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Transcription:

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調査の背景 1 自殺者の 90% は何らかの精神疾患を有していたと推測されている その主要は 気分障害 ( 躁うつ病等 ) 統合失調症 人格障害 アルコール依存症 薬物依存等である 2 このため 地域の精神障害者支援施設では 支援者が利用者の自殺に遭遇することが稀ではないと思われるが その実態についての情報は乏しい 3

調査の背景 3 自殺対策加速化プラン * における これら精神疾患による ハイリスク者 対策の一層の推進 *(H20 年 10 月 31 日内閣府 自殺総合対策会議 決定 ) 4 1 人の自殺が 少なくとも周囲の6 人に深刻な影響を与える * *( WHO フ ライマリ ヘルスケア従事者のための手引き ) 自殺対策の結実には継続的な取り組みが必要であり そのためには 支援者の支援 の視点も重要である 4

調査目的 1 東京都多摩地域の精神障害者支援施設での自殺の実態を知る 2 自殺事例を経験した支援者の支援ニーズを把握する 3 調査結果を 研修 技術援助 リスクマネージメント用教材作成等の施策拡充に活かす 4 調査を通じ 自殺問題や精神保健福祉センター及び東京都の自殺総合対策について普及啓発を行う 5 自殺問題への支援者の意識を高め 利用者および支援者自身等のサポート体制の充実を図る 5

調査対象 東京都多摩地域の精神障害者支援施設計 170 施設 (( 小規模 ) 通所授産施設 共同作業所 日中活動事業所 相談支援事業所 グループホーム 生活訓練施設 ) ただし 平成 20 年 12 月現在 東京都精神保健福祉民間団体協議会加盟の 4 団体 * に加盟する施設 * 東京都地域生活支援センター連絡会 東京都精神障害者授産施設連絡会 東京都精神障害者共同作業所連絡会 東京都精神障害者共同ホーム連絡会 6

調査方法 アンケート記入方式 ( 記名式 ) 調査票 Ⅰ( 共通項目 ) 支援施設の概要( 登録利用者数 利用者の疾患構成 職員数等 ) 自殺の発生状況及び発生時の対応 当センターへの要望等 調査票 Ⅱ( 事例調査 ) 自殺事例の概要( 年齢 性別 疾患名 自殺前後の状況等 ) 利用者の自殺が支援者に与える影響 利用者の自殺を経験した支援者の支援ニーズ等 7

回答率 調査票送付施設数 :170 施設 調査票 Ⅰ( 共通項目 ) 回答施設数 ;117 施設 ( 回答率 :68.8%) 調査票 Ⅱ( 事例調査 ) 自殺事例報告数 ;18 8

調査結果 東京都多摩地域における 精神障害者支援施設での自殺の実態 ( 調査票 Ⅰ( 共通項目 ) より ) 9

平成 18 年 4 月から平成 20 年 12 月までの自殺者数 ( 調査対象期間 :2 年 9 か月 ) 全体通所系入所系相談系 自殺者数計 23 11 4 8 年換算 8.4 4 1.5 2.9 単位 : 人 注 ) 通所系施設 : ( 小規模 ) 通所授産施設 共同作業所入所系施設 : グループホーム 生活訓練施設相談系施設 : 相談支援事業所 日中活動事業所 10

利用者 10 万人あたりの自殺者数 全体通所系入所系相談系 施設利用者 10 万人あたりの自殺者数 ( 推計値 ) 185.1 人 170.4 441.2 156.8 多摩地域の人口 10 万人あたりの自殺者数 : 19 人 多摩地域の精神障害者 10 万人あたりの自殺者数 ( 推計値 ): 288 人 単位 : 人 多摩地域において 支援施設利用者 10 万人あたりの自殺死亡率 185 人は 人口 10 万人あたりの自殺者数に比べると多い しかし 精神障害者 10 万人あたりの自殺者数に比べると少ない 支援施設につながっていること 精神障害者の自殺防止に効果がある? 11

施設あたりの自殺発生率 ( 年換算 ) 全体通所系入所系相談系 自殺者数 ( 年換算 ) 8.4 4 1.5 2.9 回答施設数 117 59 39 19 施設あたりの自殺発生率 ( 件 ) 0.07 0.07 0.04 0.15 上記の数値が示唆すること 全体では約 14 年に 1 件 (10 年で 1 件弱 ) 利用者の自殺が発生している 自殺発生率の高い相談系施設では 約 6~7 年に 1 件 自殺事例に遭遇する 東京都多摩地域の精神障害者支援施設全体に適用すると 170 x 0.07=11.9 ** 毎月 どこかの支援施設で 利用者の自殺が発生している 地域の精神保健福祉の現状を示す指標として 見過ごせない数値である! 12

自殺事例の分析 ( 調査票 Ⅱ( 事例調査 ) より ) 13

報告事例数 全体 :18 事例内訳 ; 通所系施設 9 事例入所系施設 3 事例相談系施設 6 事例 14

自殺時の年齢 自殺時年齢 人数 20 代 4 30 代 9 40 代 1 50 代 2 40 代, 5.6% 50 代, 11.1% 60 代以上, 11.1% 20 代, 22.2% 60 以上 2 計 18 30 代, 50.0% 15

事例の男女比 性別 人数 女 22% 男 14 女 4 計 18 男 78% 16

事例の疾患 非定型 6% 疾患名 人数 統合失調症 15 うつ 11% うつ うつ状態 2 非定型精神病 1 計 18 統合失調症 83% 17

支援施設の利用期間 利用期間 人数 ~6 か月 6 7 か月 ~1 年 3 1 年 1 か月 ~2 年 1 2 年 1 か月 ~3 年 0 3 年以上 8* 計 18 * 入院による利用一時中断を経て 利用再開後 1 年以内に自殺した 3 事例を含む これらの事例を加算すると 利用開始 1 年以内の自殺事例は 12 名 (67%) となる 1 年 1 ヶ月 ~2 年 6% 3 年以上 44% 7 ヶ月 ~1 年 17% ~6 ヶ月 33% 18

自殺企図歴 自殺企図 人数 施設利用期間中 3 以前の履歴 6 なし 3 不明 5 その他 1 計 18 不明 28% その他 5% なし 17% 施設利用期間中 17% 以前の履歴 33% 19

月別自殺死亡者数 6 5 4 3 2 1 0 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 人数 5 2 1 1 0 0 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 人数 1 0 2 2 3 1 20

罹病期間 罹病期間 人数 5 年未満 2* 5~10 年 1 10~20 年 7 20 年以上 3** 不明 5 計 18 * うつ状態 (1 人 ) を含む ** 非定型精神病 (1 人 ) うつ病 (1 人 ) を含む 不明 28% 20 年以上 17% 5 年未満 11% 5~10 年 11% 10~20 年 33% 注 ) 発病から自殺までの罹病期間 ( 推定値 )( 調査票 Ⅱ( 事例調査 ) 設問 6 の回答 と 自殺時の年齢 から推測 ) 21

自殺前 1 か月間の状況施設利用状況 未記入 6% 施設利用状況 人数 定期的参加 7 休みがち 4 引きこもり 連絡あり 0 不明 0 その他 33% 定期的参加 39% その他 6 未記入 1 休みがち 22% 22

自殺前 1 か月間の状況生活面の変化 生活面の変化 人数 大きな変化 3 軽度の変化 2 変化気づかず 8 不明 3 その他 1 未記入 1 その他 5% 不明 17% 未記入 6% 変化気づかず 44% 大きな変化 17% 軽度の変化 11% 23

自殺前 1 か月間の状況病状の変化 病状変化 人数 未記入 6% 重度悪化 4 軽度悪化 2 悪化なし 3 長期欠席にて不明 5* 不明 1 その他 2 未記入 1 不明 5% その他 11% 長期欠席 不明 28% 重度悪化 22% 悪化なし 17% 軽度悪化 11% * この中の 2 事例は 経過記録から病状悪化の可能性があった 24

自殺前 1 か月間の状況受療状況 受療状況 人数 その他 5% 未記入 6% 通院中 服薬不規則 5% 通院 服薬中断 0 通院 服薬とも不規則 0 通院中 ただし服薬不規則 1 不明 17% 通院 服薬とも規則的 12 不明 3 通院服薬 規則的 その他 1 67% 未記入 1 25

自殺発生時の取り組み 法人への事故連絡 利用者への配慮 所管行政機関への連絡 デスカンファレンス ( 事業所内 ) 研修受講 遺族への配慮 行う行わない未定 NA 専門職への依頼 デスカンファレンス ( 外部含む ) グリーフケア 0% 20% 40% 60% 80% 100% 26

利用者の自殺が担当職員に及ぼす影響 Ⅰ 自殺以前の自分の支援内容を悔やむ気分の落ち込み疲労感や脱力感対象事例のことが突然思い浮かぶ自分を責める睡眠の障害自分の無力感に襲われるいらいらや怒りがわく突然 涙が出る現実感がわかない ( 離人感 ) 対象事例や自殺に関わるものを避ける傾向注意力や集中力の低下口数が減少したり 表情が乏しくなった他の職員との関わりを避ける傾向対象事例に関することや自殺当日の記憶の欠落突然の強い不安感 ( パニック発作 ) 動悸がしたり 呼吸が苦しい 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 27

利用者の自殺が担当職員に及ぼす影響 Ⅱ ストレス症状の数 人数 0 1 1~2 4 3~4 5 7~8 17% 9 以上 11% 0 5% 1~2 22% 5~6 3 7~8 3 9 以上 2 5~6 17% 3~4 28% 28

利用者の自殺を経験した担当職員への支援で必要と思うこと 及びその実施の可能性 職員の心身の調子に気を配りあえること 職員が 自分の気持ちを同僚や友人 家族等に話せているかどうか をさりげなく確認すること 職場で事例検討 ( テ ス カンファレンス ) を行い 経過と感情を共有しあうこと 心身の不調が著しい もしくは長引く場合 専門家の治療や支援を 職場が勧めること 動揺や心身の不調が見られる場合 勤務の軽減や休暇取得を 職場が勧めること 実施 + 可能 困難 + 不可能 NA 利用者を自殺でなくした経験のある職員 ( 他事業所含む ) と語り合う機会をもつこと 利用者を自殺でなくした時の対応について研修を職場で行うこと 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% 29

自殺問題に関して 多摩総合精神保健福祉センターに期待する取り組み 自殺念慮のある人の相談地域関係機関職員を対象とした自殺対策の研修自殺未遂者の相談自死遺族の相談自殺事例に関する 法律面も含めた精神保健相談や技術援助地域の機関職員対象の自殺事例検討 ( デス カンファレンス ) 実施の援助地域の機関職員を対象としたグリーフケアサポート自死遺族が集う場や機会の提供自殺問題に関する精神障害者支援機関の連携会議の開催自死遺族支援に関する地域関係機関職員の研修自殺問題に関するリーフレット配布自殺問題に関する調査研究自殺問題についてのホームページ等での広報 0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 30

当調査のまとめ 多摩地域の精神障害者支援施設について 以下が示唆された 支援施設全体での 施設あたりの自殺発生率 1 か月に約 1 件 毎月 どこかの施設で自殺が発生している! 自殺死亡率 ( 多摩地域人口 10 万人あたりの自殺者数 ) 都民の自殺死亡率 19 人 * 支援施設利用者の < < 自殺死亡率 185 人 * 精神障害者全体の 自殺死亡率 288 人 *( 推計 ) (* 人口 10 万人あたり ) 31

当調査のまとめ 事例調査では 20 代から 30 代 男性 統合失調症 支援施設利用 1 年未満 秋から冬での自殺 という特徴があった 利用者の自殺は施設職員の心身や日常業務に強い影響を与える しかし 現状では 支援体制は十分ではない 自殺問題に関し 支援ニーズがあっても支援施設が取り組み困難な対策等が明らかとなった 32

今後の課題 1 自殺リスクへの対応機能の向上 ガイドラインと対応マニュアルの作成 精神保健福祉センターや東京都が提供する研修体系の見直し 2 自殺発生から施設機能回復までの緊急時への対応 外部機関介入のシステム化 3 自殺 事故等の日常的危機管理機能の向上 4 精神保健福祉センター職員の資質向上と人材の確保 33

おわりに 当調査にご協力いただいた東京都精神保健福祉民間団体協議会加盟 4 団体に加盟の精神障害者支援施設 市町村 保健所の皆様に感謝を申し上げます 34