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Transcription:

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症患者における検討は全く行われていない そこで本研究では VPA 服用中の統合失調症患者における高アンモニア血症に関するメカニズムを検討するために当該患者 37 名の朝食前空腹時血液サンプル ( 10mL) を採取し 血清アンモニアおよび VPA 濃度 尿素サイクルに関連する 40 種類の血中アミノ酸とカルニチン濃度の変化を測定した 試験計画は事前に倫理委員会の承認を取得し 患者の文書同意を得て実施した VPA 服用患者では 肝機能 腎機能ともに正常範囲内であり 緩下剤を服用していた患者は 86% であった VPA 服用患者の血清アンモニアは増加し 遊離カルニチン濃度は低下していた また 多変量解析の結果から 血清アンモニア濃度は血清グルタミン酸 (p=0.03) およびトリプトファン (p=0.02) と正の相関があり 一方グリシン (p=0.0001) とは負の相関が認められた また 血清アンモニア濃度は カルバマゼピン (p=0.007) およびレボメプロマジン (p=0.04) の投与と正の相関があり 年齢 (p=0.005) リスペリドン (p=0.009) およびスルトプリド (p=0.01) の投与とは負の相関が認められた 図 1. バルプロ酸投与による高アンモニア血症に関係するアミノ酸濃度の変化と CPS-1 の 役割の概念図 2

以上の結果から 統合失調症患者における VPA 服用患者ではカルニチン濃度が低下していることから カルニチンが関係する脂肪酸のミトコンドリア内への輸送とβ 酸化低下が生じており それが尿素サイクルの機能不全を招いている可能性が示唆された また 幾つかの抗精神病薬は VPA による高アンモニア血症のリスク因子となる可能性が新たに示唆された Ⅱ. 長期の酸化マグネシウム服用患者における電解質異常の検討酸化マグネシウムは緩下剤や制酸剤として広く用いられている薬剤である 抗精神病薬は脳内のドパミン受容体を遮断する作用を有すことで興奮を抑える 低力価のドパミン受容体遮断薬は抗コリン作用を有している 抗コリン作用は腸管運動を抑制し便秘を引き起こす このような要因に基づき精神科領域では便秘薬の使用量が増えていると考えられる 厚生労働省発出の医薬品緊急安全性情報によれば 2012 から 2014 年に 29 例の高 Mg 血症による副作用例が報告され うち 4 名が死亡したとされている とくに 65 歳以上や便秘症の患者が多く 腎機能が正常な場合や通常用量以下の投与であっても重篤な転帰をたどる例が認められた 精神科領域での酸化マグネシウム投与による問題点を明らかにするため, 酸化マグネシウムの使用量および血中濃度と抗精神病薬, 抗コリン薬の使用量 そして緩下剤の剤数の因果関係について調査した ハートフル川崎病院に入院中の患者を対象者とした 被験者は 151 名で 男性 67 名, 女性 84 名であった 酸化マグネシウム服用者は 103 名 非服用者は 48 名で 高 Mg 血症を呈した患者は酸化マグネシウム服用患者で有意に (p<0.01) 多かった 高 Mg 血症発症の変動因子としては 酸化 Mg 投与量 (p<0.01) リチウムの服用 {0-1}(p<0.01) クレアチニンクリアランス (p=0.01) が有意な関係を認めた 以上の結果から 精神神経疾患の入院患者では 抗精神病薬などにより生じる錐体外路系症状の治療に使用される抗コリン作用を有する薬物 3

が便秘症状を生じ 安全な緩下剤と認識されている酸化マグネシウムの投与と 興奮を抑える目的で用いられる炭酸リチウムの併用投与は高 Mg 血症を生じるリスクが高い事が示唆された 酸化マグネシウムおよび炭酸リチウムの使用に当たっては重篤な副作用を回避するため定期的な血中濃度測定が必要である Ⅲ. 薬剤師の病棟活動が精神神経疾患の薬物治療の効果と副作用に与えた影響精神科チーム医療において病棟業務実施加算は 入院後 8 週まで と制約が設けられており 人員不足等の問題から薬剤師が病棟業務に十分な関わりを持てず 薬剤師の果たしている役割がいまだ十分に認知されていない そこで 精神科において薬剤師の果たしている役割を評価することを目的とし 薬剤師による処方提案の実施状況とその効果について調査した 平成 25 年 3 月から 5 月までの 3 か月間で 精神科医療を考える薬剤師の会 のメンバーが所属する 7 施設 ( 井之頭病院 NTT データ 晴和病院 東京慈恵会医科大学附属病院 東邦大学医療センター大森病院 常盤病院 ハートフル川崎病院 ) の精神科外来および精神科入院患者の処方を調査した 図 2. 薬剤師による処方内容に対する変更提案の内容とその転帰 (n=110) 4

処方提案する患者の選出は 直接服薬指導を行った患者 処方せん記載内容 カルテからの情報 ( 臨床検査値 薬物治療モニタリング (Therapeutic Drug Monitoring:TDM) を含む ) 患者家族または他職種からの相談等のうち 薬学的観点から提案を行うことにより改善が見込めると判断したものから適宜行った 処方提案件数は入院 103 件 (79.2%) 外来 27 件 (20.8%) の計 170 件であった 疾患別の処方提案件数は 統合失調症が 66 件 (50.8%) と最も多く 次いで双極性障害 27 件 ( 20.8%) 大うつ病性障害 22 件 ( 16.9%) 不安障害 4 件 (3.1%) 認知症 3 件 (2.3%) その他 8 件 (6.2%) の順であった 疾患別の処方提案件数では 統合失調症が約半数を占めた 厚生労働省による患者調査においても 精神病床入院患者の約 60% が統合失調症であり その傾向が処方提案件数にも反映されていると考えられる 一方 同調査において入院患者数で 2 位となる認知症の処方提案件数は 全体の 2.3% と低い値にとどまった 処方提案の内容として 副作用の回避 軽減 と 治療効果の向上 が全提案件数の 70.8% を占めた 全処方提案の 84.6% が採択されていた 薬剤師の処方提案の多くは 副作用の評価や検査値の確認等 患者の薬学的管理を基にした根拠の明確なものとなっており このような点が医師に受け入れられやすい提案内容となっていることが推察された ( 図 2) 採択された処方提案による患者転帰では 改善が 70.0% を占め 悪化した症例は見られなかった また 採択群と非採択群による患者転帰において採択群は 患者の症状を有意に改善した 以上の結果から 病棟薬剤業務を実施することで処方を提案し副作用を予防することができることが示された 5

まとめ今回の調査から精神科領域でも病棟薬剤業務を積極的に実施することでチーム医療に十分貢献できることが示された 精神科領域では長期にわたり薬を服用することが多く見られ 単剤で治療を開始しても 治療効果が十分で無いか再発 再燃を繰り返したため多剤併用療法となる場合がある 今回の調査でも明らかになったように VPA は安全で長期に服用可能な薬剤と考えられ 高アンモニア血症に対する対策が十分に行われていなかった 同様に酸化マグネシウムも安全な薬剤と考えられていたが 高マグネシウム血症を引き起こしていることが明らかになった これらは急性期でなく慢性期の患者で発生しやすい 臨床現場では安全な薬と認識されているこれらの薬でも副作用の発生が認められ 医師の診察でも見過ごされていることがあることが認められた 医師は主症状の治療に追われており 多剤併用の影響まで十分に検討する時間がさけていない そこで薬の専門家である薬剤師が病棟で活動し 副作用などの問題を医師へフィードバックすることで精神科領域でも薬剤師がチーム医療に貢献できると考えられる 参考文献 1. Ando M., Amayasu H., Itai T., Yoshida H., Biopsychosoc. Med., 5,11-19 (2017). 2. 安藤正純, 天保英明, 板井貴宏, 吉田久博, 日精協誌, 36,111-115(2017). 3. 村野哲雄, 安藤正純, 浦野慎也, 遠藤洋, 木村伊都紀, 高橋結花, 永田あかね, 長郷千香子, 林広紹, 林やすみ, 馬場寛子, 齋藤百枝美, 日精協誌,33,87-93 (2014). 6