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周期時系列の統計解析 (9) 重回帰モデルによる高潮の解析 nino 218 年 11 月 23 日 前報で紹介した潮位偏差の重回帰モデルを台風襲来時の高潮の観測値に適用し, 観測地 点の違いによる高潮の特徴を調べた. また, 重回帰モデルの妥当性や留意点についても 検討した. 使用データと観測地点解析対象の台風は, 217 年 1 月に関東地方に高潮被害をもたらした台風第 21 号である. 台風第 21 号は23 日 3 時頃に静岡県御前崎市付近に上陸後, 東海地方から関東地方を北東に進み, 同日 6 時に埼玉県に到達して,9 時には福島県沖に抜けた ( 参考文献 1 ). 使用データは潮位偏差, 海面気圧および風向風速の 1 時間値で, 期間は 1 月 21 日 1 時から同 24 日 24 時までの4 日間である ( 参考文献 2,3). 潮位観測地点は, 三宅島 ( 三宅村坪田船戸 ), 大島 ( 大島町岡田 ) および東京 ( 中央区晴海 5 丁目 ) の3 地点 ( 図 1) である ( 参考文献 4,5). なお, 位置情報の緯度経度は分単位 ( 約 1.5~1.85km) であるため, 図中に詳細な観測地点を記載できなかった. 図 1 ( 1 ) 三宅島 ( 2) 大島 ( 3 ) 東京 三宅島と大島の観測地点はともに直接太平洋に面しており, 前者は島の南部にそして後者は島の北部に位置している. 三宅島は少し複雑な形状の 2つの防波堤に囲まれており, 南東方向に開口している. 大島は北西方向に開口しており, 防波堤が 2 つある. 東京の潮位観測地点は, 奥行が深く水深が浅い東京湾の隅田川 ( 荒川水系 ) の河口に位置し, その開口方向は東京湾と同じ南西である. 海面気圧と風向風速の観測地点は, 潮位観測地点に近い地点を選択した ( 参考文献 3 ). 海面気圧観測地点 : 東京 ( 千代田区北の丸公園 ), 大島 ( 大島町元町字家の上 ), 三宅島 ( 三宅村神着 ). 風向風速観測地点 : 東京 ( 江戸川臨海 ), 大島 ( 大島町元町字北の山 ), 三宅島 ( 三宅村坪田 ). - 1 -

1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 風速 ^2 ((m/s)^2) 1 3 5 7 9 気圧 (hpa) 観測項目の経時変化 図 2 に各観測項目の時系列を示した. なお, 風速の縦軸は風速の 2 乗 ( 風速 ^2) であり, 項目名末尾のアルファベットは各地点 ( 三宅島 : M, 大島 :O, 東京 :T) を示す. 図 2 13 12 気圧 M 気圧 O 気圧 T 11 1 99 98 97 96 日. 時 14 12 ( 風速 )^2M ( 風速 )^2O ( 風速 )^2T 1 8 6 4 2 日. 時 12 1 潮位偏差 M 潮位偏差 O 潮位偏差 T 8 6 4 2-2 日. 時 気圧は 3 地点ともほぼ同じ変化パターンを示した. 最低気圧は低い順に大島 965.1hPa, 東 京 968.2hPa, 三宅島 971.8hPa であった. 最低気圧を示した時間は台風の影響を早く受ける 三宅島で 23 日 3 時, 次いで大島 4 時, 東京 5 時の順であった. 風速 ^2 の最大値は三宅島で 1218(m/s) 2 と最も大きく, 次いで大島 488(m/s) 2, 東京 279 (m/s) 2 の順であり, 沿岸よりも外洋で大きかった. 最大風速 ^2 を示した時間は三宅島と大 島では最低気圧と同じ時間であったが, 東京では最低気圧より 1 時間ほど早かった. 潮位偏差は三宅島と大島では気圧と逆比例の変化パターンを示し, ピークは 1 つであるが, 東京は最大ピークの後にやや小さい 2 番目のピークも認められた. 一方, 潮位偏差の最大値は, 大きい順に三宅島 114cm, 東京 99cm, 大島 52cmであった. 最大潮位偏差を示した時間は三宅島と大島では最低気圧および最大風速の時間と同じであったが, 東京は最低気圧の時間より1 時間遅く, 最大風速の出現時間より2 時間遅かった. このように, 東京の潮位偏差は三宅島や大島とは異なる変化を示した. - 2 -

風向風速のベクトル図 風向風速については, ベクトル図 ( 図 3 ) を用いて少し詳しく検討した ( 参考文献 6 ). 図中で, 風向は矢印方向への風を表し, 太矢印は最大潮位偏差時の風向である. 図 3 3 地点とも台風の影響の大きい時間帯に南寄りの風が強まった. 三宅島では, 北寄りの弱風が続いた後,22 日 24 時から23 日 2 時まで南寄りの風が連吹し,23 日 3 時に南南西の風が最大風速を示した. 大島は, 三宅島とほぼ同じ傾向を示すが, 最大風速は三宅島より1 時間遅れの4 時の南風の時であった. 東京では,23 日 2 時から南寄りの風が強くなり,23 日 4 時の南南東の風の時に最大風速を示した後, 6 時になると急速に弱まって西風に変化した. 最大潮位偏差を示した時間は三宅島と大島では南寄りの最大風速の時間と一致したが, 東京は弱い西風の時であった. 最適な重回帰モデル前報で示した次の潮位偏差の重回帰モデルを観測値に適用し検討した. H i = AP i + Bk(i)W 2 i + C+ ε i (1) ここで, H i P i Wi 2, ε i はそれぞれ時点 i における潮位偏差, 気圧, 風速の2 乗, 誤差である.A は気圧の係数であり, 負数の時に海面の上昇効果を表わす.B k(i) は時点 i における風の係数 B m であり, 表 1に示した 16 方位の風向に対応している. Cは定数項である. なお, 4 日間 (96 時間 ) 程度の比較的短い期間では, 16 方位のうち幾つかの風向の出現頻度がとなるので, それらの風向の列を削除して重回帰分析を行う. - 3 -

1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 表 風向 N NNE NE ENE E ESE SE SSE S SSW SW WSW W WNW NW NNW 係数 B B 1 B 2 B 3 B 4 B 5 B 6 B 7 B 8 B 9 B 1 B 11 B 12 B 13 B 14 B 15 高潮は数時間遅れの気象観測値と相関が高くなることなどが指摘されていることから ( 参考文献 7), 複数の重回帰モデルから最適なモデルを選択した. 具体的には, 遅れの時間は気圧で ~ 1 時間, 風向風速で ~ 2 時間とし, それらを組合せた重回帰モデルModel 1~ Model 6の自由度調整済み重相関係数 ( 参考文献 6 ) を求めた ( 表 2). 表 2 重回帰モデル 時間遅れの組合せ 三宅 大島 東京 Model 1 なし.963.965.931 Model 2 気圧 :1hr.964.957.932 Model 3 風 :1hr.971.965.935 Model 4 気圧 :1hr 風:1hr.971.954.935 Model 5 風 :2hr.967.965.932 Model 6 気圧 :1hr 風:2hr.964.955.931 表 2から, 重相関係数が最も大きかったのは, 3 地点ともModel 4( 風の1 時間遅れ ) であった. 東京については前述した課題があるが,3 地点とも Model 4が最適な重回帰モデルであるとして検討する. 図 4に, 各地点における潮位偏差と Model 4の推定値の時系列を示した. 図 4 12 1 潮位偏差 M 推定値 M 8 6 4 2-2 12 1 潮位偏差 O 推定値 O 8 6 4 2-2 日. 時日. 時 12 1 潮位偏差 T 推定値 T 8 6 4 2-2 - 4 - 日. 時

1 3 5 7 9 水位 (cm) 図 4 によると, 三宅島と大島の推定値はそれぞれの潮位偏差と類似した変化を示し, 推定値の最大は潮位偏差のそれとほぼ一致した. 一方, 東京については, 推定値の 1 番目のピークは潮位偏差のピークと良く一致しているが, 2 番目のピークは良くなかった. 2 番目のピークは台風の降雨による隅田川の水位上昇が影響していると予想される. 隅田川の水位上昇の影響隅田川の水位上昇による東京の潮位偏差への影響を調べた. 隅田川は上流域まで感潮域であるため, 感潮域を避け, 東京の観測地点から約 8km 上流に位置する荒川水系の熊谷地点の水位変化 ( 参考文献 8 ) を, 東京の潮位偏差とともに, 図 5に示した. 図 5 5 4 熊谷 : 水位 潮位編差 T 12 9 3 2 1 6 3-3 図 5 によると, 熊谷の水位は 2 つのピークがあり, 1 番目のピークよりも 2 番目のピークのほうが高かった. 最大水位を示した時間は,1 番目のピークが 22 日 18~19 時,2 番目のピークが 23 日 7 時であった. 一方, 潮位偏差の 2 番目のピークの最大値は 23 日 12~13 時にあり, 熊谷の水位の2 番目のピークよりも 5~ 6 時間遅かった. また, 潮位偏差の 1 番目のピークはやや左肩広がりとなっている. その部分は熊谷の水位の 1 番目ピークの影響があるためと推察される.2 番目のピークの流下時間 ( 5~6 時間 ) を当てはめると, 熊谷の水位の1 番目のピークが潮位偏差に影響を及ぼすのは22 日 23 時 ~ 23 日 1 時になり, ほぼ妥当な結果が得られた. このように, 東京の潮位偏差を解析するにあたっては, 隅田川の水位上昇の影響を考慮する必要がある. なお, 潮位偏差の 2 番目のピーク形は熊谷の水位のそれよりも鋭くなっている. 隅田川では洪水対策のため水位操作が行われているため ( 参考文献 9 ), 潮位偏差の変化パターンが隅田川水位のそれとは異なるものになったと考えられた. 日時 重回帰分析の結果 Model 4の重回帰モデルの分析結果 ( 偏回帰係数 ) を表 2 に示した. また, 表には風の変数 B m に対応した風向および風向の出現頻度をあわせて示した. 変数の上付け 印は5% の危険率で有意であることを示す. 気圧の係数 Aは, 三宅島で最も小さく -1.3cm/hPa, 次いで大島で.93cm/hPa, 東京で -.75cm/hPaの順であった. 気圧が1hPa 低下すると海面は約 1cm 上昇するといわれているが, 東京に比べて外洋の三宅島や大島のほうが気圧に対する海面上昇の割合は高くなる傾向が認められた. - 5 -

表 4 (1) 三宅島 (2) 大島 (3) 東京 係数 風向偏回帰係数頻度 A -1.3 B N.14 3 B 1 NNE.79 19 B 2 NE.4 23 B 3 ENE -.32 16 B 4 E.31 2 B 5 ESE -.9 5 B 6 SE -.24 5 B 7 SSE -.31 2 B 8 S.42 3 B 9 SSW.29 3 B 1 SW -.26 1 B 11 WSW -.7 5 B 12 W -.19 4 B 13 WNW -.78 2 B 15 NNW -.7 3 C 1338 係数 風向偏回帰係数頻度 A -.927 B N -.226 1 B 1 NNE.3 4 B 2 NE.25 33 B 3 ENE.11 11 B 5 ESE.99 1 B 7 SSE.31 2 B 8 S.15 2 B 9 SSW.16 1 B 1 SW.21 4 B 11 WSW -.273 1 C 938 係数 風向偏回帰係数頻度 A -.73 B N -.194 27 B 1 NNE.21 1 B 2 NE.18 11 B 3 ENE.452 7 B 5 SE.267 1 B 7 SSE.231 2 B 8 S.279 1 B 1 SW.188 2 B 12 W.939 1 B 13 WNW.278 7 B 14 NW -.299 6 B 15 NNW -.91 21 C 736 定数項 C は, 大きい順に三宅島 1338cm, 大島 938cm, 東京 762cm となり, 外洋のほうが高い 傾向を示した. 定数項 C は気圧の係数 A の小さい順と一致している. これは, 定数項 C には, 前報で述べたように, 係数 A と基準気圧 P S の積 AP S が含まれているためと考えられた. 風の係数 B m は, 主として 5 % 危険率で有意な偏回帰係数について地点別に調べた. なお, 係数 B m が正数の時は海面の上昇効果を, 負数の時は低下効果を表わす. まず, 三宅島では, 風向はNWを除く15 方位で出現しており,NNE,NE,ENEの3 風向の頻度が約 6% を占め, それら以外の風向は 1~ 5 回と少なかった. 偏回帰係数は風向が NNEとS ~ SSWの時に正数を示した. 三宅島の観測地点は南東方向に開口しているため, 南寄りの風 ( S~ SSW) が海面の上昇を引き起こしたと考えられた. これらの風向における偏回帰係数は.29~.42(cm/ (m/s) 2 ) であり, 風速の 2 乗 1(m/s) 2 ( 風速として,1m/s) に対して海面を2.9~4.2cm 上昇させる効果があると考えられた. しかし,NNEの風は海面を低下させると考えたほうが妥当であり, 矛盾する. 一方, 風向が西寄りの風 ( WSW~ W) の時に偏回帰係数は負数を示した. この理由の一つとして, 観測地点が防波堤に囲まれた港の西に位置していることが考えられる ( 図 1). これは, 先のNNEの風が潮位偏差を上昇させていることと一致するが, 観測地点が特定できないので, 今後の検討課題である. 次に, 大島においては, 出現した風向は 1 方位のみで,NNE,NE,ENEの3 風向の出現頻度が 84 回 ( 約 88% ) とほとんどを占め, その他の風向は 1~ 2 回と極端に少なかった. 一方, W~ NNWの風向はほとんど出現しなかった. このことは, 開口方向が北西である大島では風が海面上昇にほとんど寄与しないことを示しており, 三宅島や東京に比べて大島の潮位偏差が小さいこととの関連が示唆された ( 図 2 ). NNE~SWの偏回帰係数はほとんど正数を示した. 東寄りや南寄りの風も海面を上昇させていることになるが, この理由はわからなかった.NNE~ NEおよびSSEの偏回帰係数は.25~.31(cm/ (m/s) 2 ) の範囲にあり, - 6 -

三宅島とほぼ同じレベルであった.N と WSW の偏回帰係数は負数を示し, かつ, 他の風向の 場合よりも 1 桁高かった. この理由については, 次節で述べる. 最後に, 東京において, 出現した風向は12 方位であり, 偏回帰係数が正数を示したのは, 風向がENE~SとW~WNWの時であった. 風向が ENEやWNWの場合を除き, 風による海面上昇効果は東京湾と観測地点の開口方向が南西あることとほぼ合致した.ENEの偏回帰係数が正数となった理由はわからなかった.WNWについては, 出現頻度は 7 回であり, そのうち 6 回は潮位偏差の2 番目のピークを中心に 6 時間連続して WNWの風が吹いていた ( 図 2,3). そのため, WNWの偏回帰係数が主に潮位偏差の 2 番目のピークに反応したと考えられる. このように, 河川水位の上昇による潮位偏差のピークを風効果として取り込むことがあるので, 注意する必要がある. また,Wの偏回帰係数が他の風向に比べて大きな値を示しているが, この出現頻度は 1 回あった. この理由は大島の場合と同様に後述する. ENEと WNWおよびWの風向を除いた場合, それらの偏回帰係数は.231~.279(cm/ (m/s) 2 ) の範囲にあった. したがって, 風速の 2 乗 1(m/s) 2 に対して海面を 23.1~27.9cm 上昇させる効果があると考えられた. これは, 三宅島や大島の場合よりも1 桁高かった. この原因として, 東京では湾口から湾奥の観測地点までの距離が長いことなどが挙げられる ( 参考文献 1). 一方, 偏回帰係数が負数を示したのは, NW~Nの北寄りの風の場合であった. 成分ごとの経時変化の特徴これまでの考察結果を参考に, 重回帰モデルの成分ごとの経時変化の特徴について調べた. ただし, 気圧の場合は, 潮位偏差に影響を与えるのは気圧の基準気圧からの降下量であるから, 気圧成分は式 (1) におけるAP i に基準気圧を含む定数項 Cを加えた AP i + C] とした. 図 6に気圧成分 AP i + C], 風成分 [B k(i)w 2 i ] および残差成分の時系列を示した. まず, 気圧成分は 3 地点ともほぼ同じ変化パターンを示した. 最大値は三宅島で最も大きく7cm, 次いで大島 44cm, 東京 3cmとなり, 定数項が大きい順と一致した ( 表 4). 基準気圧の地域差などによるためと考えられた. 最大値を示す時間は早い順に三宅島, 大島, 東京となり, 気圧の場合 ( 図 3 ) と同順であった. 次に, 風成分をみるとは, 3 地点はそれぞれ異なる変化パターンを示した. 三宅島については, 風成分の最大値は 41cmを示し, 気圧成分のそれの約 6% であった. 海面の上昇効果は気圧成分より風成分のほうが小さかった. 大島の風成分は期間を通して低く推移しており, 最大値は 9.5cm( 気圧成分の約 23% ) で三宅島に比べて低かった. これは, 風速が三宅島よりも大島のほうが小さく, 開口方向とは反対の南寄りの風が主体であったことなどが影響しているためと考えられた. 東京の風成分については, 大小 2 つの風成分のピークが認められた. 1 番目のピークは三宅島よりも 3cmほど高い71cm,2 番目のピークはのこぎり状で 17~25cmを示した. 前者は, 東京湾内における風の効果とともに, 隅田川の 1 番目の水位上昇 ( 図 5) による影響もあったためと考えられた. 後者は, 隅田川の 2 番目のピークにたまたま WNWの風の効果 - 7 -

1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 1 3 5 7 9 図 6 8 6 気圧成分 M 気圧成分 O 気圧成分 T 4 2-2 -4 8 風成分 M 風成分 O 風成分 T 6 4 2-2 -4 3 2 残差成分 M 残差成分 O 残差成分 T 1-1 -2-3 -4 日. 時日. 時日. 時 として現れたものであり ( 表 4), 図 2の潮位偏差のピークとは良く対応していない. 隅田川の水位が及ぼす潮位偏差への寄与をより正確に把握するためには, 河川水位のデータを新たに説明変数に加えて重回帰分析する方法が考えられる. しかし, 潮位偏差と熊谷の水位の変化パターンが異なっているので ( 図 5), 熊谷の水位データを説明変数に加えるには無理がある. このように, 観測地点が河口域にある場合は, 特に, 河川水位の上昇の影響が高潮のピークに重なるような場合は注意して解析する必要がある. 最後に, 残差成分は, 台風の襲来前後の時間帯に注目すると, 東京だけが 2 回ほどやや高い値を示した. 本来は, 潮位偏差の 2 番目のピークは, 隅田川の水位上昇によるものであるから, 残差成分として明確に現れるはずであるが, そうならなかったのは, 前述したとおりである. 一方, 前節で述べたように, 大島における偏回帰係数は出現頻度が 1 回の N と WSWの風向では他の風向よりも 1 桁高い値を示した. それらの時間は 23 日 11 時と同 13 時であり, 少しわかりにくいかもしれないが, 図 6 によると, 残差成分はいずれも であった. このように風向の出現頻度が 1 回 ( その時間を iとする ) の場合は, 時点 iにおける一次式のみによって風の偏回回帰係数 B k(i) は決定される. すなわち, その偏回帰係数は 平均値 ではなく, 式 (1) の時間 iの式において残差 ( ε i) = の場合の 確定値 であることを意味している. 例えば, 風向が Nの場合は,23 日 11 時 (i=58 時間目 ) であるので, 観測データ : H 58 = cm,p 58= hpa,w 582 = 13(m/s) 2, そして, 係数 : A=-.927cm/hPa, C= 938cmを式 (1) の i=58 時間目の式に代入すると, 風の係数 B k(58) は, B (58)= (H 58 AP 58 C) /W58 2 = -.23 となり, 重回帰結果と一致する. 風向がWSWの場合も同様である. また, 東京における Wの - 8 -

偏回帰係数が他の風向に比べて大きな負数を示したのも同じ理由である. このことは, 重回帰モデルから当然に予想されることであり, 出現頻度が1 回の風の偏回帰係数をそのまま評価することは避けるべきである. さらに, 風向の出現頻度が数回程度の場合も, 注意して解析する必要がある. まとめ今回の潮位偏差の重回帰モデルを用いた要因解析は, 当初予定していなかったテーマであったが, 近年高潮の発生や被害が目立つことから, チャレンジしてみた. データは公表データをかき集めたため, 十分に満足できるものではないが, 重回帰モデルを用いて比較的簡単に高潮を予測できた. しかし, いくつか課題があった. その一つとして, 台風襲来時のみ南寄りの風が優勢となり, それらの風向の出現頻度が少なかったことが挙げられる. 今回用いた観測値は 1 時間間隔であるため, 時間間隔の短い例えば 1 分間隔のデータについて検討してみることも有用かもしれない. また, 風については, 同一風向で連続して吹くと, その効果が潮位偏差に累積する. さらに推定精度を良くするために, これらのことも含めて, 重回帰モデルを改良する余地がありそうである. 参考文献 1. 東京管区気象台, 平成 29 年台風第 21 号に関する東京都気象速報 https://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/bosai/disaster/ty1721/ty1721_kanku.pdf 2. 気象庁, 潮汐観測資料 http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/genbo/index.php 3. 気象庁, 過去の気象データ検索 http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php 4. 気象庁 ; 潮位観測情報 : 掲載地点一覧表 http://www.jma.go.jp/jp/choi/list1.html 5. 国土地理院 https://maps.gsi.go.jp/ 6.Excelアドイン工房 http://www7b.biglobe.ne.jp/~hayakari/ 7. 気象観測値を利用したリアルタイム高潮予測柚上悟志 http://www7.civil.kyushu-u.ac.jp/engan/pdf/research/h22_sodegami_sotsu.pdf 8. 国土交通省水文水質データベース http://www1.river.go.jp/ 9. 荒川下流河川事務所平成 25 年度事業概要 www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/1134.pdf 1. 高潮における気圧と風の効果の比較 https://www.jstage.jst.go.jp/article/proce1955/13//13 248/_pdf - 9 -