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ともに 警報を発するものをいう 第三放水型ヘッド等の構造及び性能規則第十三条の四第二項に規定する放水型ヘッド等の構造及び性能は 次に定めるところによる 一放水型ヘッド等の構造は 次によること ( 一 ) 耐久性を有すること ( 二 ) 保守点検及び付属部品の取替えが容易に行えること ( 三 ) 腐食

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バックチェック計画書

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第 5 章長周期地震動による被害 ( 危険物タンクのスロッシング ) を対象とした評価 本章では 長周期地震動による危険物タンクのスロッシング被害について評価する スロッシング ( 液面揺動 ) とは 地震波と容器内の液体が共振して液面が大きく揺れる現象である はじめに 法令によるスロッシング対策と各地区における対策の現況等について説明する 次に 過去の事例を基に スロッシングによる災害の想定を行う 過去の地震や想定地震の予測波形から得られる速度応答スペクトルを基に 危険物タンクにおけるスロッシング被害の可能性を評価する 5.1 消防法におけるスロッシング対策 5.1.1 スロッシングを考慮した液面管理 (1) スロッシング最大波高の推定方法スロッシングによる浮き屋根の損傷 内容物の溢流 火災等の被害の発生は スロッシングによる揺れの大きさ ( スロッシング最大波高 ) にある程度依存することが示されている i スロッシング最大波高の推定には 次式を用いる (1) D 2 max 0.837 SV ( TS1 ) 2g T (1) S1 D 3. 682 H T S 1 2 coth (2) 3.682 g D ここで (1) max : スロッシング波高の線形解 (m) D: タンク内径 (m) H: 液面高さ (m) g: 重力加速度 (9.8m/s 2 ) Ts1: スロッシングの一次固有周期 (s) Sv(Ts1): 周期 Ts1 における速度応答スペクトル (m/s) X X e e coth x X X e e 式 (1) 式(2) は 微小波高を仮定したもの ( 線形解 ) で 溢流が生じるような大きなスロッシングの場合は 非線形性の影響による波高の増分を考慮する必要がある 非線形性を考慮したスロッシング最大波高は 西他 (2008) により以下の式が提案されており 平成 15(2003) 年十勝沖地震での事例からみて適用性が確認されている ii (1 ) Δ max (3) i 座間信作 :2003 年十勝沖地震にみる石油タンク被害の特徴と対策 物理探査 No.59 Vol.4 353-362 2006 ii 西晴樹 他 : 石油タンクのスロッシングによる溢流量の算定 圧力技術 No.46 Vol.5 276-284 2008 5-1

2 (1) D max Δ 0.91 2 / 2 (4) D ここで η + : 非線形スロッシングの最大波高 (m) (1) max : スロッシング波高の線形解 ( 式 (1):m) Δη: 非線形スロッシングによる非線形液面増分 (m) D: タンク内径 (m) スロッシング最大波高は タンク内径とスロッシングの一次固有周期 Ts1 における速度応答スペクトルが得られれば容易に計算することができる スロッシングの一次固有周期 Ts1 はタンク内径と液面高さから求められ 通常のタンクでは数秒から 10 秒程度である したがってスロッシング最大波高の推定には 想定地震による長周期地震動特性 ( 速度応答スペクトル ) を予測することが重要になる (2) 法令による液面管理消防法告示 ( 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示 ) においては 容量 1,000kL 以上の特定屋外タンク貯蔵所について スロッシングが発生しても内容物の溢流が生じないよう スロッシングによる最大波高を想定した液面管理 ( タンク上部に余裕空間を確保する ) が定められている ( 式 (5)~(8)) 最大波高の想定に当たって前提とする地震動 ( 速度応答スペクトル ) は 従来の消防法では周期によらず一律に定められていた (ν1=1 の場合においておよそ 1m/s) しかしながら 平成 15(2003) 年に発生した十勝沖地震では 多くのタンクにおいて想定を上回るスロッシングが生じ 特に浮き屋根式の危険物タンクにおいて 浮き屋根の損傷 沈降や内容物の溢流 タンク火災等の被害が生じた これを受けて 平成 17(2005) 年 1 月に消防法告示の改正 ( 平成 17 年総務省告示第 30 号 ) が行われ タンク側板の最上端までの空間高さ (Hc) を求める算式に長周期地震動の地域特性に応じた補正係数 (ν5) が導入され スロッシング固有周期に応じて従来の 1~2 倍の範囲で液面の低下措置が行われることとなった Hc 0.45 D Kh (5) 2 Kh 2 0. 15 1 4 5 (6).5 T (7) 4 4 / S1 T S 2 ( D / 3.68g) coth( 3.68H / ) (8) 1 D ここで Hc: 側板の最上端までの空間高さ (m) Kh2: 液面揺動の設計水平震度 ν1: 地域別補正係数 福岡県は全域で 0.70 ν4: スロッシングの一次固有周期を考慮した応答倍率 ν5: 長周期地震動に係る地域特性に応じた補正係数 ( 図 5.1.1) 福岡県内の特別防災区域は全て 1 5-2

Ts1: スロッシングの一次固有周期 (s) D: タンク内径 (m) H: 最高液面高さ (m) [ 地域イ ] 苫小牧 酒田 新潟東港 新潟西港 [ 地域ロ ] 京葉臨海北部 京葉臨海中部 京葉臨海南部 京浜臨海 根岸臨海 久里浜 [ 地域ハ ] 北斗 秋田 清水 衣浦 名古屋港臨海 四日市臨海 大阪北港 堺泉北臨海 関西国際空港 図 5.1.1 長周期地震動に係る地域補正係数 注 ) 告示では タンク周辺の敷地における地震動記録等に基づき 地域特性を考慮して予想された速度応答スペクトルから補正係数を求めることを基本とし 適切な地震動記録が得られていない場合については この図の補正係数を用いることができるとしている 図の補正係数は コンビナート最寄りの気象官署等における観測記録に基づき最低限の値として示されているもので タンク周辺の強震計地震動記録等に基づき予測される速度応答スペクトルが得られる場合には 別途検討を行う必要がある 福岡県内においては 消防法においてスロッシング最大波高を想定するに当たって前提とする速度応答スペクトル ( 以下 消防法想定スペクトル という ) はおよそ 0.7m/s となる (3) 危険物タンクの固有周期危険物タンクの固有周期 (Ts1) の分布を 表 5.1.1 に示す 表 5.1.1-a 危険物タンクの固有周期 (Ts1) 地区 福岡地区 タンク種別 特定タンク準特定タンク固定屋根浮き屋根内部浮き蓋固定屋根浮き屋根内部浮き蓋 2~3 秒 2 3~4 秒 13 4 22 2 4 4~5 秒 19 2 7 1 5~6 秒 4 3 計 36 2 14 24 2 5 5-3

表 5.1.1-b 危険物タンクの固有周期 (Ts1)( 続き ) 地区 北九州地区 準特定タンク特定タンクタンク種別特定外タンク 固定屋根 内部浮き蓋 固定屋根 内部浮き蓋 3~4 秒 14 1 24 3 4~5 秒 34 7 5~6 秒 9 6~7 秒 5 1 休止中 2 2 計 64 9 26 3 地区 白島地区 準特定特定タンクタンク種別タンク 浮き屋根 固定屋根 3~4 秒 2 4~5 秒 5~6 秒 6~7 秒 2 計 2 2 地区 豊前地区 タンク種別 特定タンク固定屋根浮き屋根 3~4 秒 1 4~5 秒 5~6 秒 6~7 秒 7~8 秒 3 8~9 秒 2 計 4 2 5-4

(4) 危険物タンクの余裕空間高さ実際の余裕空間高さの分布を 表 5.1.2 に示す 特定タンクについては 全て Hc より大きい空間高さが確保されている なお 準特定タンクについては Hc に関して法令上規制されていない 表 5.1.2-a 危険物タンクの実際の余裕空間高さ 地区 福岡地区 タンク種別 特定タンク準特定タンク固定屋根浮き屋根内部浮き蓋固定屋根浮き屋根内部浮き蓋 ~0.5m 19 1 10 1 0.5~1.0m 17 4 10 1 1.0~1.5m 1 5 14 3 1.5~2.0m 1 3 2 計 36 2 14 24 2 5 地区 北九州地区 準特定タンク特定タンクタンク種別特定外タンク 固定屋根 内部浮き蓋 固定屋根 内部浮き蓋 ~0.5m 36 1 18 1 0.5~1.0m 15 5 5 2 1.0~1.5m 3 2 1 1.5~2.0m 2 1 2.0m~ 6 休止中 2 2 計 64 9 26 3 地区 白島地区 準特定特定タンクタンク種別タンク 浮き屋根 固定屋根 ~0.5m 2 0.5~1.0m 2 計 2 2 5-5

表 5.1.2-b 危険物タンクの実際の余裕空間高さ ( 続き ) 地区 豊前地区 タンク種別 特定タンク固定屋根浮き屋根 ~0.5m 1 0.5~1.0m 1.0~1.5m 1.5~2.0m 2.0m~ 3 2 計 4 2 5.1.2 浮き屋根の技術基準の策定平成 17(2005) 年 1 月の改正告示では 補正係数 (ν5) の導入とともに新たに浮き屋根の技術基準が定められ 浮き屋根の耐震機能を確保することが求められている 対象となるタンクは シングルデッキタイプの浮き屋根を有する特定屋外タンク貯蔵所のうち 容量 20,000kL 以上のタンクと 容量 20,000kL 未満で Hc 2m のタンクである これらのタンクでは 浮き屋根の損傷や沈降の発生 浮き屋根上への滞油に伴う雨水排水配管からの漏洩が生じる可能性があることが指摘されている (1) 浮き屋根の技術基準従来 浮き屋根の耐震強度は事業者独自の基準により設計されていたが 長周期地震動の影響を考慮した浮き屋根の耐震強度に関して 新たに技術基準が策定された ( 適用に当たっては 平成 29(2017) 年 3 月 31 日までの経過措置が設けられている ) (2) 浮き屋根の構造浮き屋根の浮力を確保する上での想定破損室数 浮き屋根の強度確保の前提となる溶接方法 浮力を失わないためのマンホールの構造 浮き屋根上の排水設備からの危険物流出防止のための遮断弁の設置について定められた 対象地域における浮き屋根式タンクの浮き屋根は 全て技術基準の適用の対象外である 5.1.3 内部浮き蓋の技術基準の策定平成 23(2011) 年 12 月の省令改正 ( 平成 23 年総務省令第 165 号 ) により 内部浮き蓋付きの特定屋外貯蔵タンクの技術基準が制定された 浮き蓋の浮力 耐震強度等については 浮き屋根式タンクの浮き屋根と同等の基準が定められた パン型及びバルクヘッド型の浮き蓋については 平成 36(2024) 年 3 月 31 日までに他の構造の浮き蓋に改修することとされた また 不活性ガスにより常時シールするタンク以外のタンクには 可燃性蒸気を屋外に有効に排出するための設備を設けることが定められた 対象地域における内部浮き蓋の現況は 表 5.1.3 に示すとおりである 改修が必要なパン型のタンクを除いて いずれも平成 23 年省令の技術基準に適合している 5-6

表 5.1.3 内部浮き蓋の現況 地区名 パン型 ( 改修が必要 ) ポンツーン型特定準特定特定準特定 福岡地区 0 1 0 0 北九州地区 0 0 2 1 地区名 簡易フロート型ダブルデッキ型特定準特定特定 福岡地区 7 1 2 北九州地区 5 1 0 地区名 その他特定準特定 福岡地区 0 0 北九州地区 2 1 5-7

5.2 災害の発生 拡大シナリオ 5.2.1 危険物タンクのスロッシングによる災害の事例 (1) 新潟地震における危険物タンク火災昭和 39(1964) 年の新潟地震では 新潟西港地区にある危険物タンクでスロッシングによる被害が発生した 浮き屋根式タンクでは 原油タンク 5 基 製品タンク 10 基の浮き屋根が揺動し このうち原油タンクからタンク側板を越えて原油が溢流して着火した この火災は 隣接するタンクを巻き込みおよそ 2 週間燃え続けた その間 防油堤の破損箇所から流出した原油の火により 加熱炉 ボイラー 反応塔でも火災が発生している i 固定屋根式タンクでは スロッシングにより 重油約 2,000kL が屋根と側板の接合部を破り噴出している i (2) 平成 15 年十勝沖地震における危険物タンク火災 ii 平成 15(2003) 年十勝沖地震では 苫小牧地区にある危険物タンクでスロッシングによる火災が発生した 原油タンクでは 地震に伴うタンク液面のスロッシングにより揺動した浮き屋根とタンク上部の附属設備とが衝突した際 あるいは測定小屋が浮き屋根上に落下した際に衝撃火花が発生し 浮き屋根上に漏洩した原油の可燃性混合気に着火しリング火災となったと推定されている また ナフサタンクでは 地震により浮き屋根が損傷を受けて浮き屋根上にナフサが漏洩し 地震発生翌日に浮き屋根が完全に沈没した ナフサの気化防止のために泡シールを実施したものの 時間経過とともに泡が水滴となり ナフサが沈降帯電し 電位が上昇した液面上の泡が放電した 放電した泡が 風の影響によりナフサ液面が露出して生じた可燃性混合気に着火し タンク全面火災に至ったとみられている その他に 固定屋根式タンクの側板と屋根の接合部を突き破って溢流した事例 浮き屋根上に流出した油がドレン配管を通って外に流出した事例もみられた (3) 東日本大震災における被害以下に 東日本大震災における長周期地震動による被害の発生状況をまとめる ( 詳細は参考資料 1 参照 ) ア. 被害の全体概要平成 23 年度消防庁において実施された 東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震 津波対策の方に係る検討会 では 東日本大震災で被害を受けたおそれのある危険物施設について調査を行っている iii これに基づく浮き屋根式タンク及び内部浮き蓋付きタンクのスロッシングによる被害状況は以下のとおりである i 太田外氣晴 座間信作 : 巨大地震と大規模構造物 - 長周期地震動による被害と対策 - 共立出版 2005 ii 平成 15 年 (2003 年 ) 十勝沖地震記録編集委員会 : 平成 15 年 (2003 年 ) 十勝沖地震記録 ~ 危険物施設の被害状況 ~ 2004 iii 消防庁危険物保安室 特殊災害室 : 東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震 津波対策の方に係る検討報告書 2011 5-8

a. 浮き屋根式タンクの被害東日本大震災における浮き屋根式タンクの被害状況を 表 5.2.1 に示す これによると 何らかの被害があったシングルデッキのタンク 36 基の中で 24 基が耐震基準未適合でこのうち 5 基でポンツーン内への流出 ( 油の浸入 ) がみられている 一方 適合済みのタンクでは 4 基で被害があったが全て軽微なものである ダブルデッキのタンクでも 9 基でポンツーン内への流出がみられたが この浮き屋根は浮力に十分な余裕が 多少の流出があっても沈下や傾斜に至ることはない 浮き屋根耐震基準に該当しないタンク 3 基で流出が発生しており これらについては注意が必要である 表 5.2.1 東日本大震災における浮き屋根式タンクの被害状況 i 浮き屋根の種類耐震基準対象適合別危険物流出の有無 シングルデッキ ダブルデッキ 36 16 (314) 該当 非該当 28 (398) 7 (247) 不明 1 適合済 未適合 注 ) 括弧内は調査対象の都道府県に設置されている当該区分の総基数 4 (51) 24 (347) 流出 0 流出なし 4 流出 5 流出なし 19 流出 3 流出なし 4 流出 0 流出なし 1 流出 9 流出なし 7 b. 内部浮き蓋付きタンクの被害ポンツーン型の浮き蓋については 209 基中 3 基で被害が発生しているが いずれも軽微でポンツーンの破損に伴う浮き蓋の沈下 傾斜といった浮き性能を損なうような被害はない 簡易フロート型の浮き蓋については 579 基中 7 基で被害が発生している そのうち 6 基の被害は軽微であるが 1 基で浮き蓋が沈降した イ. 被害の詳細 ii, iii 東日本大震災における長周期地震動に起因する危険物タンクの被害に関しては 消防庁や危険物保安技術協会において詳しい調査が行われた これによると 各地区で観測された長周期地震動の特徴と被害状況は以下のようになっている なお 長周期地震動による被害は日本海側や東京湾岸で顕著で 東北太平洋側では大きな被害は生じていない i 消防庁危険物保安室 特殊災害室 : 東日本大震災を踏まえた危険物施設等の地震 津波対策の方に係る検討報告書 2011 ii 座間信作他 : 石油タンクのスロッシングによる被害, 第 15 回消防防災講演会資料, pp.71-84, 2012 iii 危険物保安技術協会 : 平成 23 年 (2011 年 ) 東北地方太平洋沖地震記録 ~ 屋外タンク貯蔵所の被害状況 2012 5-9

a. 酒田地区山形県の酒田地区では 東日本大震災において最も大きな長周期地震動が観測された この影響により 内部浮き蓋付きタンク 1 基の内部浮き蓋が全破損する被害が生じている 当該タンクは 簡易フロート型の内部浮き蓋を有する直径 15.5m 許可容量 2,740kL のタンクで 地震時の液面高さは 9.3m であった 酒田地区で観測された長周期地震動は 平成 15(2003) 年十勝沖地震の際に苫小牧で観測された地震動 ( 以下 2003 苫小牧 という ) に匹敵する規模である 固有周期 4 秒強付近の地震動が 消防法令で想定している地震動をやや上回っており 大きな揺れに見舞われたと考えられる b. 新潟東港地区 新潟西港地区新潟東港地区及び新潟西港地区では 長周期地震動による浮き屋根の沈没や傾斜はなかったが ポンツーン内の滞油 アルミ製内部浮き蓋の破損等の被害が生じている スロッシング最大波高は 一部のタンクでは実測値が計算値を上回り 一部のタンクでは下回ることが確認されている これに関して消防研究センターが詳細分析を行い 地震動が観測された地点とタンク設置地点とが異なること (2.5km 程度離れていても長周期帯域の地震動は 50% 程度変わり得る ) スロッシング痕跡からの実測値の誤差 ( 日本産の原油では痕跡がほとんど残らず 測定値は過小評価されている可能性がある ) を指摘している c. 京浜臨海地区神奈川県の京浜臨海地区では シングルデッキ型の浮き屋根式タンク 1 基において 地震の数日後に浮き屋根が沈没する被害が生じた 当該タンクは直径 38.74m 許可容量 19,365kL のタンクで 消防法令に基づく浮き屋根の耐震基準 ( 平成 17 年総務省令第 3 号 ) に適合させる必要のあるタンクだが 地震当時は経過措置期間中で未適合であった 地震時の液面高さは 8.18m で およそ半分の量の油が貯蔵されていた 側板の油の痕跡から 実際に発生したスロッシング高さは 1.0~1.5m であったと推測されている この他 浮き屋根 浮き蓋のポンツーン内への滞油 浮き蓋の破損 側板頂部と固定屋根の変形等の被害が生じている 京浜臨海地区 ( 川崎市 ) で観測された長周期地震動は 2003 苫小牧を下回り 周期 3 秒以上では消防法令で想定する地震動を超えていない 危険物保安技術協会では当該タンク浮き屋根について 消防法令上の評価手法に基づく強度及び浮力の評価を行っている その結果 強度については合成応力が許容応力を上回り 浮力についてはポンツーン 1 室が破損した場合でも十分な浮力を有していなかったことが示されている d. 鹿島地区茨城県の鹿島地区では 1~2m 程度のスロッシング波高が確認されおり ダブルデッキ型の浮き屋根式タンク数基でポンツーン内への滞油があった このとき観測された長周期地震動は 2003 苫小牧を下回るが 周期 7 秒以下ではやや大きいものとなっている 5-10

5.2.2 スロッシングによる災害の拡大シナリオ (1) 初期事象 5.2.1より 過去の地震におけるスロッシングによる災害の事例をまとめると 次のようになる 浮き屋根式タンクでは 浮き屋根の損傷や沈降によるタンク火災が発生した事例がある また 浮き屋根上に流出した油がドレン配管を通って外に流出した事例がある 固定屋根式タンクでは 側板と屋根の接合部を突き破って溢流した事例がある 内部浮き蓋付きタンクでは 浮き蓋の損傷が発生した事例がある これらを念頭において 長周期地震動によって発生すると考えられる初期事象を次のように設定する 1 浮き屋根式タンク〇浮き屋根上への流出〇浮き屋根の損傷 沈降〇タンク中のドレン配管の破損 ( 浮屋根上に流出した油がドレン配管を通って流出する事象も含む ) 2 固定屋根式タンク〇タンク上部 ( 側板と屋根の接合部 ) の破損 3 内部浮き蓋付きタンク〇浮き蓋の損傷 沈降 (2) イベントツリーそれぞれの初期事象からスタートしたイベントツリーは以下のとおりで 災害事象としては溢流等による流出火災 浮き屋根の損傷 沈降等によるタンク火災が考えられる 原油等のタンク火災が長時間継続した場合には 燃焼過程においてボイルオーバーが発生して周辺の消防隊員に被害を及ぼす危険性がある ボイルオーバーは 火災熱によりタンク内で油の高温層が形成され これがタンク底部の水に接触して水が急激に沸騰し 巨大な炎を吹き上げると同時に油が噴出する現象である 1 浮き屋根式タンク〇浮き屋根上への流出 図 5.2.1 〇浮き屋根の損傷 沈降 図 5.2.2 〇タンク中のドレン配管の破損 図 5.2.3 2 固定屋根式タンク〇タンク上部 ( 側板と屋根の接合部 ) の破損 図 5.2.4 3 内部浮き蓋付きタンク〇浮き蓋の損傷 沈降 図 5.2.5 5-11

事象分岐初期事象災害事象消火設備 溢流着火浮き屋根沈降ボイルオーバー消火活動 地震発生なし地上流出 ( タンク周辺 ) スロッシング タンク周辺流出火災 浮き屋根上への流出 なし浮き屋根上の滞油 成功 リム火災 なし なし リング火災 *) 溢流したあと 地上とタンク上部で同時に火災になることもある 失敗 なし タンク全面火災 ボイルオーバーによる大規模火災 図 5.2.1 浮き屋根上への流出のイベントツリー ( 浮き屋根式タンク ) 5-12

事象分岐初期事象災害事象着火ボイルオーバー 地震発生 スロッシング なし 浮き屋根の 損傷 沈降 なし タンク 全面火災 ボイルオーバーによる大規模火災 図 5.2.2 浮き屋根の損傷 沈降のイベントツリー ( 浮き屋根式タンク ) 5-13

事象分岐初期事象災害事象ドレンバルブ閉止仕切堤防油堤着火 なし流出 ( タンク周辺 ) 地震発生成功 スロッシング タンク周辺流出火災 ドレン配管の破損 成功 なし仕切堤内流出 仕切堤内流出火災 失敗 成功 なし防油堤内流出 防油堤内流出火災 失敗 なし防油堤外流出 失敗 防油堤外流出火災 *) 浮き屋根上に流出した油がドレン配管を通って流出することもある その場合は流出量は少なく タンク周辺の火災にとどまるであろう 図 5.2.3 タンク中のドレン配管の破損のイベントツリー ( 浮き屋根式タンク ) 5-14

事象分岐初期事象災害事象消火設備 流出着火ボイルオーバー消火活動 地震発生なし地上流出 ( タンク周辺 ) スロッシング タンク周辺流出火災 タンク上部の破損 なし なし ( ごく小量 ) 成功 タンク小火災 なし タンク全面火災 失敗 *1) 溢流したあと 地上とタンク上部で同時に火災になることもある ボイルオーバーによる大規模火災 *2) 小火災のあと 一気に全面火災になるとは限らない 図 5.2.4 タンク上部 ( 側板と屋根の接合部 ) の破損のイベントツリー ( 固定屋根式タンク ) 5-15

事象分岐初期事象災害事象消火設備 着火ボイルオーバー消火活動 地震発生 スロッシング なし 浮き蓋の損傷 沈降 成功 タンク小火災 ( 気相部で爆発 ) なし タンク全面火災 失敗 ボイルオーバーによる大規模火災 *) 小火災のあと 一気に全面火災になるとは限らない 図 5.2.5 浮き蓋の損傷 沈降のイベントツリー ( 内部浮き蓋付きタンク ) 5-16

5.3 災害の想定 5.3.1 想定する長周期地震動スロッシング波高の推定には 過去に発生した地震や 今後発生が予想される地震による速度応答スペクトルを予測することが必要となる 対象地域周辺では 平成 17(2005) 年に福岡県西方沖地震が発生していることから この地震による速度応答スペクトルの推定を行う 防災科学技術研究所では 強震観測網 (K-NET KiK-net) によって観測された強震データを公開している このデータから作成した福岡県西方沖地震の擬似応答スペクトルを 図 5.3.1~ 図 5.3.3 に示す また 今後発生が予想されている地震では 南海トラフで発生する地震が対象地域に影響を及ぼすと考えられる 地震調査研究推進本部では 南海地震 ( 昭和型 )(M8 クラス ) の長周期地震動予測地図 iを公表している ii 各特別防災区域付近での長周期地震動の予測データから作成した擬似速度応答スペクトルを図 5.3.4~ 図 5.3.7 に示す その他 内閣府 南海トラフの巨大地震モデル検討会 では 南海トラフ全域を震源域とする M9 クラスの南海トラフ地震を想定した長周期地震動の予測について検討が進められているが 現時点では予測結果は公表されていない 注 ) 南海トラフ地震による長周期地震動については 長周期地震動予測地図作成支援事業として 防災科学技術研究所において約 100 通りのシナリオに対するシミュレーションが行われている iii 本調査では 福岡県庁における代表的なシナリオについての予測データをご提供いただいた 詳細については参考資料 6 に示す 1000 擬似速度応答スペクトル h=0.5% 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.1 福岡県西方沖地震における擬似速度応答スペクトル (K-NET 福岡 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す i 地震調査研究推進本部地震調査委員会 : 長周期地震動予測地図 2012 年試作版 2012 ii 文部科学省地震調査研究推進本部 : 長周期地震動予測地図( 試作版 ) について 第 26 回南海トラフの巨大地震モデル検討会 ( 文部科学省提供資料 ) 平成 24 年 10 月 11 日 iii 文部科学省研究開発局独立行政法人防災科学技術研究所 : 平成 24 年度長周期地震動予測地図作成等支援事業成果報告書 2013 5-17

1000 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.2 福岡県西方沖地震における擬似速度応答スペクトル (K-NET 北九州 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す 1000 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.3 福岡県西方沖地震における擬似速度応答スペクトル (KiK-net 豊前 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す 5-18

1000 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.4 南海地震 ( 昭和型 ) の長周期地震動予測データから得た擬似速度応答スペクトル ( 福岡地区 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す 1000 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.5 南海地震 ( 昭和型 ) の長周期地震動予測データから得た擬似速度応答スペクトル ( 北九州地区 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す 5-19

1000 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.6 南海地震 ( 昭和型 ) の長周期地震動予測データから得た擬似速度応答スペクトル ( 白島地区 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す 1000 100 速度 (cm/s) 10 1 0 5 10 15 周期 (sec) 図 5.3.7 南海地震 ( 昭和型 ) の長周期地震動予測データから得た擬似速度応答スペクトル ( 豊前地区 減衰定数 0.5%) 注 ) 破線は 消防法想定スペクトルを表す 5-20

福岡県西方沖地震における擬似速度応答スペクトルをみると 福岡地区においては 2~5 秒の周期において消防法想定スペクトルを上回る場合がある この周期と同じ固有周期の危険物タンクがあることから これと同程度の長周期地震動に見舞われた場合 タンクの貯蔵量の状態によってはスロッシングによる溢流が起こる可能性がある その他の地区においては 消防法想定スペクトルを下回っている 一方 南海地震 ( 昭和型 ) の長周期地震動予測データから推定した速度応答スペクトルは いずれの地区においても消防法想定スペクトルを下回っている 5.3.2 スロッシングによる溢流の可能性福岡地区においては 福岡県西方沖地震の擬似速度応答スペクトルが消防法想定スペクトルを上回る場合がある そこで 福岡地区の危険物タンクについて この擬似速度応答スペクトルを用いて 全てのタンクが満液の貯蔵状態であった場合における溢流の可能性を推定する スロッシング波高 (η + :5.1 の (3) 式 ) と余裕空間高さとの関係を 図 5.3.8 に示す スロッシング波高が余裕空間高さを超えるタンクは 固定屋根式タンク 21 基 内部浮き蓋付きタンク 1 基である これらのタンクのスロッシング最大波高は およそ 1.2m となる 過去の被害事例では スロッシング最大波高が概ね 2m のシングルデッキ浮き屋根式タンクで大きな被害が発生していることが指摘されている i が これを上回るタンクはみられない 3 2.5 スロッシング波高 (m) 2 1.5 1 0.5 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 余裕空間高さ (m) 図 5.3.8 福岡県西方沖地震によるスロッシング最大波高とタンク上部の余裕空間高さ ( 福岡地区 ) 以上より 浮き屋根式タンクではスロッシング波高がタンクの余裕空間高さを超えるものはないことから 内容物の溢流は想定されない 固定屋根式及び内部浮き蓋式タンクでは スロッシングにより内容液が屋根に衝突する危険性があるが 最大波高は 2m を超えないことから タンクの屋根と側 i 座間信作 :2003 年十勝沖地震にみる石油タンク被害の特徴と対策 物理探査 Vol59 No.4 2006 5-21

板との接合部を破損するような被害の危険性は低いと考えられる ただし 内部浮き蓋式タンクでは 浮き蓋の損傷の危険性がある 5.3.3 災害の想定 5.3.2 における評価を基に 危険物タンクの形式別に起こり得る災害をまとめる (1) 浮き屋根式タンクでの災害浮き屋根式タンクで発生し得る災害を 以下にまとめる タンク周辺 仕切堤内 防油堤内火災スロッシング波高が余裕空間高さを超えるタンクはないことから タンク側板上部からの内容物の溢流とそれに伴うタンク周辺での流出火災は想定されない 浮き屋根上での火災スロッシングにより 溢流が起こらなかった場合でも 浮き屋根上に油が滞留することがある こうした油に着火した場合 浮き屋根上でのリム火災 リング火災となる タンク全面火災スロッシングにより浮き屋根が損傷 沈降した場合には 着火してタンク全面火災に至る可能性はある しかし スロッシング最大波高が重大な被害発生の危険性が高いとされる 2m を超えないこと 対象地域にあるタンクはいずれも浮き屋根の技術基準に適合していることから タンク全面火災が発生する可能性は低いと考えられる (2) 固定屋根式タンクでの災害スロッシングにより内容液が屋根に衝突する危険性があるが 最大波高は 2m を超えないことから タンクの屋根と側板との接合部を破損するような被害の危険性は低いと考えられる (3) 内部浮き蓋付きタンクでの災害スロッシングにより内容液が屋根に衝突する危険性があるが 最大波高は 2m を超えないことから タンクの屋根と側板との接合部を破損するような被害の危険性は低いと考えられる ただし 浮き蓋上への危険物の流出や 浮き蓋の損傷 沈降の可能性が その場合には タンク上部の空間に可燃性蒸気が滞留し 通気口からの空気の流入により可燃性ガス濃度が爆発範囲内となって爆発 火災が発生することが考えられる 内部浮き蓋の技術基準 ( 平成 36(2024) 年 3 月 31 日まで経過措置がある ) に未適合のタンクが福岡地区に 1 基 こうしたタンクでは スロッシング最大波高が高ければ 内部浮き蓋の損傷 沈降等の被害が発生する可能性があるが 当該タンクのスロッシング波高は余裕空間高さを超えないことが想定されている 5-22

5.3.4 想定災害の不確実性長周期地震動は 震源の特性 ( 震源の深さ 規模 破壊過程等 ) と伝播特性によるため 震源と評価地点との組み合わせで考える必要がある i 長周期地震動の予測結果は 震源と評価地点との位置関係で異なる 本調査では 平成 17(2005) 年の福岡県西方沖地震については K-NET のデータを 南海地震 ( 昭和型 ) の長周期地震動については地震調査研究推進本部による算定地点のうち最も特別防災区域に近接する地点のデータを用いて評価を行った これらの評価地点は 特別防災区域と離れた位置にあるものがほとんどで 実際に見舞われる長周期地震動とは大きく異なる可能性があることに留意する必要がある また 南海トラフ地震が発生した場合の長周期地震動は 南海地震 ( 昭和型 ) よりも 10 倍以上大きくなる可能性が ( 参考資料 6) その場合には大量の石油の流出 タンク火災の同時発生等にも留意する必要がある 内閣府では 南海トラフの巨大地震モデル検討会において長周期地震動の検討を進めており その結果を基にした長周期地震動の予測データが公表された場合には 災害の想定について再度検討する必要がある i 座間信作 細川直史 畑山健 遠藤真 : やや長周期地震動の早期予測システムの構築 第 11 回日本地震工学シンポジウム論文集 p.2307-2312 2002 5-23