中国の石炭ピーク需要と政策 株式会社エイジアム研究所 平成 6 年 4 月
013 年の中国の経済概況 国内総生産 (GDP) は 8.3 兆ドル 対前年比 7.7% 増 一人当たり GDP は 6,103 ドル 輸出額は. 兆ドル 輸入額は.0 兆ドル FDI 投資額は 1,176 億ドル 010 年以降の FDI の年平均伸び率は 3.6% 005~010 年の 11.9% と比べて低下 010 年以降の輸出入の年平均伸び率は 11.8% 005~010 年の 15.9% と比べて低下 国内総生産 (GDP) と対前年比伸び率 輸出入と FDI ( 出所 ) 中国統計年鑑
013 年の工業製品生産 (4 つの世界一 ) 粗鋼生産は 7.79 億トン 003 年の 3.5 倍 世界全体の 49.3% セメント生産は 4. 億トン 003 年の.8 倍 世界全体の 58.1%(01 年 ) 石炭生産は 36.8 億トン 003 年の 倍 世界全体の 46.4%(01 年 ) 発電量は 5.4 兆 kwh 013 年の.8 倍 世界全体の 1.9%(01 年 ) 粗鋼 セメント生産 石炭生産 百万トン,500 011 01,000 1,500 1,000 500 0 ( 出所 ) 中国統計年鑑 BP 統計 世界鉄鋼協会 アメリカセメント協会 3
石炭消費 013 年の一次エネルギー消費は 6.3 億 toe 石炭消費は一次エネルギー消費全体の 66.6% 003~013 年の 10 年間で石炭消費は 6.8 億トン増 年平均増加量は日本の年間消費量 1.7 億トン (01 年 ) より多い 上海市の面積当たりの石炭消費量は 6.9 トン /m ( 日本は 0.5) 一次エネルギー消費構成 地域別の石炭消費量 黒龍江省 新彊ウイグル自治区 チベット自治区 青海省 1.3トン/ m 1.トン/ m 遼寧省 内モンゴル自治区北京市.トン/ m 1.5トン/ m 1.6トン/ m 天津市河北省山西省.6トン/ m 寧夏自治区山東省甘粛省 1.6トン/ m 陝西省河南省江蘇省 四川省重慶市 湖北省 安徽省 淅江省 吉林省 4.4トン/ m.6トン/ m 6.9トン/ m 上海市 石炭消費量年間 1億トン以下 石炭消費量年間 億トン以上 3 億トン未満 石炭消費量年間 3 億トン以上 面積当たりの石炭消費 雲南省 貴州省 広西自治区 湖南省 海南省 広東省 江西省 福建省 ( 出所 ) 中国統計年鑑 エネルギー統計年鑑 台湾 4
4 兆元の経済対策の後遺症 013 年の粗鋼生産能力は 10.4 億トン / 年 過剰能力は 1.3 億トン / 年以上 015 年の過剰能力は 億トン / 年以上に達する見込み 013 年のセメント生産能力は 30.7 億トン / 年 過剰能力は 4 億トン / 年以上 015 年の過剰能力は 10 億トン / 年に達する見込み 013 年の発電設備の平均稼働率は 51.4% だが 新規稼働容量は 9,400 万 kw で 01 年の東京電力の 6,558 万 kw より多い 013 年の石炭生産能力は 4 億トン / 年以上 過剰能力は 5 億トン / 年 中国のエネルギー多消費製品の生産量 中国の石炭消費量と世界の比較 ( 出所 ) 中国統計年鑑 BP 統計 5
世界の工場 の後遺症 地球温暖化ガスの大量排出 01 年の CO 排出量は日本の 7 倍 地方の生態環境の破壊 大気 水 土壌汚染の深刻化 国民健康レベルの低下 000 年以降肺がんの発症率が上昇 05 年に肺がん患者は 100 万人に達し 世界一の 肺がん大国 になる予測 中国の CO 排出量 年 排出量 単位 北京 天津 瀋陽 011 二酸化硫黄万トン 9.79 3.09 11.09 窒素酸化物万トン 18.83 35.89 13.03 粉塵 万トン 6.58 7.59 6.58 重度汚染日日数 79 45 33 01 二酸化硫黄万トン 9.38.45 11.1 窒素酸化物万トン 17.75 33.4 13.07 粉塵 万トン 6.68 8.41 6.76 重度汚染日日数 84 60 36 1/10 万人 ( 出所 )BP 統計 中国環境統計年鑑 都市部 農村部 病気 010 011 01 呼吸性 68.3 65.5 75.6 ガン 16.9 17.3 164.5 呼吸性 88.3 85.0 103.9 ガン 144.1 150.8 151.5 6
短中期の見通し 経済成長の予測 中国政府 :014 年の経済成長率 7% 011~015 年の年平均成長率 7% IMF:014 年の経済成長率 7.3% 018 年までの年平均成長率 7.1% OECD:01~018 年の経済の年平均成長率 7.7% Global Economic Outlook 014:01~018 年の年平均成長率 5.9% 中長期の見通し DRC 011~00 00~030 030~040 011~040 IEA 8.10% 5.7% (00~035) EIA 7.3% 5.7% 4.0% 5.6% IEEJ 7.6% 4.7% 3.4% 5.% Scenario A 6.% 5.1% - - Scenario B 7.6% 5.5% - - Scenario C 7.9% 5.% - - Asiam 7.8% 5.6% 3.8% 5.7% ( 出所 )IEA EIA IEEJ 国務院発展研究センター エイジアム研究所 7
弊所のエネルギー需要予測 00 年に鉄鋼 セメントなどのエネルギー多消費製品の需要はピークに達する 030 年の一次エネルギー消費は38.7 億 toe 年平均伸び率.6% 030 年に中国の石炭需要はピークに達し 石炭消費は. 億 toe (61.1%) 石油消費は6.8 億 toe(17.5%) 天然ガス消費は4.0 億 toe (10.%) となる 石炭多消費製品の需要予測 一次エネルギーの需要予測 ( 出所 ) エイジアム研究所 8
国際機関や中国のエネルギー需要予測 IEA は 030 年の一次エネルギー需要を 39.5 億 toe EIA は 55.4 億 toe と予測 中国国務院発展研究センターは 030 年の一次エネルギー需要を 4.3 億 toe と予測 日本エネルギー経済研究所 (IEEJ) は IEA とほぼ同様の予測傾向で 030 年の一次エネルギー需要を 40.1 億 toe と予測 予測機関 エネ源 011 00 030 040 予測機関 エネ源 011 00 030 040 石炭 1,866,118,166 - 石炭 1,918,509,996 3,061 IEA IEEJ 石油 446 615 70 - 石油 508 70 857 1,01 EIA 天然ガス 110 57 393 - 天然ガス 104 05 345 463 その他 30 58 684 - その他 45 589 815 998 合計,743 3,519 3,945 - 合計,774 4,006 5,013 5,54 石炭 1,859,061,189,51 石炭 1,918,51 1,994 - 石油 44 645 783 866 石油 508 556 664 - DRC 天然ガス 108 7 471 68 天然ガス 104 370 746 - その他 319 455 566 678 その他 45 509 84 - 合計,78 3,433 4,009 4,43 合計,774 3,686 4,7 - ( 出所 )IEA EIA IEEJ 国務院発展研究センター 9
エネルギー政策 ( 基本方針と数値目標 ) 石炭消費の抑制 015 年に一次エネルギー需要全体に占める比率を 65% 以下に クリーンコール利用の推進 効率改善 石油消費の伸び率を抑制 天然ガス 特にシェールガス 炭層ガスなどの非在来型ガスの開発を強化し 一次エネルギー需要全体に占める天然ガスの比率を高める 水力 風力 PV などの再生可能エネルギーを積極的に開発 安全性と効率の高い原子力発電を開発 00 年の一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率を 15% 天然ガスの比率を 10% 石炭の比率を 60% 以下に 030 年の一次エネルギーに占める非化石エネルギーの比率を5% 天然ガスの比率を15% 石炭の比率を50% 以下に ( 出所 ) 国務院発展研究センター 10
エネルギー政策の具体策 各地の石炭消費総量の抑制 余剰生産設備の廃棄 00 年の石炭消費を 43~45 億トンに抑制 省エネの強化 クリーンコール技術利用の促進 030 年の水力発電 ( 揚水式は含まず ) の発電能力を 4. 億 kw とし 開発可能な水力の 77% を開発 国内の従来型ガス シェールガス 炭層ガス開発の強化 030 年の国内ガス生産能力を 4,400~5,100 億 m 3 / 年 海外からの天然ガス輸入を,000~,500 億 m 3 / 年に 石油代替技術の開発 電気自動車の普及などにより 00 年の石油消費を 5.5 億トン以内 030 年は 6.5 億トン以内に抑制 ( 出所 ) 国務院発展研究センター 11
014 年の 大気汚染防止行動計画 経済構造の転換 017 年の一次エネルギー消費に占める石炭比率を 65% 以下に PM.5 と PM10 対策として 都市部の小型石炭焚ボイラーを廃止 天然ガス 電力 集中式熱供給に転換 エネルギー多消費産業の生産能力拡大を禁止 老朽化生産設備を廃棄 015 年までに銑鉄 1,500 万トン 粗鋼 1,500 万トン セメント 1 億トン 板ガラス,000 箱の生産能力を削減 クリーンコールの利用促進 選炭率を 70% 以上に 山元石炭火力発電の開発 長距離 UHV 送電線の敷設 ガス供給能力増強 小規模炭鉱閉鎖 低品位炭輸入禁止 石炭総量規制 017 年に目標責任管理制度導入 環境部が各地の政府と契約 ( 出所 ) 国務院 大気汚染防止行動計画 の政策内容を整理した 1
各地の 大気汚染防止行動計画 各地の 行動計画 を調べたところ 石炭生産減を掲げた地域は 5% で 合計 8,300 万トン減 需要抑制を掲げた地域は 39% 数値目標なし 生産増加の可能性が高い地域は 36% 石炭代替エネルギーとして 天然ガスを挙げたのが0 地域 再生可能エネルギーが13 地域 電力移入が5 地域 原子力が 3 地域 なしが 地域 ( 複数選択 ) 石炭削減計画の有無 石炭代替策 ( 出所 ) 各地の 大気汚染防止行動計画 の政策を整理した 13
中国のエネルギー政策に対する評価と課題 石炭消費抑制には代替エネルギーの供給能力強化が不可欠で 経済発展にも影響を及ぼす 炭鉱閉鎖や石炭多消費産業の生産減は 雇用 社会問題につながる恐れがある 水力 シェールガス 風力の開発は環境 移民 インフラ 技術がネックである 沿海部の石炭発電所閉鎖や産炭地の電源開発は 環境汚染地域を移転する 地方政府は目標達成のために 統計データを改ざんした可能性が高い PM.5 問題の解決には地域間協力が必要だが 利害が絡み容易には進まない 統計誤差 日本への影響 中国 石炭消費減 ガス輸入増 日本 ( 出所 ) 中国エネルギー統計 エイジアム研究所 14