1. 学習指導案は, 何のために書くのか? 2. 小学校での学習指導案例 3. 中学校での学習指導案例 4. 学習指導案作成のポイント
学習指導案は, 何のために書くのか? 教育実習での学習指導案の作成 校内研究での学習指導案の作成 研究発表会での学習指導案の作成 さまざまな場面で学習指導案が作成されます そもそも, 学習指導案は, 何のために書くのでしょうか 学習指導案は, 授業の設計図学習指導案は, 授業の設計図であるとか, 航海図ともいわ れます 本来, 学習指導案は校内研究や研究発表があるから 書くのではなく, 授業そのものの質を高め, 授業の方向を確 かなものとするために書かなければならないものです また, 授業の主人公は子どもたち自身です 子どもたちの 確かな学びを保障するためにこそ, 学習指導案は書かれなけ ればならないと思います 学習指導案を書きながら, 教材の内容が深く理解できたり, 指導内容の系統を改めて理解できたりするということがよくあります すでに深まった教材理解や 解釈を学習指導案に書くというより, 学習指導案を書くことにより, 教材理解 解釈がさらに深ま るという一面は見逃せないことです また, 同じように学習指導案を書くことにより, 改めて子どもたちの実態を捉えなおしたり, 子 どもたちの課題を再認識したりすることがあります すでに十分に把握された子どもたちの実態や 課題を学習指導案に書くというより, 学習指導案を書くことを通して, 子ども理解をさらに深める ということも現実としては, よくあることではないでしょうか 学習指導案は, 授業の設計図であり, 航海図でもあるとすでに述べました また, 深い教材理解 の項で, 教材を 山 に例えると 授業 は, 子どもたちとともに 山に登る こ ととして捉えられるとも書きました 学 習指導案の中に教材の見所や 危険箇所 ( 子どもたちの躓きやすい箇所 ) を明示し, その躓きを克服するための方法を事前に 明らかにすることにより, 学習指導案は, 子どもたちにとっての安全な 山登り を保障する道標となります 授業深子どもたちの確かな学びの方い向か教をな材確か理を学習指導案な解確高授業の質ものにするめる授業の設計図 航海図 高まり合う学習集団づくり 指導法豊かな子ども理解
学習指導案を作成する上で, 大切にしたいこと学習指導案は, 授業力を支える大きな力となるものです 作成に当たって何よりも大切にしたいのは, 豊かな子ども理解です 目の前にいる子どもたちを豊かに理解してこそ, 子どもたちの置かれている状況から出発し, 子どもたちに届く教育実践が可能となるからです その意味において, 学習指導案は, 子どもたち一人ひとりの実態を踏まえた, オーダーメイドであるべきです また, 教材に対する理解 解釈や指導法について, 学習指導案に記述することにより, 改めて, 教材に対する認識や理解を深めたり, 子どもたちの実態に即した指導法を吟味したりすることができます 一方, 子どもたちの視点から教材を捉え直すことにより, 教材に対する理解や指導法に対する吟味が深まるのではないでしょうか さらに学習指導案に 学級 を 学習集団 に高めるための取組を記述することにより, 改めて子どもたちの実態を見つめ直すことができます 以上のような視点を学習指導案に記述することが, 自らの授業力を高めるために役立つばかりでなく, 学校として研究を推進していく上で, それぞれの個々の取組を学校組織として共有し, 組織として実践を積み上げる上で重要な意味をもちます 授業力を高めるための特効薬や即効薬はないかもしれません しかし, 学習指導案を可能な限り書き続けることで授業力が高まることは, はっきりと断言できることです 次に, 小学校, 中学校の学習指導案の一例を示しながら, 学習指導案を作成する上で大切にしなければならない内容について述べます 学習指導案の中に 授業力を高めるための4つの視点 に関する内容や校内研究を進める上で大切な内容については, 視点 1 より豊かな子ども理解のためにのように示しました 学習指導案を作成する上で必要な観点として意識していただきたいと思います カリキュラム開発支援センターの活用京都市総合教育センター 3 階のカリキュラム開発支援センターには, 現在およそ1 万点の学習指導案が集められています 京都市立の幼稚園, 小学校, 中学校, 総合養護学校の研究発表会や校内の研究会などで作成されたものです それぞれの学習指導案は, 教科 学年ごとに分類され, 取り出しやすいようにファイリングされており, 校種ごとの目録もあります また, これらを活用して学習指導案の作成等ができるように, 光京都ネットに接続できるコンピュータ, カラーコピー機, 大判カラープリンタなども設置しています 平日の夜間や土曜日には, 学習指導案の作成等のためにカリキュラム開発支援センターに京都市立学校の多くの教員が来室されています 校内研究での学習指導案の作成や日々の学習指導案の作成にカリキュラム開発支援センターの学習指導案をご活用ください
小学校での学習指導案例 科学習指導案 指導者 1. 学年 組 2. 単元名 3. 教材名 4. 単元の目標 5. 単元の評価規準 6. 児童の実態と指導 支援視点 1 より豊かな子ども理解のために 1 児童の実態 ( 焦点化された子どもたちを中心に ) 子どもたちの現時点での姿を正しく受け止めるために 子どもたちの背景を共感的に豊かに受け止めるために 2 指導課題 子どもたちの実態を踏まえ, 本単元を通して育てたい子どもたちの姿を明確にする 3 学級 を 学習集団に高める ための指導の経過視点 4 高まり合う学級集団づくりのために 学級目標の具現化に向けた取組について 学びのしつけ の具現化に向けて 7. 教材観視点 2 より深い教材理解のために 1 教材の系統を明らかにするために 2 教材の背景にあるもの明らかにするために 3 子どもたち自身の実態から教材を捉えなおすために 豊かな子ども理解が, 深い教材理解 解釈を支える 8. 研究テーマに関わって校内の研究テーマに迫るために 1 研究テーマから見た子どもたちの現状 2 本単元を通して育てたい子どもたちの姿 3 指導上, 特に留意したいこと 9. 指導計画と評価の手がかり視点 3 確かな指導法を高めるために 1 単元全体を通して子どもたちの育てたい姿 2 単元全体の指導計画と評価規準いわゆる 指導と評価の一体化をめざして 3 具体的な評価の方法 10. 本時の目標 ( 本時の指導を通して育てたい子どもの姿を具体的に書く ) 11. 本時の展開 ( / ) 視点 3 確かな指導法を高めるために 学習活動予想される児童の反応主な発問と指導 支援指導上の具体的な留意点 学習活動の中で研究テーマに迫る内容を具体的に明示する 予想される児童の反応を具体的に明示する 子どもたちに対する主な発問を具体的な言葉で明示する 指導 支援を具体的に明示する 導入の場面で, 興味関心を高めるための具体的な手立て を することにより, 興味関心を高める
学習意欲を高めるために, 子どもたちとともに具体的な学習課題を設定する 学び方を学ばせるために, 子どもたちとともに学習課題に迫るための具体的な学習方法を明らかにする A の評価の具体的な子どもの姿 子どもたちの実態を思い浮かべながら具体的な指導 支援を指導案作成の段階で準備し, 記述する 子どもたちの実態に即して, 有効な個別指導を事前に考えておき, 記述する 指導と評価の一体化をめざして B の評価の具体的な子どもの姿 学習指導案を作成する! 学習課題の意味や内容についての理解を十分に深める 子どもたち自身が学び方を学ぶという視点を大切にする 指導すべきことを指導しきるために 指導すべきことを指導しきるための具体的な手立てを明示する 学習上気がかりな子どもの想定される躓きに対して事前に手立てを準備しておく で躓いた場合, の手立てを打つことにより, できるようにする C の状況の子どもへの具体的な働きかけ * 具体的な指導内容 * 具体的な指導方法 12. 板書計画学習の流れを構造的に提示するために 1 計画的な板書 場面ごとの板書計画を書き分ける 導入の段階での板書 展開の段階での板書 まとめの段階での板書 2 学習の課題を明確にする板書 3 子どもたちの思考を支える板書 4 学習の流れを構造的に提示する板書 5 学習意欲が継続しにくい子どもたちに配慮した板書 板書 1 導入の場面の板書計画 学習の意欲を高める板書 学習課題を明確にする板書 学習方法を明確にする板書 板書 2 展開の場面の板書計画 学習の流れを構造的に提示する板書 子どもたちの思考を支える板書 学習意欲が継続しにくい子どもたちに配慮した板書 * 板書としては,1 枚のものですが, より構造的なものにするために, 意図的に場面に分けて板書計画を立てることが大切です 板書 3 まとめの場面の板書計画 学習を通して学び合ったことを確認できる板書 学習課題と関連させ, 学習のまとめを明確にできる板書 学んだ内容を今後の学習に生かせる板書
中学校での学習指導案例 科学習指導案 指導者 1. 指導日時 2. 指導学年 3. 指導単元名 4. 指導単元の目標 1 本単元を通して生徒たちに育てたい力 2 本単元を通して理解させたい内容 3 本単元を通して考えさせたい内容 4 本単元を通して気づかせたい内容 5. 教材観視点 2 より深い教材理解のために 1 教材の系統を明らかにするために 2 教材の背景にあるもの明らかにするために 3 生徒たち自身の実態から教材を捉えなおすために 豊かな生徒理解が, 深い教材理解 解釈を支える 6. 生徒観 ( 生徒の実態と分析 ) 視点 1 より豊かな子ども理解のために 1 生徒たちの実態 ( 焦点化された生徒たちを中心に ) 教科の指導内容に関する生徒たちの現時点での姿を正しく受け止めるために 生徒たちの背景を共感的に豊かに受け止めるために 2 学級 を 学習集団に高める ための指導の経過視点 4 高まり合う学習集団づくりのために 目標の具現化に向けた取組について 学びのしつけ の具現化に向けて 7. 指導観視点 3 確かな指導法を高めるために 1 生徒たちの実態を踏まえ, 本単元を通して生徒たちに育てたい力について 2 本単元を指導する上で大切にしたい指導意図について 3 本単元を指導する上で大切にしたい指導法や指導形態について 8. 本単元評価規準 ( 社会科を例に ) 本単元の評価規準を観点ごとに明確にするために社会的事象への社会的事象についての社会的な思考 判断資料活用の技能 表現関心 意欲 態度知識 理解 9. 指導計画 評価 の学習指導計画例配当時間 ( 単位時間 ) 教科書関連頁 ( ) 各指導時間の評価規準を明らかにするとともに,Cの状況の生徒への手立てを明らかにすることにより, 指導と評価の一体化を図るとともに, 指導すべき内容を指導しきる 学習事項 評価規準 ( 学習のねらい ) 判定のための基準 ( おおむね達成した状況 B) C の状況の生徒への具体的な手立て
10. 本時の目標 学習指導案を作成する! 11. 本時の評価 ( 例 ) 学習観点内容関思技知 評価規準 判定のための基準 Aの基準 Bの基準 C の状況の生徒への具体的な手立て 評価方法 12. 本時の展開学習活動 教師の指導 指導上の留意点 評価基準 導入の場面での生 導入の場面での学習課題を明 導入の場面での, 興味関心を高める 徒の活動を具体的 確にし, 学習意欲を高めるため ための具体的な手立てを明示する に記入する の手立てを示す 導入 展開 まとめ 生徒の活動の具体的な ねらい を記述する 展開の場面での生徒の活動を具体的に記入する 生徒の活動の具体的な ねらい を記述する 本時の学習を通してどのような生徒の姿をめざすのかを具体的に記述する 学習課題のもたせ方 学習方法の学ばせ方 展開の場面での指導や支援について具体的に記述する 生徒が主体的に学習を進めるための具体的な手立てについて ( 教科によっては ) 一人ひとりの習熟の程度に応じた指導 支援 一人ひとりの習熟の程度に応じた学習形態 まとめの場面での指導や支援について具体的に記述する を することにより, 興味関心を高める 指導すべきことを指導しきるための具体的な手立てを明示する 指導すべきことを指導しきるために 学習上気がかりな生徒の想定される躓きに対して事前に手立てを準備しておく で躓いた場合, の手立てを打つことにより, できるようにする 指導と評価の一体化をめざす 評価規準の明確化 評価方法 場面の具体化 評価を指導に生かす工夫 C の状況の生徒への具体的な働きかけを明示する * 具体的な指導内容 * 具体的な指導方法 13. 板書計画学習の流れを構造的に提示するために 板書 1 導入の場面の板書計画 学習の意欲を高めるための板書 学習課題を明らかにするための板書 学習方法を明確にするための板書 板書 2 展開の場面の板書計画 学習の流れを構造的に提示するための板書 生徒たちの思考を支える板書 学習意欲が継続しにくい生徒たちのための板書 * 板書としては,1 枚のものですが, より構造的なものにするために, 意図的に場面に分けて板書計画を立てることが大切です 板書 3 まとめの場面の板書計画 学習を通して学びあったことを確認できる板書 学習課題と関連させ, 学習のまとめを明確にできる板書 学んだ内容を今後の学習に生かせる板書
学習指導案作成のポイント 小学校, 中学校での学習指導案の簡単な例を授業力の向上に必要な 4 つの視点を踏まえながら, 大切にしなければならない内容について項目ごとに示しました ここに例として示した学習指導案を作成する上でいくつか強調したいことがあります 1つ目は, 子どもたちの実態を十分に踏まえて, 豊かな子ども理解 のもとに, 深い教材理解 に基づいて学習指導案を作成することです 子どもたち具体的な学習の様子を常に思い浮かべ, 子どもたちに届く指導内容を学習指導案に書き上げることが重要です そのことが確かな指導法の裏づけともなります 2つ目は, 学習意欲を高めるために, 子どもたちとともに具体的な学習課題を設定する という部分です 一方的に学習課題を設定して教え込むのではなく, 子どもたちとともに学習課題を設定することにより, 子どもたちの学習意欲を高めたいと願うからです 3つ目は, 学び方を学ばせるために, 子どもたちとともに学習課題に迫るための具体的な学習方法を明らかにする という部分です 学習の主人公である子どもたちに学習方法を主体的に学び取ってほしいと願うからです 4つ目は, 指導上の留意点の視点です 学習指導案の 指導上の留意点 の欄に気がかりな子どもたちの想定される躓きに対する手立てを事前に記入するということです いうまでもなく, 授業において子どもたちが躓かないようにするのが, 指導者の指導力です しかし, 子どもたちが躓いた場合の手立てを準備しておくことは, 授業の奥行きを確保する上で大切なことです 授業場面で想定外に起こる子どもたちの躓きに対する指導者の対応力を高めることにもなります 5つ目は, 学習評価についてです A の状況の子どもの姿,B の状況の子どもの姿を具体的に示すことにより評価の観点を明らかにすることが大切です また,Cの状況の子どもたちへの指導方法を事前に明らかにすることにより, 指導すべき内容を指導しきる手立てとなります いわゆる 指導と評価の一体化 の一つの方法です 6つ目は, 場面ごとに書き分けた板書計画です 板書としては1 枚のものですが, 導入の場面, 展開の場面, まとめの場面というように場面ごとに意識して板書を書き分けることで, 指導者自身が学習の流れを構造的に捉えることができるからです そのことにより, 子どもたちの学習の流れに沿った板書を示すことが可能となります 板書計画を研究として取り上げる上でも, 場面ごとに書き分けた板書計画はとても参考となります