Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis ITARDA INFORMATION 財団法人交通事故総合分析センターイタルダ インフォメーション 2009 FEBRUARY No. 78 特集 その自転車の乗り方では事故になります

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26 No.62 Contents No.62

目 次 1 交通事故の発生状況 1 2 死傷者の状況 (1) 齢層別の状況 3 (2) 状態別の状況 5 (3) 齢層別 状態別の状況 7 (4) 損傷部位別の状況 12 (5) 昼夜別の状況 14 3 交通事故の状況 (1) 齢層別の状況 17 (2) 法令違反別の状況 19 (3) 飲酒別の状況

【資料1】高齢運転者に係る交通事故分析

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平成 25 年度第 7 回キッズ モニターアンケート 自転車の交通ルールとマナーについて 実施報告 アンケートの実施結果は以下のとおりでした キッズ モニターのみなさん ご協力ありがとうございました アンケート概要 1 実施期間平成 25 年 12 月 13 日 ~12 月 26 日 2 回答者数

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目次 はじめに 1 1 全国 北海道 帯広市の交通事故発生件数 死者数 負傷者数の推移 1 2 月別交通事故発生状況 (H22-H26 合計 ) 2 3 時間別交通事故発生状況 (H22-H26 合計 ) 3 4 曜日別交通事故発生状況 (H22-H26 合計 ) 3 5 事故類型別交通事故発生状況

Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis ITARDA INFORMATION 財団法人交通事故総合分析センターイタルダ インフォメーション 2010 MAY No. 83 特集 自動車と歩行者の事故 交通事故による被害は年々

1-1 交通死亡事故全体の推移 10 年前と比較し の死者は 40.7% 65 歳以上の死者は 24.0% それぞれ減少 死者に占める 65 歳以上の割合は 24 年以降増加 27 年中死者の半数以上 (54.6%) を 65 歳以上が占める 10 年前と比較し 人口当たり死者数は 65 歳以上のい

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問 2 自転車を乗っているときに事故を起こした場合 どのような責任を負います か? 自転車だから大丈夫 事故を起こしたとしても大事にはならない そんな軽はずみな気持ちが 死傷者を出す重大な事故につながります 道路交通法上 自転車も車両の一種( 軽車両 ) です 法律違反をして事故を起こすと 自転車利

生活道路対策

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1 踏切事故 とは国土交通省鉄道局の資料( 鉄軌道輸送の安全にかかわる情報 の 用語の説明 ) によれば 踏切障害に伴う列車衝突事故 列車脱線事故及び列車火災事故並びに踏切障害事故 をいいます 2 3 出典 : 国土交通省鉄道局 鉄軌道輸送の安全にかかわる情報

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7 主な推進事項 (1) 子供と高齢者の交通事故防止 県民総ぐるみで交通安全意識の高揚を図り 子供及び高齢者等に対する保護意識の醸成を図る 保護者から子供への交通安全教育の推進 通学路等における子供の安全確保 高齢歩行者の死亡事故の特徴を踏まえた交通安全教育の推進 身体機能や認知機能の変化が運転に及

資料 1 逆走事案のデータ分析結果 1. 逆走事案の発生状況 2. 逆走事案の詳細分析

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交通事故から 自分自身と家族を守るために

H 児童・生徒の交通事故

( 件 / 人 ) 12, 交通事故の推移 (S4~) ( 人 ) 18 1, 8, 6, 4, 2, 死者数 人身事故件数 負傷者数 S4 S45 S5 S55 S6 H2 H7 H12 H17 H 約 2 倍 6 人身事故件数及び負傷者数は 平成 14 年以降減少傾

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() 方面別発生状況 月中の死者は札幌方面が 人 (.%) で最も多く 次いで釧路方面が 人 (.%) 旭川方面が 人 (.%) となっている 月末の死者は札幌方面が 人 (.%) で最も多く 次いで旭川方面が 人 (.%) 釧路方面が 人 (.%) となっている 月中 方面別 \ 区分発生件数傷者

1 自転車の罰則について

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アンケート内容 2

【セット版】本資料(H29事故分析)

1 みんなに優しくスマートに!! 自転車は便利で環境にも優しい車両です ところが ルールやマナーを無視した乗り方は交通事故につながります 川崎市内では 自転車が関係する交通事故が多発しています みんなへの優しさを持って自転車を利用して 交通事故を防止しましょう 信号を守ろう! 違反すると 3 月以下

() 方面別発生状況 7 月中の死者は札幌方面が 人 (.%) で最も多く 次いで旭川方面と釧路方面が各々 人 (.%) となっている 7 月末の死者は札幌方面が 人 (.7%) で最も多く 次いで旭川方面が 人 (.%) 釧路方面が 人 (7.%) となっている 7 月中 方面別 \ 区分発生件数

本章では 衝突被害軽減ブレーキ 車線逸脱警報 装置 等の自動車に備えられている運転支援装置の特性 Ⅻ. 運転支援装置を 備えるトラックの 適切な運転方法 と使い方を理解した運転の重要性について整理しています 指導においては 装置を過信し 事故に至るケースがあることを理解させましょう また 運転支援装

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ふくい経済トピックス ( 就業編 ) 共働き率日本一の福井県 平成 2 2 年 1 0 月の国勢調査結果によると 福井県の共働き率は % と全国の % を 1 1 ポイント上回り 今回も福井県が 共働き率日本一 となりました しかし 2 0 年前の平成 2 年の共働き率は

初めて親となった年齢別に見た 就労状況 ( 問 33 問 8) 図 97. 初めて親となった年齢別に見た 就労状況 10 代で出産する人では 正規群 の割合が低く 非正規群 無業 の割合が高く それぞれ 22.7% 5.7% であった 初めて親となった年齢別に見た 体や気持ちで気になること ( 問

子供と高齢者の交通事故防止 子供とその保護者及び高齢者の交通安全意識の高揚を図るとともに 子供や高齢者等の交通弱者に対する保護意識の醸成を図る 日常生活の中で 安全に道路を通行するための幼児 児童とその保護者に対する交通安全教育 広報啓発の促進 通学路等における幼児 児童の安全の確保 子供と高齢者に

子供と高齢者の安全な通行の確保と高齢運転者の交通事故防止 次代を担う子供のかけがえのない命を社会全体で交通事故から守ることが重要であるにもかかわらず 依然として道路において子供が危険にさらされていること また 高齢者の交通事故死者数が 交通事故死者数全体の約半数を占め その減少が強く求められているこ

 

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初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 問 33 問 8- 母 ) 図 95. 初めて親となった年齢別に見た 母親の最終学歴 ( 母親 ) 初めて親となった年齢 を基準に 10 代で初めて親となった 10 代群 平均出産年齢以下の年齢で初めて親となった平均以下群 (20~30 歳 ) 平均

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平成20年度携帯電話の利用についての実態把握町について【概要】

交通安全ニュース

Ⅲ 調査対象および回答数 調査対象 学校数 有効回答数児童生徒保護者 (4~6 年 ) 12 校 1, 校 1, 校 1,621 1,238 合計 41 校 3,917 ( 有効回答率 96.3%) 3,098 ( 有効回答率 77.7%) Ⅳ 調査の実施時期

交通安全ニュース

困窮度別に見た はじめて親となった年齢 ( 問 33) 図 94. 困窮度別に見た はじめて親となった年齢 中央値以上群と比べて 困窮度 Ⅰ 群 困窮度 Ⅱ 群 困窮度 Ⅲ 群では 10 代 20~23 歳で親となった割 合が増える傾向にあった 困窮度 Ⅰ 群で 10 代で親となった割合は 0% 2

目次 1 1. 奈良市中心部の道路交通環境 1) 広域的な自転車利用ネットワーク P2 2) 幹線道路の交通状況 ( 交通量 ) P3 3) 幹線道路の交通状況 ( 混雑状況 ) P4 2. 自転車事故の分析結果 1) 道路種別別 ( 国道 県道 市道 ) 自転車事故発生状況 P5 2) 自動車交通

7 主な推進事項 (1) 子供と高齢者の交通事故防止子供及びその保護者 高齢運転者を含む高齢者の交通安全意識の高揚を図るとともに 県民総ぐるみで子供及び高齢者等に対する保護意識の醸成を図る 保護者から子供への安全教育の推進 通学路等における子供の安全確保 ドライバーに対する高齢者事故の特徴を踏まえた

ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に

概要資料(平成29年死亡事故等分析)

国土技術政策総合研究所 研究資料

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1 基本的な整備内容 道路標識 専用通行帯 (327 の 4) の設置 ( 架空標識の場合の例 ) 自 転 車 ピクトグラム ( 自転車マーク等 ) の設置 始点部および中間部 道路標示 専用通行帯 (109 の 6) の設置 ( 過度な表示は行わない ) 専 用 道路標示 車両通行帯 (109)

本章のまとめ 第 4 章当市の人口推移 本章のまとめ 現在までの人口推移は以下のとおりである 1. 人口の減少当市の人口は平成 23 年 7 月 (153,558 人 ) を頂点に減少へ転じた 平成 27 年 1 月 1 日時点の人口は 151,412 人である 2. 人口増減の傾向年齢 3 区分で

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1 自転車関連事故の現状と指導取締りの状況 (1) 自転車関連事故の推移 自転車関連事故の全交通事故に占める割合は増加傾向にあり 平成 23 年は約 2 割を占めている状況 自転車対歩行者の交通事故件数は10 年前の約 1.5 倍 全交通事故件数 ( 件 ) ( 件 ) 1,000, ,

ひっかけ問題 ( 緊急対策ゼミ ) ステップ A B C D 39.4% 学科試験パーフェクト分析から ひっかけ問題 に重点をおいた特別ゼミ! 2 段階 出題頻度 39.4% D ゼミ / 内容 *(2 段階 24.07%+ 安知 15.28%=39.4

ドライブレコーダ協議会 (1) ipadアプリhazardtouchの訓練効果 (2) DR 映像を利用した運転評価の可能性 2012/11/02 島崎敢早稲田大学人間科学学術院 中村愛早稲田大学大学院人間科学研究科

子供の交通事故防止 子供が関連する交通事故の件数は年々減少傾向にあるものの 子供の行動範囲が広がる夏休みが始まる 7 月に運動の重点として掲げ 横断歩道を渡る 道路へは飛び出さない 道路を渡るときは左右をしっかり確認するなどの基本的な交通ルールとマナーを 一人ひとりに根付かせる 日常生活の中で 安全

参考資料

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セーフティツーリング

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2017 年 2 月 27 日株式会社カカクコム 価格.com 生命保険 に関する調査結果を発表加入率は約 8 割 若年層ほど低い傾向 加入中の生命保険は終身タイプがトップ将来への不安?20 代の加入目的 老後保障 貯蓄 が他世代よりも高い結果に補償内容への理解度 十分理解できていない加入者が 53

第 1 三重県の交通事故発生状況 1 平成 29 年 12 月中に発生した交通事故 注 1 数字は単位未満で四捨五入してある ( 平成 29 年 12 月中 ) ため 合計の数字と内訳の計が一致しない場合や 四捨五入前の数字を用いて計算区分 29 年 2 年増減数増減率した結果と表中の数字が一致しな

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はじめに 交通事故統計年報によると 交通事故発生件数及び死傷者数は年々減少傾向にあるが 自動車保険統計による保険金支払額は同様には減少していない 現在の交通事故対策は 警察統計による交通事故発生件数や死傷者数等の量的な値で評価し その値を減少させることを目的に行われているが 現状ではこの比較手法が必

講演 3 自転車運転者の行動傾向と注意点について 2014/03/18 中部運輸局自動車事故防止セミナー 公益財団法人労働科学研究所 松田文子 F.Mastdua The Institute for Science of Labour 2014/03/18 中部運輸局自動車事故防止セミナー 1

交通安全講座 高齢運転者編 あなたは危険に気づけるか!? 交通安全の専門家がわかりやすく解説! 監修 : 鈴木春男千葉大学名誉教授 公益社団法人北海道交通安全推進委員会

C 2015 IT 第 18 回研究発表会テーマ論文 携帯電話等の使用が要因となる事故の分析 研究部研究第一課研究員本田正英 概要運転中の携帯電話等の使用は道路交通法で禁止されているが 携帯電話等で通話しながら あるいは画面を見ながら運転する人は多く 平成 26 年中の同違反での検挙件数は約 110

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2 また 保護者等の役割 として 子どもへの自転車の安全利用に関する指導について規定している 3 人乗りの自転車に関しては 保護者だけでなく 自転車利用者全体の法令遵守の中での指導となる 市長学校に関して 市立高等学校では乗車用ヘルメット着用は義務化されていないのか 教育長義務化はしていない 高校生

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注 5 指定管理者制度公の施設の管理について 民間事業者を含む指定管理者に施設の管理を委ねることにより 民間事業者等の有する能力 経験 知識等を活用しつつ 市民サービスの向上と経費の節減等を図る手法 注 6 PFI 方式 PFI(Private Finance Initiative): 公共サービス

01~03

(2) 高齢者の福祉 ア 要支援 要介護認定者数の推移 介護保険制度が始まった平成 12 年度と平成 24 年度と比較すると 65 歳以上の第 1 号被保険者のうち 要介護者又は要支援者と認定された人は 平成 12 年度末では約 247 万 1 千人であったのが 平成 24 年度末には約 545 万

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北海道青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨城県栃木県群馬県埼玉県千葉県東京都神奈川県新潟県富山県石川県福井県山梨県長野県岐阜県静岡県愛知県三重県滋賀県京都府大阪府兵庫県奈良県和歌山県鳥取県島根県岡山県広島県山口県徳島県香川県愛媛県高知県福岡県佐賀県長崎県熊本県大分県宮崎県鹿児島県沖縄県 4.9 0

睡眠調査(概要)

こんな事故が起きています! 交通事故データから 自転車事故の実態や原因を見てみましょう データから見る自転車事故の実態 各地で多発している自転車事故 被害事故だけでなく 加害事故も発生しています 最近の自転車事故の発生状況や事例を見ながら その実態を探ってみましょう 自転車事故の発生状況 主な要因は

平成27年版高齢社会白書(全体版)

表紙

スライド 1

高齢歩行者の交通事故防止

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( 続紙 1) 京都大学博士 ( 教育学 ) 氏名田村綾菜 論文題目 児童の謝罪と罪悪感の認知に関する発達的研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は 児童 ( 小学生 ) の対人葛藤場面における謝罪の認知について 罪悪感との関連を中心に 加害者と被害者という2つの立場から発達的変化を検討した 本論文は

Transcription:

Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis 財団法人交通事故総合分析センター イタルダ インフォメーション 2009 No. 78FEBRUARY INFORMATION 特集その自転車の乗り方では事故になります ( 一時停止標識のある場所での事故 自動車 自転車の運転者に限定 ) ITARDA 2

Institute for Traffic Accident Research and Data Analysis ITARDA INFORMATION 財団法人交通事故総合分析センターイタルダ インフォメーション 2009 FEBRUARY No. 78 特集 その自転車の乗り方では事故になります ( 一時停止標識のある場所での事故 自動車 自転車の運転者に限定 ) 自転車を利用する人の数は エコ 健康志向の流れに沿って増加しています 今回のイタルダインフォメーションでは 自転車利用中の死傷者を 運転者と同乗者という面から整理しました あわせて 知らず知らずのうちに 自転車運転者が他の車両や歩行者に 迷惑を掛けている実情についても考えてみましょう 2 CONTENTS 主な内容 1 2 4 5 自転車利用中の交通事故による死傷者自転車で事故に遭いやすい人 事故に遭いやすい時間帯自転車乗員の傷害自転車は被害者かまとめ 2 ITARDA INFORMATION 78

特集 その自転車の乗り方では事故になります SECTION 1 自転車利用中の交通事故による死傷者 図 1には死傷者数 ( 交通事故での軽傷者 重傷者 死者数の合計です ) の交通手段別の推移を 図 2には死者数の交通手段別の推移を示しました また図 図 4には交通手段同士で比較しやすいように 平成 10 年の値を基準に した指数で過去 10 年間の傾向を示しましたが 自転車の死傷者数減少のペースが遅いことがわかります 交通手段別に傾向を要約すると次のようになります 四輪車 : 死傷者数はそれほど減少していないのに死者数は大幅に減少しています 四輪車の安全対策の効果が大きい あるいは死亡に至るような重大な事故が減少していると考えられます 二輪車 : 死傷者数 死者数とも減少傾向にあります すなわち二輪車を利用する人が減少しているか あるいはそれほど増加していないからと考えられます 自転車 : 死傷者数 死者数とも減少のペースは遅く 自転車を利用する人が減らない あるいは増加していることが窺えます 歩行者 : 死傷者数としては大きく減少 他方 死者数については自転車と並んで減少のペースが遅いことがわかります すなわち一旦事故に遭うと死亡する危険が高い高齢歩行者の増加を反映していると考えられます 死者数(10 万人)0 14 10 12 10 8 6 4 2 0 H11 H12 H1 歩行者二輪車 四輪車 自転車 H14 H15 H16 H17 H18 H19 8 6 4 )2 H10 H10 死者数(千人H11 H12 H1 歩行者二輪車四輪車自転車 H14 H15 H16 H17 H18 H19 図 1 交通手段別の死傷者数推移 図 2 交通手段別の死者数推移 1.4 1.2 死傷死者者1.2 数数1 指指数数((1 0.8 自転車 H H 四輪車 10 10 二輪車 0.8 1 )0.6 歩行者全体 = 1 )0.6 0.4 H10 H11 H12 H1 H14 H15 H16 H17 H18 H19 = H10 H11 自転車四輪車二輪車歩行者全体 H12 H1 H14 H15 H16 H17 H18 H19 図 交通手段別の死傷者数指数推移図 4 交通手段別の死者数指数の推移 78 ITARDA INFORMATION

特集 その自転車の乗り方では事故になります 交通事故であっても死者が出やすい事故と そうでない事故とがあります 図 5には死傷者のうちの死者の割合を死亡率として定義し交通手段別に比較しました 死亡率は次のように計算します死亡率 (%)= 死者数 死傷者数 100 交通手段別で比較すると歩行者の死亡率が飛び抜けて高く かなり下がって二輪車 自転車が続き 四輪車は一番安全であることがわかります 同じ生身の歩行者に比べ 自転車はとくに若い利用者が多いことが死亡率の低さにつながっていると考えられます 2.6% 死亡率(%)1 0.% 0.4% 0 四輪車自転車図 5 交通手段別死亡率の比較 (H19 年 ) 2 0 SECTION 0.7% 二輪車 歩行者 自転車で事故に遭いやすい人 事故に遭いやすい時間帯 自転車を運転していて事故に遭う頻度 ( 事故頻度と呼ぶ ) の高い人はどういう人でしょうか 事故頻度の高い年齢層について考えてみます 自転車を利用するといっても 頻繁に利用する人 あまり利用しない人と様々です 事故頻度としては人口だけでなく この利用頻度も考慮する必要があるのですが 残念ながら利用頻度に関する適当な情報がないのが現状です したがってここでは単に人口だけを考慮し 右の式のように事故頻度を定義します なお 直接事故の発生に関わった人を対象にするべきなので いわゆる第 1 2 当事者に限定しています 分かりやすく言うと 他の事故の巻き添えを食った自転車の運転者は除いたということです 2 事故頻度事故頻度 =1,2 当自転車運転者人数 人口 ここで 人口は千人単位とします 図 6 に年齢層別の事故頻度を示しました 6 5 4 2 1 0.% 2.4% 4.1% 5.6% 2.0% 7 1 16 19 25 55 以12 15 18 24 54 64 1,2 当自転車運転者年齢層 6 1,2 当自転車運転者の事故頻度下図 (H19 年 ) 1.1% 1.2% 1.4% 1.0% 65 74 75 歳以上6 歳4 ITARDA INFORMATION 78

構成率(%0 00 時7-12 1-15 16-18 歳の小 中 高生に相当する人たちの事故頻度が目立って高く 自転車は運転免許を持たない ( 持てない ) 若い人達の便利な移動手段であることがわかります それも小学校 中学校 高校へと進学するごとに事故頻度は大きく上昇していて 進学のタイミングに合わせての指導 教育が有効と考えられます 今回の年齢層の分け方では19 歳あたりを境にして 事故頻度は大きく低下します 自転車から二輪車 四輪車などの他の交通手段に移行するということでしょう さらに年齢が高くなると事故頻度は徐々に上昇しますが これはこの年齢層ではまだ運転免許を持たない人が多いことを反映していると考えています ただし75 歳以上になると自転車を利用する機会そのものが少なくなると思われます 図 7には第 1 2 当事者自転車運転者の年齢層ごとに 事故が発生した時間の構成率を示しました 構成率が似通った年齢層はまとめたので 図 6での年齢層区分と異なっています 図 6で事故頻度が高いと説明した 1-15 16-18 歳では朝の7 時 8 時台に明確なピークがあります この時間帯は通学時間であり さらに通勤時間と重なることも事故が集中する要因です 1-15 歳 ( 中学生相当 ) 16-18 歳 ( 高校生相当 ) と学年が高くなるにつれ このピークが高くなります 中学校 高校と自転車通学が許される学校の数が増えるからと考えられます 一方 同じように事故頻度が高い 7-12 歳 ( 小学生相当 図 7の12 歳以下とパターンは同じ ) では朝のピークが見られません これは小学校ではまだ自転車通学が許されていないところが多いからでしょう 午後のピークは 12 歳以下 1-15 歳で顕著であり 下校 塾通い あるいは放課後の遊びなどでの外出が増えるからと思われます とくに 12 歳以下では朝にピークがない分 午後のピークが高くなっています 65 歳以上の高齢者の事故は明るいうち それも午前中に集中していますが 高齢者は暗い時間帯には外出そのものを控えるからと考えられます 25 20 15 )10 5 台02 時台04 時台06 時台08 時台10 時台12 時台14 時台16 時台18 時台20 時12 歳以下 1 15 16 18 19 54 55 64 65 歳以上 22 時台台図 7 自転車事故発生時間 (H19 年 ) 78 ITARDA INFORMATION 5

同乗者率(%) 死傷者数0 0 特集 その自転車の乗り方では事故になります SECTION 自転車乗員の傷害 - 被害者としての自転車 - 自転車の事故における人身損傷程度を 自転車と衝突相手の対比で図 8に示しました 図中の数字は事故に遭って無傷で済んだ人の割合 ( 無傷率と呼びます ) です 当然のことですが 自転車と四輪車が衝突すると四輪車の運転者の無傷率は約 99.9% とほぼ全員が無傷で済むのに対して 自転車運転者の無傷率は約 0.4% で ほぼ全員が死傷するのです 同様に自転車と二輪車の衝突では 二輪車の無傷率が約 85.9% であるのに対して 自転車が約 4.2% です すなわち二輪車より大きい車両との衝突では自転車は被害者 交通弱者と呼ばれるゆえんです た 無傷率 0.4% 自転車対四輪車 死亡重傷軽傷無傷 だ自転車が歩行者に衝突した場合は立場が逆転し 図 8に示すように一方的に歩行者が被害を受け ここでは自転車は加害者となる場合もあります 以下では歩行者以外の相手と衝突した事故に限定し 被害者としての自転車乗員を運転者と同乗者に分けて考えてみましょう 事故は平成 2 年から平成 19 年の合計で 対象は第 1 2 当事者の自転車の乗員です - 運転者 同乗者の傷害程度の差 - 自転車乗員の死傷者数を 自転車を運転していた人と自転車に同乗していた人に分けて図 9 の棒グラフに示しました 図中の 印は 該当する年齢層の人が運転者でなく 同乗者として死傷した割合を同乗者率として示しました 同乗者率は次のように計算します 無傷率 99.9% 同乗者率 (%)= 同乗者数 ( 運転者数 + 同乗者数 ) 100 無傷率 4.2% 自転車対二輪車 死亡重傷軽傷無傷 9 45 運転者 (10 万人 ) 同乗者 ( 万人 ) 6 同乗者率 0 無傷率 85.9% 15 無傷率 90.% 自転車対歩行者 死亡重傷軽傷無傷 7 1 16 19 25 55 65 12 15 18 24 54 64 74 自転車乗員年齢層 9 1,2 下図当自転車乗員死傷者数 同乗者率 (H2-H19 年 ) 75 歳以上6 歳以無傷率 6.5% 図 8 衝突車両運転者相関の運転者無傷率 (H19 年 ) 6 ITARDA INFORMATION 78

死亡重傷率(%)0 0 まず死傷者数についてみると 平成 2-19 年の18 年間で全年齢の合計では運転者が約 270 万人 同乗者が約 5 万人となり 同乗者は乗員全体の約 1.8% とあまり多くはありません 同乗者全体約 5 万人の年齢構成をみると 約 6% を6 歳以下の幼児 約 % を 7-12 1-15 16-18 19-24 歳が占めています 同乗者率をみると幼児が約 9% と圧倒的に高く 7-12 1-15 16-18 19-24 歳ではそれぞれが約 1.5% です 小 中 高 大学生が自転車に同乗している光景をよく見かけるように思うのですが 意外に低い印象を受けます 25 歳を超えると自転車同乗中の死傷者はほとんどいません 運転者と同乗者ではどちらが危険なのでしょうか 図 10 には自転車乗員が受けた傷害の重大さを表す指標として 以下に定義する死亡重傷率を示しました 死亡重傷率は自転車運転中も自転車同乗中も概ね同じような傾向にあり 基本的には人体の衝撃耐性に依存するようです ただし 12 歳以下とくに6 歳以下の幼児に注目すると 彼ら自身が運転する時に比べ同乗中の死亡重傷率は目立って低いことがわかります これは後で説明するように 12 歳以下の子供 幼児は大人が運転する自転車に同乗する場合が多いからです - 同乗者を乗せている時の事故が多いのは- どういう年齢層の人が同乗者を乗せることが多いのでしょうか 図 11 には自転車を運転していた人の年齢層別に 同乗者がいた事故の割合を整理しました 子育て世代と思われる 25-4 歳から5-44 歳が高く 1-15 16-18 19-24 歳も低くありません もう少し運転者と同乗者の関係についてみてみましょう 死亡重傷率 (%)= ( 死者数 + 重傷者数 ) 死傷者数 100 25 9 15 10 5 運転者同乗者 7 1 16 19 25 5 45 55 歳6 歳7 1 16 19 25 5 45 55 歳以以以以下12 15 18 24 4 44 54 上12 15 18 24 4 44 54 上10 自転車乗員死亡重傷率 (H2-H19 年 ) 図 11 同乗者がいた事故の割合下図 (H2-H19 年 ) 割合20 (%)6 0.9% 1.4%.2% 1.9% 1.9% 7.7% 5.% 0.7% 0.5% 2.% 全年齢6 歳自転車乗員年齢層 自転車運転者年齢層 78 ITARDA INFORMATION 7

自転車同乗者年齢層6 歳以下 87 19 2 2 50 9 86 58 68 同乗者年齢層運転者年齢層 特集 その自転車の乗り方では事故になります 表 1には 同乗者がいた自転車の事故件数を 運転者の年齢層ごとに同乗者の年齢構成率を整理したものです 運転者の年齢層ごとの合計が 100% となります 表 1の の部分は各運転者の年齢層の中で一番高い同乗者の構成率 の部分は二番目に高い構成率で10% 以上のものを示します 図 12 は 表 1のデータを天気図の気圧配置の表示でお馴染みの等高線で表示したものです すなわち より緑色の濃い部分の数字 ( ここでは同乗者の年齢構成率 ) が より高いことを示しています 6 歳以下 7-12 1-15 16-18 歳の年齢層では同年代の人を同乗させることが約 80% と大半であり 25 歳を超えると6 歳以下の幼児を同乗させる場合が 50-9% と多いことがわかります 45 歳以上では同年代を同乗させる場 合も約 20% と少しあるようです この結果は あくまでも事故にあった自転車のデータであり 事故に遭わなかった自転車も含めた自転車利用者の現状を正確に表しているとは限りません - 同乗者がいると危険か- 図 1 は 同乗者がいる自転車の事故において 事故が軽傷事故で済まず死亡重傷事故になる率を運転者の年齢層別に示したものです 本来は事故頻度で議論するべきなのですが SECTION 2 に述べた理由により 死亡重傷事故率を用いました 自転車と四輪車あるいは自転車と二輪車の事故では 自転車側乗員の被害が圧倒的に重く 死亡重傷事故であるということは自転車乗員が死亡 重傷以上の傷害を負っていると考えられます 自転車運転者年齢層 6 歳以下 7 12 1 15 16 18 19 24 25 4 5 44 45 54 55 以上 全年齢 100 100 100 100 100 100 100 100 100 55 以上 1 0 0 0 0 0 0 5 19 45 54 0 0 0 0 1 0 0 9 2 5 44 0 0 0 0 1 0 1 4 1 25 4 1 0 0 0 4 2 1 1 1 19 24 0 0 1 5 5 1 0 2 1 16 18 0 0 10 79 9 0 0 1 0 1 15 0 8 78 11 1 0 0 1 0 7 12 11 72 8 2 1 10 17 8 表 1 自転車運転者の年齢層別の同乗者の年齢層構成率 (H2-19 年計 ) 6 歳以上55 歳以上 同年代も同乗 45 54 約 20% 5 44 25 4 同年代が同乗約 80% 19 24 16 18 幼児が同乗約 50 90% 1 15 7 12 6 歳以下 7 1 16 19 25 5 45 55 歳以下12 15 18 24 4 44 54 90.0 100.0 80.0 90.0 70.0 80.0 60.0 70.0 50.0 60.0 40.0 50.0 0.0 40.0 20.0 0.0 10.0 20.0 0.0 10.0 図 12 自転車運転者 vs 同乗者年齢相関 (H2-H19 年 ) 8 ITARDA INFORMATION 78

55 歳以上6 歳図 12 の運転者と同乗者の年齢層相関を念頭 に置いて図 1 を眺めると 次のようにまとめ ることができます なお6 歳以下の幼児についてはデータ数が少なく信頼性が低いので参考としてください 死亡重傷事故率(%0 1 6 歳以下 7-12 1-15 歳の運転者は体力的に非力な上 同乗者と運転者の体重差が少ないため 自転車の安定性が損なわれがちとなり死亡重傷事故率が高い 2 1-15 16-18 歳の運転者では同乗者との体重差が少なく かつ活発な運転スタイルであることなどにより死亡重傷事故率が高い 一方 自転車運転者が 19 歳以上では同乗者は 6 歳以下の幼児 7-12 歳の子供である場合がほとんどであり 運転者への同乗者の体重としての負担が軽いことが死亡重傷事故率を高くしない要因と思われます また 6 歳以下の幼児 7-12 歳の子供を乗せている場合 運転者はより慎重な運転に心がけるであろうことも良い方に作用していると考えられます 4 自転車運転者が 55 歳以上になると 大人が同乗する場合もあり 運転者の体力低下 運転者の衝撃に対する耐性の低下も相俟って死亡重傷事故率が高くなると考えられます 16 12 8 )4 非力な運転者少ない体重差 活発な運転少ない体重差 軽い同乗者慎重な運転 運転者の体力低下運転者の耐性重い同乗者 7 1 16 19 25 5 45 以12 15 18 24 4 44 54 自転車運転者年齢層 1 自転車運転者年齢層別死亡重傷事故率下図 (H2-H19 年 ) -お母さんと6 歳以下の幼児あるいは 7-12 歳の子供との2 人 人乗りについて- 次のような条件に合う自転車事故を対象に お母さんと6 歳以下の幼児あるいは 7-12 歳の子供との2 人乗り 人乗りの危険性について検討しました 条件 18-44 歳女性 ( お母さん世代を想定している ) が自転車を運転していた時の事故 事故発生時間が6-10 時台 &1-16 時台の事故 自転車の同乗者がなし 6 歳以下の幼児あるいは 7-12 歳の子供が1 人あるいは2 人の場合に分類指標としては事故頻度を採用するべきではありますが SECTION 2 に述べた理由により 事故全体に占める死亡重傷事故件数の割合である死亡重傷事故率としました 図 14 に結果を示しますが 同乗者なしよりも6 歳以下の幼児あるいは 7-12 歳の子供が同乗している時の方が死亡重傷事故率は低く 重大な事故になりにくいということがわかりました 6 歳以下の幼児あるいは 7-12 歳の子供を 1 人乗せている時と 2 人乗せている時の比較はデータが少なく参考としてください 少なくとも お母さんが6 歳以下の幼児あるいは 7-12 歳の子供を同乗させている時は死亡重傷といった重大な事故が起きないように慎重な運転に心がけていると考えて良さそうです 別の言い方をすると たとえ同乗者を乗せているような不利な条件であっても 慎重な運転に心がけることにより重大な事故を防止できるということです 死亡重傷事故率(%0 4.5 4.5 2.5 2 1.5 )1 0.5 4.2%.%.5% 同乗者なし 1 人同乗 2 人同乗 図 14 お母さんが 6 歳以下の幼児あるいは 7~12 歳の子供同乗中の死亡重傷事故率 (H2-H19 年 ) 78 ITARDA INFORMATION 9

特集 その自転車の乗り方では事故になります SECTION 4 自転車は被害者か ここまでは被害者としての自転車について説明してきましたが 本当に自転車は被害者でしょうか? 答えは 否 です その理由の1つは図 8で説明したように 自転車が歩行者と衝突した場合 歩行者がより重い傷害を受け 自転車は加害者となる場合が多いことです 以下では2つ目の理由として イタルダが実施している事故例調査データを用いて 自転車運転者のある 行為により事故の原因を作り 他者に迷惑を掛けている現状について説明しましょう (1) 信号 一時停止標識を無視することが多い図 15 には 信号あるいは一時停止標識のある場所で事故にあった自動車 ( 四輪車 二輪車の合計 ) 自転車運転者だけに限定して 信号無視 一時停止標識無視をした運転者の割合を整理しました 自転車の運転者が 信号 一時停止標識を無視する率は 自動車運転者の約 2 倍にもなります また 一時停止標識は信号に比べ約 2 倍の頻度で無視されている現状であることがわかります 自転車は車両ではなく歩行 者の延長 あるいは歩行者よりも自由な道具という意識があるのではないでしょうか 90 無60 視率(%)0 0 信号無視一時停止無視 16.9% 6.8%.9% 80.0% 自動車運転者 図 15 信号 一時停止無視率 (H5-H1 年ミクロ ) 自転車運転者 (2) 合図なしでの進路変更 無灯火 不適切な通行方法など図 16 に 信号 一時停止標識無視以外の自転車運転者の特記すべき行為をまとめました 1 合図なしでの進路変更 右左折自転車は 進路を変更するにしても右左折するにしても 合図をすることはほぼ 100% ないことが再確認できました 今回の調査では 自転車が進路変更の合図をするべきだったと考えられる事故は55 件あり その内 合図があったのは1 件でした 合図をする目的は 自分の意思を他者に知らせ 他者に心積もりをしてもらうことにあります その他にも進路変更など 行動を起こす前に一呼吸はいり 自分が安全確認をするための余裕を持てるという効果もあります 2 無灯火の運転者夜間 ライトを点灯するべき状況でライトを点灯しなかった自転車運転者は約 20% でした ただでさえ見落とされやすい自転車が 夜間 黒っぽい服装で ライトを点けないで走行することは非常に危険な行為です 自転車がライトを点灯する目的は 自転車を運転している人から周りがよく見えるようにというよりは むしろ自分を目立たせることにあります ライトの点灯だけでなく 点滅灯や反射器の装着など 色々な手段があります 構成率(%0 100 80 60 )40 20 15 歳以下 16 24 25 54 55 歳以上 合図なし無灯火不適切な通行方法 自転車運転者年齢層 図 16 特記すべき行為があった自転車運転者 (H5-H1 年ミクロ ) 10 ITARDA INFORMATION 78

不適切な通行方法など自転車の道路右側通行やコーナーでの大回り ショートカットなどをした自転車運転者は全体の10 数 % でした 図 17 には自転車が自分から見て右カーブを通行中に 道路左端を通行する自転車 Lに比べて道路右端を通行する自転車 Rの危険性を説明しています 四輪車や二輪車は通常 自分から見て道路左端に沿って通行しますので 見通しが悪いカーブ ( この場合 四輪車 二輪車から見て左カーブになります ) では 自転車 Lに対し自転車 Rは距離 D 分だけ近づかないと発見できないことになります L 図 19 に交差点などにおける自転車による大回り ショートカットの危険性について説明しました コーナーで大回りやショートカットをすると これから進入しようとする道路の対向車線を横切る場合があります 図のように 交差点に接近中の四輪車などがあると接触してしまいます コーナーで大回り ショートカットになってしまう主な理由は 自転車による速度の出し過ぎにあります コーナーの手前で十分に減速しておくことが安全に繋がります 四輪車 二輪車との事故では自転車は被害者と言われています ただその原因は 自転車の信号 一時停止無視 合図なしの進路変更 無灯火 右側通行など むしろ加害者といえる場合も多いのではないでしょうか R ショートカット 大回り D より近づくまでお互いに認知できない 図 17 右カーブでの右側通行の危険性 図 18 には見通しの悪い交差点での自転車による右側通行の危険性を説明します 通常 四輪車や二輪車は道路左側通行をします 図 18 のように 四輪車が自転車に気付いた瞬間の距離は 自転車 Rに比べ自転車 Lの方が長く 衝突を避ける余裕が生じます 図 19 交差点における自転車での大回りの危険性 R L 短い 長い 図 18 見通しの悪い交差点での自転車による右側通行の危険性 78 ITARDA INFORMATION 11

--SECTION 5 1 全体の死傷者数が減少している中 自転車乗車中の死傷者の減少のペースは遅い 2 幼児 子供の内からの進学のタイミングに合わせた自転車利用に関する教育 訓練が有効です 子育て世代のお母さん達は 6 歳以下の幼児 7-12 歳の子供を同乗させている時の方が 死亡重傷事故という重大な事故を起こすことは少ない すなわち 同乗者がいるような不利な条件であっても 慎重な運転に心がけることにより 重大な事故を避けることができることを示唆しています 4 四輪車や二輪車と衝突した時 自転車は交通弱者 被害者と呼ばれます ただ自転車の無謀な運転が事故の原因となっている場合も多く その場合は自転車も加害者というべきでしょう ル5 階まとめ Institute for Tra c Accident Research and Data Analysis ITARDA INFORMAT ION 2009 FEBRUARY No.78 発行月発行(財)交通事故総合分析センター平成21 年2 月 102008東京都千代田区麹町66麹町東急ビ