Microsoft PowerPoint - 02.防火の概念と法令

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資料 1-6 認知症高齢者グループホーム等に係る消防法令等の概要 1 消防法令の概要 主な消防用設備等の設置基準消防用設備等の種別消火器屋内消火栓設備スプリンクラー設備自動火災報知設備消防機関へ通報する設備誘導灯 設置基準規模 構造にかかわらずすべて延べ面積 700 m2以上延べ面積 275 m2以

消防用設備・機械器具等に係る最近の検討状況等

資料 2-3 超大規模防火対象物等における自衛消防活動に係る訓練の充実強化方策 ( 案 ) 平成 30 年 10 月 31 日 事務局

目次 ( )

Microsoft PowerPoint - 5(防火_萩原)140307講演発表PPT萩原rev3

第 3 章 1. の既往調査研究 1で紹介した 小規模多機能サービスに関する調査報告書 にも指摘されていたように 小規模多機能サービス事業所の整備にあたっては 建築基準法 消防法上の取り扱いの点で検討の余地を残している これに関して 2006 年 1 月に長崎県大村市の認知症高齢者グループホームで発

東京都建築安全条例の見直しの考え方

さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 第 4 渡り廊下で接続されている場合の取り扱い 155 第 4 渡り廊下で接続されている場合の 取り扱い

資料 5-1 防耐火に係る基準 資料の素案 第 1 章総則 ( 設計基準 ) 1.2 用語の定義 主要構造部 : 建築基準法第 2 条第 5 号による 耐火構造 : 建築基準法第 2 条第 7 号による 準耐火構造 : 建築基準法第 2 条第 7 の 2 号による 防火構造 不燃材料 : 建築基準法

東京都建築安全条例(昭和二十五年東京都条例第八十九号)新旧対照表(抄)

鉄道建築ニュース用原稿 「シャッター」 070928   (社)日本シヤッター・ドア協会

保育所の設備及び運営に関する基準 保育室等 屋外 遊戯場 設備 ( 必置 ) 面積設備 ( 必置 ) 面積 調理室 便所 0 1 歳児 乳児室及びほふく室 医務室 2 歳以上児 保育室又は遊戯室 乳児室 ほふく室 3.3m2 / 人 保育室 遊戯室 1.98m2 / 人屋外遊戯場 近隣の都市公園を代

2 スプリンクラー設備の設置基準の見直し 消防法施行令第 12 条第 1 項関係 スプリンクラー設備を設置しなければならない防火対象物又はその部分に 次に掲げるもの 火災発生時の延焼を抑 制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するものを除く で延べ面積が 275 m2未満のものが追加さ

消防法施行規則等の一部を改正する省令等の公布について ( 参考資料 ) 別紙 1 1 改正理由 (1) 背景住宅宿泊事業法 ( 平成 9 年法律第 65 号 ) が平成 30 年 6 月 15 日に施行され 住宅宿泊事業に係る事前の届出が同年 3 月 15 日に開始された ( 住宅宿泊事業法の施行期

ウ火元責任者は 自主検査の結果 異常が認められたときは 防火管理者及び防火管理責任者 ( 工事責任者 ) に報告し 指示を受けて対処する (2) 放火対策ア建物の外周部及び階段等には 可燃性の工事用資材又は梱包材等は置かないようにする やむを得ず置く場合は整理整頓し防炎シート等で覆い保管する イ工事

認知症高齢者グループホーム等火災対策に係る主な論点

すぐ連絡! すぐ実施! 杉並消防署からのお知らせ 自衛消防訓練を実施しましょう 自衛消防訓練は 火災が発生した場合に消防隊が現場に到着するまで 自衛消防 活動により 迅速 的確に人命の保護と災害の拡大防止の措置をとれるようにする ことを目的としています 訓練の種別 自主的に訓練することが必要です!

ポリカーボネート板に関する建築物の屋根への適用状況

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第 3 倉庫に係る防火安全対策 1 目的この基準は 近年 倉庫が大規模化し また 作業所的要素が出てくるなど特殊化する傾向が見られることから 倉庫に係る出火防止 延焼拡大防止 避難の安全確保等に係る具体的基準を定めたものである 2 指導対象この基準に基づき指導する防火対象物の範囲は次に掲げるものとす

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平成21年6月1日施行

番号

番号 特定共同住宅等の種類と必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等 二方向避難型特定共同住宅等である (1) 初期拡大抑制性能 ( その 2) 図面番 ア地階を除く階数が 5 以下のもの 消火器具屋外消火栓設備動力消防ポンプ設備 又は住戸用及び共同住宅用非常警報設備 イ地階を除く階数

平成  年  月  日

報設備 共同住宅用非常コンセント設備 特定小規模施設用自動火災報知設備 加圧防排煙設備及び複合型居住施設用自動火災報知設備第二講習の対象講習は 消防法施行規則 ( 昭和三十六年自治省令第六号 以下 規則 という ) 第三十一条の六第六項各号のいずれかに該当する者を対象とするものとする 第三講習科目及

資料 2-3 障害者施設等の火災対策のあり方 ( 案 ) 1 認知症高齢者グループホーム火災を踏まえた課題 ⑴ 消防機関への通報について長崎市認知症高齢者グループホーム火災 ( 以下 本件火災 という ) では 自動火災報知設備の鳴動後に 火災通報装置の操作が行えず 施設からの通報がなされなかった

耐震等級 ( 構造躯体の倒壊等防止 ) について 改正の方向性を検討する 現在の評価方法基準では 1 仕様規定 2 構造計算 3 耐震診断のいずれの基準にも適合することを要件としていること また現況や図書による仕様確認が難しいことから 評価が難しい場合が多い なお 評価方法基準には上記のほか 耐震等

ことを想定しているが これは既に違反対象物の公表制度を実施している消防本部の運用実態等を参考に 当該制度の実施に伴う事務負担やその効果等について検討を行った結果 特に都市部における建物の利用者数等による火災危険性が高いことを考慮したものである なお その他の消防本部においても政令指定都市の消防本部の

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としてまとめました 準備実験では 試験体の内外に 518 カ所の温度センサー ( 熱電対 ) と 41 カ所の熱流センサー ( 熱流束計 ) を設置して計測を行ったほか ビデオカメラを試験体内に 13 台 試験体外に 9 台設置して火災の様子を観察しました 2.2 準備実験より得られたこと木造 3

教授 ) において 本件火災の発生状況や 今後の消防のあり方について検討が行われた 検討会での検討結果を踏まえてとりまとめられた報告書では 火災予防対策として 以下のように提言がなされた 延べ面積 150 m2未満の飲食店にあっては 一部の地方公共団体の火災予防条例により消火器の設置が義務付けられて

第2章 事務処理に関する審査指針

CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐火性能の評価 ~ 平成 26 年度建築研究所講演会 CLTによる木造建築物の設計法の開発 ( その 3) ~ 防耐火性能の評価 ~ 建築防火研究グループ上席研究員成瀬友宏 1 CLT による木造建築物の設計法の開発 ( その 3)~ 防耐

別添 ( 用語の定義 ) 消防法( 昭和 23 年法律第 186 号 ) 法 消防法施行令( 昭和 36 年政令第 37 号 ) 令 消防法施行規則( 昭和 36 年自治省令第 6 号 ) 規則 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 ( 平成 20

目次 方針策定の背景 1-1. 用途地域指定の基本的な考え方 1-2. 住居系 [ 第一種低層住居専用地域 ] [ 第二種低層住居専用地域 ] [ 第一種中高層住居専用地域 ] [ 第二種中高層住居専用地域 ] [ 第一種住居地域 ] [ 第二種住居地域 ] [ 準住居地域 ] [ 田園住居地域 ]

基準2 消防用設備等の設置単位の取扱いに関する基準

松山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例施行規則平成 26 年 10 月 27 日規則第 65 号 ( 趣旨 ) 第 1 条この規則は, 松山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例 ( 平成 26 年条例第 52 号 以下 条例 という ) の施行に関し必要な事

屋内消火栓設備の基準 ( 第 4.2.(3). オ ) を準用すること (2) 高架水槽を用いる加圧送水装置は 屋内消火栓設備の基準 ( 第 4.2.(4). ア イ及びウ ) を準用するほか (1). ア イ及びウの例によること (3) 圧力水槽を用いる加圧送水装置は 屋内消火栓設備の基準 ( 第

新旧対照表 (1/15)

2 病院次のいずれにも該当する病院のうち 相当程度の患者の見守り体制を有するもの ( 火災発生時の消火活動を適切に実施することができる体制を有するものとして総務省令で定めるもの ) 以外のもの ( ア ) 特定診療科名を有するもの ( イ ) 一般病床又は療養病床を有する病院 火災発生時の延焼を抑制

突然の災害に負けない社内の体制整備 最終回 火災からの企業防衛 77 東京海上日動リスクコンサルティング ( 株 ) 危機管理グループグループリーダー茂木寿 日本では 消防法において規模 用途に応じ 消防計画 の策定が義務付けられている 一般的に企業においては ほとんどの拠点 施設で この消防計画策

( 例 ) 病床数が 60 の場合 職員の総数が5 人以上であり かつ 当該職員のうち宿直勤務者を除いた職員数が2 人以上である体制をいう イ規則第 5 条第 3 項第 1 号に規定する 職員の数 とは 一日の中で 最も職員が少ない時間帯に勤務している職員 ( 宿直勤務者を含む ) の総数を基準とす

基準19 ハロゲン化物消火設備の設置及び維持に関する基準

平成25年中には、放火自殺者を除き火災による死者は1,278人

ともに 警報を発するものをいう 第三放水型ヘッド等の構造及び性能規則第十三条の四第二項に規定する放水型ヘッド等の構造及び性能は 次に定めるところによる 一放水型ヘッド等の構造は 次によること ( 一 ) 耐久性を有すること ( 二 ) 保守点検及び付属部品の取替えが容易に行えること ( 三 ) 腐食

建築基準法第85条第4項の仮設建築物の許可基準

都市計画変更素案に関する説明会 建築規制の変更に関する説明会 特定整備路線補助 29 号線 井 東 込区間 (JR 横須賀線 区界 ) 沿道 日時 : 平成 29 年 8 3 ( ) 場所 : 品川区 伊藤 学校 前方右側に手話通訳者を配置しております 必要な方はお近くの席にお移り願います 1 本日

スプリンクラー設備の設置を要しない有床診療所 病院の考え方 ( 案 ) 資料 入院の常態化の有無 免除される対象 常態的に患者が入院していないと判断 一日平均入院患者数が 1 人未満 常態的に患者が入院していない施設 (1) 入院患者数が一日平均 1 人未満となる 1~ 床の施設 ()

湿式外断熱工法外壁の 防火性能評価に関する 基礎的研究

平成23年度事例集04

178 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 2016 小規模特定用途複合防火対象物 ( 政令別表第 1⒃ 項イに掲げる防火対象物のうち 特定用途に供される部分の床面積の合計が当該部分が存する防火対象物の延べ面積の10 分の1 以下であり かつ 300m2未満であ

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消防法 ( 抄 ) ( 昭和 23 年 7 月 24 日法律第 186 号 ) 最終改正 : 平成 27 年 9 月 11 日法律第 66 号 第 17 条 ( 消防用設備等の設置 維持と特殊消防用設備等の適用除外 ) 学校 病院 工場 事業場 興行場 百貨店 旅館 飲食店 地下街 複合用途防火対象

議のうえ統括防火管理者として選任し 防火管理上必要な業務の内容について説明をしたうえで 全体についての防火管理業務を行わせなければならない 3 前項の規定により 統括防火管理者を選任したときは 防火管理対象物における管理権原者の主要な者として を代表者として指定し 代表者名をもって届出を行うものとす

鉄道建築ニュース用原稿 「シャッター」 070928   (社)日本シヤッター・ドア協会

川越地区消防局 消防署組織図 消防局長 消防局 ( 代 ) 総務課 総務担当 消防団担当 財務担当職員担当 管理担当 予防課 予防担当 査察指導担当 保安担当 警防課 警防担当 装備担当 救急課 0

消防法令が改正され 防火防災管理体制が強化されます! ~ 消防法第 8 条の 2 統括防火防災管理者制度 ~ 近年 雑居ビル等で多くの死傷者を伴う火災が相次いで発生していることや東日本大震災での激しい揺れにより 高層ビル等において人的 物的被害が発生したことを受け 防火 防災体制を強化するために消防

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病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

リスク調査報告書(サンプル)

第 3 点検の期間点検の期間は 次の表の上欄 ( 左欄 ) に掲げる用設備等の等並びに同表中欄に掲げる点検の内容及び方法に応じ 同表下欄 ( 右欄 ) に掲げるとおりとする ただし 特殊用設備等にあっては 法第 17 条第 3 項に規定する設備等設置維持計画に定める期間によるものとする 用設備等の等

防ぐ目的で防火規制がつくられた 1666 年ロンドン大火 1871 年シカゴ大火 1906 年サンフランシスコ地震火災などを受け 米国の保険会社の協会が 建築物の火災安全性を確保するための技術基準として 建築基準を体系的に整備する活動が開始された このような防火基準の作成活動は ヨーロッパや日本にも

資料2 保育所における屋外階段設置要件について

動車車庫については 隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物との距離は2m 以上とし 各階の外周部に準不燃材料で造られた防火壁 ( 高さ1.5m 以上 ) を設けること (3m 以上の距離を確保した場合を除く ) に改める 号通知 記 2 自動火災報知設備の設置について の一部改正記 2 中

ホテル火災対策検討部会報告書 ( 概要 ) < 検討の目的及び体制 > 平成 24 年 5 月 13 日 ( 日 ) 広島県福山市において死者 7 名 負傷者 3 名が発生したホテル火災を踏まえ ホテル 旅館等の火災被害拡大防止対策及び火災予防行政の実効性向上等に関する検討を実施 予防行政のあり方に

はじめに 消防法の規定では 一定規模の建物の管理権原者は 防火管理者を定め 消防計画を作成し 防火管理上必要な業務の実施を定めています その中でも 消防計画に基づく訓練の実施は最も重要な事項です 特に特定防火対象物 ( 集会場 スーパー ホテル 病院等の不特定多数の人が出入りする施設 ) には 年

ホテル 旅館等における夜間の自衛消防訓練マニュアル 別添 1 目的このマニュアルは, ホテル 旅館等において夜間火災が発生した場合に, 宿泊者の安全確保を図るために, 自衛消防組織等が対応すべき事項を示し, 防火管理体制の充実を図ることを目的とする 2 対象このマニュアルの対象は, 新たな防火基準適

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第 3 号様式 ( 第 3 条関係 ) 不燃化推進特定整備地区整備プログラム 品川区 豊町 丁目 二葉 3 4 丁目及び西大井 6 丁目地区 平成 25 年 11 月第 1 回変更認定平成 27 年 10 月第 2 回変更認定平成 29 年 3 月 品川区

第18期火災予防審議会地震対策部会

これだけは知っておきたい地震保険

申請者等の概要 1. 申請者 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 住所 電話番号 2. 代理者 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 住所 電話番号 3. 建築主 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 住所 電話番号 4. 設計者 資格 ( ) 建築士 ( ) 登録 号 氏名 建築士事務所名 (

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(2) 路地街区 ア路地街区の内部で 防火性の向上と居住環境の改善を図るため 地区施設等に沿った建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定めることにより 道路斜線制限を緩和し 3 階建て耐火建築物の連続した街並みを形成する イ行き止まりの路地空間では 安全性の確保のため 2 方向の避難を目的とし

予防課関係の要綱,通達改正案

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目次に記述する項目を以下に示す なお目次にはページ番号を記載すること 1. 建築物の概要 1.1 建築物概要 1.2 付近案内図 1.3 建築計画概要 1.4 設備計画概要 2. 防災計画基本方針 2.1 防災計画上の特徴 2.2 敷地と道路 2.3 避難階の位置 2.4 防火区画 防煙区画 2.5

Microsoft Word - 法第43条第2項第2号許可基準

( 第二面 ) 建築設備の状況等 1. 建築物の概要 イ. 階 数 地上 階 地下 階 ロ. 建築面積 m2 ハ. 延べ面積 m2 ニ. 検査対象建築設備 換気設備 排煙設備 非常用の照明装置 給水設備及び排水設備 2. 確認済証交付年月日等 イ. 確認済証交付年月日 昭和 平成 年 月 日 第 号

申請者等の概要 ( 第二面 ) 1. 申請者 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 郵便番号 住所 電話番号 2. 代理者 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 建築士事務所名 郵便番号 住所 電話番号 3. 建築主 氏名又は名称のフリガナ 氏名又は名称 郵便番号 住所 電話番号 4. 設計者 資格

申請者等の概要 1. 申請者 氏名又は名称のフリガナ 電話番号 2. 代理者 氏名又は名称のフリガナ 電話番号 3. 建築主 氏名又は名称のフリガナ 電話番号 設計者 資格 ( 1 級 ) 建築士 ( 建設大臣 ) 登録 号 氏名 建築士事務所名 ( 1 級 ) 建築

スライド 1

民泊の安全措置の手引き ~ 住宅宿泊事業法における民泊の適正な事業実施のために ~ 平成 29 年 12 月 26 日 ( 平成 30 年 3 月 29 日改訂 ) 国土交通省住宅局建築指導課

参考資料 三郷市火災予防条例の一部を改正する条例案の素案 平成 26 年 9 月 三郷市消防本部 大規模な屋外催しにおける防火管理体制の構築について 1 改正の背景 1 京都府福知山市花火大会火災平成 25 年 8 月 15 日 京都府福知山市で行われた花火大会において 死者 3 名 負傷者 56

ごと又は施行規則第 1 3 条第 1 項第 2 号に規定する小規模特定用途複合防火対象物における特定の用途部分ごとに設置義務が生じるときも同様とする ( 報告及び公表の決定 ) 第 4 条査察員は 立入検査において 公表の対象となる違反を認めた場合は 立入検査結果通知書により署長に報告するものとする

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筒先進入技術等の伝承の一方策について

もくじ 火災の概要 第 表 火災発生状況 ( 過去 5 年間 ) 第 表 市町別火災発生状況 4 第 3 表 月別火災発生状況 6 第 4 表 出火原因別火災発生状況 7 第 5 表 覚知状況 7 救急の概要 8 救助の概要 8 第 6 表 救急発生状況 ( 過去 年間 ) 9 第 7 表 市町別救

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国土技術政策総合研究所 研究資料

隣地境界線126 第 3 章消防用設備等の設置単位 さいたま市消防用設備等に関する審査基準 消防用設備等の設置単位消防用設備等の設置単位は 建築物 ( 屋根及び柱又は壁を有するものをいう 以下同じ ) である防火対象物については 特段の規定 ( 政令第 8 条 第 9 条 第 9 条の

(100817)

消防計画

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建築防火工学 防火の概念と法令 野口貴文 防火の概念 防火対象の火災山火事 市街地火災 建物火災 危険物火災 災 川 : 洪水 火 : 山火事 リスク 災害の発生頻度 災害による損害規模 住宅火災 自動車事故 : 頻度多 損害額小原子力災害 航空機事故 : 頻度少 損害額大 建築防火の意義 枠組 (1) 建築防火広義建物火災から人命 財産を守ること狭義耐火構造や防火材料で避難ルートや防火区画を構成して火災被害を低減すること 法規 建築基準法 火災拡大 倒壊の防止と在館者の避難安全を図ること 消防法 火災の予防 感知通報 初期消火 避難誘導 防火管理 消火 救助活動を的確に実施して人命と財産を守ること

建築防火の意義 枠組 (2) 建築の要件と防火 建築防火 実務 広義 : 建築火災における人命および財産の保護定義狭義 : 建築物の防火措置 ( 耐火構造 不燃材料 ) 建築基準法仕様書規定 : 例示仕様 ( 防火材料 耐火構造 準耐火構造 etc.) 性能規定 : 耐火 区画 ( 開口部 ) 性能検証法 階 全館避難安全検証法消防法仕様書規定 : 防火管理制度 消防用設備 消火活動 救急 救助総合防災安全 ( 性能 ) 規定 : 消防防災システム 防災センター ( 性能 ) 評価法 建築行為を支える基本要件 空間 間合い ( 空と空とのつながり ) 人間 人と人との連関 時間 過去 現在 未来という時刻の連続 間 が建築防火の要 空間 人間 時間に関わる 間 の不都合 悲惨な火災 消防組織法 消防力 : 人員 ( 吏員 消防団 ) 装備 ( ポンプ車 化学車 etc.) 水利 ( 水 消火薬剤 ) 火災事例と 間 の欠如 (1) 白木屋デパート火災 白木屋デパート火災 (1932 年 死者 14 名 ) 空間 : 竪穴区画なし 人間 : 防火管理なし 時間 : 自火報なし 菊富士ホテル火災 (1966 年 死者 30 名 ) 空間 : 新館 - 旧館シャッタ開 人間 : 訓練なし 高齢者 時間 : 非常ベル鳴動 無理解 千日ビル火災 (1972 年 死者 118 名 ) 空間 : 区画不全 人間 : 防火管理良好 共同防火管理なし 時間 : 改修頻繁

火災事例と 間 の欠如 (2) 川治プリンスホテル 川治プリンスホテル (1980 年 死者 45 名 ) 空間 : 新館 - 本館防火戸なし 階段竪穴区画なし 人間 : 発見遅れ 消防計画未届 訓練なし 高齢者 時間 : ベル鳴動をテストと勘違い 屋内消火栓使用失敗 ホテルニュージャパン (1982 年 死者 32 名 ) 空間 : 区画不全 スプリンクラー不備 人間 : 訓練不徹底 外国人多く不慣れ 時間 : 通報遅れ 自火報不鳴動 明星 56 ビル (2001 年 死者 44 名 ) 空間 : 防火戸開 窓塞いでいる 人間 : 共同防火管理不履行 管理者短期に替わる 時間 : 用途変更頻繁 ホテルニュージャパン 明星 56 ビル

防火工学の歴史 (1) 大火防止の時代 (~1960 年 ) 市街地大火の撲滅 可燃物の総量規制 ( 木造追放 都市の不燃化 ) 木造モルタル塗り防火構造 市街地の大部分を占める小規模住宅 類焼防止に効果 耐火建築促進法 (1952 年 ) 防災街区造成法 (1961 年 ) 都市再開発法 (1969 年 ) 防火工学の歴史 (2) 防火工学の進展 (~2000 年 ) 耐熱ガラス 耐火シート ( 新素材 ) の登場 建設省総合技術開発プロジェクト 建築物の総合防火設計法の開発 (1982-1987) 建築基準法第 38 条に基づく建設大臣の特認 防火 防煙 竪穴などの区画規定の緩和 鋼構造の耐火被覆の低減 ( 耐火鋼の利用 ) 防火工学の歴史 (3) 性能設計の普及 (2000 年 ~) 建築基準法改正 (1998 年 ) 仕様規定から性能規定へ 仕様規定 : 建築物の構造を構成する材料工法を法定メニューから選定 性能規定 : 外力を設定し それに所定の水準で適合する材料工法を検討し 建築物の構造を決定 耐火性能検証法 非損傷性 遮炎性 遮熱性 避難安全性能検証法 階避難安全性 全館避難安全性 火災 防災計画 防災計画と損害保険 (1) 確率的な社会現象火災による損害 被害をいかに少なくするか 事故発生率 ( 死亡リスク ) に対する受忍限度 10-6 人間的尺度において無視できる 10-5 火災 社会はほとんどリスクに関心を示さない 自分にも起きると思い 安全を確認する人もいる 10-4 自動車事故 社会としてリスク低減を行う場合あり 自分に発生するものとして対策のみでなく 損害を転嫁する 10-3 一般に危険を感じ 社会としてリスク低減の対策を講じる 行動を控える 危険を覚悟で行動する

防災計画と損害保険 (2) 損害保険による保障が必要な理由 火災は絶対的に防ぎ得ない 社会的に最低限の基準は満たす 防火対策は日常は機能しない 投資には限度がある 万一の直接被害のみならず間接被害が大きい 損害保険料率の自由化 リスク リスクマネージメント 行動の結果を予測できない状態 あるいは行動に伴って不測の事態が発生する可能性がある状態 ある事態の被害 その発生確率 R= (L i P i ) R: リスク L i : 事象 i の被害 P i : 事象 i の発生確率 リスクマネージメント 設計段階リスクを捉えて対策 維持管理段階災害が起きないようにコントロール 災害発生時損害の転嫁 リスクエンジニアリング 住宅 大数の原理 多くの対象物 一火災当たりの損害は平均化 損害期待値を基に保険料率決定 特殊建築物 PML(Probable Maximum Loss) 可能性のある最大被害額 (PML) の再調達価格を基に保険料率決定 十分な防火 耐火設計 リスク小 保険金少 防火投資小 リスク大 保険金多 防火対策と火災拡大 出火消火活動自動消火設備区画 覚知 間に合う 小火 間に合わず 奏功 小火 不奏功 閉鎖 区画内火災 閉鎖失敗 拡大火災 覚知遅れ 奏功 小火 不奏功 閉鎖 区画内火災 閉鎖失敗 拡大火災 自動消火設備 ( スプリンクラー ) 火災規模の決定手段 防火区画 消火に失敗した場合の被害限定機能

建築防火対策 リスクと防火対策 パッシブ対策 小さな事故は許容するが 大きな被害に及ぶことがないようにする 初期消火対策 アクティブ対策 事故の発生を極力抑えるが 一度火災拡大になれば大きな被害を生じてしまう 火災保険 従来の火災保険 大数の原理 用途別の一律の保険料率 構造種別 スプリンクラー設備の有無 自動火災報知設備の有無 防火区画などにより割引 将来の火災保険 リスクに依存した保険料率 直接的被害 + 間接的被害 直接的被害焼損被害 消火水による被害 煙による被害 間接的被害営業停止 民事上の賠償責任 損害保険を考慮した設計 法的基準を満足 建築物の供用期間中 最小リスクになるような防災投資の計画 リスク大 = 建築物としての価値小 貸事務所建築物から予定される収入減 防火に関する法令

建築基準法の性能規定の考え方 (1) 有史以前の防火技術の発展 縄文 弥生時代 戸外での焼石を住戸内に持ち込む 簡単な炉が住居中央に作られる 竈 ( かまど ) が壁面近傍に作られる 屋根に土が載る 技術的選択 : 防火規定の始まり 建築基準法の性能規定の考え方 (2) 建築基準法の防火規定 民法 刑法の適用の判断基準を示す 民法 刑法 他人が自分に対して故意の侵害を行わない ことを実現するための基本的な法 民法 不法行為の場合における加害者の被害者に対する損害補償 刑法 業務上過失致死傷罪 建築基準法の性能規定の考え方 (3) 建築基準法改正 (1998 年 ) の過程 新技術の開発 1969 年建築基準法第 38 条に対応する防災性能委員会の設置 ( 建築センター ) 1982-1987 年の防火総プロに基づき 総合防火設計法の提案 耐火鋼の利用 アトリウム空間の蓄煙の考え方 性能的安全設計への気運高揚 建築基準法の性能規定の考え方 (4) 建築基準法改正 (1998 年 ) の過程 世界の動向 1984 年英国の Building Act における仕様的規制からの脱皮 非関税障壁の除去 木造 3 階建ての許可 アメリカ カナダを中心とする海外からの経済圧力 建築基準法の性能規定化

建築基準法の性能規定の考え方 (5) 火災安全設計における性能規定 火源の設定方法 一定の想定火源 ( 設計火源 ) 入力情報 用途 内装 可燃物 図面 空間の幾何学的情報 区画 ( 壁 床 開口部 ) の耐火性能 出力 発熱量の時間変化 (αt 2 火源 ) フラッシュオーバーの有無 出力結果 区画内全面が燃焼 区画内で燃焼がある限定された範囲で終了 区画内で燃焼は継続するが ある特定の可燃物の特有の発熱量を越えずに終了 用途 建物規模 ( 維持管理の差 ) 床面積当たりの出火頻度の変更 建築基準法の性能規定の考え方 (6) 火災安全設計における性能規定 建築の火災安全機能 日常火気に対する出火防止 安全に逃げられること ( 設計火源設定と避難安全性能検証 ) 建物の一部 全部が崩壊しないこと ( 設計火源設定と構造耐火性能検証 ) 消防活動が容易なこと 容易に延焼しないこと 検証法の制約 火災の燃焼範囲は層をまたがらない 外部開口 竪穴などを通じた上階への延焼拡大防止は常時要求される 階段等の人の利用する竪穴が煙から保護されている 消防法の性能規定の考え方 (1) 消防法と建築基準法の関連性 建築基準法 防火 耐火構造等建築構造 外壁 屋根その他の構造 開口部の防火措置 防火区画 防火壁 ( 延べ面積 1,000 m2超の木造建築物で 1,000 m2毎に区画 ) 避難 避難経路 非常用の照明装置 排煙設備 非常用エレベータ 消防法 建築基準法令による防火安全確保が前提 消防用設備等 ( 消火設備 警報設備 避難設備 ) の設置 防炎物品の使用 防火管理 ( 日常の火気管理 火災発生時の対応 ) 消防法の性能規定の考え方 (2) 消防用設備等の技術基準の体系 防火対象物の用途 規模に応じた消防用設備等の設置 維持の義務づけ 気候風土等の特殊性に応じて市町村条例で附加 具体的な規定 消防法施行令 消防法施行規則 消防庁告示 基準の特例 消防長 消防署長の権限で 特例を認めることができる 火災の発生および延焼のおそれが少なく 火災等の災害による被害を最小限度に止めることができると判断された場合 特殊の消防用設備が基準と同等以上の能力があると判断された場合

消防法の性能規定の考え方 (3) 消防用設備等の技術基準 設置の義務づけに係る基準 防火対象物の用途 規模 収容人員に対応 設置方法に係る基準 消防用設備の機能 性能に応じた設置方法 性能 機能等に係る基準 消防用設備の目的に添った性能 機能を確保するための規定 消防法の性能規定の考え方 (4) 消防用設備等の技術基準の仕様書的規定と性能規定 仕様書的規定 わかりやすい 判断レベルが明らか 個人差が生じにくい 新技術への対応に基準の改正 特例措置が必要 新技術の迅速 円滑な導入の支障 性能規定 確保すべき性能項目 性能水準 性能確認のための試験方法 測定方法 計算方法 判断基準 客観的 公平な判断が可能 誰でも利用可能な試験 検査機関が必要 情報提供の義務 新技術の円滑 迅速な導入 仕様書的規定は例示仕様として残留