2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

[2] のれんの発生原因 企業 ( または事業 ) を合併 買収する場合のは 買収される企業 ( または買収される事業 ) のおよびを 時価で評価することが前提となります またやに計上されていない特許権などの法律上の権利や顧客口座などの無形についても その金額が合理的に算定できる場合は 当該無形に配

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日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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2. 中小企業のための主な優遇制度 注 : 各項目に付記している番号は 関連する参考資料です 番号に対応する資料名などは 5~6 ページに掲載していますのでご参照ください [1] 中小法人等 に適用される主な優遇制度 紙面の都合により ここでは制度の種類と それに関連する参考資料の番号を紹介していま

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使用価値 31 将来キャッシュ フロー 36 使用価値の算定に際して用いられる割引率 43 共用資産及びのれんの取扱い 48 共用資産の取扱い 48 のれんの取扱い 51 減損処理後の会計処理 55 開示 57 貸借対照表における表示 57 注記 58 その他 59-2 借手側が所有権移転外ファイナ

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参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

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3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

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1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

4 地方公営企業会計基準の見直しの影響 ( 概要 ) 地方公営企業会計基準の見直しのため 平成 23 年度に地方公営企業法施行令等を改正し その改正内容が平成 26 年度予算 決算から全面的に適用となっている (1) 見直しの趣旨 昭和 41 年以来大きな改正がなされていない地方公営企業会計制度と国

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2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

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CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

2018 年 8 月 10 日 各 位 上場会社名 エムスリー株式会社 ( コード番号 :2413 東証第一部 ) ( ) 本社所在地 東京都港区赤坂一丁目 11 番 44 号 赤坂インターシティ 代表者 代表取締役 谷村格 問合せ先 取締役 辻高宏

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説明会資料 IFRSの導入について

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貸借対照表 (2019 年 3 月 31 日現在 ) ( 単位 : 千円 ) 科目 金額 科目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 3,784,729 流動負債 244,841 現金及び預金 3,621,845 リース債務 94,106 前払費用 156,652 未払金 18,745

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経 ViewPoint 営相資産スリム化の意義と実行のポイント談 ~ 決算書は利益だけでなく資産構成にも注目 ~ 米澤潤平相談部東京相談室 企業経営者や経理担当者などの中には 損益計算書 (P/L) の見方はわかっても貸借対照表 (B/S) の見方がよくわからないとか 利益の重要

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CC2: 連結貸借対照表の科目と自己資本の構成に関する開示項目の対応関係 株式会社三井住友フィナンシャルグループ ( 連結 ) 項目 資産の部 イロハ 公表連結貸借対照表 (2019 年 3 月末 ) 現金預け金 57,411,276 コールローン及び買入手形 2,465,744 買現先勘定 6,4

第28期貸借対照表

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

連結会計入門 ( 第 6 版 ) 練習問題解答 解説 練習問題 1 解答 解説 (129 頁 ) ( 解説 ) S 社株式の取得に係るP 社の個別上の処理は次のとおりである 第 1 回取得 ( 平成 1 年 3 月 31 日 ) ( 借 )S 社株式 48,000 ( 貸 ) 現預金 48,000

様式3

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2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

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国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

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1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

従って IFRSにおいては これらの減価償却計算の構成要素について どこまで どのように厳密に見積りを行うかについて下記の 減価償却とIFRS についての説明で述べるような論点が生じます なお 無形固定資産の償却については 日本基準では一般に税法に準拠して定額法によることが多いですが IFRSにおい

連結の補足 連結の 3 年目のタイムテーブル B/S 項目 5つ 68,000 20%=13,600 のれん 8,960 土地 10,000 繰延税金負債( 固定 ) 0 利益剰余金期首残高 1+2, ,120 P/L 項目 3 つ 少数株主損益 4 1,000 のれん償却額 5 1,1

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3. 基本財産及び特定資産の財源等の内訳 基本財産及び特定資産の財源等の内訳は 次のとおりです 科目当期末残高 ( うち指定正味財産からの充当額 ) ( うち一般正味財産からの充当額 ) ( うち負債に対応する額 ) 基本財産投資有価証券 800,000,000 (662,334,000) (137

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連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

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MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT 31 JANUARY 2018 上記のプロセスに関する補足は下記の通りです グルーピンググルーピングとは 個々の固定資産を 固定資産簿価と回収可能価額を比較する単位に分けていくことをいいます 固定資産がどのようにキャッシュを生み出すのかを考える

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Ⅱ. 資金の範囲 (1) 内訳 Ⅰ. 総論の表のとおりです 資 金 現 金 現金同等物 手許現金 要求払預金 しかし これはあくまで会計基準 財務諸表規則等に記載されているものであるため 問題文で別途指示があった場合はそれに従ってください 何も書かれていなければ この表に従って範囲を分けてください

精算表 精算表とは 決算日に 総勘定元帳から各勘定の残高を集計した上で それらに修正すべき処理 ( 決算整理仕訳 ) の内 容を記入し 確定した各勘定の金額を貸借対照表と損益計算書の欄に移していく一覧表です 期末商品棚卸高 20 円 現金 繰越商品 資本金 2

企業会計の利益 法人税法上の所得金額 売上原価販売費一般管理費営業外費用特別損失 売上 営業外収益特別利益 損金の額原価費用損失の額 益金の額 ( 収益の額 ) 当期純利益所得の金額 2 益金の額に算入すべき金額とは何か益金の額に算入すべき金額とは 法人税法の規定や他の法令で 益金の額に算入する 又

IFRSへの移行に関する開示

に相当する金額を反映して分割対価が低くなっているはずですが 分割法人において移転する資産及び負債の譲渡損益は計上されませんので 分割法人において この退職給付債務に相当する金額を損金の額とする余地はないこととなります (2) 分割承継法人適格分割によって退職給付債務を移転する場合には 分割法人の負債

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

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[2] 道路幅員による容積率制限 ( 基準容積率 ) 敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を 容積率 といい 用途地域ごとに容積率の上限 ( 指定容積率 ) が定められています しかし 前面道路の幅員が 12m 未満の場合 道路幅員に応じて計算される容積率 ( 基準容積率 ) が指定容積率を下回る

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2019 年 8 月 22 日 各位 インフラファンド発行者名 東京インフラ エネルギー投資法人 代表者名 執行役員 杉本啓二 ( コード番号 9285) 管理会社名 東京インフラアセットマネジメント株式会社 代表者名 代表取締役社長 永森利彦 問合せ先 取締役管理本部長 真山秀睦 (TEL: 03

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2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

平成18年度注記事項

Transcription:

減損会計の基礎知識 米澤潤平相談部東京相談室 昨今 上場企業などの有価証券報告書などにおいて 減損会計の適用による 減損損失 が 損益計算書の特別損失に計上されている例が非常に多くなっています 新聞などでも 事業について減損処理を行い 億円の減損損失が計上された といった記事が頻繁に見受けられようになり その名称は一般にも定着してきました 今回は このような状況を踏まえ 減損会計の意義や目的などを改めて確認し 減損損失計上に至るまでの過程などについて 事例を示して解説します 1. 減損会計とは [1] 意義 目的 企業は 将来の収益獲得のため固定資産に投資をしますが 投資した案件の中には予想に反して収益性が低下し 投資額の回収が見込めなくなってしまうものもあります このような状態を 固定資産の減損 と言います 減損会計は 固定資産の減損が生じた場合には 一定の条件の下で 固定資産の帳簿価額を減額させることを求めています この処理を 減損処理 と言い その際には帳簿価額を減額するとともに 同額を 減損損失 として損益計算書の特別損失に計上することになります 固定資産の減損は いずれ売上の減額や固定資産の除却損などで顕在化しますが 減損会計では将来に損失を繰り延べないため 減損が生じた時点での減損処理を求めています このような目的 性格から 減損処理は金融商品に適用される時価評価 ( 決算日時点の保有資産の時価を貸借対照表に計上し 評価損益の把握を目的とする ) とは異なるものです [2] 適用関係 中小企業の会計に関する指針 および 中小企業の会計に関する基本要領 では 技術的困難性などの理由から 中小企業には減損会計の厳密な適用を求めていません したがって 直接的に減損会計の適用を受けるのは 上場企業やその子会社等の金融商品取引法適用会社および会社法上の会計監査人設置会社ということになります しかし 固定資産の減損が生じた場合には 将来に損失を繰り延べないため 減損処理 ( 過大な帳簿価額の減額 減損損失の計上 ) を行うという減損会計の趣旨を理解しておくことは 中小企業経営においても非常に有用といえます 1

2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうしたことを踏まえ 減損会計では 減損処理の検討を行うにあたり まずCFを生み出す固定資産の単位を決定することを求めています これを グルーピング と言い その際の単位は 概ね独立したCFを生み出す最小の単位 とされています これは 後述しますが グルーピングの単位が大きくなるほど減損処理を求められる可能性が小さくなり また減損処理を求められる場合の減損損失の金額が小さくなるなどの理由によるものです 例えば 小売業を営む甲社は 乙エリアにA B Cの3 店舗を展開し 各店舗個別に収益管理を行う一方 それとは別に乙エリア全体の収益管理も行っているとします ( 下図 ) このような場合には 減損会計を適用するグルーピングの単位は原則各店舗となり 乙エリアをグルーピングの単位とすることは原則として認められません グルーピングにおける 概ね独立したCFを生み出す最小の単位 の考え方は難しい部分もありますが 実務的には 管理会計上の区分や投資の意思決定を行う際の単位などを考慮してグルーピングの方法を定めることになると考えられます 乙エリア ( エリア全体の収益管理 ) A 店舗 B 店舗 C 店舗 [2] 減損の兆候の判定 資産のグルーピングを終えた後は 当該資産グループについて 3つのステップに従って 減損処理を行うかどうか また減損処理を行うとすればいくらの減損損失を計上するのか を検討していきます 減損会計の3ステップ 1 兆候 2 認識 3 測定 最初のステップである 兆候 の判定とは 主に利益操作の排除や実務負担への配慮という側面から求められるものです 企業はさまざまな投資を行っていますから グルーピングされたそれぞれの 2

資産グループについて1つひとつ減損処理の検討を行っていくことは困難です そこで 各資産グループについて まず収益性低下などの減損の 兆候 があるかどうかを確認し 実際に兆候がある資産グループについては次のステップに進みます 反対に言えば 兆候がない資産グループについては この時点で減損処理が 不要 と判断できるということです 減損の兆候として 会計基準では下表のような状況を示しています 検討を行う資産グループがいずれかに該当する場合は 次の 認識 のステップに進まなければなりません なお 下表で示した兆候の 概要 例示 は 紙幅の都合により 代表的なものを列記しています 兆候 営業活動から生ずる損益または CF が継続してマイナスの場合 使用範囲または方法について 回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合 経営環境の著しい悪化の場合 概要 例示 概ね過去 2 期がマイナス ( 事業の立ち上げ時などにおいては該当しない場合もあり ) 事業の廃止や再編成 ( 事業の大規模縮小などを含む ) 著しい稼働率の低下や著しい陳腐化 材料価格の高騰 販売量の著しい減少 重要な法律改正 規制緩和や規制強化 市場価格の著しい下落の場合 市場価額が帳簿価額の 50% 程度以上 下落した場合 [3] 減損の認識の判定減損の兆候の判定ステップで 減損の兆候あり と判断された資産グループは 次の減損の 認識 の判定ステップに進みます 減損の 認識 の判定とは 減損の兆候ありとされた資産グループについて 本当に減損損失を認識 ( 計上 ) する必要があるかどうかを判定することです 具体的には 対象となる資産グループを使用 売却するなどにより 将来生み出すCFが 当該資産グループの帳簿価額を下回る場合は 減損損失を認識すべき と判断します なお 将来 CFは その算定期間が長期にわたるため 通常はお金の時間価値を鑑み割引計算を行いますが ここでは割引前の将来 CFを用います これは 割引前の時点の将来 CFが現在の帳簿価額を下回るのであれば 将来的に損失が発生する可能性が高く 減損の存在は相当程度に確実であろう との考えに基づきます 資産グループの割引前将来 CF 資産グループの帳簿価額 減損損失を認識する必要あり! ここで 第 1 項 資産のグルーピング で紹介した小売業 甲社のA 店舗について 減損の認識の判定 ( 減損の兆候あり と判定されたものとします) を行ってみます 次ページの表はA B C 3

各店舗および乙エリア全体 ( 共用資産などはなく 3 店舗の単純合計 ) の資産グループの帳簿価額と 割引前将来 CFを一覧にしたものです 単位 : 千円 A 店舗 B 店舗 C 店舗 乙エリア全体 帳簿価額 18,000 22,000 15,000 55,000 割引前将来 CF 16,000 25,000 20,000 61,000 この場合 A 店舗は割引前将来 CFが帳簿価額を下回っているため 減損損失を認識する必要あり と判定されます しかし 仮に第 1 項 資産のグルーピング の段階で 乙エリア全体を 独立したCFを生み出す最小の単位 としてグルーピングの単位とした場合は 割引前将来 CFが帳簿価額を上回っているため 減損損失の認識は 不要 と判定されてしまいます この点は 第 1 項でも説明しましたが グルーピングの単位が大きくなるほど減損処理を求められる可能性が小さくなってしまう ことから 留意が必要です [4] 減損損失の測定減損の認識の判定ステップで 減損損失を認識する必要あり と判定された資産グループは 最後の減損損失の 測定 ステップに進みます 減損損失の 測定 とは 文字どおり減損損失をいくら計上すべきかを測定することです 計上すべき減損損失の金額は 資産グループの 帳簿価額 と 回収可能価額 との差額となります 回収可能価額とは 資産グループを構成する固定資産を1 売却した場合の 正味売却価額 と 2 継続して使用した場合の割引後の将来 CF( 基本的には第 2 項 減損の兆候の判定 で算出した割引前将来 CFを現在価値に割引計算したもの ) である 使用価値 を比較し どちらか大きい方となります 資産グループの帳簿価額 回収可能価額 ( 正味売却価額 or 使用価値 ) 減損損失計上額 (P/L 特別損失 ) 甲社のA 店舗の固定資産の正味売却価額が 10,000 千円 使用価値が 13,000 千円であったとすると A 店舗における減損損失の額は以下のようになります 18,000 千円 ( 帳簿価額 )-13,000 千円 ( 使用価値 = 回収可能価額 )=5,000 千円なお 一度計上した減損損失は たとえ将来に収益性が回復したとしても 戻入れを行うことはできません 4

3. 税務との関連 法人税においては 会計上の減損損失は固定資産の評価損を計上したものとされます 法人税における固定資産評価損の損金算入要件は 減損会計の減損処理要件と異なるため 多くの場合 減損損失は法人税における評価損の損金算入要件を満たしません この場合 会計上の減損損失の額 ( 土地等の非償却性資産に係るものを除く ) について 税務上は減価償却費として損金経理したものとされ 償却限度額を超える部分の金額は損金不算入とされます なお 損金不算入とされた場合は 税務上と会計上の固定資産の帳簿価額に差異が発生 ( 将来減算一時差異 ) するため 本来は税効果会計を適用していく必要があります 内容は 2015 年 9 月 25 日時点の情報に基づいて作成されたものです 本情報は 法律 会計 税務などの一般的な説明です 個別具体的な法律上 会計上 税務上等の判断や対策などについては専門家 ( 弁護士 公認会計士 税理士など ) にご相談ください また 本情報の全部または一部を無断で複写 複製 ( コピー ) することは著作権法上での例外を除き 禁じられています みずほ総合研究所相談部東京相談室 03-3591-7077 / 大阪相談室 06-6226-1701 http://www.mizuho-ri.co.jp/service/membership/advice/ 5