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3) 大地震動に対する安全性の検討は (16.5) 式による なお 付着割裂強度に基づく計算等によって 曲げ降伏時に付着割裂破壊を生じないことが確かめられた場合には 下記の算定を省略できる σy d b τ = K f (16.5) 4 y b ( l d ) d ここで C + W K = 0.3

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表 6.3 鉄筋のコンクリートに対する許容付着応力度 (N/mm 2 ) 長 期 短 期 異形鉄筋 かつ 5 上端筋 Fc 以下 75 0 その他の鉄筋 かつ.35 + Fc 以下 25 < 表を全面差し替えた > 長期に対する値の.5 倍 丸鋼 4 Fc かつ 0.9 以下 00

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目次構成

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要 約 本件建物は 構造上の安全性に問題がある 前回裁判で提出されている本件の問題点に加え 現地調査書 (( 株 ) 日本建築検査研究所岩山氏作成 ) 施工図及び竣工図をもとに再検討を行なった その結果下記に示すように建物の安全性を損なう重要な問題点が発覚した 発覚した問題点を反映し構造の再計算を行

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目 次 1. 構造計算の基本事項 ) 吹き抜け周辺での水平力伝達 修正 P ) 土間コンクリートによる 1 階壁 - 基礎間のせん断力伝達 修正 P ) 梁段差部の節点上下移動によるモデル化 荷重伝達 納まり 改定 P )

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1.2 耐荷力の算定対象となる柱部材の危険断面における耐荷力を算定する場合, 曲げ耐力 ( 課題 1にて学習した方法 ) およびせん断耐力 ( 課題 2の方法 ) を求め, 両者のうち小なる耐荷力がその部材の終局耐荷力となる. 別途設定された設計外力に対して十分な耐荷力を有することはもちろんのこと,

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技術基準改訂による付着検討 付着割裂破壊検討の取り扱いについてわかりやすく解説 2016 年 6 月 株式会社構造ソフト はじめに 2015 年に 建築物の構造関係技術基準解説書 ( 以下 技術基準と表記 ) が2007 年版から改訂されて 付着検討および付着割裂破壊検討に関して 2007 年版と2015 年版では記載に差がみられ お客様から様々な質問が寄せられています ここでは 付着検討や付着割裂破壊検討に関して 技術基準 (2007) と技術基準 (2015) との違いや 弊社の一貫構造計算プログラム BUILD. 一貫 Ⅴ ではどのように組み込まれて入力制御できるのかについて説明します 1. 技術基準 (2007) と技術基準 (2015) で何が変わったのか? 技術基準 (2007) では 許容応力度計算の付着検討は1991 年版の 鉄筋コンクリート構造計算規準 ( 以下 RC 規準と表記 ) を満足することでよいとされていました 付着割裂破壊検討に関しては 許容応力度計算では計算ルート2-3に関してわずかな記述があるだけで 基本的には計算ルート3で部材種別をFA~FCにするために 付着割裂破壊が生じないこと を確認する必要があるとされていたものです 技術基準 (2015) では 許容応力度計算の付着検討は RC 規準 (2010) を満足することでよいとされ 付着割裂破壊検討では 前述の計算ルート3での確認に加え 建築行政情報センター ( 以下 ICBA と表記 ) の Q&A No.19 により 計算ルート1,2でも検討が必要となりました ( なお 技術基準 (2015) では 計算ルート2-3は廃止されていますので 計算ルート2は 計算ルート2-1,2-2を指します ) 1/5

2. RC 規準の付着検討の推移 技術基準 (2015) では RC 規準 (2010) が採用されているわけですが RC 規準 (1991) やRC 規準 (1999) も関わった内容になっておりますので それぞれの年代の規準の位置づけを整理しながら RC 規準 (2010) の付着検討に関してまとめてみます RC 規準 (1991) は許容応力度に基づく設計法です RC 規準 (1999) は終局状態を対象とした付着割裂強度式から導かれているので 付着割裂破壊を防止して安全性を確保するための設計法でした しかしながら RC 規準 (1999) の設計法は付着割裂破壊を生じるおそれのない曲げ補強鉄筋に対しては過剰設計になる場合があることや 現行の建築基準法令で規定される許容付着応力度と整合していないために実務で採用されることが少ないなどの課題がありました そのためか 技術基準 (2007) での許容応力度計算での付着検討は RC 規準 (1991) でよいとされていました RC 規準 (2010) では 設計目標を以下の使用限界 損傷限界 安全限界の3つに分けています 使用限界: 長期荷重時の曲げ補強鉄筋の付着性能に起因して 部材の常時使用にあたって機能的ないしは感覚的な障害が生じないことにより使用性が確保される限界 損傷限界: 短期荷重時の曲げ補強鉄筋の付着性能に起因して 部材の過大な残留ひび割れや変形が生じないことにより損傷が制御される限界 安全限界: 曲げ補強鉄筋に沿った付着割裂破壊が生じないこと および付着割裂破壊にともなう部材の曲げ終局強度やせん断終局強度の低下が生じないことにより安全性が確保される限界 RC 規準 (2010) は 使用限界 損傷限界については RC 規準 (1991) の設計法を採用し 安全限界については RC 規準 (1999) の設計法を採用しています 使用限界 損傷限界の設計に使う許容付着応力度は建築基準法令と整合をもたせたものになっており RC 規準 (1991) とRC 規準 (1999) の2つを踏襲し融合させ 建築基準法令とも整合を持たせた規準となっています RC 規準 (2010) において 使用性確保については (16.1) または (16.2) 式で検討し 損傷制御のための検討は (16.3) または (16.4) 式で検討することになっています (16.1) と (16.3) は曲げ補強筋の曲げ付着応力度 ( 以下 τa1と表記 ) が許容付着応力度以下であることを確認する式で (16.2) と (16.4) は 鉄筋の引張り応力度に対する平均付着応力度 ( 以下 τa2と表記 ) が0.8 許容付着応力度以下であることを確認する式です τa1による検討は RC 規準 (1991) の付着検討と同じで τa2による検討が RC 規準 (2010) で追加されています 安全性確保のための検討は RC 規準 (1999) の付着検討式のσtをσyに置き換えたものとなっています 2/5

3. 付着割裂破壊の検討前章 1. で記述したように 技術基準(2015) では 付着割裂破壊検討は計算ルート3での確認に加え ICBAのQ&A No.19により 計算ルート1,2でも検討が必要となりました 計算ルート1,2の場合の付着割裂破壊検討 ICBAのQ&A No.19の内容は以下の通りです RC 規準 15 条 2.(3) の許容せん断力式は荒川式を簡略化したものですので 荒川式と同様 せん断破壊の検討とともに付着割裂破壊の検討も兼ねるものと考えることができます ただし カットオフ筋がある場合は 付録 1-3.1(1) はり6 終局強度 c) 付着 同 (2) 柱 6 終局強度 d) 付着などに従った安全性の検討 ( 1) が必要で RC 規準 (2010) 16 条 付着および継手 1 項 付着 (4) 3) に示す方法で検討することが考えられます 1: 下線はICBAのQ&Aの原文には付いていません 以降の説明を簡便にするために付けています つまり 通し筋については RC 規準 15 条 2.(3) の許容せん断力式を満足すればよいが カットオフ筋については 上記 Q&Aの下線部分の検討 又はRC 規準 (2010) 16 条 付着および継手 1 項 付着 (4) 3) に示す検討などを満足しなければならないことになります ここで 上記 Q&Aの下線部分の検討とは ( 付 1.3-20) 式を参照することになるので 鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針 同解説 による検討を意味することになります 計算ルート3の場合の付着割裂破壊検討技術基準 (2015) のルート3に関しての付着割裂破壊検討の記述では 技術基準 (2007) に記載されていた以下の2つの式が記載されていません 建築耐震設計における保有耐力と変形性能 の式 鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針 同解説 の式これに代わり 以下の2つの式が記載されています 鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指針 同解説 の式 ( 以下 靭性指針による付着割裂破壊検討と表記 ) RC 規準 (2010) の大地震動に対する安全性確保のための検討 ( 以下 RC 規準による付着割裂破壊検討と表記 ) なお この検討はRC 規準 (1999) の付着検討のσtをσyにした式と同等です 3/5

4. BUILD. 一貫 Ⅴ での付着および付着割裂破壊に関する制御データ技術基準 (2015) に準じた検討をする場合は 許容応力度計算では τa1による検討かτa2による検討を満足させ 計算ルート1,2においては カットオフ筋がある場合には付着割裂破壊しないことの確認が求められ 計算ルート3についても部材種別をFA~FCにするために 付着割裂破壊しないことの確認が必要です BUILD. 一貫 Ⅴ では 計算実行時の技術基準モードとして 2015 年版 ( 2) を選択すると 技術基準 (2015) に準じた計算ができるようになっています 技術基準モードを 2015 年版 にした場合 デフォルト設定で 以下の検討を行います 許容応力度計算の付着検討 RC 規準 (2010) のτa1による検討を行います ( 許容応力度計算データの [DCR1] でτa2による検討や τa1,τa2の両方で検討する設定が可能です ) 計算ルート1,2の付着割裂破壊検討カットオフ筋がある箇所に関して 靭性指針による検討方法で付着割裂破壊の検討を行います ( 許容応力度計算データの [DCR1] の7 項目の選択により カットオフ筋の有無に関わらず 全てのRC 大梁を検討対象とすることも可能です ) 計算ルート3の付着割裂破壊検討靭性指針による付着割裂破壊検討を行います ( 保有水平耐力計算データ [ULA4] の16 項目で RC 規準による付着割裂破壊検討を選択することもできます ) 2: 技術基準モードとして 2015 年版 を選択するには BUILD. 一貫 Ⅴ 2015 年版技術基準オプション のライセンスが必要です 今後 技術基準 (2015) の運用が本格化し 今まで以上に技術基準 (2015) に準じた付着および付着割裂破壊検討が求められます この解説記事が皆さまの設計のお役に立ち 参考になれば幸いです また 運用が本格化することで 今後 ICBAにて新たなQ&Aや記載の変更が登録される可能性がありますが 随時 対応してまいります ( 株式会社構造ソフト ) 4/5

( 付記 ) 弊社ホームページに掲載している以下の技術情報に関して 技術基準 (2015) に対応するにあたり 取り扱いが変わった点がありますので この機会をお借りして 変更点を記します ご確認のほどお願いします 技術情報 付着割裂破壊の検討の概要と取り扱いの注意点 (2014 年 2 月 ) URL http://www.kozosoft.co.jp/gijyutu/qa201402.html 変更点(1) RC 規準による方法のσyを BUILD. 一貫 Ⅳ+ から BUILD. 一貫 V に移行する時に1.1 倍を掛けるようにしました 変更点(2) RC 規準による方法の表現が BUILD. 一貫 Ⅳ+ ではRC 規準 (1999) のσtをσ yに置き換える方法としていましたが BUILD. 一貫 Ⅴ では RC 規準 (2010) の大地震動に関する検討方法の表現に変更しました ( 検討内容は同じです ) 変更点(3) 技術基準 (2007) による付着割裂破壊検討が 技術基準 (2015) では記載がありません 変更点(4) 技術基準 (2015) では靭性指針による付着割裂破壊検討がメインの記述になっています 変更点(5) 上記 (3)(4) に伴い 計算ルート3での付着割裂破壊検討のデフォルトを以下のように変更しました BUILD. 一貫 Ⅳ+ : 技術基準 (2007) による付着割裂破壊検討 BUILD. 一貫 Ⅴ : 靭性指針による付着割裂破壊検討 5/5