平成14年1月20日

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平成14年1月20日

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

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1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

Microsoft Word ECB利下げ.doc

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

2018 年度第 3 四半期運用状況 ( 速報 ) 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に判断することが必要ですが 国民の皆様に対して適時適切な情報提供を行う観点から 作成 公表が義務付けられている事業年度ごとの業務概況書のほか 四半期ごとに運用状況の速報として公表を行うも

Microsoft Word - 20年度資産運用状況.doc

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受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし

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ファンド名説明 ifree 8 資産バランス 本を含む世界の 8 資産へ均等に分散投資します 株式および不動産投資信託に投資することで世界の経済成 の果実を享受するとともに これらとは値動きの異なる債券にも投資することで安定した収益の確保も期待できます これまで預貯 中 だったお客様が幅広く資産を分

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【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

いよぎんではじめるマネープラン

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目 次 1. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) における運用環境について 2. 平成 27 年度 ( 平成 27 年 4 月 ~ 平成 28 年 3 月 ) のポートフォリオ別の運用状況 3. ベンチマーク インデックスの推移 ( 参考 ) 被保険者ポート

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おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

目次 平成 29 年度 第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) P 2 平成 29 年度 市場環境 ( 第 2 四半期 ) 1 P 3 平成 29 年度 市場環境 ( 第 2 四半期 ) 2 P 4 平成 29 年度 退職等年金給付組合積立金の資産構成割合 P 5 平成 29 年度 退職等年金給付組合

第 1 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +1.54% 収益率 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1.02% 実現収益率 ( )) 運用収益額 +3,222 億円 総合収益額 ( ) ( 第 1 四半期 ) (+1,862 億円 実現収益額 ( )) 運用資産残高 ( 第 1 四半期末 )

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29 年以降 保有期間が短期化傾向となった背景として 日本では株価が長期に低迷したこともあって長期投資に対する不信感が強い (213 年 5 月 15 日付日本証券経済研究所杉田浩治 特別嘱託調査員 URL は後述 [ 参考ホームページ ]) と言う事もあるだろう また 前回 216 年 1 月 2

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ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

国内ラップ口座残高推移 国内ラップ口座残高は この 5 年で 10 倍超に拡大 1

2012 年 10 月 15 日号

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【34】今日から使える「リスクとリターン」_1704.indd

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 FOMC後のスペシャルレポート(USHY).pptx

日本株市場を泳ぐ 5 頭のクジラ SMBC 日興証券株式会社投資情報部 2016 年 10 月 4 日更新版

【11】ゼロからわかる『債券・金利』_1704.indd

Microsoft Word - 15_2

第 2 四半期運用実績 ( 概要 ) 運用利回り +0.09% 実現収益率 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用収益額 億円 実現収益額 ( ) ( 第 2 四半期 ) 運用資産残高 ( 第 2 四半期末 ) 357 億円 年金積立金は長期的な運用を行うものであり その運用状況も長期的に

2 / 4 < 足元の米国リート市場について > 月初来 四半期来 (2018 年 10 月以降 ) 米国リート 11.9% 10.4% 米国株式 14.7% 18.9% 2018 年 12 月 24 時点 ( 出所 ) ブルームバーグ米国株式 :S&P500 種株価指数 ( 米ドルベース トータル

PowerPoint プレゼンテーション


2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

2 / 5 ファンドマネージャーのコメント 現時点での投資判断を示したものであり 将来の市況環境の変動等を保証するものではありません < 運用経過 > ダイワ マネーアセット マザーファンドを組み入れることで 安定運用を行いました < 今後の運用方針 > 今後につきましても 安定運用を継続して行って

オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

2013 年 8 月 19 日号

個人投資家の参加拡大

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

変額年金 ( 特別勘定 ) の現況をご覧になる方に 特にご確認いただきたい事項 投資リスクについて 変額年金保険の特別勘定の資産運用は 国内外の株式および公社債 国内外のその他の有価証券 貸付金 コールローンおよび預貯金等を主な運用対象としておりますので 株価の下落や金利の変動 為替の変動などにより

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Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 USHYファンドの分配金について IM pptx

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とリスク とは とは 運用を行った結果得られる損益です 収益がプラスでもマイナスでも 投資したからの差額がとなります パターン 1 が変動せずに 利息等の収益金を得た場合 利息等 パターン2 投資した商品の価格が上昇した場合 とリスクの関係 運用するときには低いリスクで高いを得ることが最も望ましいの

果の平均は 残留が 44% 離脱が 40% と僅差ながら残留が離脱を上回っている ( 第 1 表 ) ただしここで 調査方法毎の平均をみると インターネットを通じたオンライン調査の結果 は 残留が 40% 離脱が 41% と拮抗状態にあるのに対し 電話調査では残留が 47% 離脱 が 38% と残留

資産運用関係補足説明資料

HIGHLIGHTS 2018 年の資金流入額は 3 年ぶりに 4 兆円超えも 株式相場低迷で年後半は失速 2019 年 1 月 31 日 Vol 年の ETF を除く追加型株式投信の純設定額が +4.1 兆円と 2017 年を上回り 3 年ぶりの高水準 タイプ別で見ると外国株式型が

チャート編 1 日経平均株価 ( 日経 225) TOPIX( 東証株価指数 ) 2,0 NY ダウ工業株 30 種平均株価 ( 米ドル ) ダウセレクト配当込み指数 3,000 28,000 26,000 24, ,000 26,000 2,0 20,000 1,0 24,000 1

平成23年11月1日

マネックス証券トレードステーションセミナー

フ ァ ン ド の 特 色 ハイグレード ハイグレード オセアニア オセアニ ニア ボンド マザーファンド マザーファンド を通じて オーストラリア ドル建ておよびニュージーラ ドル建ておよびニュージーランド ドル 建ての 債券等 に投資します 債券等 には コマーシャル ペーパー等の短期金融商品を

運営管理機関 : ろうきん DIAM バランス ファンド <DC 年金 >1 安定型 2 安定 成長型 3 成長型 一般社団法人投資信託協会分類 DIAM バランス ファンド <DC 年金 >1 安定型 : 追加型投信 / 内外 / 資産複合 / インデックス型 DIAM バランス ファンド <DC

スライド 1

Microsoft Word - 21年度資産運用概況.doc

海外投資家が売り越しに転じた理由としては 海外及び国内それぞれの要因が指摘できる 海外要因としては 米国の経済指標が寒波の影響もあって予想を下回るものが相次いだこと 米量的緩和縮小に伴う新興国からの資金流出やシャドーバンキング問題などを抱える中国経済の減速などに対する懸念から新興国不安が高まったこと

第1章

いよぎんではじめるマネープラン

ポイント 年の一般 NISA * 口座 18 年末に非課税期間終了へ 2 一般 NISA 開始以降の主要資産の価格推移 1.5 倍 日 米株式 1.7 倍 外国債券 1.1 倍 3 今後の運用方針 ( 投資先 ) を再検討 主な資産の方向性 ( 見通し ) 5 年間リターン実績 グローバ

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

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日本の低金利の状況が続く中 外貨の好金利で運用し 当面の間 なるべく ふやす 外貨への関心が高まっているのをご存知ですか そして将来は たくわえた資産を 実は 家計における外貨資産は20年で約4倍に増加しています 商商商商品品品品パパパパンンンンフフフフレレレレッッッットトトト 詳細は P.25-2

アジア株式が魅力的と考える背景 1 良好なファンダメンタルズ 成長性 高い収益性 財務の健全性 2 金融緩和余地は株価にプラス 3 歴史的に割安なアジア株式 4 海外の投資家心理が影響するアジア株式 ( 欧州債務問題が短期的に影響 ) 5 不安沈静化によりファンダメンタルズ回帰へ アジア企業の良好な

Microsoft Word - 49_2

資金循環統計(2016年1-3月期)

Microsoft PowerPoint - 【汎用】 USREITスペシャルレポート IM pptx

金融リテラシーと老後への準備-ライフプランの設計に必要な知識が不足している

マネーマーケットマンスリー

経済見通し

相場分析レポート 高田資産コンサル /3/29 配信 1

「個人投資家の証券投資に関する意識調査」の結果について

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

「つみたてNISA」専用商品の取扱開始について

別紙2

エコノミスト便り

2018年度年金資産運用状況(速報).pdf

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経済情報:日銀短観(2011年6月)の結果について.doc

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スライド 1

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

日本の富裕層は 122 万世帯、純金融資産総額は272 兆円

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過去のリターンが将来も続くとはかぎりません 各資産の年間リターンランキング 第 1 位 % 31.9% 45.2% 40.9% 10.7% 3.4% % 34.1% 1.9%


1 / 7 ダイワ FE グローバル バリュー ( 為替ヘッジあり / 為替ヘッジなし ) 世界的な株価下落と今後の運用方針について ~ 株価の下落が継続し 割安と思われる銘柄が増えてくれば投資のチャンス ~ 現時点での投資判断を示したものであり 将来の市況環境の変動等を保証するものではありません

レバレッジETF・インバースETFについて

平成 28 年度第 3 四半期退職等年金給付組合積立金運用状況 警察共済組合

当ページは 各種の信頼できると考えられる情報源から取得した情報に基づき アクサ生命保険株式会社が作成し提供するものです 情報の内容に関しては万全を期しておりますが その正確性 完全性については これを保証するものではありません 日本株式市場 運用環境 [ 2015 年 4 月 ~2016 年 3 月

Transcription:

平成 19 年 (27 年 )9 月 27 日 NO.27-12 足元の金融市場の動揺が わが国の 貯蓄から投資 に与える影響について ~ 相場下落が長引けば要注意だが 現時点では影響は軽微 7 月下旬以降 米国のサブプライムローン問題を機に世界の金融市場が大きく動揺した わが国において 貯蓄から投資へ の流れが本格的に進展し 個人金融資産に占めるリスク性資産の割合が徐々に高まるなか 個人がこうした相場変動によって受ける影響はこれまでにも増して大きくなっている そこで 足元の金融市場の動揺が わが国における 貯蓄から投資へ の流れにどのような影響を与えているのか 考察してみた 1. 価格下落の下でも続いたリスク性資産への資金流入 7 月下旬以降の相場の変動によって わが国の個人投資家が保有するリスク性資産のほとんどが価格下落に見舞われた 国内株式 ( 東証株価指数 ) はピーク時から最大で 13% 下落したほか 海外の株式 債券への投資も 円ドル相場の変動 ( 最大 8% の円高進行 ) もあって 円換算後のベースでみて海外株式は最大 18% 海外債券は最大 7% の調整を余儀なくされた ( 次頁第 1 図 ) ごく足元では FRB( 米国連邦制度準備理事会 ) による大幅利下げが市場で好感され内外金融市場の動揺は幾分沈静化しているが 国内株式 海外株式 海外債券いずれの資産についても 今回の相場下落前の水準を依然として回復し切れていない 1

( 相場ピーク時 = 1) 第 1 図 : 内外の相場環境の推移 1 95 9 85 海外債券 ( 円換算後 ) 海外株式 ( 円換算後 ) 国内株式 海外債券 ( 円換算後 ): ピーク時から 2% ( ボトム時には 7% を記録 ) 海外株式 ( 円換算後 ): ピーク時から 6% ( ボトム時には 18% を記録 ) 国内株式 : ピーク時から 1% ( ボトム時には 17% を記録 ) 8 7/4 7/5 7/6 7/7 7/8 7/9 ( 注 ) 用いた指標は以下 海外指数については 円換算後のベース 海外債券 =シティグループ世界国債インデックス ( 除く日本 ) 海外株式 =MSCI 世界株価指数 ( 除く日本 ) 国内株式 =TOPIX( 東証株価指数 ) ( 資料 )Bloombergより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 しかし こうした逆風下にあっても リスク性資産への資金流入は堅調に推移し わが国の 貯蓄から投資へ の流れに目立った変化はみられなかった ( 注実際 資産価格が急落した 8 月分の資金流入状況をみると 株式投資信託 1) には 1 兆円を上回る流入がみられたし ( 第 2 図 ) 国内株式市場でも個人が久方ぶりの大幅買い越しに転じた ( 次頁第 3 図 ) ( 注 1) ここでいう 株式投資信託 には 海外の債券に投資するタイプのものも含まれている ( 億円 ) 2, 第 2 図 : 投資信託への資金流入 18, 16, 14, 12, 1, 8, 6, 4, 2, -2, 1/8 2/2 2/8 3/2 3/8 4/2 4/8 5/2 5/8 6/2 6/8 7/2 7/8 ( 注 )ETF 以外の株式投資信託への資金流入額 ( 資料 ) 投資信託協会資料より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 2

( 億円 ) 6, 5, 4, 第 3 図 : 国内株式市場における個人の買い越し額 ( 年初以降 ) ( 円 ) 個人の買い越し額 ( 左目盛 ) 18,5 18, 3, 2, 17,5 1, 17, -1, -2, 16,5-3, -4, 16, 1Ⅰ 1Ⅲ 1Ⅴ 2Ⅱ 2Ⅳ 3Ⅱ 3Ⅳ 4Ⅱ 4Ⅳ 5Ⅱ 5Ⅳ 6Ⅰ 6Ⅲ 7Ⅰ 7Ⅲ 8Ⅰ 8Ⅲ 8Ⅴ 9Ⅱ ( 注 ) 個人の買い越し額は3 週移動平均 投信経由での買い越しは除く ( 月 / 週 ) ( 資料 ) 東証 投資部門別売買動向 より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 2. 資金流入持続の背景 (1) 個人投資家特有の 押し目買い スタンス 価格下落の下でもリスク性資産への資金流入が続いた要因の一つに 価格下 落直後は 直近高値との対比で相場が割安にみえるため 個人が追加投資に踏 み切る傾向 ( いわゆる 押し目買い ) が強いことが挙げられる 第 4 図 次頁 第 5 図は 個人や投信によるリスク性資産の売買状況をみたものだが いずれ も株価が大きく下落したタイミングで 個人 投信経由での資金流入が膨らん でいるのがわかる ( 億円 ) 1, 8, 6, 4, 2, -2, -4, 第 4 図 : 個人 投信による日本株の買い越し状況 (21 年以前 ) バブル崩壊前後 買い越し額 ( 左目盛 ) ( 円 )( 億円 ) 4, 5, 38, 36, 34, 32, 3, 28, 26, 24, 22, 4, 3, 2, 1, -1, IT バブル崩壊前後 買い越し額 ( 左目盛 ) ( 円 ) 21, -6, 2, -2, 9, 89/4 89/7 89/1 9/1 9/4 9/7 9/1 91/1 99/4 99/8 99/12 /4 /8 /12 1/4 1/8 1/12 ( 注 ) 上記の2つの局面では 個人投資家のリスク性資産投資は日本株が大半 (9 割前後 ) であったため 日本株の買い越し状況をもってリスク性資産への投資とした ( 資料 ) 東証 投資部門別売買状況 日本経済新聞社公表データより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 19, 17, 15, 13, 11, 3

( 億円 ) 3, 25, 2, 15, 1, 5, 第 5 図 : 株式 投信への資金流入額 (26 年以降 ) 資金流入額 ( 左目盛 ) ( 円 ) 18,5 18, 17,5 17, 16,5 16, 15,5 15, -5, 14,5 6/1 6/3 6/5 6/7 6/9 6/11 7/1 7/3 7/5 7/7 ( 注 ) 国内株式の個人買い越し額 + 投資信託 ( 国内だけでなく海外に投資するものも含む ただし ETFを除く ) への資金流入額の合計 足元では 個人投資家の海外投資が活発化しているため 海外投資分もリスク性資産への投資に含めた ( 資料 ) 東証 投資家別株式売買状況 投資信託協会 投資信託 より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 (2) 良好な相場環境が 貯蓄から投資へ の裾野拡大を後押し加えて 個人の資産運用において収益性を重視する傾向が徐々に高まり リスク性資産投資の裾野が拡大していることも 活発な資金流入の大きな要因だ なかでも 5 歳以上の世代で収益性志向が強まっており この世代が実際にリスク性資産への投資に踏み切ったことが 貯蓄から投資へ を大きく進展させている ( 第 6 図 ) 第 6 図 : リスク性資産投資に対する個人のスタンス (%) 金融資産運用において収益性を重視する層の比率 (%) リスク性資産保有比率 2 22 19 18 17 4 歳代以下 5 歳代以上 2 18 4 歳代以下 5 歳代以上 16 15 16 14 14 13 12 12 11 1 2 21 22 23 24 25 26 2 21 22 23 24 25 26 ( 年 ) ( 年 ) ( 資料 ) 金融広報中央委員会 家計の金融資産に関する世論調査 より三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 4

こうした裾野拡大の背景には 24 年以降 リスク性資産の時価変動による損益が 投資のタイミングを問わずほとんどの場合でプラスだったことが大きく影響している ( 第 7 図 ) 1 国内経済が安定成長を辿り わが国株価に目立った下落がなかった 2 個人投資家による海外投資が増加し 円安の進行や世界の株高の恩恵を享受できた ためだ 特に 5 歳以上の世代は若年層と比べて相対的に金融資産保有額が大きく 一方で日銀による低金利政策のもと 預金金利が低位で推移していたため 収益性志向が強くなりやすかったとみられる こうしたもとで リスク性資産投資はバブル期以来の良好な収益環境にあったため その分 投資家のマインドが積極化しやすかったといえよう (%) 第 7 図 : 個人のリスク性資産投資における年間損益率 6 4 2-2 -4 81 82 83 84 85 86 87 88 89 9 91 92 93 94 95 96 97 98 99 1 2 3 4 5 6 7 ( 年 ) ( 注 ) 海外株式 海外債券 国内株式の3つの資産の年間収益率がインデックスの動きと同じと仮定し 当室にて推計した3 資産毎の個人の保有金額に応じてウェイト付けしたもの ( 資料 )Bloombergデータより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 なお 銀行による投資信託販売が本格化し 投資チャネルが多様化したことも 裾野拡大に果たした意義は大きい ただし 41K( 確定拠出年金 ) やIRA ( 個人退職勘定 ) など 税制上の優遇措置を伴う様々なルートを通じてリスク ( 注 2) 性資産に資金が流入している米国と比べると わが国ではこうした安定的な流入パイプ構築に向けての制度整備は依然として発展途上の段階だ このため 貯蓄から投資へ の動きは 市場環境次第の面が大きいといえよう ( 注 2) 米国では 家計の投信保有残高のうち 41K と IRA を通じた分が 4 割近くを占めるに至っている 5

3. 今後の先行き ~ 当面は堅調推移 ただし 相場の調整が長引けば要注意 当面は 貯蓄から投資へ の動きは堅調に推移しよう まず 大前提となる相場環境については 株安 円高が再燃 長期化する可能性は現時点では限定的とみられる 1 米国経済減速の影響を その他の地域がカバーすることで 世界経済の高成長が続く 2わが国では企業収益との対比で株価をみると割安感が強まっており ファンダメンタルズの面からはこれ以上の下落余地が小さくなっている 3 海外への投資収益を大きく変動させる為替相場についても 引き続き海外との金利差が続くとみられることに加え 積み上がっていた投機筋の円売りポジション解消の動きがほぼ一巡したことで 投機的な要因で円高が進行する余地が小さくなってきている ためである ( 第 8 図 ) こうした相場展開を前提とした場合 前述のように (1) 短期的な相場の調整は 個人投資家にとっては 押し目買い のチャンスとなる (2) 投資家の裾野が広がっている といった点を踏まえれば 貯蓄から投資への流れが目先に変調をきたす可能性は小さいだろう ( 前年比 %) 6 世界経済の成長率の推移 ( 倍 ) 33 第 8 図 : 経済 金融市場の特徴予想 PER( 株価収益率 ) の推移 ( 万枚 ) 2 シカゴ通貨先物における投機筋の円売りポジション ( 円 / ドル ) 125 5 4 3 2 19 割 1 17 安 15 91 93 95 97 99 1 3 5 7 3/9 4/3 4/9 5/3 5/9 6/3 6/9 7/3 7/9 ( 注 )27 年 28 年は経済調査室見通し ( 年 ) ( 注 )PER= 株価 / 一株当たり予想収益 ( 一部地域はIMFの見通しを使用 ) 対象は東証一部上場銘柄 ( 資料 )IMF World Economic Outlook より ( 資料 ) 日本経済新聞社公表データより 三菱東京 UFJ 銀行経済調査室 三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 31 29 27 25 23 21 割 高 15 1 5-5 -1 ポジ円ショ売りン ポジ円ショ買いン 投機筋のポジション ( 円買い ) 円ドル相場 ( 右目盛 ) 12 115 11 15 1 4/11 5/3 5/8 5/12 6/5 6/1 7/2 7/7 ( 資料 )CFTC 公表データより三菱東京 UFJ 銀行経済調査室作成 ただし 先般の FRB による大幅利下げにもかかわらず ファンドの破綻や欧米投資銀行の格下げなどを通じ世界的な信用収縮が拡大 世界経済のファンダメンタルズにも波及してくれば 相場の調整が長引く虞がある この場合は いったん 貯蓄から投資へ の動きが足踏みする可能性が大きい 前掲第 4 図からも明らかな通り 199 年のバブル崩壊や 2 年の IT バブル崩壊の際の株価急落時にも 3~6 ヵ月程度は個人 投信による押し目買いがみられたが その後はこうした動きが影を潜めた 今回局面では確かに個人投資家の裾野が拡大しているとはいえ その背景に良好な相場環境があった点を踏まえると 相 6

場が長期低迷局面に入ってしまえば裾野拡大の動きそのものが鈍りかねない こうしてみると 貯蓄から投資へ の動きは 依然として市場環境に左右さ れる面も大きく 当面の市場の動きから目が離せない 以 上 (H19.9.27 森祥人 ) 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 何らかの行動を勧誘するものではありません ご利用に関しては すべてお客様御自身でご判断下さいますよう 宜しくお願い申し上げます 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが 当室はその正確性を保証するものではありません 内容は予告なしに変更することがありますので 予めご了承下さい また 当資料は著作物であり 著作権法により保護されております 全文または一部を転載する場合は出所を明記してください 発行 : 株式会社三菱東京 UFJ 銀行経済調査室 1-8388 東京都千代田区丸の内 2-7-1 7