に教室の中を立ち歩いたり 教室の外へ出て行ったりする 68.5% 次に 担任の指示通りに行動しない 62.1% などとなっている また 不適応状況の発生の予防に効果的と思われる対応策 ( 図 2) 6 として最も多かったのが 学級担任の援助となる指導員等の配置 校長 61.4% 教諭 61.0% 次

Similar documents
1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

<4D F736F F D E937893FC8A778E8E8CB196E291E8>

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

Taro-自立活動とは

< F2D318BB388E789DB92F682CC8AC7979D F >

調査結果の概要

研究組織 研究代表者西山哲成 日本体育大学身体動作学研究室 共同研究者野村一路 日本体育大学レクリエーション学研究室 菅伸江 日本体育大学レクリエーション学研究室 佐藤孝之 日本体育大学身体動作学研究室 大石健二 日本体育大学大学院後期博士課程院生

3 平成 29 年 3 月に幼稚園教育要領 保育所保育指針 幼保連携型認定こども園教育 保育要領が改訂され 来年度から全面実施されます 新幼稚園教育要領等では 改訂の基本的な方針として 1) 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 の明確化 健康な心と体 自立心 協同性 道徳性 規範意識の芽生え 社会生

(2) 施設の状況 幼稚園施設は 昭和 50 年前後に建築され 築 30 年以上が経過しています ( 表 2) ( 表 2) 公立幼稚園施設一覧 施設名称 竣工年月 構造 階数 酒匂幼稚園 昭和 48 年 2 月 鉄筋コンクリート造 ( 一部鉄骨造 ) 地上 2 階 東富水幼稚園 昭和 46 年 3

補足説明資料_教員資格認定試験

Taro-renkei.jtd

学校体育と幼児期運動指針の概要について

市中学校の状況及び体力向上策 ( 学校数 : 校 生徒数 :13,836 名 ) を とした時の数値 (T 得点 ) をレーダーチャートで表示 [ ] [ ] ハンドボール ハンドボール投げ投げ H29 市中学校 H29 m 走 m 走 表中の 網掛け 数値は 平均と同等または上回っているもの 付き

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

子ども・子育て支援新制度における教育委員会の役割について 3

はじめに 我が国においては 障害者の権利に関する条約 を踏まえ 誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い 人々の多様な在り方を相互に認め合える 共生社会 を目指し 障がいのある者と障がいのない者が共に学ぶ仕組みである インクルーシブ教育システム の理念のもと 特別支援教育を推進していく必要があります

<4D F736F F D F81798E9197BF94D48D A95CA8E B8CA782CC8EE691678FF38BB581698B6096B18B4C8DDA92F990B38CE3816A2E646

2部.indd

第 2 部 東京都発達障害教育推進計画の 具体的な展開 第 1 章小 中学校における取組 第 2 章高等学校における取組 第 3 章教員の専門性向上 第 4 章総合支援体制の充実 13

PowerPoint プレゼンテーション

p 札幌市小学校).xls

多様な関係機関を巻き込んだ 包括的な質向上システムの構築が必要 長野県幼児教育振興基本方針 ( 仮称 ) の策定 幼児教育の質向上推進の中心的機能を担うセンターの立ち上げを視野に入れる センターの機能 ( 想定 ) 〇幼児教育関係課 団体 大学等をつなぐ 既存の枠組みを超え 幼児教育に関わる教育 行

(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

幼児の実態を捉えると共に 幼児が自分たちで生活をつくり出す保育の在り方を探り 主体的 に生活する子どもを育むための教育課程及び指導計画を作成する 3 研究の計画 <1 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉える 教育課程 指導計画を見直す <2 年次 > 主体的に生活する幼児の姿を捉え その要因につ

平成20年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果(概要)

資料3-1 特別支援教育の現状について

幼稚園前半CS2.indd

13 Ⅱ-1-(2)-2 経営の改善や業務の実行性を高める取組に指導力を発揮している Ⅱ-2 福祉人材の確保 育成 Ⅱ-2-(1) 福祉人材の確保 育成計画 人事管理の体制が整備されている 14 Ⅱ-2-(1)-1 必要な福祉人材の確保 定着等に関する具体的な計画が確立し 取組が実施されている 15

(Microsoft Word - \223\232\220\\\220\263\216\256.doc)

教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

6. 調査結果及び考察 (1) 児童生徒のスマホ等の所持実態 1 スマホ等の所持実態 54.3% 49.8% 41.9% 32.9% % 78.7% 73.4% 71.1% 76.9% 68.3% 61.4% 26.7% 29.9% 22.1% % 中 3 中 2 中 1

草津市 ( 幼保一体化 ) 集計表 資料 4 幼児教育と保育の一体的提供のための現況調査 ( 施設アンケート ) 速報 平成 25 年 7 月草津市 1

1 大学等を卒業して小学校教諭普通免許状を取得する ( 免許法別表第 1) 基礎資格 種類 基礎資格 専修 修士の学位 ( 大学 ( 短期大学を除く ) の専攻科又は大学院に1 年以上在学し,30 単位以上修得した場合を含む ) 一種 学士の学位 ( 学校教育法第 102 条第 2 項により大学院へ

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

untitled

2.調査結果の概要

< F2D82A882A882DC82A982C897AC82EA816995BD90AC F944E>

No_05_A4.ai

第 1 章 札幌市幼児教育振興計画の策定 本計画は 主に幼稚園教育を対象とする 本計画は 平成 18 年度から概ね10 年間を計画期間とし 今後はこの方向性に基づいて早期に具体的な施策 ( アクションプログラム ) を打ち出していく 本計画は 社会情勢の変化などに対応し 必要に応じて計画の見直しを行

物価指数研究会(第2回) 2015年基準 モデル式の検討「授業料」・「保育料」

基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります 基本方針 2 児童 生徒一人ひとりに応じた学習を大切にし 確かな学力の育成を図ります (1) 基礎的 基本的な学力の定着児童 生徒一人ひとりが生きる力の基盤として 基礎的 基本的な知識や技能を習得できるよう それぞ


幼児教育概要版案 xbd

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

幼稚園と小学校の連携の在り方について 学びの連続性 の視点に立って考察する 3 研究内容と考察 (1) 学びの連続性 に立った幼稚園と小学校の連携とは何か中教審の答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について は 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえ 今後の幼児教育の方向性と

学習意欲の向上 学習習慣の確立 改訂の趣旨 今回の学習指導要領改訂に当たって 基本的な考え方の一つに学習 意欲の向上 学習習慣の確立が明示された これは 教育基本法第 6 条第 2 項 あるいは学校教育法第 30 条第 2 項の条文にある 自ら進んで学習する意欲の重視にかかわる文言を受けるものである

子ども・子育て支援新制度における教育委員会の役割について

PowerPoint プレゼンテーション

2.調査結果の概要

茨城県における 通級による指導 と 特別支援学級 の現状と課題 IbarakiChristianUniversityLibrary ~ 文部科学省 特別支援教育に関する調査の結果 特別支援教育資料 に基づいて茨城キリスト教大学紀要第 52 ~号社会科学 p.145~ 茨城県における 通

< C197E C896DA F83582E786C73>

< F2D81758DF492E882C982A082BD82C182C C789C E682508FCD816A2E6A7464>

認定こども園法改正に伴う幼稚園免許状授与の所要資格の特例について(概要資料)

Taro-スタートカリキュラムの意義

幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方について ( 報告 ) ( 概要 ) 子どもの発達や学びの連続性を踏まえた幼児期の教育 ( 幼稚園 保育所 認定こども園における教育 ) と児童期の教育 ( 小学校における教育 ) の円滑な接続の在り方について検討し 以下のとおり 報告をとりまとめた 1

平成 27 年度全国体力 運動能力 運動習慣等調査愛媛県の結果概要 ( 公立学校 ) 調査期間 : 調査対象 : 平成 27 年 4 月 ~7 月小学校第 5 学年 ( 悉皆 ) 中学校第 2 学年 ( 悉皆 ) 男子 5,909 人男子 5,922 人 女子 5,808 人女子 5,763 人 本

必要性 学習指導要領の改訂により総則において情報モラルを身に付けるよう指導することを明示 背 景 ひぼう インターネット上での誹謗中傷やいじめ, 犯罪や違法 有害情報などの問題が発生している現状 情報社会に積極的に参画する態度を育てることは今後ますます重要 目 情報モラル教育とは 標 情報手段をいか

西ブロック学校関係者評価委員会 Ⅰ 活動の記録 1 6 月 17 日 ( 火 ) 第 1 回学校関係者評価委員会 15:30~ 栗沢中学校 2 7 月 16 日 ( 水 ) 学校視察 上幌向中学校 授業参観日 非行防止教室 3 9 月 5 日 ( 金 ) 学校視察 豊中学校 学校祭 1 日目 4 9

ぐんま幼児教育センターだより№33①

2017 年 9 月 8 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2017 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

調査協力者の年齢 年齢 人数 % 20 代 183 (15.2) 30 代 238 (19.8) 40 代 276 (23.0) 50 代 364 (30.3) 60 代以上 140 (11.7) A-2 保育士登録について 調査協力者のうち 全体の 70.0%(820 名 ) が 保育士登録を行っ

 

ICT による新しい学び 急速な情報通信技術 (ICT) の進展やグローバル化など 変化の激しい社会を生きる子供たちに 確かな学力 豊かな心 健やかな体の調和のとれた 生きる力 を育成することがますます重要になってきています 2

P5 26 行目 なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等の関係から なお 農村部は 地理的状況や通学時 間等から P5 27 行目 複式学級は 小規模化による学習面 生活面のデメリットがより顕著となる 複式学級は 教育上の課題が大きいことから ことが懸念されるなど 教育上の課題が大きいことから P


Taro-07_学校体育・健康教育(学

教育学科幼児教育コース < 保育士モデル> 分野別数 学部共通 キリスト教学 英語 AⅠ 情報処理礎 子どもと人権 礎演習 ことばの表現教育 社会福祉学 英語 AⅡ 体育総合 生活 児童家庭福祉 英語 BⅠ( コミュニケーション ) 教育礎論 音楽 Ⅰ( 礎 ) 保育原理 Ⅰ 英語 BⅡ( コミュニ

情報コーナー用

生きる力と絆の埼玉教育プラン 基本目標 施策 教育に関する 3 つの達成目標 の推進 現状と課題 近年 子どもたちの学習意欲 学力 体力の低下 規範意識の欠如などが指摘されています このため 学校 家庭 地域が連携して教育活動を展開し 知 徳 体の基礎を確実に身に付けさせる必要があります 施策の方向

鳥取市の学校教育における 貝殻節 の教育実践 に関するアンケート調査報告 The Results of Survey about Kaigarabushi at School Education in Tottori City 太田綾香, 大谷美佳, 宮脇可南子, 安田彩花, 鈴木慎一朗 OTA A

幼児期の教育 保育の需給計画 ( 平成 28 年度実績 ) の点検 評価結果について 資料 2 1 需給計画の策定 かながわ子どもみらいプラン においては 待機児童の解消を図り 子育て家庭のニーズにあった就学前児童の教育 保育の提供体制の充実を計画的に進めるため 各年度 ( 平成 27 年度 ~ 平

第 3 章 保護者との関わり 子育て支援 に来園する親子の平均組数は 国公立で 14.1 組 私立で 19.2 組だった ( 図 表 3-3-1) では どのようなことを親子は体験しているのだろうか 実施内容について複数回答で聞いたところ 私立幼稚園と国公立幼稚園で違いがみられた (

tokusyu.pdf

明星大学大学院;人文学研究科教育学専攻(通信教育課程)

睡眠調査(概要)

持続可能な教育の質の向上をめざして ~ 教員の多忙化解消プラン に基づく取組について ~ 平成 30 年 3 月 愛知県教育委員会

別紙1 H28体制整備

< 先生方へ > 長崎県学力向上推進協議会では 子どもに確かな学力をつけていくためには 何 が大切か また 学力の向上を阻害している要因は何かなどについて 検討を重ね ています その中から次のようなことが指摘されました 1 家庭で毎日決まった時間に学習をする習慣をつけることが大切である 2 食事や睡

幼児教育 保育の無償化の実施について 1 子ども 子育て支援新制度の趣旨に沿った無償化の実施を! 子ども 子育て支援新制度 では 一人ひとりの子どもが健やかに成長することができる社会 子どもの最善の利益が実現される社会を目指しています まずこの目指すべき姿に沿った幼児教育 保育の無償化を図るべきです

第2節 茨木市の現況

地域の幼児教育の拠点となる幼児教育センターの設置及び「幼児教育アドバイザー」の育成・配置に関する調査研究 実施報告書(2年次)(4)


<8E9197BF81698E518D6C33816A95DB88E78E6D8E8E8CB A8F4389C896DA88EA97972E786C7378>

Microsoft Word - 【第4章】無償化実施計画 修正.docx

【報道発表資料】

Microsoft Word - HPアップ用 2018入試問題

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

1

1 小学校入学前の子どもの学びとは 幼児期の生活のほとんどは 遊びによって占められています 子どもは遊びを中心として 頭も心も体も動かして様々な対象と直接関わりながら 総合的に学んでいます (1) 幼児教育と子どもの学び 幼稚園の遊びの一場面子どもたちがものを転がす遊びに集中しています 子どもたちは

全国調査からみる子どもの運動・スポーツの現状と課題

平成27年度公立小・中学校における教育課程の編成実施状況調査結果について

分析結果

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

OTEMON GAKUIN

p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂

Microsoft PowerPoint - 中学校学習評価.pptx

教育と法Ⅰ(学習指導要領と教育課程の編成)

幼稚園 保育所ができること 一緒にやりましょう! 幼稚園 保育所は 子ども同士がふれあう以外に 保護者同士が交流できる場でもあります ここでは 各幼稚園 保育所が保護者と連携するとともに 保護者同士のふれあい つながりづくりに向けた取組みを記載しています 1 ( 幼稚園 保育所 ) 幼稚園 保育所と

教育公務員特例法等の一部を改正する法律について

Transcription:

幼児期の運動遊び 幼小連携の視点からの概観 松岡哲雄 1. はじめに幼児教育と小学校教育との連携 ( 以下 幼小連携 という ) を推進すべく 2008 年改訂の保育所保育指針と幼稚園教育要領には小学校連携に関する内容が盛り込まれた また 小学校学習指導要領においても幼稚園に加え保育所との連携が新たに加えられた しかし 幼小連携には様々な壁がある 例えば 筆者が小学校 1 年を担任したときは ボール投げ 登り棒などで躓いている児童がいたり 逆さ感覚や回転感覚が備わっておらず 鉄棒の前回りやお布団干しを怖がったりする児童も多くいた 児童たちとの会話を交わすうちに 幼児期にそれらの運動をあまり体験してこなかったことが分かってきた 一方で 2012 年に幼児を対象に 幼児期の身体運動ガイドライン 幼児期運動指針 1 が策定された それらは 体のバランスをとる動き 体を移動する動き 用具などを操作する動き の3つに分かれおり それらを経験し多様な動きを獲得することが望まれている またスキャモンの発育 発達曲線によれば 神経系の発達は 4~5 歳で成人の80% 6 歳で90% にも達するといわれている 2 この幼児期の運動経験が小学校での運動能力へ及ぼす影響は大きい そこで 幼児期に神経系の発達を促す 運動遊び をしっかり行うことで 小学校での運動の躓きも解消されるのではないかと考え 幼小連携の視点から 幼児期の運動遊びに関してさまざまな課題について概観したい 2. 幼小連携について遊びを中心とした幼児期の教育と 教科等の学習を中心とする小学校の教育では 子どもの指導や援助の仕方も異なり 小学校へ入学すると様々な躓きが出てくることがある その為に 2005 年に中央教育審議会から 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方 ( 答申 ) 3 が出された その中で 幼児教育と小学校教育の連携 接続の強化 改善が求められている その一方で 10 年以上にわたり 小 1 プロブレム と呼ばれる問題が全国で続いている 東京都が 2009 年に行った 東京都公立小 中学校における第 1 学年の児童 生徒の学校生活への適応状況にかかわる実態調査について 4 の 不適応状況の態様 ( 図 1) 5 よれば公立小学校第 1 学年で最も多かったのが 授業中 勝手 171

に教室の中を立ち歩いたり 教室の外へ出て行ったりする 68.5% 次に 担任の指示通りに行動しない 62.1% などとなっている また 不適応状況の発生の予防に効果的と思われる対応策 ( 図 2) 6 として最も多かったのが 学級担任の援助となる指導員等の配置 校長 61.4% 教諭 61.0% 次に 1 学級の人数の縮小 となっている 上位 2 項目とも人件費が掛かり 財政の苦しい自治体では頭を悩ませるところである また割合的に少ないが 幼小連携などの 保育所や幼稚園にお 図 1 不適応状況の態様 校長の回答 (%) 図 2 不適応状況の発生の予防に効果的と思われる対応策 校長 教諭の回答 (%) 172

ける小学校との接続を見据えた幼児教育の充実 校長 43.2% 教諭 30.3% 保育所保育士や幼稚園教諭と小学校教諭との合同研修や意見交換などの充実 校長 23.2% 教諭 21.0% 保育所や幼稚園の 5 歳児と小学校の児童との交流活動の充実 校長 8.2% 教諭 4.3% なども挙げられている また 2010 年文部科学省 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議 ( 第 7 回 ) 7 において幼稚園教育と小学校教育の接続を意識する時期について ( 調査結果 ) では 自治体によって接続を意識する時期は様々であり 共通認識の違いが浮き彫りになった また お茶の水女子大学子ども発達教育研究センター 2005 年 9 月発行の 幼児教育と小学校教育をつなぐ 幼小連携の現状と課題 8 によると 連携を進める際の課題 として幼稚園 小学校とも一番多かったのが 日程調整が難しい であった 次に 教育課程に位置付けていくこと であった 幼稚園教員 小学校教員とも多忙な中で時間を捻出する難しさを感じているほか 幼稚園教育と小学校教育の教育課程を円滑に接続していく構造の難しさもうかがえる 特筆すべきこととして 小学校教員と幼稚園教員の間で指導観の共通理解を図ること という項目で小学校が 38.9% 幼稚園が 61.3% で大きな差があったことである 幼小の共通認識の違いが 大きな課題ということであろう 3. 運動遊びの指導について 次に運動遊びの指導に焦点をあてる 柳田 (2008) は 埼玉県の公立および私立幼稚園にアンケート調査 を依頼し,20 園,202 名の教師が調査対象 ( アンケー ト回収率は 62.9%) を行った 9 運動遊びの指導に 際して重視していることの調査においては, 幼児と一 緒に遊ぶことや外で自由に遊ばせることが重視され, 運動技能やルールなど運動遊びを体系化した運動指導 の必要はないという考えが幼稚園教員には強いことが 示唆された しかし 幼児の自発的欲求に任せたまま の 運動遊び では 運動能力の二極化の問題が継続さ れる 10 例えばブロックや砂場で遊ぶことが好きな幼児 外部指導員なし 15% 外部指導員あり 85% 図 3 外部体育指導員の割合 とサッカーや鬼ごっこが好きな幼児では運動能力や体力も大きく変わってくるからだ その一方で外部体育指導員が 幼稚園などに体育指導という形で入っている 筆者の短 期大学に在籍している学生に実習先で外部体育指導員が来ていたかアンケート調査した結 果 34 園中 31 園 85% もの園で外部体育指導員が導入されていたことが明らかになった 173

( 図 3) また柳田は 幼稚園 104 園の教育実習に行った学生にアンケート調査し 外部体育指導員の導入の有無を調査したところ 85.6% の幼稚園において導入がされていた しかし 森ら 11 や杉原ら 12 によれば 体育指導をしている園がしていない園より運動能力が低いという調査結果も出ており 外部体育指導員を導入すれば良いというものではない また 幼小連携を円滑に進めていく上でも 週 1,2 回程度 園に来る外部体育指導員に頼っているのでは難しい面が多い 次に成功事例を見てみたい 兵庫県豊岡市では教育委員会が主体となって 運動遊び担当職員が全保育所 幼稚園 子育てセンターなどを巡回訪問し 幼児期における運動遊び事業を推進 展開している 13 子どもたちが心身ともに健やかに成長できるよう 動的な遊びを日常保育の中に積極的に取り入れている また幼児期の運動遊び事業と小学校体育との連続性の確立を図るために 小学校へも訪問し運動遊びを展開している これは柳沢 ( 注 1) が 子どもたちに身体を動かすことが好きになってもらいたいと考案された体系的な運動プログラムである ( 図 4) 14 ( 図 5) 15 このプログラムを取り入れ クマさん歩き ワニさん歩きやカンガルー跳びなどいろいろな動物に変身したり 身体を使ったゲームなどを行ったりして楽しく遊びながら 日常生活ではあまり使われない筋肉を動かし 支持力 跳躍力 懸垂力 逆さ感覚などの基礎体力を身につけている この取り組みから 幼児期から児童期へ連続した運動遊びの可能性を見て取れる 図 4 柳沢プログラム 174

図 5 豊岡市運動事業プログラム活動内容 4. まとめ幼児期の運動遊びについて 幼児教育と小学校教育の連携の視点から概観した そこからいくつかの課題を示唆することができる 1 運動遊びについての保育者の専門性 2 幼小に共通した外部体育指導員制度 3 幼児教育における外部体育指導員の功罪以上について 今後さらに研究を進めていきたい 注注 1. 松本短期大学教授 柳沢秋孝先生が 子どもたちに身体を動かすことが好きになってもらいたいと考案された体系的な運動プログラムである 引用 参考文献 1. 幼児期運動指針策定委員会 幼児期運動指針 文部科学省 2012 年 http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm 2. 立花龍司 運動神経は 10 歳で決まる! マキノ出版 2006 年 13-24 頁 3. 文部科学省 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について ( 答申 )2005 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 10 日 ) 175

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013102.htm 4. 東京都教育委員会 東京都公立小 中学校における第 1 学年の児童 生徒の学校生活への適東京都教育委員会応状況にかかわる実態調査について 2009 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 11 日 ) http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr091112.htm 5. 東京都教育委員会 東京都公立小 中学校における第 1 学年の児童 生徒の学校生活への適応状況にかかわる実態調査について 公立小学校第 1 学年の児童の実態調査 の結果概要 2009 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 10 日 ) http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr091112/pr091112_s.htm 6. 東京都教育委員会 東京都公立小 中学校における第 1 学年の児童 生徒の学校生活への適応状況にかかわる実態調査について 公立小学校第 1 学年の児童の実態調査 の結果概要 2009 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 10 日 ) http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr091112/pr091112_s.htm 7. 文部科学省 幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議 ( 第 7 回 ) 2010 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 11 日 ) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/070/shiryo/1296903.htm 8. お茶の水女子大学 子ども発達教育研究センター 幼児教育と小学校教育をつなぐ 幼小連携の現状と課題 2005 年 9. 柳田信也 幼稚園教師の運動遊びに関する指導理念の調査研究 2008 年 10. 森司朗 杉原隆 吉田伊津美 筒井清次郎 鈴木康弘 中本浩揮 近藤充夫 2008 年の全国調査からみた幼児の運動能力 体育の科学 60(1) 2010 56-66 頁 11. 森司朗 杉原隆 吉田伊津美 筒井清次郎 鈴木康弘 中本浩揮 近藤充夫 2008 年の全国調査からみた幼児の運動能力 体育の科学 60(1) 2010 56-66 頁 12. 杉原隆 近藤充夫 吉田伊津美 1960 年代から 2000 年代に至る幼児の運動能力発達の時代変化 体育の科学 57(1) 2007 69-73 頁 13. 兵庫県豊岡市教育委員会健やかな心と体を育む 豊岡の保育 教育スタイル の提案 2013 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 11 日 ) http://www3.city.toyooka.hyogo.jp/undou/toyookastyle.pdf 14. 兵庫県豊岡市教育委員会健やかな心と体を育む 豊岡の保育 教育スタイル の提案 2013 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 11 日 ) 11 頁 http://www3.city.toyooka.hyogo.jp/undou/toyookastyle.pdf 15. 兵庫県豊岡市教育委員会健やかな心と体を育む 豊岡の保育 教育スタイル の提案 2013 年 ( アクセス年月日 2015 年 10 月 11 日 ) 12 頁 http://www3.city.toyooka.hyogo.jp/undou/toyookastyle.pdf 176