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高集積化が可能な低電流スピントロニクス素子の開発に成功 ~ 固体電解質を用いたイオン移動で実現低電流 大容量メモリの実現へ前進 ~ 配布日時 : 平成 28 年 1 月 12 日 14 時国立研究開発法人物質 材料研究機構東京理科大学概要 1. 国立研究開発法人物質 材料研究機構国際ナノアーキテクト

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論文の内容の要旨

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PRESS RELEASE (2015/10/23) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

リチウムイオン電池用シリコン電極の1粒子の充電による膨張の観察に成功

配信先 : 東北大学 宮城県政記者会 東北電力記者クラブ科学技術振興機構 文部科学記者会 科学記者会配付日時 : 平成 30 年 5 月 25 日午後 2 時 ( 日本時間 ) 解禁日時 : 平成 30 年 5 月 29 日午前 0 時 ( 日本時間 ) 報道機関各位 平成 30 年 5 月 25

磁気でイオンを輸送する新原理のトランジスタを開発

体状態を保持したまま 電気伝導の獲得という電荷が担う性質の劇的な変化が起こる すなわ ち電荷とスピンが分離して振る舞うことを示しています そして このような状況で実現して いる金属が通常とは異なる特異な金属であることが 電気伝導度の温度依存性から明らかにされました もともと電子が持っていた電荷やスピ

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マスコミへの訃報送信における注意事項

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酸化グラフェンのバンドギャップをその場で自在に制御

背景と経緯 現代の電子機器は電流により動作しています しかし電子の電気的性質 ( 電荷 ) の流れである電流を利用した場合 ジュール熱 ( 注 3) による巨大なエネルギー損失を避けることが原理的に不可能です このため近年は素子の発熱 高電力化が深刻な問題となり この状況を打開する新しい電子技術の開

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1 薄膜 BOX-SOI (SOTB) を用いた 2M ビット SRAM の超低電圧 0.37V 動作を実証 大規模集積化に成功 超低電圧 超低電力 LSI 実現に目処 独立行政法人新エネルギー 産業技術総合開発機構 ( 理事長古川一夫 / 以下 NEDOと略記 ) 超低電圧デバイス技術研究組合(

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平成 30 年 8 月 6 日 報道機関各位 東京工業大学 東北大学 日本工業大学 高出力な全固体電池で超高速充放電を実現全固体電池の実用化に向けて大きな一歩 要点 5V 程度の高電圧を発生する全固体電池で極めて低い界面抵抗を実現 14 ma/cm 2 の高い電流密度での超高速充放電が可能に 界面形

世界最高面密度の量子ドットの自己形成に成功

機械学習により熱電変換性能を最大にするナノ構造の設計を実現

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詳細な説明 研究の背景 フラッシュメモリの限界を凌駕する 次世代不揮発性メモリ注 1 として 相変化メモリ (PCRAM) 注 2 が注目されています PCRAM の記録層には 相変化材料 と呼ばれる アモルファス相と結晶相の可逆的な変化が可能な材料が用いられます 通常 アモルファス相は高い電気抵抗

互作用によって強磁性が誘起されるとともに 半導体中の上向きスピンをもつ電子と下向きスピンをもつ電子のエネルギー帯が大きく分裂することが期待されます しかし 実際にはこれまで電子のエネルギー帯のスピン分裂が実測された強磁性半導体は非常に稀で II-VI 族である (Cd,Mn)Te において極低温 (

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第 5 章復調回路 古橋武 5.1 組み立て 5.2 理論 ダイオードの特性と復調波形 バイアス回路と復調波形 復調回路 (II) 5.3 倍電圧検波回路 倍電圧検波回路 (I) バイアス回路付き倍電圧検波回路 本稿の Web ページ ht

報道機関各位 平成 30 年 5 月 14 日 東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター 株式会社アドバンテスト アドバンテスト社製メモリテスターを用いて 磁気ランダムアクセスメモリ (STT-MRAM) の歩留まり率の向上と高性能化を実証 300mm ウェハ全面における平均値で歩留まり率の

プレスリリース 2017 年 4 月 14 日 報道関係者各位 慶應義塾大学 有機単層結晶薄膜の電子物性の評価に成功 - 太陽電池や電子デバイスへの応用に期待 - 慶應義塾基礎科学 基盤工学インスティテュートの渋田昌弘研究員 ( 慶應義塾大学大学院理工学研究科専任講師 ) および中嶋敦主任研究員 (

マスコミへの訃報送信における注意事項

ポイント 太陽電池用の高性能な酸化チタン極薄膜の詳細な構造が解明できていなかったため 高性能化への指針が不十分であった 非常に微小な領域が観察できる顕微鏡と化学的な結合の状態を調査可能な解析手法を組み合わせることにより 太陽電池応用に有望な酸化チタンの詳細構造を明らかにした 詳細な構造の解明により

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研究の背景 世界のエネルギー消費量は年々増加傾向にあり, 地球規模のエネルギー不足が懸念さ れています このため, 発電により生み出したエネルギー ( 電力 ) の利用の更なる高効 率化が求められており, その鍵は電力制御を担っているパワーデバイス ( 6) が握っ ています 現在主流である Si(

報道発表資料 2007 年 4 月 12 日 独立行政法人理化学研究所 電流の中の電子スピンの方向を選り分けるスピンホール効果の電気的検出に成功 - 次世代を担うスピントロニクス素子の物質探索が前進 - ポイント 室温でスピン流と電流の間の可逆的な相互変換( スピンホール効果 ) の実現に成功 電流

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開発の社会的背景 リチウムイオン電池用正極材料として広く用いられているマンガン酸リチウム (LiMn 2 O 4 ) やコバルト酸リチウム (LiCoO 2 ) などは 電気自動車や定置型蓄電システムなどの大型用途には充放電容量などの性能が不十分であり また 低コスト化や充放電繰り返し特性の高性能化

と呼ばれる普通の電子とは全く異なる仮説的な粒子が出現することが予言されており その特異な統計性を利用した新機能デバイスへの応用も期待されています 今回研究グループは パラジウム (Pd) とビスマス (Bi) で構成される新規超伝導体 PdBi2 がトポロジカルな性質をもつ物質であることを明らかにし


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【NanotechJapan Bulletin】10-9 INNOVATIONの最先端<第4回>

報道発表資料 2000 年 2 月 17 日 独立行政法人理化学研究所 北海道大学 新しい結晶成長プロセスによる 低欠陥 高品質の GaN 結晶薄膜基板作製に成功 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 北海道大学との共同研究により 従来よりも低欠陥 高品質の窒化ガリウム (GaN) 結晶薄膜基板

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平成22年11月15日

研究成果東京工業大学理学院の那須譲治助教と東京大学大学院工学系研究科の求幸年教授は 英国ケンブリッジ大学の Johannes Knolle 研究員 Dmitry Kovrizhin 研究員 ドイツマックスプランク研究所の Roderich Moessner 教授と共同で 絶対零度で量子スピン液体を示

AlGaN/GaN HFETにおける 仮想ゲート型電流コラプスのSPICE回路モデル

共同研究グループ理化学研究所創発物性科学研究センター強相関量子伝導研究チームチームリーダー十倉好紀 ( とくらよしのり ) 基礎科学特別研究員吉見龍太郎 ( よしみりゅうたろう ) 強相関物性研究グループ客員研究員安田憲司 ( やすだけんじ ) ( 米国マサチューセッツ工科大学ポストドクトラルアソシ

研究の背景有機薄膜太陽電池は フレキシブル 低コストで環境に優しいことから 次世代太陽電池として着目されています 最近では エネルギー変換効率が % を超える報告もあり 実用化が期待されています 有機薄膜太陽電池デバイスの内部では 図 に示すように (I) 励起子の生成 (II) 分子界面での電荷生

令和元年 6 月 1 3 日 科学技術振興機構 (JST) 日本原子力研究開発機構東北大学金属材料研究所東北大学材料科学高等研究所 (AIMR) 理化学研究所東京大学大学院工学系研究科 スピン流が機械的な動力を運ぶことを実証 ミクロな量子力学からマクロな機械運動を生み出す新手法 ポイント スピン流が

記者発表資料

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2 成果の内容本研究では 相関電子系において 非平衡性を利用した新たな超伝導増強の可能性を提示することを目指しました 本研究グループは 銅酸化物群に対する最も単純な理論模型での電子ダイナミクスについて 電子間相互作用の効果を精度よく取り込める数値計算手法を開発し それを用いた数値シミュレーションを実

sample リチウムイオン電池の 電気化学測定の基礎と測定 解析事例 右京良雄著 本書の購入は 下記 URL よりお願い致します 情報機構 sample

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発電単価 [JPY/kWh] 差が大きい ピークシフトによる経済的価値が大きい Time 0 時 23 時 30 分 発電単価 [JPY/kWh] 差が小さい ピークシフトしても経済的価値

スピン流を用いて磁気の揺らぎを高感度に検出することに成功 スピン流を用いた高感度磁気センサへ道 1. 発表者 : 新見康洋 ( 大阪大学大学院理学研究科准教授 研究当時 : 東京大学物性研究所助教 ) 木俣基 ( 東京大学物性研究所助教 ) 大森康智 ( 東京大学新領域創成科学研究科物理学専攻博士課

共同研究グループ 理化学研究所創発物性科学研究センター 量子情報エレクトロニクス部門 量子ナノ磁性研究チーム 研究員 近藤浩太 ( こんどうこうた ) 客員研究員 福間康裕 ( ふくまやすひろ ) ( 九州工業大学大学院情報工学研究院電子情報工学研究系准教授 ) チームリーダー 大谷義近 ( おおた

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概要 東北大学金属材料研究所の周偉男博士研究員 関剛斎准教授および高梨弘毅教授のグループは 産業技術総合研究所スピントロニクス研究センターの荒井礼子博士研究員および今村裕志研究チーム長との共同研究により 外部磁場により容易に磁化スイッチングするソフト磁性材料の Ni-Fe( パーマロイ ) 合金と

報道関係者各位 平成 24 年 4 月 13 日 筑波大学 ナノ材料で Cs( セシウム ) イオンを結晶中に捕獲 研究成果のポイント : 放射性セシウム除染の切り札になりうる成果セシウムイオンを効率的にナノ空間 ナノの檻にぴったり収容して捕獲 除去 国立大学法人筑波大学 学長山田信博 ( 以下 筑

研究の背景社会生活を送る上では 衝動的な行動や不必要な行動を抑制できることがとても重要です ところが注意欠陥多動性障害やパーキンソン病などの精神 神経疾患をもつ患者さんの多くでは この行動抑制の能力が低下しています これまでの先行研究により 行動抑制では 脳の中の前頭前野や大脳基底核と呼ばれる領域が

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スピントランジスタの基本技術を開発   ― 高速・低消費電力、メモリにもなる次世代半導体 ―

予定 (川口担当分)

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: (a) ( ) A (b) B ( ) A B 11.: (a) x,y (b) r,θ (c) A (x) V A B (x + dx) ( ) ( 11.(a)) dv dt = 0 (11.6) r= θ =

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う特性に起因する固有の量子論的効果が多数現れるため 基礎学理の観点からも大きく注目されています しかし 特にゼロ質量電子系における電子相関効果については未だ十分な検証がなされておらず 実験的な解明が待たれていました 東北大学金属材料研究所の平田倫啓助教 東京大学大学院工学系研究科の石川恭平大学院生

Chapter 1

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が


記 者 発 表(予 定)

1. 背景強相関電子系は 多くの電子が高密度に詰め込まれて強く相互作用している電子集団です 強相関電子系で現れる電荷整列状態では 電荷が大量に存在しているため本来は金属となるはずの物質であっても クーロン相互作用によって電荷同士が反発し合い 格子状に電荷が整列して動かなくなってしまう絶縁体状態を示し

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

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受付番号:

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トポロジカル絶縁体ヘテロ接合による量子技術の基盤創成 ( 研究代表者 : 川﨑雅司 ) の事業の一環として行われました 共同研究グループ理化学研究所創発物性科学研究センター強相関物理部門強相関物性研究グループ研修生安田憲司 ( やすだけんじ ) ( 東京大学大学院工学系研究科博士課程 2 年 ) 研

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放射線照射により生じる水の発光が線量を反映することを確認 ~ 新しい 高精度線量イメージング機器 への応用に期待 ~ 名古屋大学大学院医学系研究科の山本誠一教授 小森雅孝准教授 矢部卓也大学院生は 名古屋陽子線治療センターの歳藤利行博士 量子科学技術研究開発機構 ( 量研 ) 高崎量子応用研究所の山

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報道発表資料 2008 年 1 月 31 日 独立行政法人理化学研究所 酸化物半導体の謎 伝導電子が伝導しない? 機構を解明 - 金属の原子軌道と酸素の原子軌道の結合が そのメカニズムだった - ポイント チタン酸ストロンチウムに存在する 伝導しない伝導電子 の謎が明らかに 高精度の軟 X 線共鳴光

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燃料電池反応を高効率化する「助触媒」の役割を実験的に解明

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

4. 発表内容 : 1 研究の背景グラフェン ( 注 6) やトポロジカル物質と呼ばれる新規なマテリアルでは 質量がゼロの特殊な電子によってその物性が記述されることが知られています 質量がゼロの電子 ( ゼロ質量電子 ) とは 光速の千分の一程度の速度で動く固体中の電子が 一定の条件下で 有効的に

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同時発表 : 文部科学記者会 ( 資料配布 ) 筑波研究学園都市記者会 ( 資料配布 ) 科学記者会 ( 資料配布 ) 解禁日時テレビ ラジオ インターネット :12 月 6 日午後 11 時から 現地時間 :6 日午前 9 時 新聞 :12 月 7 日 ( 月 ) 朝刊から 平成 21 年 11 月 30 日筑波大学 次世代メモリの書き込み のメカニズムを原子レベルで解明 概要 1. 筑波大学大学院数理物質研究科の村上浩一研究科長を中心に進めている つくばナノエレクトロニクス産学独連携教育システム構築プロジェクト の一貫として 次世代メモリの研究を進めておりました筑波大学 計算科学研究センターの白石賢二教授のグループは 将来メモリとして期待されております MNS(Mtal xid Nitrid xid licon) 型メモリに対して量子力学に基づく研究を行いその動作原理を解明致しました MNS 型メモリにデータの書き込み が行われる際にメモリを構成する原子ひとつひとつに何が起きているのかを 世界で初めて量子力学に基づく理論計算によって詳細に明らかに致しました さらにこの研究成果に基づいて 最も長寿命となる MNS 型メモリの原子レベルの構造を理論的に提案し 将来のメモリ開発に有力な指針を与えることに成功しました 2. 現在 書き換え可能な EEPRM(Elctrically Erasabl Programmabl RM) 等に組み込まれております MNS(Mtal xid Nitrid xid licon) 型メモリは 次世代のメモリとして注目を集めていますがその詳細な動作原理はまだ不明のままでした 3. 現在のメモリの主流であるフラッシュメモリにおきましては データの書き込み を浮遊ゲート全体で行っておりますため その小型化 高速化が大きな課題となっていました 4. これをブレークスルーために これまでの 浮遊ゲートに電荷を注入することでデータの書き込みを行うフラッシュメモリに代わり 窒化シリコン膜等の中に存在する原子レベルの欠陥に電荷を注入することでデータの書き込みを行う MNS 型メモリが小型化 高速化において注目を集めていますが 電荷の受け取り手である欠陥がデータの書き込み に対してどのような振る舞いをするのかが全く未解明でしたので 時間のかかる試行錯誤的な研究開発を進めざるを得ない状況にありました 5. 今回の研究により ヤン テラー効果による構造変化を利用した MNS 型メモリはデータの書き込み に対して耐性が強い 長寿命のメモリとして期待できることを明らかに致しました 1

今回の研究成果により 膜中の欠陥に電荷を注入することでデータの書き込みを行うメモリ ( チャージ トラップメモリ ) 全般に対する設計指針を獲得することに成功しました 研究の背景電荷の有無によってデータを記憶するメモリには大きく分けて浮遊ゲートと呼ばれる伝導体全体に電荷 ( データ ) を充電する フローティング ゲートメモリ ( 用語解説 ) ( 図 1) と窒化シリコン膜等の個々の欠陥に電荷 ( データ ) を充電する チャージ トラップメモリ の二つがあります ( 図 2) フラッシュメモリにおいて最も一般的な構造である フローティング ゲートメモリ では から構成される浮遊ゲートに電荷を充電することによって 0 ( 電荷が浮遊ゲートにない状態 ) と 1 ( 電荷が浮遊ゲートに存在する状態 ) を区別してメモリ機能を持たせています ( 図 1) これに対し チャージ トラップメモリ の一種である MNS (Mtal xid Nitrid xid licon) 型メモリ ( 用語解説 ) では 窒化シリコン等の膜中に存在する個々の欠陥準位に電荷 ( データ ) を充電することによって 0 と 1 を区別してメモリ機能を実現しています( 図 2) MNS 型メモリでは 原子レベルの空間である窒化シリコン膜中の欠陥に電荷を注入することによってメモリ機能を発現させているため その小型化 高速化が可能となることから 次世代メモリの候補として期待されています しかし 原子レベルの欠陥に電荷 ( データ ) を充電 ( 放電 ) してデータの書き込み ( ) を行う際に窒化シリコン膜中の欠陥がどのような振る舞いをするかは全く不明のままでしたので 時間のかかる試行錯誤的な研究開発を進めざるを得ない状況でした 以上の背景のもと 電荷 ( データ ) の書き込み ( ) の際に欠陥自体が原子レベルでどのように振る舞うかという知見が待ち望まれていました この知見は性能の良い MNS 型メモリの今後の開発指針となるからです 研究成果の内容今回 上述の問題を解決するために 最先端の計算科学 ( 第一原理計算 ) を用いて原子レベルで MNS 型メモリにおける窒化シリコン中の欠陥がデータの書き込み ( 電荷の充電と放電 ) に対してどのように振る舞うかを世界ではじめて原子レベルで詳細に明らかにしました ( 図 3 図 4 参照 ) 今回得られた研究結果は欠陥の種類によってデータの書き込み に対する振る舞いが全く異なることです 1 窒化シリコン中に酸素が混入することによって生じた欠陥はデータの書き込み によって構造が元に戻らなくなる傾向があること ( 不可逆的構造変化を起こす傾向があること ) を示しました ( 図 3) 2 一方 窒化シリコン中の窒素空孔を起因とする欠陥はデータの書き込み を行っても構造が元に戻ることを明らかにしました ( 図 4) これらの研究結果は 1 酸素混入欠陥はメモリ機能の劣 2

化を引き起こしますのに対し 2 窒素空孔欠陥はメモリ機能の劣化を引き起こさないことを意味します さらに 窒素空孔欠陥がデータの書き込み によって引き起こす構造変化はヤン テラー効果 ( 用語解説 ) と呼ばれる自発的対称性の破れによって支配されているため この構造変化は原理的に可逆的であることを明らかにしました これらの結果からヤン テラー効果を利用した電荷トラップ型メモリはデータの書き込み に対して耐性が強く 長寿命のメモリが構成できることがわかりました 本原理は MNS 型メモリだけでなく チャージ トラップメモリ 全般に適用できる一般的な指針となります このようにデータの書き込みに対する欠陥の詳細な振る舞いが原子レベルで予言することに成功致しましたことにより 今後の MNS 型メモリに代表される チャージ トラップメモリ 全般に対して設計指針を与えることが可能となりました これにより今後 次世代新型メモリの研究開発が一気に促進され 日本の半導体産業へ大きく貢献することと期待されます 波及効果と今後の展開今後の極微細集積回路や将来のナノテクノロジーでは原子レベルの空間への電子の出し入れがその基本動作となると考えられます 本研究で得られました結果は 原子レベルの空間への電子の出し入れを行うデバイス応用全般に適用可能となります 本研究成果を皮切りに 今後ナノサイズの素子開発 例えば MRAM( 用語説明 ) や RRAM( 用語説明 ) Zn GaN を使った素子等にも大きく寄与することが予想されます 本成果は 米国ボルチモアで開催される 2009 IEEE Intrnational Elctron Dvics Mting (2009.12.7-9, Baltimor) において 12 月 8 日の午前 10 時 45 分 ( 現地時間 ) から発表します 問い合わせ先 : 305-8571 茨城県つくば市天王台 1-1-1 筑波大学広報室 TEL:029-853-2040 発表者 : 1) 筑波大学大学院数理物質科学研究科 ( 計算科学研究センター兼務 ) 白石賢二教授 3

用語解説 フローティングゲート型メモリ : フローティングゲート型メモリでは トランジスタのゲート絶縁膜に上に浮遊ゲートと呼ばれる の島を形成し 浮遊ゲート全体にデータ ( 電荷 ) を貯えることによってメモリとして用いられています ( 図 1 参照 ) MNS 型メモリ (MNS(Mtal xid Nitrid xid licon) 型メモリ ): MNS 型メモリでは トランジスタのゲート絶縁膜に酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層構造を形成し 窒化シリコン膜中のトラップ準位にデータ ( 電荷 ) を貯えることによってメモリとして用いられています ( 図 2 参照 ) ヤン テラー効果 : 対称性によって縮退していたエネルギー準位に電子が占有されると 自発的対称性の破れが生じ 縮退していた 1 本のエネルギー準位が低エネルギー側にシフトして電子エネルギーの利得が生じる現象 MRAM:Magntic Random Accss Mmory: 2 つの磁性体の間に極薄膜の絶縁体をいれて構成される次世代メモリ 電流の抵抗が磁性の方向でかわることを利用して記録のある なしを判断するメモリ RRAM: Rsistivity Random accss Mmory 特殊な酸化物が電圧を加えると抵抗の変化を示すことを利用したメモリ MRAM と並んで次世代メモリとして期待されています 4

図 1: フローティングゲート型メモリ 書き込みによってフローティングゲート全体に電荷が充電されます 図 2: チャージ トラップ型メモリ 書き込みによって窒化シリコン中の個々の欠陥に電荷が充電されます 5

充電状態 充電状態 書込 始状態 終状態 構造が全く異なる 図 3: 窒化シリコン中に酸素が混入することで生じた欠陥 書き込み / で構造が全く異なります 充電状態 充電状態 書込 始状態 図 4: 窒化シリコン中の窒素空孔欠陥 書き込み / で構造変化は可逆的になります 6

次世代メモリの書き込み のメカニズムを原子レベルで解明 白石賢二 筑波大学大学院数理物質科学研究科物質創成先端科学専攻計算科学研究センター兼務 1 概要 2!! N!! 2 次世代 MNS 型メモリにおいて書込 / の際にメモリを構成する原子ひとつひとつに何が起こっているかを量子論に基づいて世界ではじめて詳細に解明しました MNS 型メモリ :2/N/2 という積層構造において中央の SIN 層中の欠陥に電荷を充電することでメモリ機能を発現する次世代メモリ ΔE ヤン テラー効果に基づく電荷充電に伴う自発的対称性の破れの現象を用いた MNS 型メモリは原理的に長寿命になることを明らかにしました 2

研究の目的 次世代 MNS 型メモリにおける電荷充電に最も最適な欠陥を量子論に基づいて提案し 将来のチャージ トラップ型メモリの設計指針を確立する チャージ トラップ 3 研究の方法 MNS 型メモリ中の N 膜層への書込 ( 電荷の充電 ) と ( 電荷の放電 ) の際に N 膜中の原子ひとつひとつに起こっていることを最先端の計算科学である第一原理計算によって考察する 書込 0 0 4 4

フローティングゲートメモリとチャージ トラップメモリの相違 2 2! N! 2! 2 欠陥の構造変化 絶縁破壊 5 書込 に伴う 2 種類の構造変化 E 充電 E 充電 書込 非充電 非充電 書込 再安定 準安定 可逆的構造変化 不可逆的構造変化 第一原理量子論によって 2 種類の書込 に伴う構造変化があることを明らかにした 6

MNS 型メモリに関するこれまでの知見 欠陥 原子数 (N&) 欠陥は 2/N 界面に多く存在 界面付近の N 中には酸素 () が多く混入している 7 第一原理計算で検討する 2 つの欠陥モデル N 界面付近の酸素混入に対応する欠陥モデル 窒素空孔モデル 上記欠陥に対して 書込 / 特性を考察 8

酸素混入欠陥の構造変化 N 電荷 ( 正孔 ) 書込 N 電荷充電前 ( 書込前 ) 電荷充電後 ( 書込後 ) 書込によって大きな構造変化が起こる 9 電荷充電による構造変化の模式図 初期構造 電荷充電後 極めて大きな構造変化 10

で構造は回復するのか? 電荷 ( 正孔 ) N? N 前 後 11 によっても構造は回復しない!! 電荷 ( 正孔 ) N 前 後 酸素混入欠陥は不可逆的構造変化 12

書込 によって起こる大きな構造変化 初期構造 書込 後 大きな不可逆的構造変化 メモリ特性の劣化につながる 13 窒素空孔型欠陥はどうなるか? 充電前 N 充電後 ( 正孔 ) 充電後 ( 電子 ) V N 充電前 書込 に伴う構造変化は可逆的 ヤン テラー効果 14

ヤン テラー効果とは?? ΔE ΔE 正孔充電後 初期構造 電子充電後 電荷の充放電に伴う自発的対称性の破れ 15 窒素空孔型欠陥は理想的なメモリ用欠陥である q=0 q=1 書込 に対する耐性が強い 長寿命のメモリ構成が可能 16

結論 2!! N!! 2 次世代 MNS 型メモリにおいて書込 / の際にメモリを構成する原子ひとつひとつに何が起こっているかを量子論に基づいて世界ではじめて詳細に解明しました MNS 型メモリ :2/N/2 という積層構造において中央の SIN 層中の欠陥に電荷を充電することでメモリ機能を発現する次世代メモリ ΔE ヤン テラー効果に基づく電荷充電に伴う自発的対称性の破れの現象を用いた MNS 型メモリは原理的に長寿命になることを明らかにしました 17