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写真 豊岡第一樋管地点 ( 久慈川側 ) 写真 豊岡第一樋管地点 ( 堤内地側 ) 写真 水路擁壁の転倒 写真 水路擁壁の転倒 b) 地点 1-2( 湛水防除事業豊岡排水場, 河口から約 1.0km, 右岸 ) 堤外側法面におけるごみ

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水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

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2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

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『鬼怒川の河道形態に学ぶ;何故、常総市に氾濫が集中したのか?』  

鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

下図は 緊急復旧工事実施箇所のほか 関東地整における大規模な被災が発生した 箇所を加えた計 78 箇所において 治水地形分類図から基礎地盤微地形を判読したものである 大規模災害が生じた箇所の治水地形分類は 自然堤防 旧河道 旧落掘 氾濫平野が多い 大規模災害箇所 ( 東北 関東 )/ 治水地形分類

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資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

目次 1. 降雨の概要 2. 水位の状況 3. 流量の状況 4. 鬼怒川の氾濫による被災状況 5. 流下能力を上回る洪水による被害状況 6. 堤防決壊箇所の状況 7. 鬼怒川堤防調査委員会 ( 堤防決壊原因の特定等 ) 8. 決壊箇所 ( 左岸 21.0k) の応急復旧 9. その他の被災箇所の応急

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

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新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川洪水浸水想定区域図 ( 計画規模 ) (1) この図は 新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川の水位周知区間について 水防法に基づき 計画降雨により浸水が想定される区域 浸水した場合に想定される水深を表示した図面です (2) この洪水浸水想定区域図は 平成

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水理学Ⅱ及び同演習

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6. 現況堤防の安全性に関する検討方法および条件 6.1 浸透問題に関する検討方法および条件 検討方法 現況堤防の安全性に関する検討は 河川堤防の構造検討の手引き( 平成 14 年 7 月 ): 財団法人国土技術研究センター に準拠して実施する 安全性の照査 1) 堤防のモデル化 (1)

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Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

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津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

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平成 30 年度農村地域防災減災事業 ( 美馬 3 地区 ) ため池ハザードマップ作成委託業務 特記仕様書 経済建設部 農林課

NMM-DDAによる弾塑性解析 およびその適用に関する研究

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9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

目 次 最上小国川 赤倉地区の 2015 年 9 月洪水の実態から 被害防止には河道改 修が最も効果的であることが あらためて明らかになった 1,2015 年 9 月 10 日赤倉雨量は1/50 年確率に近い豪雨であったが 洪水流量は1/11 年確率流量だった 2, 赤倉地区では外水被害と内水被害が

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平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

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避難を促す緊急行動 被災した場合に大きな被害が想定される国管理河川において 以下を実施 1. 首長を支援する緊急行動 ~ 市町村長が避難の時期 区域を適切に判断するための支援 ~ できるだけ早期に実施 トップセミナー等の開催 水害対応チェックリストの作成 周知 洪水に対しリスクが高い区間の共同点検

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浸水想定区域図作成要領(改正水防法に伴う)


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資料4 検討対象水域の水質予測結果について

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2 〇利根川水系河川整備計画の国交省素案 ( 利根川中流部 ) 利根大堰 江戸川分派対策 江戸川 八斗島 Ⅰ 期 今回の見学会では利根川中流部として左岸側は下図のAブロック 右岸側は Eブロックを取り上げる 八ッ場ダムの費用便益比計算における氾濫ブロックの設定 : 破堤想定地点 (H23 八ッ場ダム

府民公募型安心 安全整事業 ( 市町協働型 府民型 ) 番号審査番号 422( 受付番号 419 ) 二級河川川上谷川 京丹後市久美浜町市野々地内 ブロック積 河床が洗掘している 河床ブロック等で補修 対象箇所 対象箇所 根固工 延長 4m 対象箇所 川上谷川 尉ヶ畑布袋野線 尉ヶ畑布袋野線 延長

資料1(第1回水害WG)

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平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

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洪水リスクの共有

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重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

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Microsoft Word - 005_第4章_工法(作業済)

土木学会論文集の完全版下投稿用

1 想定地震の概要南海トラフで発生する地震は 多様な地震発生のパターンが考えられることから 次の地震の震源域の広がりを正確に予測することは 現時点の科学的知見では困難です そのため 本市では 南海トラフで発生する地震として 次の2つの地震を想定して被害予測調査を行いました (1) 過去の地震を考慮し

平成 28 年度 第 3 回一宮川流域浸水対策協議会資料 平成 28 年 6 月 20 日 長生合同庁舎 4 階大会議室 一宮川流域浸水対策協議会

高速かつ高精度な洪水シミュレータ「DioVISTA/Flood Simulator」を発売

学識経験者による評価の反映客観性を確保するために 学識経験者から学術的な観点からの評価をいただき これを反映する 評価は 中立性を確保するために日本学術会議に依頼した 詳細は別紙 -2 のとおり : 現時点の検証の進め方であり 検証作業が進む中で変更することがあり得る - 2 -

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2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

Floodwayの運用から見る ミシシッピ川の洪水防御

3. 対象地区での被災 東日本大震災では 安食地区は約 2km に亘り被災した 当時の現場条件や被災状況 被災のメカニズムを以下のとおり整理した 被災状況 全体的に堤防天端が沈下し 川裏法面において縦断的な亀裂や沈下が生じている なお 川表側に液状化の噴砂のあとは見られるが 法面には大きな変状は見ら

平成 29 年 7 月九州北部豪雨における流木被害 137 今回の九州北部における豪雨は 線状降水帯 と呼ばれる積乱雲の集合体が長時間にわたって狭い範囲に停滞したことによるものである この線状降水帯による記録的な大雨によって 図 1 に示す筑後川の支流河川の山間部の各所で斜面崩壊や土石流が発生し 大

1. 台風第 18 号等による大雨について 台風第 18 号及び台風から変わった低気圧に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響で 記録的な大雨となった 9 月 10 日から 11 日にかけて 関東地方や東北地方では 統計期間が 10 年以上の観測地点のうち 16 地点で 最大 24 時間降水量が観

距離標地点名撮影説明 11km トビアス堰下流方向トビアス堰越流後の河道状況 距離標地点名撮影説明 14km GP8 道路橋付近下流方向橋から下流方向を望む 72

ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

(2) ( 61129) 117, ,678 10,000 10,000 6 ( 7530) 149, ,218 10,000 10,000 7 ( 71129) 173, ,100 10,000 10,000 8 ( 8530) 14

別紙 大雨時の川のはん濫の危険性を知らせる 身近な 雨の状況 川の水位と危険性 川の予警報 などを リアルタイムでお知らせするウェブサイトです 川の水位 川の画像 PC 版 スマホ版 浸水想定区域図 住民の方々が自らはん濫の危険性を知り 的確な避難行動などに役立つように 利用者目線に立った新しい 川

15.4. 家屋 宅地 施設等の浸水 湛水被害 (1) 調査の結果の概要 1) 調査事項及びその選択理由調査事項及びその選択理由は 表 に示すとおりである 表 家屋等 ( 家屋 宅地 施設等の浸水 湛水被害 ) の調査事項及びその選択理由調査事項選択理由 1 背後

2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8

5-2 居住誘導区域の設定 居住誘導の基本方針を踏まえ 以下の居住誘導区域の設定の考え方に基づき 居住誘導区域を設 定します 居住誘導区域の設定の考え方 (1) 居住誘導区域に含めるエリア 居住誘導区域に含めないエリア 居住誘導区域に含めるエリア 1 都市機能誘導区域 居住誘導区域に含めないエリア

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【論文】

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SIP4D SIP 防災研究開発項目 4: ICT を活用した情報共有システムの開発及び災害対応機関における利活用技術の研究開発 ため池に関する情報の利活用技術の研究開発 ため池防災支援システム の開発 平成 29 年 7 月 27 日国立研究開発法人農研機構株式会社コア株式会社オサシ テクノス株式

Transcription:

2015 年関東 東北豪雨災害土木学会 地盤工学会合同調査団関東グループ速報会主催 : 土木学会水工学委員会, 土木学会地盤工学委員会, 土木学会関東支部, 地盤工学会日時 : 平成 27 年 12 月 15 日 ( 火 )13:30~16:30 場所 : 主婦会館 7F カトレア 河川堤防周辺被害 : 落堀 破堤現象の解釈とその規模について 埼玉大学大学院 教授 田中規夫 准教授 八木澤順治

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (1) この複雑な洗掘形状はどのように形成されたか : 破堤前の現象との関連に着目して 第 3 回鬼怒川堤防委員会資料に加筆修正 破堤前の洗掘現象は破堤後の流れの集中など 被害に大きく影響するので 本整理では 破堤前にできた洗掘はどの程度かを推定する

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (2) 東日本大震災時の阿武隈川沿い氾濫 ( 破堤していない箇所の落堀 ) Tanaka and Sato(2015) Ocean Engineering 109, 72 82.

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (3) 東日本大震災時の阿武隈川沿い氾濫と海岸堤防越流後の落堀深さとの比較 最大洗掘深 (m) 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 SA1,SA2,SA3 NA UN OM T1-T10 AB4 AB7 完全越流ケースの包絡線 AB3 AB5 AB5 AB6 AB8 Tanaka and Sato(2015) Ocean Engineering 109, 72 82. H w : 水面の高さ ( 堤内地から ) d bank : 越流水深 今回のケースでは 横軸が 3.3 4.3m に相当 決壊前の洗掘深さは 1.6 2.2m 程度 最終深さ ( 最大 5m) とは大きな差がある AB1 もぐり越流の場合の包絡線 y=0.10x 0 2 4 6 8 10 12 14 エネルギー水頭 h w + 1/2 d bank (m) AB は阿武隈川沿い それ以外は海岸堤防背後 ( 砂を含む ) 決壊した場合のデータは含んでいない

30 1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (4) 決壊しない場合は 落堀の長さは 10m 以内と推定される SA1,SA2,SA3 洗掘長 (m) 20 NA UN OM T1-T10 完全越流の場合の包絡線 10 0 AB4 AB3 AB7 AB8 AB2 AB1 AB5 AB6 もぐり越流の場合の包絡線 0 2 4 6 8 10 12 14 エネルギー水頭 h w + 1/2 d bank (m) Tanaka and Sato(2015) Ocean Engineering 109, 72 82. H w : 堤防高 ( 堤内地から ) d bank : 越流水深 今回のケースでは 横軸が3 4mに相当 決壊前の落掘長さは 10m 弱 類似の規模のものは 堤防周辺の痕跡にも存在する

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (5) 場所によって地質が大きくことなるが 2m の洗掘深の場合 Ac1 にも到達 第 3 回鬼怒川堤防委員会資料より抜粋

hh bank = 10cm bank = 10cm 10cm Levee toe 1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの Horizontal flow (6) 横断方向の落堀個数 d bank = 4cm 80cm width 2cm and 4cm overtop with 6cm & 10 cm levee height: Flow Levee slope Vertical flow (A) Sazia et al.( 投稿中 ) に加筆 越流水深が大きい (2m 程度 ) 3.11 の阿武隈川河川沿い氾濫のケース ひょうたん型 h bank = 10cm d bank = 2cm (B) 10cm Levee toe Flow Levee slope 越流水深が小さい台風 18 号鬼怒川氾濫決壊前のケース 小さい洗掘孔が越流部の横断方向 ( 河川堤防沿い ) に複数形成される Horizontal flow Vertical flow

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (7) 越流部に横断方向 ( 堤防沿い方向 ) の落堀個数 横断方向落掘個数 (Sazia et al.( 投稿中 ) に鬼怒川データ追加 ) おっぽりの個数 ( 横方向 ) 7 6 5 4 3 2 1 0 Fr=1-2.45 Fr=2.7-3.43 Fr=3.68-4.57 鬼怒川破堤点 0 5 10 15 20 越流幅 / 堤防高 Fr: 法尻におけるフルード数

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (8) 決壊前のおっぽりと関連しているか : 落堀個数 出典 : 第 1 回鬼怒川堤防委員会資料に加筆修正 青点線前後のあたりが決壊直前にできるおっぽりの位置

1 災害痕跡としての落堀から読み解けるもの (9) 横断方向個数 流下方向 約 80m に 5 個程度この周辺のものは 初期おっぽりが成長したものと考えられる 第 3 回鬼怒川堤防委員会資料に加筆修正 堤防があった位置の一番川表側や 堤防から堤内地側に離れた洗掘箇所は 決壊後の洗掘と考えられるが 初期落堀の横断方向個数に影響を受けている可能性もある ( それ以外に 家屋周辺の局所流も加わって 洗掘形状が複雑 )

2 災害タイプと破堤幅 (1) 鬼怒川氾濫の影響をうけて決壊した八間堀川 氾濫流の進行方向の判断材料 1 植生の倒伏方向 ゴミの付着方向 右岸側から河川に氾濫 右岸側から堤内に氾濫 左岸側から河川に氾濫 左岸側から堤内に氾濫 寺橋 破堤地点 ( 全て左岸側 ) 上大橋 2 堤内地のフェンス等構造物の倒伏方向 大橋 3 堤防法面のガリ 落堀の形成の有無 相平橋 破堤地点を境に左岸側堤内地の浸水深が増加 みじょう橋 新八間堀川 しんあい橋 石洗橋 あきら橋 桜橋 旧八間堀川

2 災害タイプと破堤幅 (2) 八間堀川破堤点 ( 大橋付近 ) 八間堀川 ( 大橋 ) 川幅 : 15m 程度 破堤 2 箇所 20m 程度 18m 程度 破堤幅 : 18m 程度 破堤幅 : 20m 程度 UAV により 自分たちで撮影

2 災害タイプと破堤幅 3 八間堀川 破堤点 大橋付近 八間堀川左岸 (大橋下流) 川幅 : 15m程度 赤矢印や赤丸は島状地形 八間堀川左岸 (大橋上流)

2 災害タイプと破堤幅 (4) 八間堀川破堤点 ( 上大橋付近 ) 八間堀川 ( 上大橋 ) 川幅 : 15m 程度 破堤幅 : 12m 程度 赤丸は島状地形

2 災害タイプと破堤幅 (5) 宮戸川航空写真 宮戸川 : 大地の縁を通る 左岸側が決壊すれば氾濫は広域に及ぶ 取水に適した位置 排水に適した位置 Google earth をもとに作成

2 災害タイプと破堤幅 (6) 西仁連川航空写真 西仁連川 : 大地の縁を通る 左岸側が決壊すれば氾濫は広域に及ぶ 取水に適した位置 排水に適した位置 Google earth をもとに作成

2 災害タイプと破堤幅 (7) 二河川の破堤点付近 調査時も逆流していた 逆流した痕跡があった 宮戸川の決壊 西仁連川の決壊 大地の縁を流れる河川 ( 農業にとっては取水に便利 ) が決壊し 氾濫原 ( その中央に排水河川がある ) に広域に広がった 破堤点近傍に家屋がなかったため家屋被害 人的被害がなかった 決壊時のインパクト大 : 流域という視点に加え 取水排水システムという単位も重要

2 災害タイプと破堤幅 (8) 宮戸川破堤幅 破堤幅 : 12m 程度 宮戸川堤間幅 : 10.5m 程度 赤丸は島状地形

2 災害タイプと破堤幅 (9) 西仁連川破堤幅 川幅 : 18m 程度 破堤幅 2 : 8m 程度 破堤幅 1 : 18m 程度 赤丸は島状地形 UAV により 自分たちで撮影

2 災害タイプと破堤幅 (10) あらためて鬼怒川の破堤現象を見てみると 出典 : 第 1 回鬼怒川堤防委員会資料より抜粋 11:46 の画像では同じような二股の越流が確認できる ( 間が残れば島状地形になる ) 12:52 の破堤直後は越流は 1 箇所からだが 13 時には 2 箇所から越流しているように見える 13:00 13:36 の間で 島状地形もなくなり 決壊幅も大きく広がる

2 災害タイプと破堤幅 (11) 既往知見 ( 氾濫シミュレーションマニュアル案に記載されているデータ 式 ) との比較 破堤幅 (m) 250 200 150 100 50 0 宮戸川西仁連川八間堀川 ( 上大橋 ) 八間堀川 ( 大橋 ) 鬼怒川氾濫マニュアル ( 合流点付近 ) 氾濫マニュアル ( 合流点付近以外 ) 合流点付近の式合流点付近以外の式 最終幅 13:36 12:52 1 10 100 1000 川幅 (m) 堤外側水位の低下速度 供給される水量の差から 決壊幅の時間的進行に大きな違いが生じた 12:52 の初期決壊幅は支川と類似した 20m 破堤点の間の島状地形が飛んでしまった場合はこの倍程度になるが それでも小さい 河川流速が遅くよどんでいたときの共通した特徴か 背水影響を強く受け 破堤点で逆流の痕跡が確認された宮戸川 西仁連川鬼怒川の氾濫水が流入し 破堤した八間堀川は破堤幅は傾向としては小さい 鬼怒川の破堤幅は大きめである

今回の災害で見られた破堤後の落堀 鬼怒川本川 2 災害タイプと破堤幅 (12) 決壊が生じたときの洗掘長 190m 50m 第三回堤防委員会資料より 西仁連川 55m 45m 八間堀川 小貝川小貝川 (( 樋管部分樋管部分 )) 利根川利根川 利根川は下館市役所の HP を参考 小貝川は越水ではない

落堀長 (m) 1000 100 2 災害タイプと破堤幅 (13) 決壊が生じたときの洗掘長 洗掘で家屋が流されてしまう可能性のある長さ東日本大震災時に破堤しなかった堤防で得られた落堀長と比較 (1 オーダー長い ) 10 1 破堤 : 自由越流の場合 赤プロット比較的ほれやすい地被状態の箇所なので アスファルトなどで覆われている箇所はこの値よりは減少すると考えられる AB4 AB7 AB3 白抜き未破堤 : 自由越流の場合 AB2 AB1 AB5 AB6 SA1,SA2,SA3 NA UN OM T1-T10 鬼怒川本川八間堀川 ( 大橋 1) 八間堀川 ( 大橋 2) 西仁連川利根川 (1947, 栗橋地点 ) 黒プロット未破堤 : もぐり越流の場合 0 2 4 6 8 10 12 14 堤防天端でのエネルギー水頭 (m) Tanaka and Sato(2015) Ocean Engineering 109, 72-82 に加筆 修正 1947 利根川破堤のエネルギー水頭は 左記より推定 http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kyokun/kyoukunnokeishou/rep/1947 kathleentyphoon/pdf/5_chap1.pdf

1. おっぽり ( ここでは破堤後の流れによる洗掘領域も含む ) 鬼怒川の破堤点付近の破堤前の現象は ひょうたん池が出来るような越流水深ではなかったため 越流部の横断方向 ( 堤防の長手方向 ) に複数の小規模な洗掘領域 ( 既往研究との比較では 2m 前後の深さ 長さは 10m 弱 ) が生じた 個数は 既往研究との比較で 5 個程度であり 航空写真の個数とも類似している 決壊後に形成された地形もそれと類似した数の流路が形成されている 洗掘領域が川側にほれながら移動したこと 堤内側に流れが集中し流路が形成されたと解釈される 2. 破堤現象 おわりに 宮戸川 西仁連川 八間堀川 鬼怒川ともに越流が二股に分かれる現象が確認された 流速が遅くよどんだ状態での決壊の共通した現象として注目される 鬼怒川の初期決壊幅も類似した値であった 破堤幅は鬼怒川を除いて 小さめの値となった 鬼怒川は越流 決壊の過程で間の島状地形は消滅したこと 河川からの氾濫水の供給が続いたため 破堤幅は他地点と比べて大きめの傾向であった 決壊で生じた洗掘領域の長さは 非決壊のおっぽりより 1 オーダー長い