2018年度改正 相続税・贈与税外国人納税義務の見直し

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~ 改正の変遷 ~ (1) 平成 12 年度改正前相続人 受贈者がの場合には 国内財産のみ課税 (2) 平成 12 年度改正後 平成 25 年度改正前平成 12 年度改正 : 相続人 受贈者について国籍主義を導入 H12 年度改正 : 国内財産 国外財産ともに課税 相続人 受贈者 相続人 受贈者 被

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国外転出時課税制度(出国税)の導入

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問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

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用語の意義 この FAQ において使用している用語の意義は 次のとおりです 用語 意義 所得税法 ( 所法 ) 所得税法 ( 昭和 40 年法律第 33 号 ) をいいます 所得税法施行令 ( 所令 ) 所得税法施行令 ( 昭和 40 年政令第 96 号 ) をいいます 改正所令 所得税法施行令の一

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税法実務コース 海外勤務者と外国人の出国 入国 滞在時の国際税務 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 1 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 第 7 章 第 8 章 テーマ 1 居住者 非居住者判定テーマ 2 課税範囲についてテー

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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( 外国 ) 同上 ケース ( ) 相続人が取得した全 2 財産に対して課税 ( 外国 ) 国内財産に対しての み課税 ケース ( ) 相続人が取得した全 3 財産に対して課税 ( 外国 ) 同上 ( 平成 25 年度税制改正より ) ケース ( ) 被相続人 相続人いず 4 れも 5 年超居住の場

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経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

5 トピック 名古屋市におけるベトナム人住民およびネパール人住民 外国人住民の増加数全体に占めるベトナムとネパール両国籍の住民増加数は 56.9% を占め ました 増加が顕著な両国籍について取り上げます (1) ベトナム人住民 ( 第 4 表 第 4 表の2 第 4 表の3 第 4 表の4 第 4

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資料 4 高度外国人材の受入れ 就労状況 平成 29 年 12 月 13 日 法務省 厚生労働省 経済産業省

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

5 配偶者控除等 配偶者控除 配偶者特別控除 扶養控除及び勤労学生控除の合計所得金額の要件 について 一律 10 万円ずつ引き上げられます 6 青色申告特別控除正規の簿記の原則により記帳している者に係る控除額が 55 万円に引き下げられ 正規の簿記の原則により記帳し かつ e5tax 等により確定申

平成19年12月○日

船橋市遺児手当支給条例 船橋市遺児手当支給条例昭和 46 年 3 月 31 日条例第 22 号改正昭和 48 年 3 月 31 日条例第 13 号昭和 49 年 4 月 1 日条例第 18 号昭和 50 年 4 月 1 日条例第 14 号昭和 52 年 3 月 31 日条例第 17 号昭和 53 年

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

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第 1 表 国籍 地域別在留外国人数の推移 国籍 地域 平成 20 年末平成 21 年末平成 22 年末平成 23 年末平成 24 年末平成 25 年末平成 26 年末平成 27 年末平成 28 年末平成 29 年末平成 30 年 (2008) (2009) (2010) (2011) (2012)

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

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1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

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1: とは 居住者の配偶者でその居住者と生計を一にするもの ( 青色事業専従者等に該当する者を除く ) のうち 合計所得金額 ( 2) が 38 万円以下である者 2: 合計所得金額とは 総所得金額 ( 3) と分離短期譲渡所得 分離長期譲渡所得 申告分離課税の上場株式等に係る配当所得の金額 申告分

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2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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KPMG Japan Tax Newsletter 30 August 2018 2018 年度税制改正 相続税 贈与税 外国人の納税義務の見直し I. 納税義務の範囲 (2017 年度税制改正後 )... 2 II. 2018 年度税制改正 1. 相続税... 4 2. 贈与税... 5 相続税は相続により財産を取得した相続人に 贈与税は贈与により財産を取得した受贈者にそれぞれ課される税であり 被相続人 贈与者又は相続人 受贈者の国内における住所の有無及び日本国籍の有無により 課税される財産の範囲が定められています 2017 年度税制改正では 外国人の日本への受入れの促進を図るため 一時的に日本に在留する ( した ) 外国人の関わる相続 贈与については 一定の要件のもと 国外財産を相続税 贈与税の課税対象に含めないこととするとともに 日本人富裕層が外国に移住することにより租税負担の軽減を図ることを抑制するため 国外財産を含む全財産を課税対象とする相続 贈与の範囲が見直されました しかし この改正には 日本に 10 年超居住した外国人が出国後 5 年以内に行う 外国に住所を有する外国人に対する相続 贈与に係る納税義務の範囲を拡大する改正も含まれていたことから この改正が外国人の来日 長期滞在を妨げる要因になるとの指摘がなされていました このような状況を踏まえ 2018 年度税制改正では 外国人が出国後に行った相続 贈与については 一定の場合を除き 国外財産を相続税 贈与税の課税の対象としないこととする改正が行われました

KPMG Japan tax newsletter/august 2018 2 I. 納税義務の範囲 (2017 年度税制改正後 ) 2017 年度税制改正後の相続税及び贈与税の納税義務の範囲は以下の通りです (2017 年 4 月 1 日以後に相続 贈与により取得する財産に係る相続税 贈与税について適用されています ) 被相続人 贈与者 相続人 受贈者 国内に住所あり E F 10 年以内に国内に住所あり G 日本国籍あり 国内に住所なし 10 年以内に国内に住所なし H 日本国籍なし ( 外国人 ) I 国内に住所あり A B 国内に住所なし 10 年以内に国内に住所あり C D(1) 10 年以内に国内に住所なし D(2) 課税対象となる財産の範囲 国内財産及び国外財産 国内財産のみ 被相続人 贈与者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) B 一時居住被相続人一時居住贈与者 相続開始の時 贈与の時に 国内に住所あり 相続開始の時 贈与の時に 出入国管理及び難民認定法別表第 1 の在留資格あり 相続の開始前 贈与前 15 年以内において国内に住所を有していた期間の合計が 10 年以下である 被相続人 贈与者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 相続開始の時 贈与の時に国内に住所なし D 非居住被相続人非居住贈与者 (1) 相続の開始前 贈与前 10 年以内のいずれかの時において国内に住所あり 相続の開始前 贈与前 15 年以内において国内に住所を有していた期間の合計が 10 年以下である 被相続人 贈与者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) (2) 相続開始の時 贈与の時に国内に住所なし 相続の開始前 贈与前 10 年以内のいずれの時においても国内に住所なし 相続人 受贈者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 相続開始の時 贈与の時に 国内に住所あり F 一時居住者 相続開始の時 贈与の時に 出入国管理及び難民認定法別表第 1 の在留資格あり 相続の開始前 贈与前 15 年以内において国内に住所を有していた期間の合計が 10 年以下である

KPMG Japan tax newsletter/august 2018 3 経過措置 2017 年 4 月 1 日から 2022 年 3 月 31 日までの間に 外国に住所を有する外国人 ( I に区分される相続人 受贈者) が非居住外国人 (2017 年 4 月 1 日から相続 贈与の時まで引き続き国内における住所及び日本国籍を有しない者をいいます 2017 年 4 月 1 日前に出国し その後外国に住所を有している外国人が該当します ) から相続 贈与により取得した国外財産については 2017 年度税制改正の経過措置により 相続税 贈与税は課されないこととされており 従前の取扱いが継続して適用されます ( この経過措置は 2018 年度税制改正後における相続税及び贈与税においても適用があります ) *** 2017 年度税制改正により 日本に一時的に居住する外国人の相続税 贈与税の納税義務はおおむね緩和されました しかし その一方で 日本に 10 年超居住し 出国後 5 年以内である外国人 ( C に区分される被相続人 贈与者) が外国に住所を有する外国人 ( I に区分される相続人 受贈者) に対し行った相続 贈与については 従前と異なり 国外財産にまで課税が及ぶこととされたため 外国人の来日 長期滞在を踏みとどまらせる要因になりうるとの懸念の声が挙がっていました そこで 2018 年度税制改正では 一時的に国外に住所を移した後に行う贈与を除き 外国人が出国後に外国に住所を有する外国人に対し行う相続 贈与については 国外財産を相続税 贈与税の課税の対象としないこととする改正が行われました

KPMG Japan tax newsletter/august 2018 4 II. 2018 年度税制改正 1. 相続税 (1) D(1) 非居住被相続人 の定義の見直し D(1) 非居住被相続人 の定義が 以下のように見直されました 改正前 被相続人 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 相続開始の時に国内に住所なし 相続の開始前 10 年以内のいずれかの時において国内 に住所あり 相続の開始前 15 年以内において国内に住所を有して いた期間の合計が 10 年以下である 出国後 10 年以内である外国人のうち 以下のいずれか に該当するもの 日本における居住期間が 10 年以下であった 日本における居住期間が 10 年超であり かつ 出国 後 5 年を経過している 改正後 被相続人 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 相続開始の時に国内に住所なし 相続の開始前 10 年以内のいずれかの時において国内 に住所あり ( そのいずれの時においても日本国籍を有していな い ) 出国後 10 年以内である外国人 この改正により 日本に 10 年超居住した外国人が出国後 5 年以内に死亡した場合であっても その外国人は C でなく D(1) 非居住被相続人 に区分されることとなりました したがって たとえば 外国に住所を有する外国人 ( I に区分される相続人) が 外国に住所を有する外国人である被相続人から相続により取得する国外財産は 被相続人の日本における居住期間にかかわらず 相続税の課税対象から除外されることとなります (2) 適用時期 (1) の改正は 2018 年 4 月 1 日以後に相続により取得する財産に係る相続税について適用されます

KPMG Japan tax newsletter/august 2018 5 2. 贈与税 (1) D(1) 非居住贈与者 の定義の見直し D(1) 非居住贈与者 の定義が 以下のように見直されました 改正前 贈与者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 贈与の時に国内に住所なし 贈与前 10 年以内のいずれかの時において国内に住所 あり 贈与前 15 年以内において国内に住所を有していた期 間の合計が 10 年以下である 出国後 10 年以内である外国人のうち 以下のいずれか に該当するもの 日本における居住期間が 10 年以下であった 日本における居住期間が 10 年超であり かつ 出国 後 5 年を経過している 改正後 贈与者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 贈与の時に国内に住所なし 贈与前 10 年以内のいずれかの時において国内に住所 あり 次のいずれかに該当する (i) 国内に住所を有しなくなった日前 15 年以内において 国内に住所を有していた期間の合計が 10 年以下で ある (ii) 国内に住所を有しなくなった日前 15 年以内において 国内に住所を有していた期間の合計が 10 年超 であ り 同日から 2 年を経過している 出国後 10 年以内である外国人のうち 以下のいずれか に該当するもの 日本における居住期間が 10 年以下であった 日本における居住期間が 10 年超であり かつ 出国 後 2 年を経過している 日本に 10 年超居住した外国人が出国後に行う贈与については その贈与が出国から 5 年を経過した後に行われるものでなければ その外国人は D 非居住贈与者 に区分されませんでしたが この改正により その贈与が出国から 2 年を経過した後で行われるものであれば その外国人は D 非居住贈与者 に区分されることとなりました したがって たとえば 日本に 10 年超居住した外国人が 出国後 2 年を経過してから 外国に住所を有する外国人 ( I に区分される受贈者) に財産を贈与する場合には 贈与税の課税の対象は国内財産に限定されることになります なお 日本に 10 年超居住した外国人が出国後 2 年以内に行う贈与については 特例 ( 短期非居住贈与者の特例 ) が創設されました ( 詳細につきましては (2) をご覧ください )

KPMG Japan tax newsletter/august 2018 6 (2) 短期非居住贈与者の特例の創設外国に住所を有する外国人 ( I に区分される受贈者) が 短期非居住贈与者から贈与により財産を取得した場合の特例が創設されました 短期非居住贈与者 とは C に区分される贈与者のうち 以下のものをいいます 贈与者 ( 以下のいずれにも該当するもの ) 贈与の時に国内に住所なし 贈与前 10 年以内のいずれかの時において国内に住所あり 国内に住所を有しなくなった日前 15 年以内において国内に住所を有していた期間の合計が 10 年超である 国内に住所を有しなくなった日から 2 年以内である 日本における居住期間が 10 年超であり かつ 出国後 2 年以内である外国人贈与税の申告は 贈与により財産を取得した年の翌年 2 月 1 日から 3 月 15 日までに 受贈者により行うこととされています しかし 外国に住所を有する外国人 ( I に区分される受贈者) が 短期非居住贈与者より贈与を受けた場合には 贈与により財産を取得した年の翌年 2 月 1 日から 3 月 15 日までに贈与税の申告を行うのではなく 以下の (a) 又は (b) のケースに応じ 後日 贈与税の申告を行うこととなります ケース課税対象となる財産申告期限 (a) 短期非居住贈与者が 国内に住所を有しなくなった日から 2 年以内に再入国した場合 短期非居住贈与者より贈与を受けた年において贈与により取得した国内財産及び国外財産 短期非居住贈与者が再入国した日の属する年の翌年 2 月 1 日から 3 月 15 日 (b) 短期非居住贈与者が 再入国することなく 国内に住所を有しなくなった日から 2 年が経過した場合 短期非居住贈与者より贈与を受けた年において贈与により取得した国内財産 短期非居住贈与者が国内に住所を有しなくなった日から 2 年を経過した日の属する年の翌年 2 月 1 日から 3 月 15 日 この特例の創設により 日本に 10 年超居住した外国人が 外国に住所を有する外国人 ( I に区分される受贈者) に対して出国後に行った贈与については その出国後 2 年以内に再入国しない限り 国外財産には贈与税が課されないこととなります (3) 適用時期 (1) 及び (2) の改正は 2018 年 4 月 1 日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます

KPMG Japan tax newsletter/august 2018 7 (4) 経過措置 2018 年 4 月 1 日から 2019 年 3 月 31 日までの間に 非居住外国人 (2017 年 4 月 1 日から贈与の時まで引き続き国内における住所及び日本国籍を有しない者をいいます 2017 年 4 月 1 日前に出国し その後外国に住所を有している外国人が該当します ) が外国に住所を有する外国人 ( I に区分される受贈者) に財産の贈与をした場合には 経過措置により その非居住外国人は D 非居住贈与者 とみなされることとなります この経過措置により 外国に住所を有する外国人への非居住外国人による贈与について 短期非居住贈与者の特例が適用されないよう手当てされています 参考 出入国管理及び難民認定法の在留資格 (1) 外交 公用 教授 芸術 宗教 報道 別表第 1 (2) 高度専門職 経営 管理 法律 会計業務 医療 研究 教育 技術 人文知識 国際業務 企業内転勤 介護 興行 技能 技能実習 (3) 文化活動 短期滞在 (4) 留学 研修 家族滞在 (5) 特定活動 別表第 2 永住者 日本人の配偶者等 永住者の配偶者等 定住者 KPMG 税理士法人 106-6012 東京都港区六本木 1-6-1 泉ガーデンタワー TEL: 03-6229-8000 FAX: 03-5575-0766 530-0005 大阪府大阪市北区中之島 2-2-2 大阪中之島ビル15F TEL: 06-4708-5150 FAX: 06-4706-3881 450-6426 愛知県名古屋市中村区名駅 3-28-12 大名古屋ビルヂング26F TEL: 052-569-5420 FAX: 052-551-0580 info-tax@jp.kpmg.com www.kpmg.com/jp/tax ここに記載されている情報はあくまで一般的なものであり 特定の個人や組織が置かれてい る状況に対応するものではありません 私たちは 的確な情報をタイムリーに提供するよう 努めておりますが 情報を受け取られた時点及びそれ以降においての正確さは保証の限りで はありません 何らかの行動を取られる場合は ここにある情報のみを根拠とせず プロフェ ッショナルが特定の状況を綿密に調査した上で提案する適切なアドバイスをもとにご判断く ださい 2018 KPMG Tax Corporation, a tax corporation incorporated under the Japanese CPTA Law and a member firm of the KPMG network of independent member firms affiliated with KPMG International Cooperative ( KPMG International ), a Swiss entity. All rights reserved. The KPMG name and logo are registered trademarks or trademarks of KPMG International.