生化学への導入 平成 30 年 4 月 12 日 病態生化学分野教授 ( 生化学 2) 山縣和也
生化学とは 細胞の化学的構成成分 およびそれらが示す化学反応と代謝機序を取り扱う学問 ハーパー生化学
生化学 1 生化学 2
生化学 炭水化物 / 糖 脂質 アミノ酸について勉強します 糖 脂質生化学 2 脂質 アミノ酸 核酸 生化学 1
生化学と医学は密接に関係する 炭水化物 脂質 生化学 蛋白質 核酸 糖尿病糖原病 高脂血症動脈硬化 医学 鎌状赤血球貧血 レッシュ ナイハン病 病気 病態の理解に生化学的な知識が重要
レッシュ ナイハン症候群 尿酸の代謝に関わる遺伝子の異常による先天的代謝異常症 ( 高尿酸血症 )
アルカプトン尿症 アミノ酸の代謝異常 Archibald E. Garrod (1857-1936) ホモゲンチジン酸が空気で酸化されて黒い色素になる
原発性家族性高コレステロール血症 LDL 受容体の遺伝的欠損 ( 常染色体優性遺伝形式 ) 著明な高コレステロール血症 (LDL): 脂質代謝異常若年性冠動脈疾患 Stormie Jones は 6 歳ですが 狭心症のため冠動脈ハ イハ ス手術を受けています 悪玉コレステロール LDL コレステロールが血管に蓄積する
筋 PFK 欠損症 ( 垂井病 糖原病 VII) 解糖系 グルコース グルコース 6- リン酸 筋肉の PFK( 解糖系酵素 ) の異常により運動の障害がおきる フルクトース 6- リン酸 ホスホフルクトキナーゼ (PFK) フルクトース 1,6- ビスリン酸 日本人が発見した解糖系酵素 (PFK) の異常による病気
グルコキナーゼ欠損症 (MODY2) 解糖系 グルコース GK( 解糖系酵素 ) の異常により 若年性の糖尿病が発症する グルコース 6- リン酸 グルコキナーゼ (GK) フルクトース 6- リン酸 フルクトース 1,6- ビスリン酸
生化学と医学は密接に関係する 炭水化物 脂質 生化学 蛋白質 核酸 糖尿病糖原病 高脂血症動脈硬化 医学 鎌状赤血球貧血 レッシュ ナイハン病 病気 病態の理解に生化学的な知識が重要
生化学 2 のスケジュール 4 月 12 日講義開始 5 月 31 日中間試験 8 月 2 日生化学 2 試験 講義プリント配布します 講義資料 : 熊本大学病態生化学 で検索 ID: Biochem2 パスワード :93WeYgTr 生化学 2 の合否判定は 中間試験 本試験 ( 約 8 割 ) の合計で行います 再試験は 1 回のみ行います 教科書 : ハーパー生化学
本日の学習の目標 グルコース代謝の全体像を理解する 蛋白質を構成するアミノ酸の構造を理解する
物質代謝ー同化と異化 ブドウ糖 高校生物の内容
グルコース ( ブドウ糖 ) の異化 ピルビン酸 高校生物の内容
ATP は生体内でのエネルギーの共通通貨 高校生物の内容
グルコースの異化 ( 解糖系 + クエン酸回路 電子伝達系 ) 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系 Fig12-01
グルコース代謝の全体像 解糖系グルコースからピルビン酸 クエン酸回路ピルビン酸から NAD をつくる 電子伝達系 NAD から ATP をつくる 高校生物の内容
乳酸発酵とアルコール発酵 微生物が無酸素状態のもとでブドウ糖を分解する現象を発酵という 酵母菌はグルコースを分解してアルコールと二酸化炭素を生成する ( アルコール発酵 ) 高校生物の内容
ポジトロン断層撮影法 (PET) がん細胞で解糖の亢進とそれに伴うグルコースの取り込み増加が起きていることを利用して 新しい診断法が開発されている グルコースを F-18 という放射性同位元素でラベルした FDG( フルオロデオキシグルコース ) を注射するとがんの場所にとりこまれる
生化学 2 の講義では主にグルコース代謝を学びます グルコース代謝糖尿病やメタボリックシンドローム グリコーゲン病 癌など様々な病気の理解に重要
アミノ酸 アミノ酸はタンパク質などの前駆体 アミノ酸は窒素を含む点で糖や脂質とは異なる アミノ酸はエネルギー源になる アミノ酸は貯蔵されない 糖や脂肪のようにエネルギー源として蓄積されない
アミノ酸 Amino acid α アミノ酸 カルボキシル基 ( 酸 ) Carboxyl group (acid) アミノ基 ( 塩基 ) Amino group (base) + 3N CO2 C α 水素 α-ydrogen R α 炭素 α-carbon 側鎖 Side chain 両性電解質 Ampholyte, amphoteric electrolyte 水溶液中で酸, 塩基の両方の性質を示す
L- アミノ酸と D- アミノ酸 L- アミノ酸 CO 2 - 鏡 D- アミノ酸 CO 2 - + 3 N C C N 3 + R R CO 2 - CO 2 - + 3 N C C N + 3 R R タンパク質は通常 20 種類の L- アミノ酸からなる ( 側鎖 R は 20 種類 ) グリシン (R=) を除き α- 炭素は不斉炭素プロリンは側鎖とアミノ基がつながっている ( 環状構造 )
ふせい 不斉炭素原子 4 価の炭素原子に 4 個とも異なる原子や原子団が結合している ( 基準物質 ) 鏡面に映した形は重ね合わせることができない : 光学異性体 異性体 : 分子式が同じでも 原子の結合順序が異なり 性質も異なる物質を互いに異性体という
アミノ酸の構造と化学的特性 アミノ酸 Amino acid タンパク質の基本単位 タンパク質を構成する部品として用いられるアミノ酸は 20 種類あり それらがつながってタンパク質になる どのようなアミノ酸がどのような順番でつながるかによって様々なタンパク質が形成される
タンパク質の基本構造 多くのアミノ酸が結合してポリペプチドをつくる + 3 N C R 1 O C N C R 2 O C N O C C R 3 N O C C R 4 N O C C R n-3 N O C C R n-2 N O C C R n-1 N O C C R O - n アミノ末端 Amino terminus N 末端 N-terminus ペプチド結合 Peptide bond ペプチド結合 Peptide bond カルボキシル末端 Carboxyl terminus C 末端 C-terminus + 3 N C C R 1 O O O + + 3 O - N C C + 3 R O - N C C 2 R 1 N C R 2 C O O - + 2 O アミノ酸 アミノ酸 ジペプチド Dipeptide アミノ酸残基 2 個ペプチド結合 1 個
一次構造アミノ酸配列, アミノ末端を 1 として, カルボキシル末端にむかって 2,3,4... Frederick Sanger( 英,1918 ) 1955 年インシュリンの一次構造一次構造決定法の確立 1956 年ノーベル化学賞
20 種類のアミノ酸 (1) 名称名称 ( 英語 ) 略号覚え方 アラニン Alanine Ala A Alanine グルタミン酸 Glutamic acid Glu E gluetamic acid グルタミン Glutamine Gln Q Q-tamine アスパラギン酸 Aspartic acid Asp D aspardic acid アスパラギン Asparagine Asn N asparagine ロイシン Leucine Leu L Leucine グリシン Glycine Gly G Glycine リシン Lysine Lys K before L セリン Serine Ser S Serine バリン Valine Val V Valine
20 種類のアミノ酸 (2) 名称名称 ( 英語 ) 略号覚え方 アルギニン Arginine Arg R arginine トレオニン Threonine Thr T Threonine プロリン Proline Pro P Proline イソロイシン Isoleucine Ile I Isoleucine メチオニン Methionine Met M Methionine フェニルアラニン Phenylalanine Phe F Fenylalanine チロシン Tyrosine Tyr Y tyrosine システインン Cysteine Cys C Cysteine トリプトファン Tryptophan Trp W two rings ヒスチジン istidine is istidin
R アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 C COO- 非極性 ( 疎水性 )( 側鎖 ) アミノ酸 N 3 + 側鎖 (R) 名称, 略号側鎖 (R) 名称, 略号 3 C 3 C C 3 C グリシン Gly, G アラニン Ala, A バリン Val, V C 2 N C 2 フェニルアラニン Phe, F トリプトファン Trp, W 3 C 3 C 3 C C C2 C 2 C C 3 ロイシン Leu, L イソロイシン Ile, I 3 C S C 2 C 2 メチオニン Met, M 2 C 2 C 2 C + C N 2 COO - プロリン Pro, P
R C COO- N 3 + アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 極性 ( 親水性 )( 無電荷 )( 側鎖 ) アミノ酸 側鎖 (R) 名称, 略号側鎖 (R) 名称, 略号 O C 2 C3 C O セリン Ser, S トレオニン Thr, T 2 N O O C C 2 アスパラギン Asn, N S C 2 システイン Cys, C 2 N C C 2 C 2 グルタミン Gln, Q O C 2 チロシン Tyr, Y
R アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 C COO- 極性 ( 電荷 )( 側鎖 ) アミノ酸 N 3 + 側鎖 (R) 名称, 略号側鎖 (R) 名称, 略号 + 3 N C 2 C 2 C 2 C 2 2 N + 2 N C N C 2 C 2 C 2 リシン Lys, K アルギニン Arg, R - OOC C2 アスパラギン酸 Asp, D C 2 + N N ヒスチジン is, C 2 - OOC C2 グルタミン酸 Glu, E
R アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 C COO- 芳香族 ( 側鎖 ) アミノ酸 N 3 + 側鎖 (R) 名称, 略号 C 2 フェニルアラニン Phe, F O C 2 チロシン Tyr, Y N C 2 トリプトファン Trp, W
R C COO- N 3 + アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 酸性 ( 側鎖 ) アミノ酸 側鎖 (R) 名称, 略号 - OOC C2 アスパラギン酸 Asp, D C 2 - OOC C2 グルタミン酸 Glu, E
R C COO- N 3 + アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 塩基性 ( 側鎖 ) アミノ酸 側鎖 (R) + 3 N C 2 C 2 C 2 C 2 名称, 略号 リシン Lys, K 2 N + 2 N C N C 2 C 2 C 2 アルギニン Arg, R C 2 N + N ヒスチジン is,
R C COO- N 3 + アミノ酸の分類 : 側鎖 (R) の性質によって分類 含硫 ( 側鎖 ) アミノ酸 側鎖 (R) 名称, 略号 S C 2 システイン Cys, C C 2 3 C S C 2 メチオニン Met, M
蛋白質中の修飾アミノ酸残基 コラーゲンの中ではプロリンが水酸化される このときビタミン C が必要 ビタミン K によりプロトロンビンのグルタミン酸がカルボキシ化される リン酸化 リン酸化
本日のまとめ 生化学は細胞や生体内の分子を研究し それらの分子が示す化学反応を研究する科学である 生化学は医学と密接に関連している 多くの病気は体の生化学反応が異常になった状態である 病気の原因を解明し 適切な治療 診断法を開発するためには生化学が基本となる 20 種類のアミノ酸の構造を理解すること アミノ酸がペプチド結合して蛋白質が形成される
理解の確認のために 1. 体内にある有機物を分解してエネルギーを得る反応を同化という 2. ADPが分解してATPになるときエネルギーが放出される 3. 解糖はミトコンドリアでおきる 4. クエン酸回路は細胞質でおきる反応である 5. 酵母によって無酸素状態でグルコースからエタノールとCO2を生じる反応を アルコール発酵という 6. 解糖系ではグルコースが分解されてクエン酸が生じる 7. 蛋白質の構成アミノ酸は通常 L 型である 8. アミノ末端はC 末端のことである 9. 蛋白質は多数のアミノ酸がペプチド結合により結びついたものである 10. アミノ酸のうち最も小さい側鎖をもつものはアラニンである 11. メチオニンはイオウを含むアミノ酸である 12. アスパラギン酸は塩基性アミノ酸である 13. リシンは酸性アミノ酸である 14. ビタミンKはグルタミン酸のカルボキシ化をおこなう