MRI による半月板損傷の診断 幅 金森勇雄 浩嗣 佐藤典秀 大田典幸 + 一 + 小野木満照 蟹江匡 (2000 年 12 月 26 日受理 ) はじめに 従来, 半月板損傷の診断には関節造影が行われていたが, 関節穿刺, 造影剤の注入など侵襲性 の手技を伴うという短所があった 一方 MR1 による半月板損傷の診断率は約 90% であり, 半月板 の変性も診断可能な利点も有し,MRI を関節鏡の適応決定に用いる専門医が増えている 半月板は繊維軟骨からなる半月形の構造で, 内側と外側の一対がある その片縁部は厚く, 膝 関節包に付着するのにたいして, その内方部は薄い 外側半月板は C 型に近く, 一幅や厚みが均 である 外側半月板後方端から大腿骨の内側顆に向かっ て小繊維束が出て, 片縁部は膝窩筋腱に より外側側副靭帯から隔てられてい る 内側半月板は三 日月形をなし, 後角が前角に対して厚く } 幅が広い 今回, 当院におい て経験した半月板損傷の症例につ い て, MRI を関節鏡の適応決定に使用出来 るか検討した結果について報告する 方 法 使用装置は SIGNA 1.5T, 撮影条件は TR :2000 TE30 /80,TR :400 TE20 でスライス厚 3mm / 1.5 皿 m で, 撮影方法はイクスターナルローテーション 10 20 として横断像を基本とし, 矢状断 面は大腿骨外顆内側面に平行な面とする ( 図 1 のシーェマ, 図 2 の A D ). 描出されるものは, 前 後十字靭帯, 半月板, 膝 蓋靭帯, 大腿四頭筋腱, 関節軟骨である これは内側から見た場合, 半月板の 部位 は前方末端部を前角, 後方末端部を後角, その間を三等分しそれぞれを前節, 中節, 図ユ半月板とその周囲組織のシェーマ 十十十 岐阜医療技術短期大学非常勤講師松波総合病院放射線科松波総合病院放射線科岐阜医療技術短期大学診療放射線技術学科教授岐阜医療技術短期大学診療放射線技術学科講師岐阜医療技術短期大学衛生技術学科長教授医博 1
岐阜医療技術短期大学紀要 後節とよぶ 内側半月板の前節は後節より小さいの 第 16 号 2000 A B c D が特徴であるが, 逆に後節が前節よりも小さい とき は, 後節の 変性, 断裂が疑われる 外側半月板の前 節と後節は同じ大きさである 冠状断面は内側側副 靭帯と外側側副靭帯を結んだ線に平行な断面とする F ( 図 2 の E G ) 半月板の体部, 内 外側側副靭帯が 描出される 半月板の体部は三角形の低信号として みられる 図 2 撮影シェーマ 結 果 正常半月板は無信 U の均一の低信号として描出されるが, 半月板内の信号強度の形状により次 の 3 型に分類されている grade 1 は半月板内に斑状の異常信号がみられるもの,grade 2 は半月 板内に線状の異常信号がみられるもので, 異常信号は関節面まで達してないものである grade3a は半月板内に線状の異常信号がみられ, 関節表面へ達しているもの, grade 3b は半月板内に種々 の形の信号がみられ, 関節面に達しているものである Grade1, 2 は mucinous または myxoid 変性, grade 3 は半月板の断裂と考えられる z 症例 1 ( 図 3 ) 左がプロトン, 右が T2 強調矢状断像である T2 ではわかりにくいが, プロトンでは半月板 後角内に点状信号を認める すなわち, 異常 信号が関節面に達していないので, これは変 性を見ているもので半月板断裂ではない 症例 2 ( 図 4 ) 左プロ 図 3 症例 1 トン密度強調像にて, 半月板後角内に点状信号 を認める ( ) 右 T2 強調像では不明 左からプロトン, T1, T2 強調像で半月板後 角に正常半月板の構造はほとんど認められず, 後角から体部にかけての辺縁断裂である T1 強調像では関節液はやや高信号を示し, 出血 も伴っていると思われ, 正常の半月板の構造 はほとんど認めない 図 4 症例 2 半月板後角より体部にかけて辺縁断裂を認める ( ) 症例 3 ( 図 5 ) 両方共プロトン密度像で左が正常像である 正常の半月板はこのスライスでは真直ぐつながっ 2
Gifu Glfu University Umversrty of Medloal Medical Science Solenoe 幅浩嗣猛藤典秀大田典幸全森勇雄小野木 diua 蟹江匡 MRI による半月板損傷の診断 ているが, 右の症例では真中て中断し断裂を認める 関節鏡所見ても横断裂であった 症例 4 ( 図 6 ) 左側は [}1 常で, 右側は半月板後角内に異常信号が関節面まで達していて, 断裂を認める 関節 鏡所見も水平断裂であった 図 5 症例 3 図 6 症例 4 プロトン密度像て左か正常像て右症例て横断裂を左は正常像て, 右症例で半月板後角内に水平断裂を 認める ( ) 認める { ) 症例 5 ( 図 7 ) 両方共プロトン密度像で, 半月板後角に異富信号か関節面に達しており断裂を認める 関節鏡所見は, 後角 後節にかけての Bucket Handle Tear ( ハケノ柄断裂 ) であった これは半月板の長軸にそった縦断裂で, 顆間窩に向かって偏位すると, ちょうどハケソの柄のように見える 症例 6 ( 図 8 ) 半月板の flap て, 半月板後角で断裂をおこし,fldP が徑骨に癒着していた 図 7 症例 5 図 8 症例 6 右症例て, 半月板後角にバケノ柄断裂を認める ( ) 右症例て, 半月板後角て断裂し fiap か律骨に癒着 ( ) 3 NII-Electronic N 工工一 Eleotronlo Llbrary Library
Gifu Glfu University Umversrty of Medloal Medical Science Solenoe 岐阜医療技術短期大学紀要第 16 号 2 00 図 10 症例 8 図 9 症例 7 右症例で, 半月板に異常信号を認める ( ) 内側半月板は正常の三角形を認めず, 遊離片を認める ( ) 外側半月板は円板状半月板の縦断裂を認める ( ) 症例 7 ( 図 9 ) 関節鏡にて前節後方から後節前方の断裂が確認された症例で, 半月板に異常高信号を認め tlap は 関節包に付着していた 症例 8 ( 図 10) 内側卜月板は, 正常の三角形を認めず少し小さめであり, このような場合はバ ケッ柄状断裂を 疑い中心への遊離片の有無を調べる必要があり, 遊離片は顆間窩の方まで移動していた 外側半月板は, 関節鏡にて円板状半月板の縦断裂が確認された症例で, 正常と比較すると円板 状半月板が先端まであり断裂を認める 考 察 正常半月板は軟骨であるため T ], T2 強調像共に低信号として描出され, 断裂, 損傷が生じると半月板に線状, 不整形の高信号が認められる しかし, 半月板は加齢と共に変性をきたし, 高齢者では断裂がなくとも高信号が認められ, 信号のみでは変性と断裂の判別はできない ただし半月板内の高信号が関節面に達した場合は高率に断裂があり, T2 強調像で関節内に液体貯留を描出する 関節鏡にて確認された症例につき検討した結果, 半月板損傷に対する正診率は86% で あった 最も多いのは前後に断裂が走る縦断裂で, 他に横断裂, 水平断裂, 辺縁断裂等がある 特殊なタイプとしてバケツ柄断裂があるが, この断裂は半月板の長軸に沿った縦断裂でバケッ柄のように見えるからこの名があり, 矢状断よりも冠状断で判断したほうが容易な場合がある 円板状半月板は外側半月板に好発し, 内側半月板では稀である 半月板中節の幅は正常で 10mm で あり, 厚さ 5mm の矢状断で蝶ネクタイ型の半月板が 3 スライス以上にわたり見られたときは, 冂板状半月板を疑う必要がある このように円板状半月板に断裂の生じるものや関節包に付着し ているもの, ケバ立ち状のものや辺縁断裂は見落され易く, また解剖学的ピットホールには十分 な注意が必要である MRI は単純 X P についで行なわれる検査であり, 侵襲的な関節造影, また 4 NII-Electronic N 工工一 Eleotronlo Llbrary Library
幅浩嗣 佐藤典秀 大旧典幸 金森勇雄 小野木満照 蟹江匡 MRI による半月板損傷の診断 不必要な関節鏡検査も減少させうると考えられる しかし撮像方法と解剖を熟知しないと誤診に つながるため注意を要する 文 献 1 ) 大和実 : 膝関節の MRL 画像診断秀 1 閏社 vo ].14No.7p752 7561994 2 ) 是永建雄ほか 1 膝関節疾患, 骨 関節の CT MRI, 臨床放射線, 金原出版 vol,37 N ll l992 5