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要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

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はじめに 我が国の肝がん死亡者数は,2005 年頃を最多とし, その後はゆっくりと減少しつつあります しかし, いまだに年間死亡者数は 3 万人を超えており, 依然として対策が極めて重要な病気です 原因としては,C 型肝炎,B 型肝炎, 非アルコール性脂肪肝炎 (NASH: ナッシュ ) やアルコー

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目次 1. 地域医療連携パスとは 肝疾患医療連携パスの運用方法について... 3 (1) 特長 (2) 目的 (3) 対象症例 (4) 紹介基準 (5) 肝疾患医療連携パスの種類 (6) 運用 3. 肝疾患医療連携パス... 7 (1) 肝疾患診断医療連携パス ( 医療者用 : 様式

(2) 様式例の記載例ア勤務情報提供書 労働者 事業者において作成 A さん 人事 上司 産業医とで復職後の働き方について話し合った結果 A さん自身の希望もあり 元の営業職での復帰を長期的な目標にしつつ 復職後しばらくは治療の内容や体調を考慮し 外勤や出張 残業は避け デスクワーク中心の業務とする

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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

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目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1

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京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医


目 次 はじめに C 型慢性肝炎は C 型肝炎ウイルスに感染することにより 検査のすすめ 1 なぜ検査を受けたほうがよいのですか? 3 C 型慢性肝炎について 2 C 型慢性肝炎とは どんな病気ですか? 5 発症する病気です 日本には150~200 万人の患者さんがいると考えられていますが 自覚症状

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)各 職場復帰前 受入方針の検討 () 主治医等による 職場復帰可能 との判断 主治医又はにより 職員の職場復帰が可能となる時期が近いとの判断がなされる ( 職員本人に職場復帰医師があることが前提 ) 職員は健康管理に対して 主治医からの診断書を提出する 健康管理は 職員の職場復帰の時期 勤務内容

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はじめに 連携パス とは 地域のと大阪市立総合医療センターの医師が あなたの治療経過を共有できる 治療計画表 のことです 連携パス を活用し と総合医療センターの医師が協力して あなたの治療を行います 病状が落ち着いているときの投薬や日常の診療はが行い 専門的な治療や定期的な検査は総合医療センターが

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1. 背景 NAFLD は非飲酒者 ( エタノール換算で男性一日 30g 女性で 20g 以下 ) で肝炎ウイルス感染など他の要因がなく 肝臓に脂肪が蓄積する病気の総称であり 国内に約 1,000~1,500 万人の患者が存在すると推定されています NAFLD には良性の経過をたどる単純性脂肪肝と

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CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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■● 糖尿病

がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

手術や薬品などを用いて 人工的に胎児とその付属物を母体外に排出することです 実施が認められるのは 1 妊娠の継続又は分娩が 身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがあるもの 2 暴行もしくは脅迫によって妊娠の場合母体保護法により母体保護法指定医だけが施行できます 妊娠 22 週 0

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基礎知識 1. 肝臓について 肝臓は腹部の右上にあり 成人で 800~1,200g と体内最大の臓器です ( 図 1) 肝臓の主な役割は 食事から吸収した栄養分を取り込んで体に必要な成分に変えることや 体内でつくられた有害物質や体外から摂取された有害物質を解毒し 排出することです また 脂肪の消化を


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公的医療保険が対象とならない治療 投薬などの費用 ( 例 : 病院や診療所以外でのカウンセリング ) 精神疾患 精神障害と関係のない疾患の医療費 医療費の自己負担ア ) 世帯 ( 1) における家計の負担能力 障害の状態その他の事情をしん酌した額 ( しん酌した額が自立支援医療にかかった費用の 10

B型慢性肝炎における発癌リスク因子の データマイニング解析と 慢性肝炎治療ガイドラインの検証

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

患者必携 がんになったら手にとるガイド 編著 国立がん研究センターがん対策情報センター 発行 学研メディカル秀潤社 患者必携 肝細胞がんの療養情報 肝細胞がんは 多くの場合 肝炎ウイルスによる慢性肝炎や肝硬変を背景としてい ます そのため がんの治療と療養生活においては がんだけでなく肝臓の状態を

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお

さらに 職場における感染防止対策の検討を行うに当たっては 産業医等の助 言を受けることや 衛生委員会において対策を審議するなど 労働安全衛生法上 の安全衛生管理体制を活用し 実施していくことが望まれます Q2 発熱や呼吸器症状等のインフルエンザ様症状を呈した労働者にはどのような注意をすればよいですか

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大腸がん術後連携パス

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

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はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

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放射線併用全身化学療法 (GC+RT 療法 ) 様の予定表 No.1 月日 経過 達成目標 治療 ( 点滴 内服 ) 検査 処置 活動 安静度 リハビリ 食事 栄養指導 清潔 排泄 / 入院当日 ~ 治療前日 化学療法について理解でき 精神的に安定した状態で治療が


雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項 第 1 趣旨 この留意事項は 雇用管理分野における労働安全衛生法 ( 昭和 47 年法律第 57 号 以下 安衛法 という ) 等に基づき実施した健康診断の結果等の健康情報の取扱いについて 個人情報の保護に関する法律についての

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血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 に関する説明書 一般財団法人脳神経疾患研究所先端医療研究センター 所属長衞藤義勝 この説明書は 血液 尿を用いたライソゾーム病のスクリーニング検査法の検討 の内容について説明したものです この研究についてご理解 ご賛同いただける場合は, 被

1 がんに対する印象 認識について (1) がんに対する印象 問 1 あなたは, がんについてどのような印象を持っていますか この中から 1 つだけお答えください こわいと思わない( 小計 ) 22.4% 24.6% こわいと思わない 12.1% 13.6% どちらかといえばこわいと思わない 10.

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より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

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< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

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2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

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リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

AC 療法について ( アドリアシン + エンドキサン ) おと治療のスケジュール ( 副作用の状況を考慮して 抗がん剤の影響が強く残っていると考えられる場合は 次回の治療開始を延期することがあります ) 作用めやすの時間 イメンドカプセル アロキシ注 1 日目は 抗がん剤の投与開始 60~90 分

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減量・コース投与期間短縮の基準

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事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン参考資料 肝疾患に関する留意事項

肝疾患に関する留意事項 以下は 肝疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあたって ガイド ラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 肝疾患に関する基礎情報 (1) 肝疾患の発生状況肝臓は 身体に必要な様々な物質をつくり 不要になったり 有害であったりする物質を解毒 排泄するなど 生きていくために必須の臓器である 肝臓は再生する能力が高く 病気がある程度進行しないと自覚症状が現れないため 沈黙の臓器 と呼ばれている そのため 症状が出るころには 肝硬変など病気が進行した状態となっている場合がある ( 図 1) 肝臓の機能は 一般定期健康診断等で行う血液検査において正常かどうかが分かる 検査項目のうち AST(GOT) や ALT(GPT) は肝臓の細胞が壊れると上昇し γ-gtp は飲酒や肥満で上昇することから これらを測定することは肝疾患の早期発見につながる 肝疾患は長期間にわたると肝がんを併発する頻度が高く その原因や進展度に応じた間隔で 腹部超音波などの画像検査とがん発見のための血液検査を実施する必要がある < 図 1 肝疾患の経過 > イラスト出典 : 肝炎情報センター

肝疾患の主な原因としては 肝炎ウイルスの感染 ( ウイルス性肝炎 ) と 肥満 糖尿病 飲酒などによる肝臓への脂肪蓄積 ( 脂肪性肝疾患 ) が多いが 免疫の異常による場合 ( 自己免疫性疾患 ) もある これらの疾患等により 就労世代の 14.7% が肝機能検査において異常を認めている 1 < 主な肝疾患 > 主な疾患肝炎ウイルスによる肝疾患脂肪性肝疾患自己免疫性肝疾患 概要 B 型肝炎ウイルスや C 型肝炎ウイルスなどにより 肝臓に炎症が生じ 肝臓の細胞が壊れる病気 B 型肝炎ウイルスによる肝炎を B 型肝炎 C 型肝炎ウイルスによる肝炎を C 型肝炎と呼ぶ ( 肝炎ウイルスには A~G 型があるが 慢性化するのは主に B 型 C 型である ) 肝炎ウイルスに感染しているかどうかの診断には 一般定期健康診断等における血液検査とは別に 肝炎ウイルス検査を受けることが必要である 肥満 糖尿病 アルコール過剰摂取などの生活習慣が原因で 肝臓の細胞に脂肪がたまる病気 脂肪肝から脂肪性肝炎 肝硬変へと進行することがある 血液検査や超音波検査などで病気かどうかが分かる 免疫機能に異常が生じ 自身の肝臓を誤って攻撃してしまい 肝臓に障害が出る病気 (2) 主な肝疾患の治療肝疾患の場合 病気があまり進行しておらず 症状が出ていない段階であっても 通院による治療や経過観察が必要な場合がある いずれの肝疾患においても アルコールや肥満などは肝機能障害のリスクとなるため 食事療法や運動療法が重要である 過度の運動制限 安静などはむしろ病気を悪化させる場合がある ウイルス性肝炎に薬物療法を行う場合は注射薬や飲み薬による治療が行われ 定期的な通院が必要となる C 型肝炎においては 従来の治療法 ( インターフェロン治療 ) よりも副作用が少なく 治療効果の高い治療法 ( インターフェロンフリー治療 ) が受けられるようになっている 病気が進行し 肝臓の機能低下によって倦怠感 食欲不振 浮腫などの症状が出てくると これらの症状を軽減するための治療も並行して行われる その際は運動制限や安静などが 1 果調 労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断において 肝機能検査に有所見のあった者の割合 ( 有所見率 ) 平成 27 年定期健康診断結

必要な場合もある 肝がんを併発した場合にはその治療を行うが 一度治療が終了した後も 繰り返し治療が必要になる場合もある 治療法や治療に伴う副作用等は 肝疾患の原因や進行度によっても異なるため 個別に確認が必要である < 主な肝疾患の治療法 > 肝疾患共通食事療法 運動療法による 生活習慣の改善が治療の基本となる 肥満に対しては標準体重を目標として 食事療法と運動療法で減量するように努める 肝炎ウイルスによる原因となるウイルスに対して 注射薬や飲み薬による治療を肝疾患に対する治療行う 治療終了後も肝がん等の発生がないかを確認するため 定期的な経過観察のための通院が必要である 注射によるインターフェロン治療の場合は週に 1 回 半年 ~ 1 年間の通院が必要になったり 入院したりする場合がある B 型肝炎では飲み薬を生涯にわたって服用する治療が一般的であるが 注射によるインターフェロン治療を行ったりする場合がある C 型肝炎では 近年 飲み薬のみのインターフェロンフリー治療が主流化しており 3か月 ~ 半年の治療が多い 自己免疫性肝疾患に免疫異常に対して 飲み薬による治療を行う場合がある 対する治療肝がんに対する治療肝切除 ( がんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療 ) や 体の外から針を刺してがんを焼灼するラジオ波焼灼療法 カテーテルを用いて肝臓がんを養う動脈から抗がん剤を注入したり 動脈を人工的にふさいでがんの成長を止める治療 ( 肝動脈化学塞栓療法 ) 抗がん剤の内服による治療 肝移植などがある 抗がん剤の内服は通院しながら行えるが 他の治療法は入院が必要である ラジオ波焼灼療法は比較的身体への負担が小さく 手術に比べて短期間で社会復帰できる場合が多いが その他の治療法では入院期間が長期になることもある 参考 : 日本肝臓学会発行 肝臓病の理解のために 肝炎情報センター掲載情報 がん情報サービスから作成

2. 両立支援にあたっての留意事項 (1) 肝疾患の特徴を踏まえた対応ア一般的な対応肝疾患は 病気があまり進行しておらず 症状が出ていない段階であっても 通院による治療や経過観察が必要である 治療を中断すると病気や症状が急激に悪化する場合があるため 労働者から通院等への配慮の申出があれば 事業者は 海外出張や不規則な勤務を避ける等 必要な配慮を検討し 対応することが望ましい 飲み薬による治療では 薬を飲むタイミングが一定でないこと ( 食事と食事のあいだ 空腹時など ) もあるため留意する 注射によるインターフェロン治療では 一時的に副作用が現われることがあるため 体調等への配慮の申出があれば 柔軟に対応することが望ましい 一般に 過度な安静は不要であり 適度な運動を行うことで体力の維持 肝臓への脂肪沈着の予防などの効果が見込まれることにも留意する 治療終了後も 肝がん等への進行がないかを確認するため 定期的な経過観察のための通院が必要となる場合もある 事業者は労働者からの通院に関する申出があれば 配慮することが望ましい イ肝硬変の症状がある場合の対応 ( 倦怠感 食欲不振 浮腫など ) 治療中は一般に 過度な安静は不要であるが 倦怠感や食欲の低下等により体力が低下したり 病気の進行度によっては安静が必要なこともある 事業者は労働者から体調が悪い等の申出があれば 配慮することが望ましい なお 病状が進行すると 記憶力の低下や瞬時の判断が遅れるなどの症状が出ることもある そうした場合には 身体的な負荷は小さくとも車の運転など危険を伴う作業は控える等の措置が必要なこともあるため 個別に確認が必要である ウ肝がんの労働者への対応肝がんに移行すると 通院による治療だけでなく 入院を伴う治療も必要となる また 一度治療が終了しても 経過によっては繰り返し治療が必要になることがある 事業者はこうしたことを念頭に置き 状況に応じて配慮することが望ましい (2) 肝疾患に対する不正確な理解 知識に伴う問題への対応慢性化する B 型及び C 型肝炎ウイルスは血液を介して感染するものである そのため 会話や握手 会食 ( 一緒に食事をすること ) など 通常の日常生活や就業の範囲では感染することはほとんどない しかしながら 周囲が感染のリスクについて誤った認識を持つことがあり 就業の継続のための理解や協力が得られない場合もある このため 事業者は日頃から 疾患に関する正しい知識の啓発や環境の整備等を行うことが重要である

また 労働者が就業上の措置や治療に対する配慮を求める場合 事業者は労働者本人の意 向を十分に確認し同意を得て 配慮の結果 負荷がかかる同僚や上司等には 配慮を実施 するために必要な限度で 情報を提供できるよう努める < 利用可能な支援機関 > 肝疾患に関する情報は肝炎情報センター 肝疾患診療連携拠点病院 肝疾患相談支援センター等にお問い合わせ下さい 名称概要肝炎情報センター肝炎情報センターは肝炎診療の均てん化 医療水準の向上をさらに全国的に推進するため インターネット等による最新の情報提供等を行う 詳細は下記 URL をご参照下さい http://www.kanen.ncgm.go.jp/index.html 肝疾患診療連携拠点病院肝炎患者等が 居住地域にかかわらず適切な肝炎医療を受けられるよう 地域の特性に応じた肝疾患診療体制を構築するため整備が進められてきた病院 ( 平成 28 年 6 月 1 日現在で 47 都道府県 70 拠点病院 ) であり 肝疾患に係る一般的な医療情報の提供や医療従事者や地域住民を対象とした研修会 講演会の開催や肝疾患に関する相談支援等を行う 詳細は下記 URL をご参照下さい http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/060/hosp.html 肝疾患相談支援センター都道府県が指定する肝疾患連携拠点病院において 肝疾患相談センターを設置している 同センターには相談員 ( 医師 看護師等 ) を設置し 患者及び家族等からの相談等に対応するほか 肝炎に関する情報の収集等を行う また 保健師や栄養士を配置し 食事や運動等の日常生活に関する生活指導や情報提供を行う 詳細は下記 URL をご参照下さい http://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/060/center.html 各種助成制度があるので都道府県 最寄の保健所や拠点病院等までお問い合わせください