制汗剤 には収れん性塩が配合されていますので それが安定であるためには酸安定型 GMS が必要となります この レオドール MS-165V を使用すれば そのすぐれた特長により非常に安定性の良好な化粧品を得ることができます 処方例 1と2は レオドール MS-165V を用いた簡単な処方ですが たいへん良い安定性を示します 処方例 1 制汗ローション (A) レオドール MS-165V 15% (B) 水 45% アルミニウムクロロハイドレート (50% 溶液 ) 40% 調整法 :(A) を 70 に (B) を 72 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら加え 温度が下がるまで撹拌する 処方例 2 制汗クリーム (A) レオドール MS-165V 5% カルコール 6870( セチルアルコール ) 5% (B) 水 50% アルミニウムクロロハイドレート (50% 溶液 ) 40% 調整法 : 処方例 1と同じ 処方例 3 制汗クリーム (A) レオドール MS-165V 18% 鯨ロウ 5% (B) 化粧品用濃グリセリン 5% 水 53% (C) 酸化チタン 1% (D) アルミニウムクロロハイドレート (50% 溶液 ) 18% 調整法 :(A) (B) を 75~80 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら加え 10~20 分そのまま撹拌する 次に (C) を加え撹拌し 35~40 度に冷却し ゆっくり (D) を加え さらに充分撹拌し香料を加える (2)O/W 型中性あるいは弱酸性クリーム ローション中性あるいは酸性のクリーム ローションは アルカリ性化粧品に比べて皮ふを健康にしてくれます 皮ふは通常酸性であり バクテリアが繁殖することから守っているのですが アルカリ性化粧品はそれを一時的に中和してしまうからです 化粧品は 一般には石けんと乳化剤 あるいは乳化剤とアルカリの併用による方法でつくられますが これらの化粧品はアルカリ性を示します 普通の自己乳化型のGMSを使用した場合でも 石けんを併用していますのでアルカリ性になります このようなアルカリ性化粧品の ph を皮ふの ph にあわせるため 酸を加えることはできません それは 酸が石けんと反応してエマルションを破壊してしまうためです レオドール MS-165V は 中性あるいは弱酸性 GMS 型のクリームをつくるのに最適ですが レオドール MS-165V は酸に安定というだけでなく それ自身中性の非イオン性界面活性剤であ 3
り クエン酸 酒石酸 マレイン酸またはリンゴ酸を加えて ph を調整した化粧品を得ることができます 処方例 4~6は レオドール MS-165V を使用した処方例ですが 強い乳化力を示しています これらの処方例は中性でありますので 温和な酸を加えて ph を変えることもできます 処方例 4 ハンドローション (A) レオドール MS-165V 5% カルコール 6870( セチルアルコール ) 5% (B) ソルビトール花王 ( ソルビトール ) 5% 水 85% 保存剤 温和な酸 (ph を調整するため ) 調整法 :(A) を 70 (B) を 72 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら徐々に加え 温度が下がるまで撹拌する 処方例 5 ハンドクリーム (A) レオドール MS-165V 5% カルコール 6870( セチルアルコール ) 5% (B) レオドール MS-165V 5% 水 85% 温和な酸 (ph を調整するため ) 調整法 : 処方例 4に同じ 処方例 6 ミネラルオイルローション (A) レオドール MS-165V 10% ミネラルオイル 10% (B) 水 80% 保存剤 温和な酸 (ph を調整するため ) 調整法 : 処方例 4に同じ 処方例 7 香料クリーム (A) レオドール MS-165V 16% 鯨ロウ 5% カルコール 6870( セチルアルコール ) 5% エキセパール IPM( イソプロピルミリステート ) 3% (B) エマルゲン 123P( ポリオキシエチレンラウリルエーテル ) 2% 水 59% (C) 香料 調整法 :(A)(B) を 75 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら加える 45 で (C) を加え 温度が下がるまで撹拌する 4
3. 自己乳化型乳化剤としての処方例 レオドール MS-165V は 酸安定型 GMSを用いた化粧品に使用されるばかりでなく 普通の自己乳化型 GMSとして用いることができます レオドール MS-165V の自己乳化型グリセリルモノステアレートとしての適合性について 処方例 8 9に示した配合品で検討しましたが ここで得られるエマルションは充分安定で良好な化粧品となりました 一般の自己乳化型のGMSによってつくられる製品はアルカリ性ですが レオドール MS-165V を用いますとその製品は中性であり 皮ふの ph にあうように酸を加えても その安定性は変わりません 処方例 8 バニシングクリーム (A) レオドール MS-165V 18% ラノリン 2% カルコール 6870( セチルアルコール ) 1% ミネラルオイル 1% (B) ソルビトール花王 ( ソルビトール ) 2% 水 76% 調整法 :(A)(B) を 90~92 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら加え 温度が下がるまでたえず撹拌する 処方例 9 スキンクリーム (A) レオドール MS-165V 12% ラノリン 1% カルコール 6870( セチルアルコール ) 3% ミネラルオイル 4% (B) プロピレングリコール 1% 水 79% 調整法 :(A) を 65 (B) を 67 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら加え 温度が下がるまで撹拌する 4. 石けんと併用したクリーム例化粧品に用いられる多くの処方例の中で GMSはエモリアント剤 増粘剤として使用されます また その乳化性は皮革やひげの軟化剤として 石けんの乳化性と同様に利用されます 次の処方例は レオドール MS-165V と石けんの併用によるクリームです 5
処方例 10 ブラッシュレスシェービングクリーム (A) 精製ステアリン酸 24.0% レオドール MS-165V 3.0% 化粧品用濃グリセリン 6.0% カルコール 8688( ステアリルアルコール ) 1.0% 白色ワセリン 8.0% ラノリン 2.0% (B) トリエタノールアミン 1.1% ホウ砂 1.0% 水 53.9% 保存剤 調整法 :(A) を 80 (B) を 82 に加熱し (B) を (A) に撹拌しながら加え 冷えて固まるまで撹拌して 一夜放置し よくかき混ぜて製品とする 5. 性 質 (1) 一般性状 融 点 50~65 酸 価 3 以下 ヨウ素価 3 以下 けん化価 90~100 乾燥減量 3% 以下 強熱残分 1% 以下 レオドール MS-165V は主として化粧品に使用されますが 融点以上に加熱しますとアルコールに溶解します 綿実油 ミネラルオイル プロピレングリコールには溶解しません 次の表は 水に レオドール MS-165V を種々の濃度で分散させたときの稠度と安定性を示したものです 表 1: レオドール MS-165V 水溶液の濃度と稠度とその水溶液の安定性 レオドール MS-165V 濃度 (%) 稠度安定性 5 希薄なローション わずかに安定 10 中程のローション 安 定 15 中程のローション 安 定 20 粘性のあるローション 安 定 25 柔らかいクリーム 安 定 6
6. 使用上の注意グリセリンモノステアレート (GMS) として レオドール MS-165V を使用すればすぐれた製品を得ることができますが どんな乳化剤についても同じように言えますが親水性 親油性の度合いについて考えることを忘れてはいけません ある油層成分のための理想的な乳化力は 親水性乳化剤と親油性乳化剤とを配合して最適な親水性 親油性バランス (HLB) にしたときに得ることができるのです レオドール MS-165V の増粘作用についてはほかのGMSとほぼ同じ傾向を有しますが 特に増粘効果が必要なときには カルコール 6870 ( セチルアルコール ) あるいは カルコール 8688 ( ステアリルアルコール ) と レオドール MS-165V の併用をおすすめします 7. 荷姿 20kg 入りパッキングケース 7
ここに掲載された事項は 細心の注意を払って行われた実験事実に基づくものでありますが 実際の現場結果を確実に保証するものではありません 花王株式会社ケミカル事業ユニット 東京 131-8501 東京都墨田区文花 2-1-3 TEL:03-5630-7644 大阪 550-0012 大阪市西区立売堀 1-4-1 TEL:06-6533-7441 2004.08 035-024(R2) URL=http://chemical.kao.com/jp/ E-mail=chemical@kao.co.jp 8